陰の復讐者は空を駆ける 作:アルファ好こ好こ侍
「━━━━━ア、ア、ア……アレクシアおうにょっ」
「━━━━━ す、好きです……!!!」
「━━━━━ぼ、ぼ、僕と付き合ってくぁさぃ……っ?」
「よろしくお願いします━━━━━」
「━━━━━貴方のような人を待っていたわ」
「━━━━━え?」
「━━━━━はぁ?」
「はぁあああっ!?!?!?!?」
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今回護衛の任務。どうやら幸先の悪い状況になってしまった。
時は遡ること昨日の夕方。
学園の広間に集まる人集りの中心に、アレクシアは男子生徒の前に立っていた。アレクシアはその容姿故か、入学当時からかなり告白されていた。クレアも負けず劣らずと告白はされてきたが、武神祭の
いつもの事かと思いその場を後にしようとしたのだが、ふと視界の端に男子生徒の姿が入る。クレアはなんとなしにその男子生徒を見て視線を切ったのだが、その男子生徒があまりにも見た事のある人物だったので驚愕の表情と共に二度見した。
なんとそこにいた男子生徒は、クレアの愛しい弟である
何してるんだという疑問も置き去りに、シドはおもっくそ吃りながら愛の告白をアレクシアに捧げる。
クレアは思った。流石にうちの弟では無理だと。シドは私ぐらいしか婿相手がいないのだと。
クレアの弟では、アレクシアの相手は到底務まらないと弟贔屓するクレアでも思う事実。高嶺の花と言うやつだ。仕方の無い事だとクレアは思う。
結果は目に見えていたので、後でどうやって慰めてやろうかとクレアは考える。……のだが、クレアの考えは全く持って逆の流れに突入する。
なんとアレクシアがそれに了承。そのまま手を繋いで歩き出したのだ。
これにはクレアも大絶叫。なんでだァと叫び、驚愕のあまりその場でヘドバンをかますなど奇行をしてしまう程に情緒が乱された。
その後のことはクレアは覚えていない。覚えているのは、いつの間にか
幸いな事に次の日は休日だった為、一向に布団から出ることの無いクレアを無理やり引きずり出す事もしなくていい事が救いと言っていい。もし無理やりやろうものなら、間違いなく争いに発展してしまうだろう。
現在お昼時だが、クレアは一向に布団から抜け出そうとしなかった。近くで耳を立ててみれば、「うーうー」と唸り声が聞こえる。
「━━━━━失礼するわね」
部屋の扉が開き、部屋の中に2人足を踏み入れる。1人はこの家の家主であり、クレアやニューの所属する組織、
2人ともクレアの様子を確認しに来た様だ。
「……はぁ、全く。こんな調子じゃ作戦遂行は難しいようね」
「まあまあ。
「……貴方は楽観視し過ぎなのよ。既に作戦は始まっているんだから、きっちりこなしてもらわないと契約違反になるのは彼女の方なのよ?」
シャドーガーデンに所属するメンバーは、元々
しかし、これは世間一般的には知られていない事だが、
これが出来るのは、この場にいる
変わりと言ってはなんだが、
この場にいる
その場合シャドーガーデンの情報漏洩を防ぐ為、かなり厳しい契約を結び監視役を設けて、違反次第即座に口封じを兼ねて
クレアは数年前、
その場を制圧した
「……ここまで愛情が深いと流石に」
「まあまあ。自己の愛は多彩だよ。例え実の弟の事が大好きで大好きで仕方ないのだとしても、俺達はそれを寛大な心で祝福してあげなきゃ」
「……あの、父親に対する愛も、応援してくださいますか……?」
「ははーん?」
「勝手に現実逃避しないで。貴方が言い出したんでしょ」
ニューの熱い視線がリアルを囲う。幾ら
しかしと、アルファは改めてクレアの様子を伺う。
