早朝東京の街中で一人の男による、ある犯罪が行われようとしていた。男が辺りを見渡すと一人のスキンヘッドの
男はこの場で人を無差別に殺す、所謂通り魔殺人を行おうとしていた。少年は男に背を向け歩いている。そのことを好機と思ったのか、ナイフの切っ先を少年に向け走り寄りその無防備な背に突き立てようとした。次の瞬間。金属を何か固い物に当てたかのような大きな音と共に男の手から弾き飛ばされ、男自身も走り寄った勢いそのまま後ろに弾かれた。尻もちをつき目を白黒させてると。ナイフを突き立てられようとした少年はおもむろに振り返って男の様子を見た。男はまだそのままでいて、その近くには先ほど突き立てられようとした大型ナイフがそばに転がっている。それを見たあと少年は自身の体を見る。すると
「またか……」
少年はそう呟きため息を一つ吐くと目をつり上げ男を
■
「今回もやりすぎです」
「はあ……すいませんでした」
俺の名前は大和武蔵(やまとむさし)今年で18になるフリーターだ……俺は誰に対して自己紹介をしてんだ。まあいい、俺は今日の朝に起こったナイフ男襲撃事件の被害者として警察に聴取をされ、そして最後に厳重注意を受けて謝っていた。注意内容は毎度のごとく被害らしい被害がない俺がナイフで襲われたとはいえ男を蹴とばして気絶させたから。あの後すぐに警察と、警察が呼んだのだろう救急車が到着し道で伸びている犯人は救急車で病院へ、俺は警察署に連行されそこで小一時間聴取を受け今に至る。
「あなたには無駄かもしれないですが……逆に殺したりしてたらあなたが罪に問われるかもしれませんよ?」
「はい次は気を付けます」
「次が無いことが一番なんですけどね……」と顔見知りの警官が苦笑いをしていた……そんな感じで聴取と注意は終了し警察署を後にする。スマホで時間を見るとそこそこの時間になっていたので急いでバイトへと向かう。バイト先のコンビニに着くと店長に挨拶をしスタッフルームに向かおうとする。しかし店長は此方を一瞥すると。
「大和君、今日は休みなさい、私が代わりにしとくから」
「え!ど、どうしてですか?」
「君ね…また何かに巻き込まれただろう?」
「はっはい、また巻き込まれましたが……どうしてわかりました?」
「服にガムテープが貼ってある」店長はそう言うと俺の背中を指差した。
「君の事だ、服に異常がある時、大体事件に巻き込まれた後だ」
「ははは…すいません」
そう言われては謝るしかなかった。その後店長に頭を下げ帰ることに。家に着きガムテープ服を処分し他の服に着替えゆっくりとベッドに横になり今日の事を考える。急に暇になってしまった。どうしようかと思うと一つの案が思い浮かぶ。
「そうだリコリコに行こ」
思い立ったが吉日、ベッドから跳ね起き外にでて
「おや、いらっしゃい。ゆっくりしていくといい」
「うげっ……いらっしゃいませ」
家から出て数分後一軒の喫茶店に着いた。ここは『喫茶リコリコ』和洋折衷の良い雰囲気の喫茶店。その中に入るとガタイの良い黒人男性、『ミカさん』に暖かく迎え入れられ、眼鏡をかけた女性、『中原ミズキ』にはどこか苦い顔で挨拶された……うげと言われる謂れは無いと思うが…俺、何かしただろうか?
「こんちわ、ミカさん、ついでにミズキも」
「ああ、こんにちは武蔵」
「あたしゃついでか!それに呼び捨てにすな!年上やぞこっちは!」
「お客にうげっていう人にはついでかつ呼び捨てでいいと思うけど」
「何だとこのハゲ!」「ハゲで何が悪い!」と常連になってからのいつものやり取りをしつつ空いている席に座りコーヒーを注文した。しかしこの場に一人足りなかった。
「あれ?
