ラドリーのぱーふぇくと遊戯王教室【二次創作編】 作:Othuyeg
「んなわけねぇだろボケ」と思っても、俺は「これが正解」とか「これが正しい」とは一言も言ってないので、「岩投げアタック※」を食らう謂れはありません。悪しからず。
「……そう。今回のゲストはこの方。余の罠ビートとしての後輩であり最大のライバル、【白銀の城のラビュリンス】嬢だ」
ダイナミックエントリーを決め、ふんすふんすとドヤ顔で胸を張っているラビュリンス。
それを横目に、明らかに曲がってはいけない方向に曲がった首をメキリと音を立てて元に戻し、ゲストとして紹介するエルドリッチ。
「あら、レベルは2つも上でありながら私にも及ばないステータス※の割に、随分と頑丈ですのね。見直しましたわ」
「不本意ながら余もアンデット族故な。貴公程度に首をへし折られたくらいで簡単に退場はせんよ」
登場早々毒舌を乱射するラビュリンスに、エルドリッチは首を回しながら事も無げに答える。それに対し、ラドリーは怒り心頭と言った様子だ。
「エルドリッチ様! なんですかこの女! めっちゃ喧嘩売ってくるじゃないですか!」
ラビュリンスに精一杯の威嚇をしながらエルドリッチに問うラドリー。
なお、当のラビュリンスは「可愛らしいメイドさんだこと。でもうちのメイド姉妹達には負けるわね」などと考えており、威嚇のダメージは0である模様。
「彼女はお熱の騎士サマ以外には、だいたい皆に同様に毒舌だ。それと、今回は余が相手だからこのレベルなのであって、誰に対しても殺人級のイタズラをカマすような分別無しでもない」
お怒りのラドリーを撫で回しながら窘めるエルドリッチ。しかしラドリーはまだ「でも!」とジタバタしている。もはやドラゴン体に変身せんばかりの勢いだ。
「気持ちは分かるがな、ラドリーよ。今回は余が彼女を呼んだ。責任は全て余にある故、どうか鉾を収めよ」
エルドリッチがそういうと、ラドリーはいかにも不承不承と言った顔で暴れるのを止める。
「はぁ……貴女、随分愛されてますのねぇ。私もいずれ……」
ラドリーを見遣り溜め息をつくと、頬を赤らめ乙女の表情で呟くラビュリンス。騎士との将来を妄想しているらしい。
横で「また始まった」とばかりに肩を竦め頭を振るエルドリッチと、登場時の傍若無人な振る舞いとのギャップにドン引きしているラドリーのことは、完全にアウトオブ眼中らしい。
いやんいやんと体をくねらせるラビュリンスに、エルドリッチが呆れ顔で忠告する。
「残念ながら、貴公の推しの騎士サマ談義に付き合うつもりはないぞ。……今回は余らが主役故な」
エルドリッチのその言葉に、ハッと正気を取り直し、零れた涎を拭き取って席につくラビュリンス。
「し、失礼致しましたわ。私、つい……」
「多少なら構わぬ。それもまた撮れ高よ」
謝罪するラビュリンスに、エルドリッチは寛容に返す。
「では改めて本題に入ろう。今回は【世界観・ストーリー】について扱っていく」
そう言って、ホワイトボードの【世界観・ストーリーについて】の文字を強調するように下線を引くエルドリッチ。
「世界観・ストーリーと言いますと……。アルバスやエクレシアちゃん達の『烙印ストーリー』や、オルフェゴールどもの『星遺物ストーリー』なんかのことかしら?」
思い出すように顎に指を当て、ラビュリンスが呟く。その呟きを拾って、エルドリッチが頷く。
「うむ、何故星遺物ストーリーのテーマで真っ先に浮かぶのが【オルフェゴール】なのかは少々疑問だが……概ねその通りだ。
……しかし、今回主に扱うのはそういった既存のストーリーや世界観ではなく……『その二次創作オリジナル』の世界観・ストーリーだ」
そう言い切ると、エルドリッチはホワイトボードに【二次創作独自の世界観・ストーリー】と書く。
それを眺めながら、ラビュリンスが疑問を呈する。
「ですけれど、それは何か問題にするほどのことがありますの? 一次・二次を問わず、創作の作り方なんて個人の勝手ではなくて?」