表情は見れないが、まあ想像するだけでも分かる。心身共に窶れているだろう。問題は、この状態からどうやって立ち直らせればいいのかである。基本的に弟命なクレアは、機嫌取りに弟ワードを出せば大抵何とかなった。しかし、今回に限っては間違いなくNGワードだろう。傷を更に抉ることになる。早期回復を目指すに当たり、それは避けなければならない。
「……何かいい案はないかしら?」
「……難しいよね。ガーデン内で一番クレアがご機嫌取るの面倒くさいんだよなぁ」
「貴方が言えば一発なような気がするのだけど?」
「クレアにはあんまし効かないよ。他の子達が異常なだけだって。よくもまあこうも従順になってくれたもんでねぇ」
「立場的には
「じゃあアルファは
「……夫婦、悪くないわね。じゃあ
「おいおい子供の事はお前に一任してる筈だろう?俺は仕事で忙しいの」
「……早速家庭崩壊に繋がりかねない発言ね。世の中のお嫁さんが可哀想で仕方ないわ」
亭主関白とは如何程に。アルファも思わず眉間にシワがよる。リアルの発言がお遊びである事は理解してはいるが、いざされると心底腹が立つのだと身を持って味わった。
まあこの男の場合、例え冗談に言っていても本当に丸投げしてきそうな感じがあるので、アルファは今のうちに対策を立てておくことを推奨しよう。
「……おーいクレア。腹減ったろー?ご飯食べよご飯〜」
ぽふぽふと恐らく背中であろう山なりになった布団の上をぺちぺちと叩くリアル。もぞりと若干の動きはあるがその後すぐ動かなくなってしまった。まだ出てくる気配は無い。
「ガンマにお前用で好きなもん作らせるからさ〜、機嫌直してくれよ〜」
例え極度のブラコンであろうと、クレアも1人の少女。ミツゴシ商会に並ぶ品は学生にとってはお小遣いを使っても高額過ぎて出す気が失せる品が多い。化粧品、美容品がまさにそれ。
ミツゴシ商会は、
例えば若者の育成。地方ともなれば、職は限られてくる。町村の警備、農業事業がその大半を占めるのだが、それ以外をしようとなればかなり限られてくる。大きな町に行こうにも、移動手段が限られてくる。地方で生まれた若者達は、やりたい事も満足に出来ないのだと、ミツゴシ商会はそこに目をつけた。
ミツゴシ商会は契約した町村の若者に対し、多額の給付金を支払っている。奨学金制度とも呼べようその給付金を配布し、町村に住む若者達にチャンスを与えるのだ。その他にもインフラ整備をし、契約した町村との間に馬車を通して公共機関を通して物資の供給をスムーズに行えるようにし、町村からは資金の報酬として作物の譲渡を頂戴している。
また、作物に関しても力を入れており、農業が盛んな町村には追加で投資を行い、ブランド野菜の製作に乗り出した。それを物資として譲渡してもらい、ブランド品としてミツゴシ商会が販売する。このブランド野菜は中々の好評で、普通の野菜に比べても売上幅が桁違いである。これによって起こるブランド品ではない野菜農家の収入の低下にも対策を行っており、ミツゴシ商会の腕利きの料理人たちが施設内にあるレストラン等で加工、調理。余すことなく、そして損を限りなく少なくする経済の流れを作った。
美容品、化粧品は王室御用達の物が殆どで、一一般市民では中々に高額な物が殆ど。それをミツゴシ商会は誰にでも使用出来るよう独自の製法と値段で販売。普通高級品が安くなって売られていれば人は疑心暗鬼で疑いを持つのだが、そこはミツゴシ商会。抜かりは無い。
新作発表の際は、その商品のターゲット層約100人に先行お試し期間を設け、ビフォーアフターを公開。商品効果と真意の証明を行うのだ。そんなわかりやすいレビューがあるのならば、
シャドーガーデンに所属するメンバーは、月に一度好きな化粧品等を選べる為、拘り抜いている者以外はかなり満足いく物なのだが、
クレアはそのシミひとつない透き通った白い肌を保持する為に、美容という存在全てを理解しようと努力した野心家だ。イプシロンがクレアよりも先に
