明日のパンツと少しの小銭で異世界を生きれるか 作:単眼駄猪介
なんか映司を利用しようとかいう、怪人としてのアンクを出せてませんがそんな余裕があったらオルクス大迷宮でハジメが魔王化したり、腕を失ったりしないんで許し亭。
グリードの本番は迷宮脱出後と言えますし。
そして設定を上手く落とし込めている旨のお褒めの言葉を頂けて気分は幸せのコーラサワーです。
これからも応援して頂けると感謝!
アンクと正式名称は【蹴りウサギ】(アンクが教えた)のホッパー、そして我らの主人公火野映司は、紆余曲折ありつつ下層に進み続けた。
細かく言えば、蹴りウサギがアンクを齧ったり、水場を見つけた映司がパンツだけでもと変身解除して水洗いしたり、魔物にボコされて鍛錬を積み再挑戦して勝ったり………
まあ全部を書こうとすればそれだけで書籍一巻の半分を埋め尽くしかねないので省略させてもらおう。
「あれ?ここなんだろう?」
もうどれだけ降りたのだろうか。
数えるのもやめた頃に、映司はとあるものを見つけた。
安全な休息地を見つけるためにアンクとホッパーのグループと映司一人でそれぞれ探していたのだが、映司は奇妙な部屋を見つけた。
「うーん……アンクに聞いてみるか」
悩んだ末、この迷宮を知っているだろうアンクを連れて来る事にした。
「ん?これは……オスカーの野郎が作ったにしては少し雑だな。それに横の奴らは微反応だが魔物だな」
「うわっ……下手に触れないで良かったぁ…」
「だが扉を開けるなら倒さないと意味はないがな」
「あらら」
結局倒すしかないのか、と映司は半ば予想通りの展開に溜息をつきながら左の腰に付いているメダル入れから1枚のメダルをトラメダルも交換する。
「ほう、オーズの使い方を理解してきたじゃないか」
アンクが感心したように映司のメダル選択を褒める。
そんな彼に映司は「珍しい」とボヤきつつ亜種チェンジする。(タトバも亜種形態なのだが、まあそれは置いておこう)
【タカ!カマキリ!バッタ!】
昆虫類のメダル、カマキリメダルをスキャンしトラの黄色い部分が黄緑に変化し、カマキリの鎌をモチーフにした腕がオーズの腕に現れる。
「卑怯だとは思うけど……痛みだけでも一瞬だけに……!」
偽善だと言われればそうだろう。
どのみち殺すのだから、平行世界の魔王からすれば呆れるだろうがそれでも映司は苦しめて殺すことなどできない。
彼らも命があり、痛みを感じて何かを想う生き物であるから。
「ハアッ!」
バッタレッグによる跳躍力で亜種チェンジの際の魔力を感知したらしいサイクロプスのような1つ目の巨人が色を取り戻すかのように石化が解ける。
だが既にオーズの振るう鎌はサイクロプスの首を刎ねていた。
それにギョッともう片方のサイクロプスが信じられない目でオーズを見るが、そちらにはホッパーが目に目掛けて蹴りを叩き込み、目を潰す。
「ガアァァァ………」
激痛による悲鳴をあげる前にオーズは壁蹴りで飛んで首を刎ねる。
そして二匹のサイクロプスの頭からゴロリとほんわりと光る珠が転がり出る。
「これをあの扉に嵌め込めば良いのかな?」
「それしかないだろうな」
扉の窪みに珠を嵌めて少し待つ。
するとゆっくりだが扉が少しだけ開き、映司は中を覗き込む。
「誰……?」
「ッ…!」
扉が開いた事で気付いたのだろうか、10代前半くらいの歳の女の子が立方体に埋められているではないか。
「あっ!?おい!」
「キュッ!?」
突如走り出す映司に、ホッパーとアンクは驚く。
だが映司にとってこの光景は、トラウマを刺激された。
「大丈夫!?どこにも怪我はない!?」
すごい剣幕で安否を確認される金髪の少女は、かなり長い間喋ることがなかったのか声は掠れていた。
しかもパッと見れば化け物にも見えるオーズの姿もあって、彼女は怯える事しかできなかった。
「あっ……こんな姿じゃ駄目だよね、怖がらせてごめん」
そう言うと映司は変身を解いて本来のエスニックな服装を着た少年になる。
しばらくぶりに生身に戻ったので、映司は深呼吸して直に空気を吸う感覚を堪能する。
「えっと……」
展開に追いついていけない少女は助けを求めるように彼についてきた腕と兎の魔物に視線を向ける。
流石に彼女に同情したのか、アンクは映司の頬を抓る。
「いてててっ!?」
「女が置いてけぼりじゃねぇかバカ映司」