怪訝な表情のラビュリンスに、エルドリッチが難しい顔をする。
実際のところ、ラビュリンスの言う通り、創作論などというものは個人的なものでしかなく、いわばそれに苦言を呈するのはただの『個人の感想』に過ぎないのだ。
「勿論、その通りだ。だが、こちらも再三言う通り、この教室の趣旨は『遊戯王の二次創作について、個人の見解を述べる』ことだ。賛同できる意見は取り入れ、そうでない意見は無視する。創作論とは、つまり全くそれで良いのだよ」
言葉を選びつつ、ラビュリンスの疑問に丁寧に回答するエルドリッチ。
その回答に、さほど興味も無さそうにもみあげをいじりながら「そういうものなんですのね~……」と納得するラビュリンス。おい、聞いたのはお前だろ。
「まあ、そういうわけだから、この教室の閲覧者にも『それは違う』という感想を抱くものもいるだろう。だが、それで全く良い。
創作とは自由で、それ故に多くの賛同を得、そしてまた多くの反感を買うものだ。貴公は貴公の道を進むが良い」
両手を広げ、カメラに向けて大仰にポーズを取るエルドリッチ。そして姿勢を戻し、話の路線を戻すように手をパンと叩く。
「では始めよう。まず第一の結論として、『独自の世界観を用いる場合、通常を大きく上回るほどに細心の注意を払う必要がある』だ」
真剣な顔でそう言い、ホワイトボードに【独自の世界観:普段以上に細心の注意を払うこと】と書く。
「はい! これはどう言った理由があるのですか? エルドリッチさま!」
ラドリーが大きく手を挙げ、元気よく質問する。その質問に、エルドリッチはフッと笑って両手を広げる。
「簡単な話だ。余らも含め遊戯王プレイヤー達は、その多くが原作となる漫画・アニメのファン。即ち、彼らにも思い入れのある作品というものが、確実に存在するからだ。
むしろそれら原作が存在したからこそ、高速化し、
「つまり……そういったファンが、『作者が勝手に考えたオリジナルの世界観』を見たらどう思うか……ということでしょうか?」
ラドリーの回答を肯定するように頷くエルドリッチ。
「うむ、その通りだ。原作ファンにしてみれば、そんな作品は『設定だけ借りた別物』であり、自分の読みたい遊戯王二次創作とは言い難いのだろう。
勿論、中には『原作ファンだが別にそんなものは気にしていない』という者も居はしようが……。あまり多いとは思えんな」
そう言葉を切ると、ホワイトボードに【独自の世界観には、原作への愛と理解が重要】と書き加える。
そしてエルドリッチは、ラドリーに向き直り「故に」と続ける。
「故に、『独自の世界観』を用いた創作は、細心の注意を以て取り組む必要がある、というワケだ。
……ではラドリーよ。独自の世界観でストーリーを作る時、一番『やってはいけないこと』とは何であるかわかるか?」
エルドリッチの問いに、ラドリーはうーんを唸って頭を抱える。その横で、ラビュリンスが
「む? ラビュリンス嬢、答えを思いついたのか? 発言を許可しよう」
「ええ」
エルドリッチからの許可が降りるや否や、ラビュリンスは自慢げに胸を張り、口を開く。
「ズバリ! 『オリカでデュエルを構成すること』ですわ!」
ラビュリンスの堂々たる宣言に、エルドリッチは少々悩ましげな顔をしつつも「……まあ、正解としよう」と返す。
「あら? その様子だと、これでは完答とは言えないようですわね。結構自信がありましたのに」
キョトンとした顔で首を傾げるラビュリンス。それを見つつ、エルドリッチが解説を入れる。
「余の想定していた答えとしては、『原作の雰囲気やカードを蔑ろにすること』だ。先程も言った通り、多くの遊戯王プレイヤーは原作ファンであり、たとえその意図が無くとも、原作を汚すことは彼らへの最大の侮辱となる」
エルドリッチの説明を聞き、ラビュリンスは納得した顔で頷く。
