陰の復讐者は空を駆ける   作:アルファ好こ好こ侍

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大変長らくお待たせしました。これからちょくちょく投稿できたらなと思います。


時間かけそうなので物語を一気に動かします。


動き出す

 

 

 

 

 

 

 

ペットとの戯れは、()()()()()にとって一時の安らぎになっていた。

徐に()()()()を投げてみれば、這いずり回る様に追いかけては()にしまいむ滑稽さに笑い、()()()()を見せればはち切れんばかりの嬉しい気持ちを見せるペットに笑い、()()()()に釣られて全身余すことなく踏みつけられても気にすること無く媚び売るペットに笑い━━━━━。

 

 

アレクシアはここ最近になってからというもの、ストレスを笑って発散出来るようになっていた。憂鬱だった、変化の無い日常から一変、毎日が笑えるぐらい楽しい時間を過ごせていた。

 

ペット、こと()()()()()()()。名前で分かるように、彼は人間である。

しかし、今の彼に人間としてのプライドは無いのか、無い尻尾が見えるぐらいにブンブン振り回してアレクシアに媚び這い回る。その様子はまさに従順な()()のよう。

しかし可愛い()()とは違いその姿は無様極まりない。一心にその行為を喜んでいるのだ。手の付けようがないし救いようが無い。

人の趣味にとやかく言うことでは無いが、もう少しマシな事は無かったのだろうかと考えてしまう。

 

まあ双方共に利害関係が一致している?ならば言うことは無い。

アレクシア本人の知らぬ間に、サディストとしての苗が芽吹き始めているのは内緒の話。

 

 

その関係が続いて早数日。()()()との戯れは放課後に行われる為、日中は授業以外は暇を持て余すアレクシア。

王女という立場である為中々友人がつくない彼女は、基本的1人で行動している。

話しかけてくる生徒もいるがごく稀。喋りかけてきたとしても、特に当たり障りのない一言二言の言葉のみ。

交友関係ほどクソなものはないとは本人談ではあるが、同じ立場であるはずの()()()()()()の王女である()()()()()()()()は友好関係にとても恵まれている為、立場が悪いのでは無く努力が無いから悪いのでは無いのかと思うのだが、それは言わぬが花。本人が気付いていないのであれば、放っておくのがいいであろう。

 

そんな友好関係が乏しいアレクシアに、珍しく声をかける存在が現れる。

 

 

「━━━━━アレクシア王女、少しよろしいでしょうか?」

 

 

声の先。最近()()()として可愛がっている()()()()()()()の姉、()()()()()()()()がそこにいた。

 

ピクピクと眉間に青筋を作り、表面上は笑顔で接しているように思われるが、その実顔は全く笑ってはいなかった。

 

アレクシアはその表情を見てふと思う。━━━━━終わった、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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人の幸福は長く続かない。次にくるのは必ず不幸だ。

アレクシアが感じているのはまさにそれだった。()()()と戯れる日々を送る筈が、目の前に現れたのは親。学園中で有名なブラコンのクレア・カゲノーその人。

 

この上なくヤバい存在であった。アレクシアが会うには気まずくて仕方ない存在だ。

クレアが愛してやまない()は今、目の前の女に犬として扱われている。それを知ったクレアは、というよりこの表情見る限りは間違いなく知られている可能性があるが、一体どんな行動をしてくるのだろうか。

 

 

「━━━━━」

 

 

見た目は微笑みながら、しかし薄らと開いた瞼の下から覗く緋色の瞳は冷たい色を孕んでいる。

何故何も言わないのかと、こちらをずっと見つめている理由はなんなのかと。

頭の中で様々な疑問が浮かぶが、今目の前の存在に一言一動でも間違えれば狩られるのは確実だと、青ざめた表情でアレクシアは悟っている。

 

 

「……えっと、あ、貴女は━━━━━」

 

「随分と最近楽しそうですね?」

 

 

アレクシアの背筋が一瞬で凍りついた。逆鱗に触れている。静かに激怒しているのだこの上級生(ブラコン)は。

 

 

「……な、なんの事か━━━━━」

 

「それに、最近私の愚弟が()()お世話になっているようで」

 

 

背筋を猛吹雪が走る。この少しずつ追い詰めていく感じ、アレクシアはやばいやばいと内心慌てふためきながらキョドっていた。

流石に王女だからといって男爵家の長男をペット扱いは不味かったと、改めてアレクシアは事の重大さに気がついた。

 

 

「……いえ、あの……お、お世話というか━━━━━」

 

「あの愚弟にあんな趣味(愛玩動物)があったなんて……私、全然知りませんでしたわ。ええ、全く、これっぽっちも」

 

 

いやーっ!?!?

