陰の復讐者は空を駆ける 作:アルファ好こ好こ侍
やっハロー!!みんな元気?俺は元気元気!!
俺はライズって名前なんだけど、実は俺前世の記憶を持ってて、俗に言う転生者?ってやつなんだー。
でも俺転生特典?っていうの貰ってないんだけど、何かのミスかな?漫画とかの転生ものって何かしら貰ってるはずなんだけどな。赤ちゃんの時から俺ってばこの世界にいるから、存外苦労。いや苦労はしてるけど、転生特典あれば、ムカつくやつ全員ぶち殺せるのになって今更になって思うよ。
俺は前世は生まれた時から病気で床に伏せてたからさ、こうやって歩く事すら嬉しいんだけどさ。やっぱり憧れっていうものがある訳でさ。
みんな知ってるだろうけど、呪術廻戦の五条悟センセに憧れててさ。
凄いよね、強いよね。憧れるよね。漫画が好きだったからよくジャンプは読んでたけど、ジャンプの中でも屈指の最強格だと思うわけよ。
まさかこの世界に来て五条先生みたいになれるとは思わなかったけどね。いや憧れてたよ?憧れてたけどさ、まさか本人みたいになるとは思わないわけよ。
いや能力とかは違うよ?先生みたいな事が出来るだけ。身体はちょっと先生よりも酷い有様だけど、そのおかげで先生みたいな事が出来るわけだからさ。痛くて辛くてもある意味ラッキーって感じ。
俺がなんでそんな力を持ってるかはまた今度話すから。
じゃあねー、みんな。またどっかで会えることを楽しみにしてるよー。
次会える日は分かんないけどね〜。
王都に存在するミドガル魔剣士学園。大陸最高峰の魔剣士学園であるこの学園には、とある有名な話がある。
━━━━━曰く、最強。
━━━━━曰く、公式戦非公式戦無敗。
━━━━━曰く、変わり者。
━━━━━曰く、見た目完全な不審人物。
学園に所属する全員には周知の事実。何が最強だとか、詳しい話は噂諸々。誰もその話の概要を理解しているものはいない。
戦ったものはこう語る。
攻撃が当たらない━━━━━。
魔力操作が化け物━━━━━。
瞬間移動を使ってくる━━━━━。
手を抜かれた━━━━━。
ワンパンKOで終わった━━━━━。
どれもが尾鰭のついた話であろうと、聞いたものは思う。
そしてそれを実際見た時、見たものはこういう。
━━━━━あぁ。あれは間違いなく、
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
「━━━━━最強、最強。この学園に来てからそんな言葉しか聞いてないけどさぁ。ぶっちゃけどう思うよ」
「……と、言いますと?」
ミドガル王国のとある一室。王国第一王女である
真っ赤な髪をなびかせる彼女とは裏腹に、目の前の男はキメ細かい白髪であり、そこから下は地肌を抜いて真っ黒な姿。
「いやね?何を思って最強最強って呼んでるのか分かんないけどさぁ、
「……荷が重過ぎる。……まぁ、普通ならそう思うでしょうが、
「そりゃー誰にとってもそうでしょ〜?俺が最強だなんて言われると、なんか申し訳ないな〜ってさ〜」
「……申し訳ない?それ、嫌味ですか?」
「んん〜?なになに〜?まだ俺に勝てない事気にしてんの〜?いやいや〜、アイリス王女じゃあ俺に勝てないでしょ。勝てるとしても勝たせてあげないけど」
この男、基本的に自己評価は低い癖に他人には舐め腐るクソ野郎である。口を開けば飛んでくるのは煽り。思わず、アイリスも額にシワがよる。
「……自慢話は結構です。私、本当に。本当に、気にしてるんですからね!!」
「……え。何?いきなりヒス?やめてよね〜情緒不安定。こっちも何話したらいいかわからなくなるー」
「……っっっっ」
思わず隣に置いた剣の柄を握り締めて切りかかる所であった。しかし、それをした所でこの男にこの剣が届くはずも無く。この男の最強と言われる所以の一つ、
「……で、何が仰りたいのでしょうか?」
「いやーね?俺の程度で最強語ってたら、俺以上に強いやつ出てきた時言葉に困らない?って話よ」
「……はぁ、心底どうでもいい話ですね」
