前世記憶が蘇ったリトル・ツィイーはルビコン3から逃げたい 作:とうや
今回は特に戦闘無しです。
六文銭を家臣というかなんというかの一時雇用をして一度私の拠点に戻ることにした。
壁から離れた位置に岩や木々に偽装の裏に大型の昇降装置が隠れている。
ここが私の拠点の入口だ。
「コレは……外からではわからぬ見事な拠点ですな。元は廃棄シェルターか何かで?」
「ありがとう。廃棄寸前のシェルターを頑張ってリフォームしたの。
出来れば地上にデデンと構えたかったけど、ドーザー*1やレイダー*2を引き寄せちゃうから地下拠点しか作れないのが辛いとこだよ」
昇降機が降り切るとそこはエントランスだ。
「エントランスも割合大きい……ACも複数置ける様に見えますが……防備もまるで軍事拠点ですな」
「まるで、というかまんま軍事拠点の秘匿シェルターだったんだよ。山賊化した50年前の軍人とその子孫が暮らしてたんだ。
人攫いをするわ人肉喰らいをするわと品性を捨てきった
淡々と語る私に六文銭がビックリする。
「あ、ちなみにおじさんっていうのはミドル・フラットウェルって呼ばれていて、師匠は師父ドルマイヤンって呼ばれてる解放戦線の重鎮とか中心人物だね。二人を中心とした精鋭がここに入り込んで白兵戦で陥落したってわけ」
「なんと。解放戦線の重鎮のお二方は生身の白兵も嗜んでいるので?」
「ルビコン3が『アイビスの火』で焼かれてからは自衛も出来ないで何をするって感じで、格闘技やらなんやら私もおじさんに拾われて幼児の頃から基礎を習ったりしていたんだ。実際、治安は最悪だしね」
私が当時住んでいた一般居住区はそれこそ私やおじさん達が居ない隙を狙って襲いに来た奴等で滅んだんだ。
他よりも僅かでも食糧生産能力があったが故の襲撃で、その生産施設も奴等の襲撃で吹き飛んだ。
「それで、ここは私の拠点でもあるけど同時にイザって時の解放戦線の避難場所でもあるわけ。……私は基本的に『独立傭兵として雇われた』という立場でしか解放戦線に関わっていないんだけどね」
私がそう言うと六文銭は首を傾げる。
「せっかく陥落せしめた拠点を解放戦線はなぜ姫に託されたので?」
「その理由はシンプルだよ。此処は小規模のアーコロジー*3だったんだけど、山賊達は必要なメンテを怠ってリアクターが壊れて機能不全だったんだ。拠点は近くに壁もあるし、なんだったらガリア多重ダムもある上に戦力を置こうにも中途半端な規模で特に戦略的価値もない拠点だから放棄しようかって所で私がもらったわけ」
「リアクターが?その割に十全に電力供給されているようですが」
「そこは頑張って稼いでリアクターを修理したんだ。幸いツテはあったしね。で、ここで何やってるかというと農場と孤児院やってるの」
案内して辿り着いたのは小規模の農場だ。
元々アーコロジーだけあってそういう施設があったのだけど、山賊化した奴等は放棄してた施設だ。
『私の
話していると館内放送で電子音声染みた女性の声が聞こえた。
「今のは通称マザーよ。昔色々あって頭コーラル漬けにされた女性で全身義体の最初期の強化人間。『アイビスの火』より前に今の姿になったらしいけど詳細は不明。名前も不明だけどルビコン調査技研に破棄されたらしくて、何時の頃からか再稼働して孤児を拾って育てる姿からマザーって呼ばれているわ。名前も忘れた自分の子供を探しているそうだけど、何処かおかしいみたいで子供はみんな自分の子供と認識するところがあるわ。人攫いみたいに攫ってしまう側面があるから、だからここはある意味彼女の隔離場所でもあるの」
ACを降りてガレージからエントランス側の小さ目の応接室に向かいながら六文銭に説明すると彼は当然の疑問を口にする。
「介錯はされないので?」
「そういう意見も当然あるのだけど、彼女って実は教師としても技術者としても優秀なの。だから扱いさえ間違えなければ良いってお目こぼしがあるわけ。ルビコンで孤児は珍しく無いけど、キチンと教育を受けれる環境は希少よ。だからマザーの役割は重要」
「ココを出た子供たちはどこへ?」
当然の疑問だ。
「それこそ色々よ。ルビコンの企業に就職斡旋できるしMT操縦も教えてるから傭兵から土建作業もござれよ。ここの農場だって彼女の願いで用意されたようなもんよ。マザーの真似事をして頑張ってる先輩方もいるけど、経営事情はココもどこも常に厳しいの一言ね。私がオーナーとして出資しているけど、幾ら稼ぎがあっても足りないわ」
「経営事情は……まぁ仕方がないのでしょうな。ルビコンでは一際でしょうがルビコン以外も孤児を善意で集めて育てようとする御仁は何処も苦労をなさる。姫は立派なのですな」
一度話が途切れたタイミングで応接室に着くと、そこでは既にマザーがお茶とクッキーを用意して待っていた。
硬質なボディだが女性的なラインを残しているが、どこかコミカルな雰囲気もある上に少しエッチなミニスカメイド風と言うデザイン担当はどうしてこっち方向に舵を切ったのか聞きたくなるような見た目だ。
「おかえりなさい、私の
「マザー、この人は六文銭っていって今日から暫く私のお仕事を手伝ってくれることになってるの」
「あらあら、まぁまぁ。この娘は直ぐに無茶をしてしまうから苦労を掛けてしまうかもしれないけど、よろしくお願いしますね。
私はみんなから
私達にマザーはさぁ座ってと促す。
座った先の机の上には作りたてホクホクの『青っぽいパイ』と『普通の紅茶』だ。
言うまでも無いが、クッキーはミールワームが含まれている…と言うか主原料だ。
食用として回されるミールワームはある程度火を通してその後ミキサーで粉々にしてペースト或いは粉末にするのが多い。
火を通す影響かコーラルの害は飛ぶので安心して食べられる。
中には貴重な調味料を使ったミールワームの佃煮なんてのもあるが、私は遠慮したい。
農場が本格稼働したら、絶対ミールワーム食からは卒業して見せる。
マザーのイメージは『PSO2 リサ』となります。
普段(子供達が居る場)は薄目ですが、それ以外のタイミングだと目も瞳孔も(カメラアイ)がバッチリ開ききったヤバい空気を漂わせる人物です。
全身義体なのでそのままでパワードスーツを着ているのと変わらない戦闘力を持ちます。
本作ではリトル・ツィイーが『リトル(かわいい)』と呼ばれる由縁は大体彼女になります。