アレクシアは内心叫び続ける。確実に追い詰めてきている。

煌びやかな笑顔が、内側に溜め込んだ怒りを醸し出す真っ赤な瞳と相反して、とても言葉では言い表せない恐ろしさを感じる。

 

 

「あ、いえ。それはわ、私の━━━━━」

 

「まさか一国の王女ともあろうお方が、同級生を買収して愛玩動物としてこき使うだなんて悪趣味、持ち合わせているわけありませんわよね?」

 

「え、え?!そ、それはも、もちろ━━━━━」

 

「であれば、アレクシア王女はうちの愚弟の悪趣味、に付き合っていただいてるわけですよね?うわぁーアレクシア王女はなんて心お優しいのかしら。同級生の、しかもパッとしない地方の男爵家出身の人間に寛大な心で尽くしてくださるなんてまさに真の王女と言えますわね。えぇ、ええええ。そんなよく分からない気色の悪い趣味に表立って嫌悪感を出さず、自分の気持ちを押し殺してちゃんと気味の悪い趣味にお付き合いしていただくとは。姉として身内として今すぐにでも消し去りたい汚点であると同時に、アレクシア王女には感謝の言葉を伝えなければいけませんわ。本当に、本当に。愚弟の趣味に付き合ってくださってありがとうございます。どうぞ是非その清く優しい御心をうちの愚弟以外に向けてください。そのうちアレクシア王女の清らかなお身体が穢れてしまいます。どうぞ今日から、いえなんなら今からでも。今すぐうちの愚弟にもう金輪際あんな事はしないと、お伝えしてきてください。良ければ、私も同行致します。そうすればあの愚弟が駄々こねても私がゴリ押ししてやめさせますので大丈夫ですよ。さぁ、参りましょう。善は急げですよ。……おや?どうされたのですか?もうアレクシア王女が気にかける事は無いんですよ?だってアレクシア王女はうちの愚弟に付き合っていただけですもんね?付き合わされてただけですものね?そうですもんね?アレクシア王女の意志とは関係無く、ただアレクシア王女がお優しいから付き合っていただけですものね?あれ?あれあれ?どうされたのですか?そんな苦虫を噛み潰したような顔をして。何から申すべきことがあるのですか?どうぞお話ください。アレクシア王女には大変、た・い・へ・ん、お世話になっていますので。……あれ?まさか?もしかして?アレクシア王女?うちの愚弟に付き合っていた、のではなくうちの愚弟を付き合わせていたんですか?いえいえ、いえいえそんな。そんな馬鹿な話ありませんよね?だってアレクシア王女ですよ?心優しいアレクシア王女がそんな趣味をしてる訳ないですもんね。あははっ、笑わせないでくださいよ。そんな悪趣味を神聖な学校で行うなんて、本当だったら皇室始まって以来の汚点じゃないですかやだー」

 

 

「………もう、勘弁してください……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「━━━━━おやおやこれはこれは」

 

 

ライズ━━━━リアルはシャドーガーデンの拠点である、()()()()商会本店の内廷に居た。

ミツゴシ商会の従業員、もといシャドーガーデンの構成員からなる者たちに案内され、来賓室に入る。豪華な装飾と高級感あるインテリアが備わった部屋に、リアルは珍しいものを見たという表情を浮べる。

 

 

「━━━━━久しいな、リアル殿」

 

 

筋骨隆々な身体を正装で纏った長身の男、子爵である()()()がソファに座っていた。

 

 

「珍しいね。顔を出して大丈夫?」

 

「ああ、問題ない。色々と話したい事もあったからな」

 

 