ようやく自分の世界から戻ってきた映司は改めて彼女に謝罪する。
「ごめん、久しぶりだっから……」
そう言われたら彼女も怒れず、首肯することで許す。
「それにしても……なんでこんなところに…?」
次に思うのはまさにそれである。
何故、年端も行かぬ少女がこんな所に囚われているのか。
その答えは微かな声ながら少女によってもたらされた。
「叔父様が……急にいらないって……ここに閉じ込められて…」
断片的だが経緯を聞いたアンクは「ほう」と面白そうに笑みを浮かべる(雰囲気でだが)。
「つまりは反乱されて幽閉されたという訳か」
「私……再生力が凄いから……手足切っても、頭を切っても死ななかった」
流石に怪人とて首を切り落とされれば即死である。
彼女のヤバさにアンクは軽く引く。
とは言っても怪人の首を斬るというのも中々無理な話だが。
「でもこのまま話してても埒が明かないな……アンク、この子をどうにか解放できない?」
魔法に関しては映司には完全に専門外なのでアンクに頼り切りなのだが、アンクとて万能でもないし某猫型ロボットでもない。
「物理的に圧倒的なパワーで叩き切るか、魔法で地道に解除するか……って俺は便利屋じゃねぇぞ!!」
最早テンプレと化した掛け合いだが、映司は魔法を使えないしホッパーに至っては魔物なので結果論としてアンクである。
「じゃあ前にアンクが吐き出してたアレは?」
「メダジャリバーの事か?」
メダジャリバー、それはかつて王がオーズを最も象徴たらしめる為の剣である。
セルメダルを3枚消費して時空をも切断する絶大な威力を誇るのがメダジャリバーの特殊能力であるが………
基本的にアンクが体内に保管しているが(出す時に「ヴォエ!」と吐き出すのはご愛嬌)メダジャリバーの必殺技ならばと映司は提案したのだ。
「アレはセルメダルを3枚も使うんだぞ、他のにしろ。それにコイツを助ける理由がどこにある?もしかしたらコイツの言っていることは嘘かもしれんぞ」
セルメダルの数が少なく、少しの被弾も許されない体。
ホッパーから生み出したヤミーで少しずつ供給されているものの、それでも腕だけの存在から早く卒業したい彼からすれば無駄遣いは避けたいものである。
「声が掠れるくらい長い間ここにいるんだぞ!?助けようとは思わないのか!?」
そう映司は情に訴えかけるが、生憎グリードという怪人にはその手の交渉は全くの無意味である。
「俺達グリードは自分の欲望を優先する。見知らぬ女が死のうが放置されようが俺には関係ねぇ」
冷たくそう言い放つアンク。
それに映司は少女が誤解を解こうとする前に怒鳴る。
「そうか!なら俺はこの子が無事に助けられる方法を見つけるまでここにいるからな!」
「あ゛?」
映司のまさかの言葉にアンクは絶句する。
「なんだと?もう一度言ってみろ、今すぐその首を捩じ切るぞ」
「やれるもんならやってみろよ。殺した後、お前がホッパーや魔物達に対抗できるならな」
「………チッ」
最初からアンクの不利だった交渉である。
主導権の殆どを映司に握られているアンクには映司の言うことを聞くしかできないのだ。
「ったく、今回だけだ。次に使う時は最下層攻略の時だけだ、良いな?」
「分かってる」
ヴォエ!という汚い音と共にガラン、とメダジャリバーが落ちる。
セルメダルを3枚装填し、オースキャナーを構える。
「もし、足を斬っちゃったらごめん!」
先に謝りつつ映司は再度変身して、スキャニングチャージする。
【トリプル!スキャニングチャージ!】
コアメダル程とはいかないものの、セルメダルとて高品質の魔力がある。
メダジャリバーを包むエネルギーを、少女に当たらないように叩き斬る。
アンクが説明するに、この封印術は解除か彼女を閉じ込める石を破壊できる攻撃力を叩き付けることで解けるという。
しかし、衰弱している彼女ごと斬るのは気持ち的にも人道的にもあり得ない。
例え再生できるとしても、人を斬るというのには抵抗感がある映司にとって避けたいものである。
「ふぅ……ハッ…!!」
集中、そして振り下ろされた剣はまごうことなく石を切り裂き、美少女の救出に成功した。
呆気ない終わりに映司は放心しかけるが、咳込む少女にすぐさま駆け寄って怪我がどこにもないか確認する。
「怪我は……ない…!上手くいったぁ……!」
だがそう問屋が下ろしてくれない。
「……!エイジ、門の方…!」