「あぁんっ?ちょっとちょっと~、王女様でも俺は平民同様パンチかますよ?最近は暴力的教育はダメだって世間的には問題視されてるけど俺には関係ないよ?」
冗談なのか本気なのか。しかし、アイリスがこの目の前にいる最強に向かってそのような口を聞けると言うことは、それなりにお互いに信頼関係が築かれているという事だ。今のは、お互いに冗談の言い合った会話である………筈である。
「……先生、この際だからはっきり言いますよ?いいですね?」
「え、何?」
「そもそもの話、先生よりも最強な人が現れた場合、それは間違いなく王国転覆出来る実力持ちという事ですよ?なんなら、この大陸全土まで被害が及ぶかもしれない。先生は一度も本気を出された事がないのは私も、誰もが周知の事実です。ですから、故に最強、なのです。先生は学園の教師として私含めて今も教育に御尽力されています。故にそれは好意的な面もあるという事です。考えても見てください、先生よりも強い存在が現れたら残るのは絶望だけですよ?先生が勝てないのなら誰も勝てません。言ってしまえば、これは保険なのです。最強という頭を作っておけば、我らに勝てない存在がいようとも、先生という最強がいるおかげで、私達はまだ安心していられるんです。心の平穏を保てるのです。だから先生っ、先生は甘んじてっ、その最強という言葉を受け止めてっ、堂々として頂ければいいんです!!いいですね!!??」
「え、あはい」
アイリスは生まれて初めて、敗北を味わった。他でもない、この目の前にいる通称
実力で、太刀筋で、技量で、何より生まれ持った才によって地面を舐める結果となった。アイリスは実力者である事は周知の事。学生時代に騎士団を設立した背景からも、それは十分理解出来る。これが実の妹との大きな溝を作っている事にまだ本人は気付いていないが。
性格はクソだが、実力はアイリスも十分理解している。アイリスの人生において、最も尊敬する人物は誰かと言われれば、間違いなくこの男の名を挙げるだろう。性格はクソだが。そして、性格はクソだが。
「……容姿と反比例してるこの性格さえ何とか出来れば」
「私の婚約者候補になれるって?」
「……そ、そんな事、言ってないですけど」
「実際話は来てるよ?俺が頷いてないだけで。面倒くさいじゃん、王族とか。しかも俺
「……それは、まぁそうなのですが……」
王族としての立場がある。血の繋がりがない者が王族入りしよう物なら、その者の生い立ちから家族構成、交友関係やその他の繋がりまでありとあらゆる情報が調べ上げられる。
目の前の男は最強だ。何故最強なのか、誰にも分からない。学園で教鞭を執る前は何をしていたのか、誰にもそれは知らされていない。こうやって、自分の力を過信せず、何を思ってか従順に職務を全うしているのが不思議な程。
いつこの王国を離反するか分からない。故に下手な行動を取ることが出来ない。この男に対して、王国は少しばかり優遇措置を取ってはいるが、男自身にもこの措置を貰う意味が無い為、何時でも国を滅ぼせる。
言わばこの男は大量虐殺兵器。実際にその力を振り出したのは
誰がこの男の手綱を握れるのか。答えは誰も握れない。
「なに?そんなに俺がいい?フフーン、困っちゃうなぁ」
「…………」
「……え、何その反応」
「……いえ、その……」
なんとも煮え切らない態度のアイリス。この男の発言が満更でもないという確信に近付く。
「………その、なんと言いますか……」
「……はい」
「……私、密かに自分よりも強い殿方と
「……マジ?」
「……まじ、です……っ」
いや可愛かよ此奴、と呟く男の言葉は、表情を見せないように机に突っ伏して悶えているアイリスの耳には届かなかった。
見た目良し……良し?その目隠しを取れば、良し。
スタイル、完璧。高身長イケメンとはまさにこの男のことを指す。
実力、最強。国家転覆なんて御茶の子さいさい。
性格、クソ。煽らなければ生きていけないのではないかと思うぐらいムカつく。