「ああ、今日は少し遅くなるとのことだ」
「遅刻よち・こ・く、あんにゃろどうせ映画の見過ぎで寝過ごしたんでしょ!」
「そうですか」
ここの看板娘はどうやら遅れてやってくるようだ。返事しながら思っていると。ミズキがニヤニヤしながら此方に向かってきた。
「あいつが居なくてさみしいってか、ん-?」
「はあ…そんなんじゃねえよ、色ボケ酒乱。ただ静かだなって思っただけだ。お客さん呼んでんぞ」
ミズキが「誰が色ボケ酒乱か!」と言いながら別の接客に向かったそんな時だった。
「千束が来ましたー!!」
「噂をすればだな、おはよう千束」
「先生おはよっ!ごめんねって、おおっ!武蔵くんじゃんおはよー!珍しいねこんな時間に?」
一人足りなかった人物。ここの自称看板娘、『錦木千束』が勢いよくやってきた。ミカさんに挨拶をすると俺に気付き挨拶してくる。俺はそれに返す。
「うーす、バイト急に休まされたから暇で来た」
「休まされたって、もしかして
「そうだよ……」
千束の問いにがっくりと返す俺。そんな話を聞いていたのかミカさんがコーヒーを出しながら慰めてくる。
「それは災難だったな、大丈夫か?」
「大丈夫じゃなければここに来ないです」
「ハハッ、それもそうか…それじゃあゆっくり」
笑いながら別の客のコーヒーを準備しに戻ったミカさんを見送ると。
「ねね、今回は何だったの?ナイフ?それとも拳銃?」
俺が過去に巻き込まれた事件とその結末を
「ナイフだよ、刺そうとしたのか斬ろうとしたのかわからないけど。服の背中の所バッサリ」
「うわあ災難、で犯人は?」
「蹴り飛ばした。おかげで今回も警察に怒られちった。やりすぎってさ」
「そらそうだよ、ただのパンチで車に穴開ける人だもん武蔵くんは。所で手加減はしたよね?」
「もちろん、いくら正当防衛でも人殺しになりたくないし」
「そうだよねえ
「こらあ!そこ!いちゃついてんじゃねえ!さっさと着替えてこい!」
接客を済ませたミズキにそう言われた千束は「いちゃついとらんわ!」と言いながら裏へと向かっていった。それを見送りゆっくりとコーヒーを飲み一息つく。今日は朝から災難だったが、こんな馬鹿なことが言える平和な時間が続いてほしいと思ったのだった。
しかし、数日後俺は今まで以上にこの国のでかい裏に触れることになるとは思ってもいなかった。
喫茶リコリコで過ごした日から数日後の夜、俺はバイト先から帰宅していた。その日は一日何事もなく仕事に専念でき気分がいい。そんな帰り道、進行方向の道の先にある十字路を一台のワゴン車が勢いよく横切った。その様子に何か嫌な予感がした。
「いやいや、気のせいだろう、今日は何もない何もない……よしっ!帰ろう!」
そう思い一歩踏み出したその時だった。
「きゃああああ!!」
女性の悲鳴が聞こえた。その瞬間俺はその方向に走り出した。気分がいいとか悪いとかはもう頭から抜け落ちた。角を曲がるとその先でサングラスとツナギ姿の男たちに麻袋を被せられ車に引き込まれようとする人が見えた。
「何やってんだおまえらああ!!」
俺は走っていた速度そのまま人を車に引き込んでいた男の一人を蹴り飛ばした。手加減はこれに関しては出来たかは正直自信はないがこの前のナイフ男同様10メートルぐらい飛んだ
「は……?えっ?」
蹴り飛ばした男と一緒に人を運んでいた男は目の前で起こった事が理解できないのか混乱していた。その隙を見逃す俺ではなく今度は手加減をしっかりし全力の何十分の一に満たない力で男を殴り飛ばした。
「ぶべっ!」
男はそんな声を出し塀に殴られた勢いそのま激突しそのままずり落ちた。連れ込まれそうになっていた人は自由になったからかもぞもぞと袋を脱ごうと悪戦苦闘している。
「お、お前何もんだ!どこのモンだ!」
車に残ってたであろう男の仲間が次々と降りてくる。男たちの手にはそれぞれ拳銃らしきものが握られていたが知ったこっちゃない。俺は女性を後ろにかばいながら、男たちと対峙し男の問いに答えることに。
「通りすがりのモンだ。それ以上でもそれ以下でもないが何だ」
「ふざけんじゃねえ!通りすがりに用はねえんだよ!その女渡してもらおうか!」
そう拳銃を突き付けながらこっちに向かってきた男に俺は。
「そんな危ないモンこっちに向けんなよっと!」
「なっ!」
「寝てろっ!」
「ぐぼっ!」
その手に持った拳銃をはたき落し、先ほどと同じ手加減の拳を鳩尾に叩き込んだ。
「なっ!くそっ!」
「はい、撃つなよ!」
「痛でででででっ!」
「お休み!」
「がふっ!」
もう一人が拳銃を撃とうとしたので間合いに踏み込み手を捻りあげ拳銃を落とさせそのまま地面に叩きつけた。そうして残ったのは運転席の一人と後部座席の一人の計二人そう思い車に向き直った瞬間、銃声がし胸部に軽い衝撃を感じた。胸を見ると服の胸の部分に小さな穴が開いている。撃たれた。そう感じたのは一瞬だった。
