前世記憶が蘇ったリトル・ツィイーはルビコン3から逃げたい 作:とうや
この世界のリトル・ツィイーは前世知識御おかげで原作よりもアセンの組み方がマシで戦闘能力もそこそこ上がっています。
幼い頃から微妙に嫌悪感があったが、その理由も今ならわかる。
前世の記憶持ちに芋虫の素揚げや姿焼きはキッツいわ。
お米様が懐かしい。
小麦粉もないし真っ当な穀物全般も野菜もない。
野菜代わりの雑草や木の皮、汚染水を苦心してろ過した精製水がルビコン3の一般人の食事スタイルだ。
ごちそうは味の付いたエナジーバーでチョコ味やクリームチーズ味は至高だと思う。
ルビコンには碌な動植物がいない。
大体50年前にアイビスの火が星系を焼いた時、当然ルビコン3もこんがり焼かれて地表の動物もお亡くなりだ。
今も大気があるのは奇跡だと思う。
工場で食糧生産とかないのか?と調べたことがあるんだけどそういうのは大体暴徒化してる飢えた住民やドーザーなんかの知能指数が落ちて獣同然の奴らに襲撃されて潰れたらしい。
人間の愚かしさをタップリ発揮してるね。最悪だよっ!!
生き残っているのは自前で防衛戦力を抱えているBAWSの様な企業だ。
でも食料としての生産がやっぱりミールワーム一番で他は細々なのがルビコン3の現実を物語っている。
なので美味しい食べ物が欲しかったらそういうのを作れるところと繋を作りましょう。
『ACユエユーを確認。久し振りだなリトル・ツィイー』
「はいはーい、BAWS輸送部隊の隊長さん、リックさんだったね、お久しぶりです」
BAWS第2工廠は幾つかあるBAWSの工廠の中でも一際大きいところだ。
そして目的地である交易拠点であり解放戦線の拠点でもある通称『壁』はルビコン内では比較的住環境に恵まれた場所だ。
何せ『壁』のお膝元には城下町もあるしそれなりにイイ感じのビルもある。
私も一時期はここを拠点にしようかな、と思ったけど『壁』に住むって事は解放戦線に着くってのとイコールになるから諦めた。
『壁までの護衛、よろしく頼むぞ。輸送コンテナにはお前さんの発注した品も同梱してある。向こうについたら受け取ってくれ』
「了解、楽しみにしておくよ」
BAWSの輸送部隊との通信を終わると車列を眺める。
それなりに多い大型輸送車両はAC輸送トレーラーに早変わり出来る物だけに積載量は結構大きい。
壮観だなぁと思っていると妙なものが目に入った。
荷台を背負った4脚MTもあるのはどういう事だろうか?
『あぁ、アレは単にトレーラー不足で引っ張ってきただけだ。最近、外様の独立傭兵が流れてきたり、まだ惑星外の話だが企業が食指を伸ばしてきているというのは聞いているだろう?お陰で商売は捗るが同じ分だけ危険も増える。困ったもんだ』
「基本はドーザーの襲撃ばかりだけど、食い詰めた独立傭兵も襲ってきたりするからねぇ……って、ストップ。進路上のあの鉄屑の山の上に転がってるの……アレ、ジャンクじゃなくてまだ動くACじゃない?」
『……総員警戒しろ!囮か?リトル・ツィイー、すまんが先行して確認を頼む』
「OK。周囲から襲われる可能性もあるからキチンと警戒しておいてよ」
ブーストを吹かしながらACに近づきスキャンをすると、まだACが生きていることが分かるが、随分とボロボロだ。
「COM、ACのスキャン情報を傭兵支援システムに照会して。こっちで拾ったこのACのデータは全部渡して良いわ」
≪了解。データ送信……オールマインドより回答あり。アリーナのランカー、六文銭の乗機ACシノビと判定。シノビからログを回収した場合、買取を行うとのメッセージがあります≫
ログを漁るなら、もっと近づく必要があるか。
装備してよかったパルスシールド。
護衛ミッションの時ぐらいしか使わないけど、こういう時にも役立つ。
「COM、目の前のACと通信接続して」
≪了解、通信接続、リンクを試みます。……通信接続エラー、機器の故障を確認≫
「仕方ない、外部スピーカー起動」
≪外部スピーカーを起動します。使えます、どうぞ≫
ごほんと咳払いしちぇからそれっぽく声を掛ける。
「ACシノビの六文銭、生きているか?動けるのならば悪いが武装解除して立ち上がってくれ。動けないのなら救助するからコアから出てくるんだ」
言うと這う這うの体でコアから這い出て来るひょろっとした男性が一人。