そんな美容ガチ勢であるクレアに、ミツゴシ商会を統括する
ピクピクと、少しずつだが動きが見える。しかしここは焦らない。ゆっくり、慎重に釣り糸を手繰り寄せなければならない。
「最近さ、美容にいい食材についてガンマと話してるのよ。ガンマも結構ノリノリでさ、あんまし健康食品ってのは俺好きじゃ無いんだけどさ、無添加無香料の完全ナチュラルな食材しか使わない美容食品ってのを制作中でね。よかったらクレアにその研究に携わって欲しいなーって」
「………」ピクピク
「シミとかシワとかってさ、ご飯食べるだけでも綺麗になれるもんなのよ?そうやって布団に引きこもってちゃ〜、お肌に悪いぞ〜?ちゃんと日光も浴びてご飯食べなきゃ美容に力を入れてるなんて言えないぞ〜」
仰る通り。この世界ではあまり化学という分野においてあまり開拓はされてはいないが、日光を浴びる浴びないではかなり身体の体調を左右してくる。
これはリアルが
健康になるには、やはり朝起きてご飯を食べて日光を浴びて運動をして寝る。この一連の流れがオーソドックスであり、揺るぎない健康法の原点である。
「……そういえば、クレアってお風呂好きでしょ?この前やっと俺の念願の
「………それって」
「んん?なになに?」
「……それって、ニューもやってる?」
ばっとリアルとアルファの視線が、部屋の隅っこに控えていたニューに集まる。思わずニューは困惑と恐怖を体験した。目が、目が何故かガチである。
「え、あ、は、はいっ。わ、私も御一緒させてもらっております!!」
リアルと
「……それって、すごい……?」
「す、凄い、です……」
「……ピチピチ?」
「……はい、ピチピチ……所か、もっちもち、です」
自分の肌を魅力的に震わせるニュー。その艶とハリ、柔らかそうなもっちもちな肌をクレアに見せつけ、未だに体験してないのかと煽るような表情でクレアを見下げる。嫌な所まで
「……でももう、弟に見せる必要無くなった……」
「……うっ、そ、それは……」
まさかの反撃。いや、布団を被るクレアにはニューの表情所か、何をしているのかも分からないため、純粋に口にしたのだろうが、ニューには少し手がつけにくい返答されて恐縮してしまう。
あとは任せたと言わんばかりの表情に、リアルはマジかと内心毒づいた。それを言われれば、リアルでもなんて返したら良いか分からなくなる。
クレアにとって、美容とは最愛の弟に綺麗で可愛い自分を見せる為の手段と言っていい。その相手が居なくなったのなら、確かに意味は無くなってしまう。
自暴自棄になるのも当然だ。今まで何のために頑張ってきたのだという話になる。努力を知っている全員からすれば、何も言えないのは当然だ。
「━━━━━本当に、それでいいのね?」
しかし、そこでアルファが口を開いた。どこか挑戦的で、しかしどこか蔑んだような音色。リアルは思う。アルファはちょっとキレてると。
「貴方の努力はよく知っているわ。勉強熱心で、貪欲で、シャドーガーデン内において、貴方程の努力家なんて方て手間数える程にもいないわ」
努力娘と言えば、ガンマ、イプシロンと名を挙げるものが多いが、その二人についで名前を出されるのはクレアである。
別段ほかのメンバーが努力してないと捉えかねないが、この3人の努力が異常なだけである。そこだけは分かって欲しい。
「だから言うわ。貴方は
アルファが少し感情的に言葉を口にしている。
普段のアルファでは考えられない行動に、そして初めて見るその姿にニューは思わず怖気ずんだ。
「簡単に諦めきれるのなら、自由にすればいいわ。お金と時間を棒に振るったことに後悔しなさい。でもね、貴方は
アルファはシャドーガーデンの設立に貢献している。初期勢、古参勢。様々呼べるが、リアルを除いて