これにより実質プラマイゼロである。ただしアイリスにとっては自分より強い男にときめく為、未だプラス。プラマイゼロは世間一般的な女性の好みに該当する。因みに世の中にはモノ好きという者がいる為、アイリスのような価値観を持った存在は複数存在するものとする。
「……うぅ、どうして……。どうしてこんな人のことが………っ」
「……いや、流石にそれは俺も傷付くんだけど。こんなナイスガァイの事を好きになるのに後悔するって贅沢過ぎん?持ちつ持たれつ言うけど、王族だからってなんでも持っていい訳じゃないぞ」
「……そんなに言ってませんんんっ。……せめて、性格だけでもなんとかしてくださいよぉ……」
「お前ら散々俺の事クソって話してるの知ってるからな俺。誰が治すかよ俺縛られんの嫌いなんだよね〜」
「……うぅぅっ、お願いしますぅぅっ。
「……へぇ〜」
口元がニヒルに笑う。まるで道具を見つけた子供のような楽しげな笑み。それを見た瞬間、アイリスに悪寒が全身を走り出す。間違いなく失言であった。
「……へぇ、なんでも‥‥ねぇ」
この性格がクソであるこの男が一体何を言うのか。
日常的に無理難題をふっかけ、その足掻く様を高みの見物と言わんとばかりに観客目線で楽しんでくるこの男。アイリスのみならず、気に入った学園の生徒にはおちゃらけた感じで小馬鹿にしてくるこの男。
実力は最強だが、人の神経を逆撫でしてくる事に定評のあるこの男がだ。
アイリスの肝が冷える。そして紡がれるであろう言葉に覚悟した。
この目の前にいる男が何を言ってきてもいいように心積りだけは強く抱いた。
「……ふふふ、なんでもいいんでしょ〜?」
「……はい」
「男に向かってそんな事いっちゃあ駄目だよ?先生王族の性的秩序どうなってるか心配で堪らんよォ」
「余計なお世話です。早く、なんでも言ってみてください……」
「否定しないの?俺がどんな事言うのか分かんないのに、危機感捨てた感じ?」
「……別に、先生の事は一定数信用してますので。いつもお世話になっている先生へのお返しだと思えば、こ、これくらい……」
嘘である。好感度稼ぎだとか、アピールだとかそういうものでは断じてない。
アイリスは堅物であった。固い女なのだ。王族であるからこそ、民衆に誉れ抱かれる気高い存在であろうと幼少期から訓練されてきた。が、それは飽くまで通常スタイルの典型的な姿である。まるで借りてきた猫のようにこの男の前ではそれが崩壊する。
恋する乙女に隙は無い。嫌よ嫌よも好きのうち。なんでも私は尽くしますと遠回しに言っているようなものである。こうやって何でもしますと言えばこの男は、そこまで言うならと何でも言ってくるので案外アピしやすかったりする。
アイリスの妹君が見れば、
「……まあ、うん。元々アイリスには頼もうと思ってた事だし。ある意味拒否される事が無くなったっぽいから有難いかな」
「………え」
それは、つまりそういう事なのだろうか?そういう事なのだろう。ついに大人の階段登るのではなかろうか?
アイリスの頭の中が一瞬にしてピンク色に染る。その手の話題に
まるで茹でダコのようにボンッと一瞬にして赤くなる顔を隠すこと無く期待した目で目の前の男を見る。
アイリスの気持ちも知らないで、この男はさっきの笑みとは表情を変え少し仏頂面に変わっていた。
……もしかして勘違いなのだろうか?
「王女様さ、俺がなんでこの部屋来たか分かる?」
「……っえ?………え、と。確か何か大事なお話しがあると」
「そそそ。それそれ」
アイリスは絶望した。完全に勘違いであった。思わず目尻に涙が浮かんだ。
男は何故か半泣きになっているアイリス驚愕しながらも敢えて触れないように気付かないフリをしていた。
「………まあこれはある意味、お願いって言うよりも、警告、かな?大事な大事な………君の妹さんに関わる事なんだけど」
「っ!?え、は!?ど、どういう事ですか!?」
完全に自分の失態は吹っ飛んだ。事態が事態だけに冷静ではいられない。
妹、とは紛うことなきアイリスの妹である
「……最近みょーな組織が溢れててね。その内の1つが妹さんを狙ってる可能性がある」
「……その根拠は?」
