修行したら無敵になれた、頭はハゲた。   作:あ〜るい〜でぃ〜

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今回はほとんど日常回です


二話

 あの『連れ去り未遂事件』から数日後の早朝、俺は日課の『修行』をこなしていた。腕立て伏せから始まり上体起こし、スクワットとすべて100回ずつとランニングを10キロを始めてから現在まで毎日欠かさず行っている。前に教えた千束曰く「それってただのトレーニングだよね…」と言われたが俺が修行と言ったら修行なのだ。そんな修行のスクワットまで終え、ランニングに移る頃ふとこの前の事件後のひと悶着を思い出していた。

 

 井ノ上さんはとにかく真顔で俺の胸をペタペタと触ってきた。その様子を見ていた千束は困惑してしまって固まってしまい。俺に関しては女性、それも歳の近い女子に触られるといった経験がなさ過ぎて驚きで固まってしまった。

 

「井ノ上さん……な、何を……?」

「た、たきなって結構大胆なんだね……?」

「軟らかいのに装甲板より硬いってどんな身体の構造をして……?」

 

 俺と千束は硬直し井ノ上さんは今だ俺を触りながら何やらブツブツと呟いている。なんか怖い。

 

 

「本当にすみませんでした!」

「いやそこまで謝ら無くてもいいぞ……うん、たぶん……」

「武蔵くんどこかうれしそーだったもんねー?ご褒美だったんじゃない?」

「そっそんなんじゃ無いからな!」

 

 その数分後我に返ったのか井ノ上さんはばっと手を離し俺に対し頭を下げてきた。どうやら大混乱の末の行動だったらしい…今思えば井ノ上さんの目はなんかぐるぐるしてたような気がする。まあ、混乱させた俺も悪いと思ったので謝ることにした。

 

「まあ、俺も女子にする行動ではなかったしお互いさまということで」

「はっはい、すみませんでした……」

「話し終わったか……!そこのガキども……!」

「!?」

 

 低い声が聞こえ振り向くとそこには、鬼の形相をしたミズキが立っていた。俺たちは驚愕し千束が答える。

 

「うぇっ!ミズキ!どうしてここに!?」

「どうしてもこうしてもじゃない!千束!あんたがシフト無視してどっか行くからでしょうが!合間見て探しに出てきたってわけ!」

「ああ……それはそれは……どうも……」

「そしたらさそこのハゲと新入りが乳繰り合ってるじゃあ、ありませんか……あたしに対する当てつけかコンチクショウメー!!」

 

 そしてミズキは突如泣き出しなぜか持っている酒瓶をラッパ飲みし始めた。情緒不安定かつアル中か?

 

「うぉーい!今一応仕事中でしょうが!酒飲んでんじゃなーい!」

「今日はもう店じまいですー!つーかあんなん見たら飲まなきゃやってらんないわあああ!」

「ちょちょちょ!ここ外!外だから!騒ぎすぎたらケーサツ呼ばれちゃうから!」

「ケーサツ呼ばれてあんたら全員捕まっちまえばいいのよ!」

「うわあ……」

「……」

 

 あの後ミズキのせいでなかなかにカオスな状況になってしまった。その後ミズキも帰って来なかった事からミカさんも来て。

 

「道端、それも夜に騒がないように、いいね?」

「ごめんなさい先生……」

「はい、すいませんでした……」

「……けっ!」

 

 井ノ上さん以外の三人が軽く怒られてしまった。なんで俺まで?

 

 とまあ、こんな感じであの夜は過ぎて行った。あの後リコリコ関係者の4人はリコリコへ戻り。()()()()()()な俺はそのまま別れ、帰宅した。リコリコの()関係は首突っ込んでも良い事無いと以前に学んでいるから必要以上に突っ込まない。そんなことを思い返していたが、ちょうどいつものランニングコースを走り終え帰宅、シャワーで軽く汗を流し、まだだった朝食を食べ、バイトのための準備を整え出発、バイト先へと向かった。

 

 

「~♪」

 

 朝から今日一日、何事もなく平和にバイトに専念できご機嫌だった俺は鼻歌交じりでリコリコに向け歩いていた。

 

「さあ、今日は何にしようかね、ガツンと甘め?それとも渋め?」

 

 頼むメニューを悩みながら歩くこと数分、リコリコに到着しそのまま店内へ、すると。

 

「おっ?」

「ん?」

 

 初めてみる金髪の少女がカウンター席でパソコンをいじりながら俺の入店に反応してきた。

 

「いらっしゃい武蔵」

「…いらっしゃいませー」

 

 そこにミカさんと、相変わらず嫌そうなミズキがやってきてメニューを渡してくる。

 

「こんちわ、ミカさん、それとミズキさーん?俺なんかしましたっけー?」

「いいえー何もありませんよーだ」

「?まあいいや、今日は二人いないんすね?」

「ああ、別の用事だ、今日は顔出せるかも分からんな」

「そうですか、所でこの子は?」

 

 俺はミカさんに金髪少女の事を聞く。

 

「ああ、この子は……クルミ、理由あって今少し預かっているんだ」

「クルミだ、よろしく」

「おっおうよろしく……」

 

 なんか物怖じしない子だなと思った。軽い挨拶も済み空いているカウンターに座ると、クルミが横の席に座りなおしてくる。何だ?