そこには金属に包まれたサソリがまるで試練を与えるかのようにこちらに攻撃を仕掛けてきた。
「シャアァァァァ…!」
「うわっ……硬そう…」
まずメダジャリバーやカマキリの鎌では弾かれるだろうと映司は相手の特徴を観察する。
すると、アンクが映司に呼びかける。
「映司!これを使え!」
そう言って投げたのはこれまでの攻略では見たことのないメダルだった。
パッと見ればセルメダルと勘違いしてしまうが、縁がちゃんと金色に装飾されている為、コアメダルであることが分かる。
「目の前の奴と相性のいいメダルだ!トラと変えろ!」
「分かった!」
言われた通りにトラメダルを抜いて代わりに新しいメダルを挿入する。
こういう戦闘に限っては息が合うようになったな、と仮面の下で映司は苦笑いする。
【タカ!ゴリラ!バッタ!】
どうやら灰色のメダルはゴリラメダルのようだ。
となると灰色は霊長類のカテゴリーなのかと想像するが、まずは目の前のサソリを倒さなければならない。
「確かに打撃なら……倒せるッ!!」
(^U^)
さて、ここで少し場面を勇者一行に変えよう。
映司が奈落に落ちた後、発狂寸前まで絶叫した白崎をメルドが気絶させてなんとか迷宮から脱出し、王都への帰路を進む勇者達。
その雰囲気は重苦しく、それにむせるかのように眠っていた白崎はゆっくりと馬車の中で起き上がった。
無論、映司が奈落の底に落ちるところまで鮮明に記憶している為、彼がどうなったのかは言うまでもない。
だがしかし気絶させられる直前、天之河が白崎の逆鱗に触れる言葉を覚えていなかったのは幸いなのかもしれない。
「火野の事は諦めるんだ!」
そんな言葉を大切な人が死んだかもしれない状況で掛けられたら誰もが怒り狂うだろう。
発狂寸前だったので、彼の首を噛み千切るなりその杖で頭蓋骨や鼻を折るなんていう滑稽な光景も見れたかもしれないがそれはそれで痛ましいので起きなくて良かっただろう。
それを見せられる檜山達が可哀想であるから()
「映司君……」
「香織……」
「雫ちゃん、私、攻略頑張る。きっと映司君が助けを待っていてくれている筈だから…!」
「…生きてる確率は低いわよ?」
「せめて形見だけでも持ち帰りたいの。雫ちゃん、お願い。協力してくれる……?」
「……はぁ、分かったわ。仕方ないわね」
どちらも精神的に参っているが、しかしそれで挫けていたらこの先戦うであろう魔人族との戦争に生き残れるはずがない。
八重樫としても、まだ人を殺す覚悟などしているようでしていないとも言えるからこそ、彼女の提案は目的は絶望的だとしても心を安定させるには良かった。
場面は変わり王城の広間で、メルドは王とイシュタルに事の経緯を説明し火野映司の戦死が報告された。
それに悲しんだのはメルドは当然として、一部の若い貴族と王もまたそれに暗い顔を見せた。
史実では彼らもイシュタルや歳を食って丸い貴族達のように特に死を悲しむこともなかった。
だが、この世界の彼らは違う。
トラウマに起因して政治の事を齧る程度だが勉強していた映司の知識から導き出された政治体制の改善や、労働環境の改善はとても感謝されていた。
余計な手続きやら書類の削除や新政策の草案等を行った映司の功績は、一番苦労する若い貴族達と中間職、王族に勇者達の世界の知識にとてつもない魅力を感じさせていた。
それが失われたことに対する悲しみだけではなく、映司という少年に関わって彼のことを知ったからこその親しいものを失った悲しみがあった。
「そうか……」
「何を悲しむのです、王よ。無能が死んだだけですぞ」
肩書きだけで判断する貴族達は悲しむ王を理解できない様子であるが、特にそれを理解できない男……イシュタルは何故そこまで心を揺さぶられているのか不思議でたまらなかった。
彼の頭はエヒトで占められており、さながら中毒者である。
そんな奴に理解しろというのが無理な話だろう。
結果的に勇者が無能にも優しい人物であるという、どこから来たのか分からない評価が生まれ、天之河の株は上がるのだが一方で王族や一部の者達からは教会への不信感と天之河への信頼度・好感度が低くなったが。
だが無意味の人は気にしないでください。
例え、彼らが絵文字で乱闘してようが気にしないでください(震声)
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