「まぁ言っちゃなんだけど、俺ってば結構
「……その中の情報、だと?信用出来るのですか?」
「まぁこういう話に越した事じゃないけど、君と違って妹さんは立場的には弱い存在だ。学園生徒として、王族であるとは言え別段権力がある訳でも無い。君は私兵団持ってるからいいけど、妹君に後ろ盾は無いにも等しい。護衛の1人でも付けるべきだと俺は思う訳よ」
「……それはそうです。実際、お父様や
「ま、そりゃそうでしょ。学園生活で生徒が暮らす中に屈強な騎士が1人。騎士団は男しかいないから、女の子である妹君と2人っきりにする状況は頂けないし。かと言って騎士団以外に武力を持った人なんてそうそう居ない。不安要素だらけの状態ってのは、妹君も分かってた事だろうさ」
「……耳の痛い話しではあります」
この男の言うことは正しい。
私兵団を持つアイリスは、所属する騎士に言えば瞬時に動く。動かせる駒が多いのだ。故に自衛も攻撃も可能。王女としては最も時期国王に近い存在がアイリス。故にアイリスに手を出す輩はかなりの大バカである。
対してアレクシア。アイリスのように私兵団を持っている訳でもなく、振りかざせる権力がある訳でもない。言ってしまえば、無防備で戦果の中を歩く様なもの。
巷では強い魔力を持つ
だが現状、学園生活が始まって既に2ヶ月余。アレクシアへの護衛体制は出来ていなかった。
「……話は分かります。分かりますが、何故その話が先生から?」
「え?ここまでの話の流れで思い付かない?護衛してあげようかなって」
「はぁ……護衛。……護衛?えっ、護衛!?先生がですか!?」
あまりの発言にアイリスは何度も聞き返す。
当然だ。この男がそのような事を提案するとは思わなかったからだ。アイリスは信じられないと言った表情で目の前の男を見る。
つまりアレだ。妹のアレクシアは、日中この男と一緒という事である。アイリスは激怒した。同時に羨まゲフンゲフン……嫉妬ゲフンゲフン……駄目だと否定する。
可愛い妹をこんな男と四六時中一緒にさせる訳には行かないと。この男は絶対駄目だとアイリス中で強く意識される。その点自分なら大丈夫だという訳の分からないフィルターがかかっているが、そんな事アイリスには
「だ、駄目です!!先生と生徒ですよ!?ダメに決まってます!!」
「……いや、誰も俺がやるって言ってないけど?頭大丈夫?」
「……え、え……?」
「なーんで俺がそんな事しなきゃなんないのさ。やるのは俺が
「……し、んらい……?」
ダブルショーック!!アイリスに落雷が二度落ちた。
的外れな回答に、この男が
深く心に傷を負ったアイリスの事はつゆ知らず、男は右手の指を2本立てるとチョキチョキと指を動かした。
「取り敢えず生徒を護衛に回す理由は分かるでしょ?」
「……はい。木を隠すなら森の中、生徒の中に紛れ込ませれば違和感無く護衛が出来る。……しかし分かりません。それならば、生徒に紛れ込める様な背丈やガタイの騎士を選出すれば宜しいのでは無いのでしょうか?」
「……まあ普通はそう思うよね。けど駄目、テストなら半分ぐらいの点数。もっと勉強しなよ頭硬いぞ?」
「……うっ、気にしてる事を……」
「生徒の間違いを正すのも教師の仕事なのよ〜」
ぶっぶーと腕を交差させてバツ印を作る男。小馬鹿にするような笑みを浮かべる男に思わず手が出そうになるアイリス。
「……さっきも言った通り、まず妹君の身柄を狙われてる可能性。それはどこにあるか分からない。騎士団の中にその手の組織に染まった輩がいるかもしれない。そういう奴が暗躍して行動を起こすのは目に見えてる。だから選ぶにしてもこれはまず第一候補から外す選択をしなきゃならない。もしこれ以外の方法が無いのなら、それを加味して対策を考えればいいけどね」
「……成程、疑うべきは外だけではなく中も……」
「その点生徒の方はこっちに比べて可能性は低い。生徒という枠組みで、騎士団よりも明らかに実力の差がある。実力が分かっているのに、敢えて弱い方に頼るなんて、拉致を完遂させたい組織からすれば確実に成功する方法が欲しいから選ばないだろうしね。選ぶとしても、拉致に使える力とかを持っていれば話は別だけど。それに、生徒の方だと数が多い分目眩しが効く」