オルバ子爵はシャドーガーデンに出資する貴族の1人である。()()()()となってしまったオルバ子爵の娘、()()()を治療したことによって縁が出来、教団撲滅を掲げると共に悪魔憑きの治療が可能という世界の実態を揺るがしかねない事実を受け、オルバ子爵はシャドーガーデンのスポンサーの1人として組織に関わるようになった。

シャドーガーデンはそれを受け、そこからオルバ子爵の領地にシャドーガーデンの研究所を設置し、ミツゴシ商会で出品する食品や工芸品などの作品を制作出来るよう施設を整え、領地の民衆の収入源を上げる事に成功。シャドーガーデンと子爵の関係はより強固なものになっていった。

 

 

「ミリアちゃんはお元気?」

 

「あぁ。ミドガル魔剣士学園を目指して日々切磋琢磨している。父親としても鼻が高いよ」

 

「魔力が一気に増えたからそろそろ指導出来る誰かを送ろうと思ってたけど、心配無かったかな」

 

「最初は持て余していた様だが、今ではしっかり体に馴染んでいる。それに私も魔剣士の端くれだ。娘に力の教え方を教えるぐらい造作もないさ」

 

 

既に魔剣士としてのオルバ子爵は隠居した身ではあるが、過去武神祭にめ出場したことのある実力者。魔力の操作は並の魔剣士には引けを取らないだろう。

 

 

「出資してくれてる中でも、オルバ子爵のトコは頭抜けて産業界が賑わってるからね。ちょっとぐらい優遇してもいいよねって考えちゃうわけよ」

 

「それはありがたい事だが、我が領地だけに優遇されては私も立つ瀬が無いというものだ。他の者たちに後ろ指を刺されかねん」

 

「でも実際そっちの領地は他の領地からの移住者が多いって聞くよ?最近経済がミツゴシの参入で食物とか製鉄、なんなら芸術家もミツゴシ傘下に入ろうとしてる訳だし。そのミツゴシの産業の末端を担ってる領地に職とか求めて移住するのは自然の事じゃない?」

 

「故にそれの援助目的を兼ねていると?」

 

「そろそろ領地も狭くなってきたんじゃない?隣の領地とか買収しちゃう?」

 

「流石に敵を作るような事はしない。精々協定を提案し、シャドーガーデンの名前を出さずともミツゴシ商会の恩恵を齧れると囁いて協定を結ばせるようにすればいい話だ」

 

「ま、そうだよね。穏便に済ませて貰えれば俺らも問題無いし。……まぁ、もし隣の領地が崩壊しちゃったりしたら、そんときゃそん時よね?」

 

「……何やら悪い話ではあるが、まぁその時はその時だな。……どうやら、其方も情報を掴んでいると言うわけか」

 

「まあね。露骨って訳でもないけど、流石に()()の周辺でわちゃわちゃしてるわけだがら、自然と話は入ってくるわけよ」

 

「……()()()()()()()()。協会があるから故に何処にでも蔓延る……。解せん奴らめ」

 

 

もしディアボロス教団の魔の手が娘にまで及んでいたら。そう思うだけでオルバ子爵は怒りで我を忘れそうになる。無き妻の忘れ形見。自身に残された最愛の娘を守る為ならば悪魔にだろうと魂を売る覚悟のオルバ子爵。今目の前にいる存在は悪魔では無いとはいえ、この国最強と称される存在。裏では大規模な組織を運営している存在ではあるものの、娘の安寧の為に目指す世界に見出されたオルバ子爵はリアルに敬意を払う。

 

オルバ子爵の煮え切らない怒りを押し留める姿を見て、リアルは嬉しそうに顔を綻ばせる。

 

 

「……?何か面白いことでも?」

 

「……ハハッ、いや〜。なんか()()()()の悪行を段々周りに知ってもらっているっていうのは、面白可笑しいなって」

 

「……リアル殿も、ディアボロス教団に強い怒りがあるのだったな。こんな組織を作ったぐらいだ。それ相応の事があったのだろう」

 

「まあ……ね。ほんと、色々あったよ。色々……ね」

 

 

リアルはソファにもたれかかりながら、ふと天井を見上げる。

リアルの姿や、最後に放った言葉の音色からして、オルバ子爵は何となくリアルの心境を察していた。人は表情で何となく感情が分かると言うが、リアルは常に顔半分を隠す目隠しをしている。故に表情は分かりにくいのだが、リアルの言霊から今のリアルの内面は悲痛でいっぱいなのだろう。