なんかメッチャ土下座してて助けてとか、腹が空いた…と訴えている。
『そいつを助けるのかリトル・ツィイー?』
「敵って訳じゃないのなら、助けたっていい筈だ。そっちとしてもBAWSの客になってくれるかもだし、私もイイコトしたなら気分が良い」
『……はぁ、まぁ襲われないのなら良い。しょうがない、コチラも善行の一つでもするか。そいつを拾ったらうちのトレーラーに乗せてやれ。ACも最後尾の荷台で良ければ引っ張る余裕もある』
「おっけー、ありがとうリックさんに輸送部隊の皆!六文銭はこの子の手に乗って。大丈夫、安全運転で届けてあげるよ」
『感謝するぞ、幼き義人よ』
>>Side 輸送部隊隊長リック・ディアス
「すまぬ、感謝する」
「礼を言うならリトル・ツィイーに言ってやんな。あの子はあの年で独立傭兵やってる割にあぁ言う所があるからな。お前は運がよかったよ。俺達や他の奴なら迂回して終わっていた」
「そうだな……この恩義、報いなければ」
大分昔に見た漫画に出て来るようなNINJAの意匠に似たようなスーツを着たAC乗り六文銭は寡黙だが義理堅いのが少しの会話で何となくわかる。
同時に仕事に対してクソ真面目そうだ、とも。
「この輸送部隊はこの辺りの最大の交易拠点、通称壁に向かってる。ツィイーの紹介があって金さえあればそこで修理や補給も受けれると思うが、どうだ?」
「む、むぅ……」
解り易く唸ってしまうコイツは結構わかりやすいなとも思うが、本当に大丈夫だろうか?
肉体を見るに往生してしまっていたのかげっそりしているが、肉付きはシュッとしていてアスリートの様だ。
だが、金の話の時点で表情が渋くなった。
「後でリトル・ツィイーにも聞かれると思うが、お前さん何であんな所で立ち往生を?」
「それなのだが……やたら機動性の高い重MTらしきものと世界観違うんじゃないかと思える回転のこぎりを車輪にしたようなACより大きい兵器に襲われたのだが、ルビコン3はアレが普通にうろつく末法なのか?何とか凌いだが車輪の放つ炎に内装系を駄目にされるもトドメがギリギリ間に合った奇跡が無くば拙者はその時に死んでおった」
六文銭が自分の形態端末から戦闘ログを流すと確かにそうとしか言えない相手との交戦動画を確認できた。
「重MTは
というか、妙に性能がいい上に連携も取れている……のかコイツラ。少なくとも車輪の方はコレ絶対に無人機だな」
「見た目の異形とミサイルの嵐に惑わされるはこの身の未熟。精進せねば」
「ま、生きていれば挽回だって聞くだろうさ。空いてる簡易ベッドで壁につくまで休んでな」
六文銭にトレーラー備え付けの簡易ベッドに案内するとすぐに寝息を立てた。
≫SIDE OUT
トレーラーの通れる道で進むとACや輸送ヘリと違って随分と時間がかかる。
BAWSも輸送ヘリぐらい沢山所持しているけど、壁の様な大型拠点との取引となると陸上輸送が主だ。
ヘリでピストン輸送とか襲撃者も普通に良く出るルビコンじゃ安全面も含めるとコストがバカ高いので、陸路の方が護衛と歩調を合わせやすいのでマシだ。
ちなみに、この移動時の飲食は
BAWSは
移動時間は3日で六文銭を拾ったのが2日目の夕方、到着は3日目の昼予定だ。
リックさんに頼んで六文銭の分の食糧は私持ちで出してもらった。
こういうのは動物を拾った場合と対応は同じ、救助したなら多少は
そして後2時間で壁に到着という所でフレイムフライを名乗るちょっと見た目整えている様だけど……ジャンクACだった。
『やっと来やがった、ACユエユー偉そうにしやがって、本当に強いのかよ?』
武装はパルスマシンガンとサブマシンガン……連射力が強いのと取り回しは早めの武装だ。
近接武器は積んでいないようだが、殴る蹴るはできなくも無い筈だ。
『今日で後進に道を譲ってもらうぜ、老害がよ!!』
≪アリーナ情報より情報取得、相手はACフレイムフライ、パイロットはジャック・ゴールデン。ランク圏外です≫
COMが私が要求するより早く答えてきた。
ランク圏外と言うのはつまり一山幾ら以下のザコだ。
新人であるならまだ活躍が見れないだけなのかもだが、どっちだろうね。
「相手さんはこっち狙いか」
『AC乗りはランキングがあるからこういう事も稀にあるな。こちらは退避しておく』