「……成る程。原作の雰囲気やカードの描写を蔑ろにすると、原作ファンから総スカンを喰らい、閲覧者が減る、ということですわね。確かにそれは避けたいですわね……」
「そういうことだ。故に、遊戯王という原作を『無意味にする』という点では、『オリカだけでデュエルを構成する』という答えも間違いではない。
しかし、クロスオーバーなどで他作品を原作としているなら、まあ個人の裁量ということで許容範囲に入る場合もあるだろうが……」
エルドリッチのセリフを、得心がいった顔のラドリーが引き継ぐ。
「こと遊戯王単体の二次創作においては、遊戯王を原作とする意味がなくなってしまうのでやってはいけない、というワケですね!」
ラドリーの理解を、エルドリッチが撫で回しながら褒める。
「その通りだ。良く理解しているな、ラドリーよ」
「フフン!」
エルドリッチに撫で回されながら、ラビュリンスに向けてニマニマとしたドヤ顔を向けるラドリー。
その様子を見て、ラビュリンスもラドリー撫で回し会に参加する。
「うわっ、なんですか! 別に貴女に撫でて欲しくて見てたワケじゃないですー!」
ラドリーがうがー!と威嚇するが、ラビュリンスは何処吹く風だ。
「まあまあそう仰らずに。あら、しっぽモフモフ……」
「あっ、待てこの、ヤメロー! 気安くしっぽに触るなー!」
──10分後
「はあ、はあ、ふぅ……。や、やっと解放されました……」
疲労困憊のラドリーが、ぐったりと椅子に
「あー、その、なんだ。……まあ、すまなかったな、ラドリーよ。彼女が騎士以外にも、可愛らしいものを好んでいることを失念していた」
エルドリッチがラドリーに謝罪するが、ラドリーは心ここに在らずと言った様子だ。【キャトルミューティレーション】のカードイラストのように、魂が抜け出てしまったかの如き有様だ。
「エルドリッチさまが謝る必要ありませんよ……。悪いのはこの性悪女悪魔です……」
ラドリーが横のラビュリンスをギロリと睨むが、疲れきっている上、元々可愛らしい彼女では迫力が出ない。事実、ラビュリンスには全く堪えていない様子だ。
「まあまあ、いいじゃありませんの。減るものではありませんし、この私が可愛いと認めたのですからそれをお誇りになって?」
「貴女に可愛いって言われても嬉しくないです!」
ぎゃいぎゃいと騒ぐラドリーに対し、ラビュリンスは微塵も悪びれる様子を見せない。
「……二人とも、そこまでにするがいい。話が進まんではないか」
話の脱線を危惧したエルドリッチが二人を仲裁し、話を進めるよう催促する。
「むう……。分かりました。エルドリッチさまの顔に免じて、ここはおさめておきます」
「そうですわね。無駄に場を荒らすのは本意ではありませんもの」
憤懣やるかたない顔のラドリーに続いて、ラビュリンスが平然とそう言う。
「……チッ、面の皮の厚い悪魔め……」
「やめよラドリー。さて、本題に戻るぞ。『独自の世界観』と『オリカだけのデュエル』が合体すると何が起こり得るか。それは、『【遊戯王】というゲームそのものの無意味化』だ」
話を少々強引に本筋に戻し、ホワイトボードに【独自の世界観+オリカONLYのデュエル→『遊戯王』である意味の喪失】と記す。
「では、何故そのような事態が発生し得るのか。どちらかわかる者は?」
エルドリッチが二人に問うと、ラドリーとラビュリンスは同時に手を挙げる。
「ふむ。では、より勢いのよかったラドリー。答えてみせよ」
エルドリッチがラドリーを指名すると、ラドリーは威勢よく答える。
「はい! その理由は、『遊戯王としてのアイデンティティが基本ルールにしか無くなる』からです!」
「その通り。よくできたなラドリー」
模範解答を示したラドリーを、エルドリッチが褒め
「そう。この二つが組み合わさった場合、作品内における明確な【遊戯王】要素は基本ルールのみとなる。