「目くらまし?」
「騎士団だと、個別に指名されて妹君の護衛任務を伝えたとする。極秘任務だと言っても、呼び出しくらった時点で、何かあるって内通者がいた場合それを察知させる事になる。その点、生徒は特に気にされる事も無い。俺が先生として生徒を呼び出す事は別段珍しい事じゃないからね。誰が何の話をしていたのかなんて聞いてくるやついたら明らかにその手の話をした後なんだから怪しむだろ?そういう手間もあるから、生徒の中から選出するべきだって俺は思うね」
成程と、アイリスは相づちを打つ。確かにこの男が言う事には説得力がある。
アイリスとって、この王国を守る騎士団は誇りであり、信頼出来る組織である。しかし故にそういう裏切りがある可能性がアイリスにとっては考えつかなかった。
疑わしきは罰せず。信頼や信用も抱くのは構わないが、時にそれを過信してはならないと。それはこの男から学んだ事だ。
腹芸が得意では無いアイリスは、よく頭が固いと男に言われる。それはアイリスも理解している事ではあるが、如何せん彼女は脳筋思考寄りであるため、取り敢えず考えるより動け精神で生きている。
男からは猪女と呼ばれてバカにされているが、この世界に猪という名前は
しかし、そうなると問題となるのが
問題となるのはその危険性。相手がどれ程の実力か分からない故に、生半可な実力者では護衛は勤まらない。少なくとも、
「……では、生徒の中で選出するとして、何方を指名されるので?」
「……うん、取り敢えず俺が紹介出来る生徒は2人。1人は推薦で入った
「……はい、悔しいですが……」
「……プフっ、歳下に為す術なく負ける騎士団長様が居るんだって〜。ハハハッ、何処にいるんだろうな〜」
「……キッ、貴方のっ、前にっ、居ますわぁよぉ!!!!!」
無駄だと分かっていても、アイリスは傍にあった愛剣を抜刀。丸腰の相手に武器を振るうのはご法度。しかしアイリスはお構い無しにその剣先を男に向ける。
しかし、男に剣先が触れそうになった時、剣先の動きが
「……ちょっとなになに〜?問答無用で切り付ける辻斬りにでもなったわけ?」
「うるさいですわ!!いい加減その生意気な顔に傷をつけたい気分なんです!!」
「……いやぁ、君には無理っしょ。
去年の武神祭、アイリスは決勝戦で
しかし、それは完全に裏切られる。試合は一方的だった。
結局、顔を青ざめた国王が試合の中止を要求。
アイリスは涙した。実力の差があるにも関わらず、その実力を認める事を許されなかった
それからというもの、アイリスは
「……ま、王族の人間の気持ちなんてあんまり考えた事ないけど、あーゆー見栄張るだけの政治じゃ、いつか
「………」
「君が頑張った所で大して国は変わんないよ。気にすること無い。気にしたところであの日が帰ってくるわけでもないし、武神祭の優勝者が変わる訳でもないんだから。私コネで勝ちました〜ぐらいの気持ちで堂々としてた方がまだいいと思うけどな。……まあ、コネも実力の内って言うけど、それはそれで弄りがいのある勝ち方だよね。やっぱバックが強いと強いわ〜。勝てないわ〜。勝敗すらも影響与えてくるんだも〜ん。誰がやったって勝てっこないよー」
「慰めて下さってるのかそれすらも弄りなのかどっちかにしてください!!一言二言余計な言葉が多いんですぅ!!」
「……まあ俺も聞いたけど、
「……ぐぬぬぬぬっ。………でっ、もうっ、1人はっ、何方ですのっ!?」
最早八つ当たりである。いや八つ当たりでは無いか。ストレス発散である。
生じ当たらないからという理由に漕ぎつけて無茶苦茶に剣を振るう。机や床に当たらないのが不思議なぐらいには振り回している。
まるで見えない壁があるように、剣が当たった瞬間男の全身に波打つような波紋が若干見える。しかしその波紋は途切れる事が無いため、この男の体全体に隙間なく見えない壁が広がっているのは明白だった。
「もう1人は
「……え?