リアルにそこまで打ち明けろとはオルバ子爵が求めるものでは無い。人が人たる所以に、自分にしかない意思がある。内に秘めたる強い意思、それは誰に言ったところで意味の無いただの言葉。しかし、抱くものにとっては強い指標でもある。

オルバ子爵もリアルの姿を見て、言わずとも何か強いものを秘めているのだと理解している。故にオルバ子爵はリアルを支えようと決意したのだ。誰に言えたことでもないが、意思は言葉ではなく、真っ直ぐ歩く姿で語られる。シャドーガーデンの構成員も、その姿を見てここまでついてきているのだ。真っ直ぐな、リアルの姿に自分も何か出来ないかと。

 

 

「……私に言われたとて、ただの戯れ言になってしまうだろうが。貴殿は良くやっていると思う。理想を求める事は誰もが出来る。だが求めているだけでは何も始まらない。貴殿のように言動で己の理想を、決意を、強い意志を示す人はそうそう居ないだろう。理想主義者なんて言われてしまうかもしれないが、人が夢を語って、叶うかも難しい理想を求めて何が悪い。私は、貴殿と、貴殿が作ったシャドーガーデンに敬意を払う。リアル殿は私にとって、世界の人々にとっての希望なのだ」

 

「……おっさんがナーニ語ってんの」

 

「事実を述べた迄だ。私だけでなく、リアル殿やシャドーガーデンに救われたもの達は皆一様にそう述べるだろう」

 

「……小っ恥ずかしいな。おっさん相手に羞恥心擽られるなんて……」

 

 

今度は露骨に恥ずかしそうにしているリアルの姿に、オルバ子爵は少し微笑ましい表情を向ける。

リアルはシャドーガーデンの構成員とは違い、現場に赴く事は殆どない。故に任務等の話は全て事後報告としてリアルに届く事になる。シャドーガーデンの主な任務はディアボロス教団のアジトと思しき地域の捜索や襲撃が多い。

 

そこでは運悪く間に合わなかった被害者達もいる。リアルはその報告を受ける度、改めて自分の無力さを知っていく。手を伸ばしても届かない場所。そんなものがこの世にはいくらでもあるのだ。両手で掬った砂粒も、全部が全部手のひらに収まる訳ではない。

 

 

「……励ましは、可愛い女の子に言って欲しかったな。ミリアちゃんとか」

 

「リアル殿が望まれるのであれば、是非縁談の程をミリアに持ちかけるが?」

 

「やめやめ。親が子の人生にズカズカ入り込むもんじゃないよ?ミリアちゃんが望む形にしなきゃ。せっかく2人また再会出来たんだからさ」

 

「………確かにそうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後他愛もない話をした後、オルバ子爵はその場を後にした。報告だけのはずが、かなり時間をかけさせてしまった事に今更ながらリアルは気がつく。

 

 

「……腹減ったな。ガンマ誘ってご飯でも食べるかね」

 

 

ソファから腰を上げたリアル。しかし、唐突に勢いよく扉が開かれた。

 

 

 

「━━━━━リアル様!!」

 

 

 

扉を開けたのは、慌てふためくガンマだった。珍しくここまで転けずに来たらしい。

 

 

「どしたん?慌ただしいけど」

 

「それがっ、それが。………つい先程、アレクシア王女が()()されたようでっ」

 

「は?護衛は?」

 

 

リアルは思わず聞き返した。最近情緒不安定気味だったシータとバックアップとして用意したニュー。前者は微妙だが、後者が任務失敗などという結果を叩き出すわけが無いとリアルは思ったからだ。

 

 

「それが、現在シータとの連絡が取れず、ニューも満身創痍の状態━━━「は?」━━━っ」

 

 

 

 

「満身創痍?ニューが?詳しく聞かせろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今宵、全ての歯車が動き出す。

動き出した巨大な悪。それを退治すべく動き出す陰。

 

 

そして、その光景を眺める一人の少年。

ニヤリと少年は面白い何かを見つけたような嬉しそうな笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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