間に合わなかった者がいた。燃やされ、公開死刑され、ゴミのような扱いを受ける同士達を見てきた。どのような感情でその光景を見ていたか分からない。気が付けばその場にいた関係者全員を皆殺しにしていた。だがそれで
何度も謝った。何度も嘆いた。彼女がシャドーガーデンの母と呼ばれるのは、
慈悲深い女神とはまさにアルファの事を指すと、イプシロンはそう語る。
それ程までに、アルファは仲間意識が強い。絶対的な意識の強さだ。
故に、クレアが弱っている姿なんて見ていられなかった。クレアの事を知っているからこそ、諦めて欲しくなかった。
リアルはそれを分かってか、口を出すことは無い。対応に困ると言っておきながらも、アルファはちゃんと皆のことを分かっている。血の繋がりは無いが、皆家族同然の仲なのだから。だからリアルは敢えて口を開かず、ただ見守るだけに徹した。それが最善であると、何よりも分かったからだ。
「諦める事が出来る人だなんて思わなかった。チャンスが無くなったわけじゃないのに、ミスミスその機会すら自分で潰そうとする人に、もうこの作戦は務まらない。大至急、誰か他の人員配備を━━━」
「━━━━誰が、諦めたですって?」
勢いよく布団が宙を舞う。その下からクレアが目元を赤くしながらも、鋭い目付きと怒りに満ちた形相で、アルファに詰め寄った。
「……撤回しなさい。私はまだ諦めていないわ」
「……そうかしら?あまりそう見えないけど?」
「この顔が何よりの証拠よ!!私はまだ自分磨きにもシドへの思いも切り捨てたりなんてしない!!」
「……へぇ、そう。でも、もしかしたら弟さんはもうアレクシア王女とよろしくやってるかもよ?」
「そんなこと知ったもんですか!!シドだろうと他の男だろうとなんだろうとっ、私の魅力で堕としてやる!!メロメロにしてあげるんだから!!」
「……ですって、リアル。
「いやもうめちゃくちゃメロメロだよ〜。美の女神とはまさに、まさに……いや、それは言い過ぎか」
「何冷静になってんのよ!?そこは私が美の女神って讃えるところでしょ!!讃えろ!!そして推せ!!すこれ!!」
「……いや〜、俺の中の美の女神って、病室で見たあの看護師さんだからなぁ……。あの時の初恋は忘れられんよ……」
「ちょっと。その話、詳しく聞かせて貰えないかしら?そんな話、私、聞いた事ないんだけど?」
「うわぁー、助けて〜ニュー」
「……ごめんなさい無理です」
打倒アレクシア目標アレクシアと、復唱するクレア。何とか機嫌は治ったみたいだが、何故かアルファの機嫌が悪くなった。病気の感染か何かなのだろうか。
何故か使い物にならなくなったトップ2人を置き去りに、ニューはクレアの顔面に濡れタオルを叩きつけ、次いで美容グッズを机の上に配置。ヒョイっと椅子に座らせてメイクの準備を始める。
「……はい。それじゃあ綺麗にするからね」
「……んんっ、宜しくお願いするわ。この後あの女に宣戦布告するんだから、しっかりとメイクしてよね」
「……ふむ。やはり、宣戦布告と言うのであれば、厚化粧で姑感を出すのが1番ですね」
「ちょっと待って私そこまで面倒くさい女じゃない」
「鏡見てから今の発言してくださいません?」
その後、しっかりとメイクされたクレアは、早々に部屋を飛び出し、町中を探しまくってアレクシアを発見。宣戦布告を叩きつけるのだった。
「━━━━━アレクシア王女っ!!私は貴方とシドのお付き合いを認めない!!シドをかけて決闘を申し込む!!」
「━━━━━え、はい???」
仲良くなる作戦のはずが、私認めません作戦へと変更し、まあ当初の目的通り接近する事は出来るようになったので、ある意味良しである。
「━━━━━私はっ、ぜぇったいにっ、認めてあげないんだからねー!!!!!」
アレクシア「何だこの人…………」
シド「うわぁー、ねぇさんうわぁー………」