「そそそ。あの子俺名義で学園生活送ってるの知ってるでしょ?父親代わりとしちゃ、新しい
原因は
その後、学園に通う予定であった為にこの男が身元引受け人となって暮らしている。
「……親バカですか?」
「ノンノン。これはお節介、もとい優しさなのさ。辛い過去を背負いながらも生きる
「……まあ、それは疑ってませんけど」
この男が推薦するのだから、実力はあるに決まっている。それにプラスして、自分の手が入っているからこそ紹介したのだろう。
この男が手を入れたというのなら、実力はさらに磨かれているはず。生半可な実力で仕上げるわけが無い。
アイリスもそれをわかっているので、深くは考えてはいない。しかし、不安材料はまだある。
「……ですが先生。仮にというか、間違いなく生徒よりも実力が高い刺客が来ることは明白。大事な生徒を命の危機に晒すというのは駄目なのでは?」
「まあそうだよね。ぶっちゃけ
「……気を張るって、確かに……先生の察知力は度肝を抜かれますが。感?直感?私にはなんとも判断出来ない要素です……」
「妹君が危険に会わなきゃいいってことでしょ?大丈夫大丈夫。全て
「……護衛の件は分かりましたが。……アレクシアだけでなく、他2人の生徒にも危険が及ぶのであれば……流石に……」
「OK。了承ね。じゃあ話つけてくるから」
立ち上がった男は、そのままスタスタと部屋の扉まで歩いていく。あまりにも滑らかな一連の流れに思わずアイリスはワンテンポ制止の声が遅れる。勢いよく椅子から立ち上がりアイリスは必死の形相で待ったをかけた。
「……え、っちょっ!?待って下さい!!私了承なんてしてませんっ!!」
「問題ナッシーング。じゃあ、バッハハーイ」
愉快な笑みを浮かべながら、男はバタンッと扉を閉める。スタスタと廊下に響く足音が遠ざかるのを放心しながら耳にしたアイリスは、その音が聞こえなくなると溜息と同時に椅子に座り込む。
あの男の相手は心底疲れる。アイリスは今日一日で一番疲れたと重い表情で腕を組んだ。豊満な胸がむにゅりと形を変えるが、アイリスはお構い無しにさらに体勢を変える。
「……お腹空いたな」
ある意味現実逃避に近かった。しかし、空腹であるのは仕方ない。既に時刻は昼時を過ぎている。昼食を取るには遅すぎる時間でもあった。
「……また、先生の事……誘い忘れた………」
四の五の言う割には、自分の恋愛感情には真っ直ぐになるアイリスである。いや真っ直ぐか?本人に伝えられていないのならそれは正直になれていないということか。
つまりまだアイリスは恥ずかしがっている。共に食事をしたいと願う反面、羞恥心が何処かで待ったをかけてくる。
いつか、いつかとアイリスは心に決め、取り敢えず今からご飯を食べようと部屋を後にするのだった。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
「━━━━━
物陰から現れる学園服を着たふたりの女子生徒。両者ともに暗闇に紛れるほどの黒い髪を靡かせ、暗闇の中でも輝く赫瞳と光を反射するアーモンド色の瞳を麗せた美少女は、それぞれその言葉に耳と心を寄せる。
「話は聞いた通り。アレクシア王女の護衛の任はこれより開始する。
「━━━━━かしこまりました、
「━━━━━ハイハイ、やればいいんでしょやれば」
従順に返事を返すのは
「……そう臍曲げないでよ。大事な
「……じゃあ私じゃなくても良かったんじゃないですか?
「……そうは言うけどね、
「何故ですか?」
「君が
因みに
これに
結局、当の弟は
話を戻すと、何故アイリスよりも強い事がアレクシアの心を開く事に繋がるのか。男は言葉を続ける。
「アイリス王女の剣は才能だ。才能有りきであの剣が出来ている。対して、アレクシア王女にはそれが無い。ああ見えて彼女、結構努力家なんだよ?そこで
「……それはまあ分かりますけど。でも実力の差があり過ぎません?目標の上の人が近付いて来るとか、私としては嫌なんですけど」
「大丈夫でしょ。あんな反則負け未だに根に持ってますっていって近付いていけば大丈夫でしょ」
「それ絶対喧嘩売って来てるって判断されません?」
「ははーん?」
何言ってもダメだ此奴、と、
困っているのは弟との戯れの時間が減る事だけである。
必然的に弟が近くに感じられる1年フロワに行けるので少し不満では無いのだが、やはり放課後に弟と戯れる時間が減るのでものすんごい不満を抱えていた。
「
「はいっ、
「………親バカかよ」
不満顔が更に不満顔に変わる。明らかに自分よりも対応が柔らかい。理由は分かってはいるが、いざ目の前でされるとムカつくものはムカつくものである。
「……まあ取り敢えず頼んだよ。バックアップはちゃんとするからさ」
「お任せ下さい。
「……まぁ、程々にやりますよ。この任務終わったら、ちゃんと埋め合わせして下さいね」
「……ホント自由だね、君」
「自由で結構です。どうせすぐに仲良くなれますから。今のうちに私のご機嫌取りでも考えといてくださいよ」
後日、違う意味で
シータ━━━━━クレア・カゲノー (多分原作にはいなかったはず)
ニュー━━━━━ニコレッタ・マルケス(原作と同じ)