即ち、読者視点では『カードやテーマを沢山考えたし、それを使うキャラクターも考えたけど、TCGとしてルールを考えるのが面倒くさいから、一番都合のいい遊戯王のルールを使っただけ』のように見えることだろう。原作ファンが読まないのも当然の帰結だな」
そう言って、ホワイトボードの【〜意味の喪失】の下に続けて【↑TCGとしてのルールを考えるのが面倒くさかっただけに見えるから】と書く。
「さて、これでだいたい『独自の世界観・ストーリー』と『オリジナルのキャラクター・カード』を用いて遊戯王二次を書くことのリスクが伝わったことだろう。
……さて。今回のシメとして、ラビュリンス嬢に一つオリカを作ってもらおうではないか」
ニタリと笑い、右手でラビュリンスへと視線を誘導するエルドリッチ。
「わ、私がですか?」
「うむ。前回のオリカ制作コーナーが好評(黄金卿調べ)だったのでな。毎回恒例のオチにしようというわけだ」
腕を組んで深く頷くエルドリッチに、ラビュリンスは訝し気な目線を向ける。
「……単純に『毎回議題に沿ったオチを考えるのが面倒だったから』、なんじゃありませんの?」
ラビュリンスの鋭い指摘に、ピシリと固まったように動かなくなる黄金卿。
……ややあって、冷や汗と引き攣った苦笑を浮かべつつ、口を開く。
「ま、まあ? 確かにそういった意図が無かったと言えば、嘘にはなる、な? し、しかし、そんなことは今はどうでもよかろう!? さあ、オリカを作りたまえよ!」
明らかに焦りが見えるエルドリッチだが、ラビュリンスは特にそこを追求することはせず、美しい白銀の髪を手で
「まあどうでも構いませんわ。では5分ほど。その後に、私の素晴らしいオリカをご照覧遊ばせ!」
──宣言通り、きっかり5分後
「さあ、エルドリッチ卿! ラドリーちゃん! 私の珠玉のオリカをご覧なさい!」
【
星1/光属性
戦士族/効果
ATK1000/DEF200
このカード名の(1)(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、または「ラビュリンス」モンスターのみの場合に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
(2):このカードの召喚・特殊召喚は罠カードによっては無効化されず、このカードの召喚・特殊召喚成功時に、相手は罠カードを発動できない。
(3):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。自分の手札・フィールドの「ラビュリンス」カード、または通常罠カード1枚を破壊する。その後、デッキから「ラビュリンス」モンスター1体を特殊召喚し、このカードのコントロールを相手に移す。
この効果で特殊召喚されたモンスターは、このターン、罠カードの効果を受けず、効果の発動に対して相手は「ラビュリンス」モンスター以外のモンスターの効果をチェーンできない。
(4):このカードがフィールド上に存在する限り、このカードは通常罠カードの効果を受けず、1ターンに3度まで相手が発動した通常罠カードの効果を無効にできる。
「……なるほど」
「何と言うか、これは……」
エルドリッチとラドリーが、カードを眺めて顔を歪める。
「……何かしら? 言いたいことがおありなら、存分に仰って?」
やや不満気に怪訝な顔をするラビュリンス。
彼女の言葉に、エルドリッチとラドリーはお互いに顔を見合わせ、同時に言い放つ。
「「ここまで露骨に好意まみれで恥ずかしくならないのか?」んですか?」
「なっ、何よ! 別に良いじゃない、事実大好きなんだもの!」
顔を真っ赤に染めながら、開き直って叫ぶラビュリンス。それを見て、二人はやれやれと呟く。
「「なるほど、これは『超』重症だな」ですね」
「なんでよー!!」
第二回ぱーふぇくと遊戯王教室、これにて閉幕。エルドリッチ邸は今日も平和だ。
2話に分割したのに、結局普段の倍になった。
おかしい、こんなはずでは……。