≪MAIN SYSTEM 戦闘モード起動≫
『あん?アリーナの情報と武装データが…』
恐らく、私がアリーナ登録している武装の事を言っているのだろう。
両手小型グレネードガンと肩にシールドっていう産廃縛りアセン。
依頼人もアリーナ情報を見て傭兵を選ぶので、私のアセンを見れば大体はハズレと判断する、私だってそう判断する。
「武器なんて、状況に合わせて切り替えるに決まってるじゃない。二脚で両手グレネードガンで仕事に挑むとか正気じゃないでしょ」
『なにぃ!?』
「武器の照準動作が遅過ぎ、カメラの追従性かFCS貧弱じゃない??アセン下手なのかな??」
蹴り飛ばされてまたもや照準がずれたのか、こっちに銃口が向く前からトリガーを引いている。
慣れた傭兵は多少の被弾は当然と突っ込むからそんなの牽制にもならない。
≪左腕パルスブレードでの追撃推奨≫
「新兵かな?牽制にはなるけど慣れた相手には大した意味はない無駄撃ちだね」
タキガワハーモニクス製のパルスブレードは実に使い勝手が良い、弾丸の無駄遣いって良くないよねと思いながら連撃を決め、完全にスタッグしたようなので右手のRANSETSU-ARで追撃を繋げちょっと距離を取る。
既にボロボロなのでトドメにもう一回キックでチェックメイト。
爆発まではしてないから運がよければ生きているだろう。
「私はこれでもお兄ちゃんより若いよ、ニュービーのヨワヨワお兄ちゃん。アリーナ情報を鵜吞みにして十代前半の女の子にぼこぼこにされて恥ずかしくないの?傭兵やめたらぁ??」
≪ACフレイムフライ機能停止。バトルログをオールマインドに送信すれば多少の褒章が出ますが如何しますか?≫
「こんなログ、嵐雪のカートリッジ1つ分にもならないんじゃない?コレ相手でお小遣い稼ぎしたって思われる方が恥ずかしいよ。だから送らない」
なお、この戦闘はBAWS側で記録されており、後にBASHOの近接戦闘デモ動画としてBAWSに採用されてRANSETSU−AR1丁分の稼ぎにはなった。
RANSETSU買える分の報奨くれるくらいならBASHO向け格闘武装を開発して欲しいと要望を出しておいた。
芭蕉の腕なら素手のパンチでイケと言うのは武器入れ替えする都合上、もしもそれで手を壊したら持てなくなるから余りやりたくないんだよ、わかってほしい。
壁に到着すると輸送部隊は直ぐに荷物を降ろし始める。
それを眺めているとリックさんが通信を入れてきた。
『今回の任務はここで終わりだ、毎度ありがとうよ』
「この程度ならまた何時でも依頼してほしいわ。でも、帰り道は良いの?」
私が問うと、ため息を付いて答えられた。
『こっちとしてもそうしたい所だが、顧客確保って意味でも行きと帰りは別にしろって言う御達しがある。
「あぁ……エンブレム隠してるけど、カラーリングから見るとたしかに。古参も居るっぽいけど大半は新人かな?」
『やれやれ、依頼を研修か何かと思ってないかアイツラ。
リトル・ツィイー、荷物は牽引用カーゴに載せておいた。カーゴごと引き取ってくれ』
「ありがとう。六文銭はいる?」
リックと入れ替わりでモニターに六文銭が映る。
『どうした?』
「この後、ココの工房でシノビの修理依頼するけど問題ないよね?」
ココというのはBAWSの壁出張店だ。
当然のように修理やパーツ組み換え、弾薬補充*1もできる。
『なっ、流石にそこまで世話になるのはっ!?』
「袖振り合うも多生之縁だっけ?困ってるなら助けそれとも情は人の為ならずだっけ?折角助けたのに路頭に迷うとか盗賊落ちされても困るし、直るまで暫く私の手伝いしてくれればそれでいいよ」
『……まさか、まさかだ。暫く世話になりますぞ、姫』
「ひ、姫?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
向こうの通信からこらえるような笑い声が聞こえた。
『一時と言えど忍びが仕えるなら殿、あるいは姫と呼ぶのが世の習い故』
「ジャパニーズカルチャーってやつ?良く分かんないけどヨロシクね!」
ちなみにタイミングとしては原作2~3年前でまだレイブン(真)がルビコンの噂をばらまく前後の想定です。
六文銭が戦った相手は大体ストライダー防衛で相手したメンツで数は半分ぐらいになる想定です。