 

「大和武蔵、現在18歳、10歳の頃両親を亡くし施設へ、施設で15歳まで過ごし、高校へ進学しなかったため早期退所、以降バイトを複数掛け持ちしながら現在に至る」

 

 この子いきなり名乗ってもいない俺の半生を語ってきたんだけど、何この子、怖…ミカさんとミズキも引いてるし。

 

「あんたはまたそんなこと調べて……」

「おい、クルミ。武蔵は()()ぞ」

「分かってるさ、知りたいから調べただけ。ただ調べて腑に落ちなかったのが幾つか」

 

 ミカさんが言った()()は何のことかわからないがクルミは気にも留めず、調べた事に疑問を持って聞いてくる。

 

「なっ何かな……?」

「ざっと調べた中、3年間()だけで16件も何らかの事件に巻き込まれ、普通なら大きな被害を被るというのに、当人の被害は服だけの比較的軽い物、代わりにそれを成した犯人はもれなく病院行き。それもすべて()()()()()()()といったもので関係者から着いたあだ名は『一撃男』」

「……」

「さらに言うと逮捕後の犯人たちの証言とその時押収された凶器、刃物から銃に至るまで()()()()()()と証明され『鋼鉄の身体を持つ男』とも言われてるな。ここまで聞くとスーパーヒーローのような()()だな」

 

 クルミはそこまで言うと頭の後ろに手を組みパソコンの画面を睨みつけた。そして此方に向き直り聞きたいことを聞いてくる。

 

「で、だ、武蔵、君のその秘密を知りたい、どうしたらそのような身体が手に入る?」

「聞いてどうする?君も()()()()()()のか?」

 

 真剣なクルミの眼差しに俺も真剣に答える。そんな様子にクルミは首を横に振りながら。

 

「いや、何もしないさ、ただボクは無知が嫌いだ。知らない事を知っておきたい、それだけだ」

「そ、そうか……」

 

 ただ知りたいからって人の半生を調べるなよ……この子やっぱり怖えし危ういわ……

 

「で、どうなんだどうやったらそうなるんだ?」

「どうやったらって俺も分からんが修行したからってしか……」

「ほう!修行!やっぱり一子相伝の物とかそんな感じなのかっ!」

 

 この子修行と聞いただけで目を輝かせてきたんだけど……

 

「一子相伝とかはない。腕立て伏せ、上体起こし、スクワットをそれぞれ100回10キロランニングを毎日欠かさず続けるといったものだ」

「何だつまらん」

「つまらん……?!」

 

 俺の修行内容を聞くと途端に興味を無くしパソコンを畳み席を立ってしまった。そして。

 

「いつか……」

「ん?」

「いつかその身体の秘密を知ってやる、覚悟しろ」

 

 そう言って奥の小部屋に向かってしまった。何か気に障ったのだろうか?首をかしげているとミズキが。

 

「ごまかされたと思ってんじゃない?」

「ごまかしてないけどな、これ以外やってないし」

「あんたがいつも言ってるそれはただのトレーニングなのよ……」

 

 ミズキまでもが呆れて裏に行ってしまった。俺が修行ったら修行なのだが?

 

「はあ……本当のことなのにな……」

「ハハッ、そんなこともあるさ。それで聞き忘れていたが」

「何です?俺の修行内容はさっき言った物しかやってないですよ?」

「いや、そうじゃない重要なことさ」

「?」

「ご注文は?」

「あっ」

 

 忘れてた……すぐにコーヒーと甘味を注文し、その後数時間はコーヒーをお代わりしながら過ごしていた。そして閉店間際になりミカさんからボードゲーム会にお誘いを受ける。

 

「閉店後はどうする武蔵?やってくか?」

「はいやっていきますけど……」

「けどなんだ?」

「また、カモられるのは嫌です……」

 

 そう言うと、そこに居たミカさんはもちろん、常連連中に笑われた…まあこんなので笑われるのは良いけどさ…そんな話をして数十分後ボドゲ会は多少の騒動はありながらもつつがなく進行していた。

 

「これ出して…どーだ!これで俺は3位に…!」

「あっ、これ出せるから上がりっ!」

「嘘だああああ!」

「うわあまたカモられてるう、だっさー!」

「うっせーな!ミズキ!そんなんだから婚期逃すんだよ!」

「それ言ったら戦争だろうがあああああ!」

「おいおい、喧嘩はしないでくれよ?」

「あはは!おっ!千束ちゃんたち何とか来れるってよ!」

 

 俺とミズキの言い合いに笑ってた常連の一人が千束から写真付きのメッセージを受け取ったみたいで周りに見せて来たがそれどころじゃない!

 

「じゃあ待ちますか」

「ですねー」

「二人ともーボドゲで決着つけたらー?」

「吠え面かかせてやる!」

「それはこっちのセリフじゃあ!」

 

 そう勇んでボドゲという戦場に繰り出した俺だったが……

 

「あーっはっはっはっはっはあたしの勝ちい!」

「嘘だああああああ!こんなことおおおおおお!」

 

 数分後撃沈した俺だった。




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