「ひっ!」
「はっ……ははははは!こんなことに首突っ込むからそうなるんだよ!」
俺の斜め後ろで袋から抜け出していた女性は小さく悲鳴をあげ、銃を撃った男は勝利を確信し笑っている。しかしポロリと服の裾から何かが落ちた。男はそれに気を取られたようで下を見る。
「なっ……うえっ?!」
「えっ……ええええぇぇぇ?!」
落ちたのは先端がつぶれキノコ状になったまぎれもない発射された拳銃弾の弾頭部分。それを見た男と女性は驚愕の声をあげる。俺は撃たれただろう胸を数回手で払いそして俺を撃った男の胸倉を掴んだ。
「なんか言うことがあるか?」
「何で?俺撃ったよな?当たってない?いっいや弾あそこに転がってるし…?弾かれた?」
「それが言いたいことか?じゃあ飛んどけ!」
「ぎゃああああああ!」
俺はそのまま混乱してブツブツ何か呟く男の顎をアッパーのごとく殴り数メートル打ち上げた。その男が落ちてくるのを見届けると車に残った男に対し向かうが。
「すんませんでしたああぁぁっ!」
男がそう謝りながらワゴン車を急発進させ逃走しようとした。俺なら走れば追いつくがどうやらその必要は無いようだ。数発銃声が聞こえると車は大きく蛇行をし10数メートル進んだのち塀に衝突し停止した。男は車からは這う這うの体で車から脱出していた。俺は守っていた女性から離れ地面に這いつくばっている男の前に立つと胸倉を掴み無理やり立たせ、そして。
「お前で終わりだ」
掴んだ男の顔面を正面から殴った。顔が凹んだかもしれないなと思いながら男を捨ておくと小走りで置いてきてしまった女性の下に戻ると。
「たきなちゃーん!!」
青い制服を着たたきなと呼ばれた女子に抱きつき安心からか号泣しており。その横には赤い制服を来た千束が辺りに転がっている男たちをどこで手にしたのかわからない棒で突きながら。
「うわあ……痛そー、これはひどい……」とドン引きしていた。つか何でここに千束が?それと女性に抱き付かれてる少女は誰だ?
その後千束が呼んだクリーナーなる業者に男たちと車などを引き渡し、捕まっていた女性、篠原沙保里さんを安全な場所まで送り届けリコリコに向かっていると千束が青い制服の少女と話終えたのか苦笑いしながら此方に話しかてきた。
「まーた巻き込まれてるぅ」
「正確には首突っ込んだ。だよ」
「余計駄目じゃん!」
「まーな、でも篠原さんだっけ?助かったからよかったじゃん」
「えー?でもさー」
そんな他愛無い会話をしていると青服の少女が千束に話かけてきた。
「千束さん」
「たきなっ!千束でいいってば」
「はあ…千束、此方の方は?」
「ああ千束、俺も気になってた。そちらさんは?」
「あっごめん紹介がまだだった。此方は井ノ上たきな、私の相棒になったばかりだからよろしくね」
「へー、相棒ねーこいつの手綱握っといてくれよ」
「はあ…?」
「どういう意味だコラ!こほん、此方は大和武蔵くんリコリコの常連さん」
「よろしく」
「よろしくお願いします」
そんな初の顔合わせを済ませた俺たちだったが、たきなはそのまま俺の服の胸部分に空いた穴を見つめていた。
「ん?どうした井ノ上さん?」
「およ、たきなは武蔵くんのこと知りたいのー?」
「あの、大和さんはさっき撃たれたんですよね?」
「無視するなー!」
「ああ、撃たれたけど?」
「そのどんな装備を使っているのかと」
どうやら俺が無事なのは装備のおかげだと勘違いをしているらしい。
「装備?使ってないぞ」
「……えっ?」
「ほら」
その質問に答えるために俺はおもむろに穴の空いたシャツをまくり上げた。そこには傷一つ無い引き締まった胸板があるだけだった。
「……」
その様子を見た井ノ上さんは固まってしまい。千束は顔を少々赤らめながら吠えてくる。
「ちょいちょいちょい!いきなりまくるな、変態かっ!」
「男の胸板なんて見せてもなんともないしそんな初心でもないだろ?それに恥ずかしい身体
「そーいう問題じゃないっ!ごめんねーたきな、びっくりしたよねー。しっかし武蔵くん相変わらず頑丈だね」
「ふっ、鍛えた結果さ」
「なーにカッコつけてんの。ナルシスト?」
「ナルシストちがう!ちょっとぐらいカッコつけたっていいだろうが!」
「……」
「井ノ上さん?」
「たきな?」
シャツをまくってからそんなやり取りしても井ノ上さんが黙ったままだ。どうしたのだろうか?……って……えっ?
「たっ……たきな?」
「……えっ?」
「こんなにしなやかなのに銃弾を弾くなんてどんな……」
なんか真顔で俺の胸触ってきたんだけど、なにこれどういうこと?
どうでしたか?