前世記憶が蘇ったリトル・ツィイーはルビコン3から逃げたい 作:とうや
本来、人がそのまま住める大気と水を持つ惑星は人類にとって最優先で開拓と移民を進めるべき人類の拠点であり、存在するだけでその経済的価値は計り知れないものがある。
しかし、ルビコン3の様な訳アリの惑星は惑星封鎖機構を始めとした公的機関によって封鎖されるということはその価値は一気にマイナスに落ちる。
ルビコン3の住人の大半は余燼を食い潰しながら生を繋いでいるに過ぎない。
アーマード・コアは民間で入手可能な中では上位に位置する兵器の一種で通称AC。
コア理論に基づき規格統一した胴体(コア)の接続部に頭部、両腕、下肢を接続可能となっている。
胴体に装備する火器管制システム、ジェネレーター、ブースターもまた接続部が規格統一されており、入れ替えが可能。
この組み換え機能こそがACの強みでありコスト高騰を招く弱点でもある。
感覚や認識が強化されて神経接続可能な強化人間が乗ることが多いとされるが、フレームパーツの入れ替えは文字通り自分の肉体を別人のものと入れ替えるに等しくまともに動かせなくなるケースも見られる。
未強化の人間でも扱うことはできるが、クイックブーストによる急制動やGの負荷はパイロットスーツで多少吸収できるとはいえ完全ではない。
ここに被弾時の衝撃やフレームそのものでの近接格闘の衝撃が加わるとノーマルな人間にはダメージが肉体に蓄積されてしまう。
大企業の高級品スーツなら衝撃の完全吸収もあるだろうが、ルビコンでそこまで質の良いスーツは手に入らない。
それがまだ成長期で体が出来上がっていないツィイーの悩みであり、格闘戦を避けようとするAC乗りの悩みの種だ。
この壁を乗り越えるかどうかが星系ランカー*1とそれ以外の差だと言われるぐらいには大事な事だ。
さてここまでの話を前提として、ドーザーやレイダーがAC乗りを名乗ったところで扱いきれるかというと………。
バズーカを撃つ姿勢を見せた相手に連続QBで大きく回り込んだところからのABによる突撃、キックという割とわかりやすい攻撃を棒立ちで受けたACを見るに答えは扱いきれないの一言だった。
『コーラルと共にあれぃ!!』
『『うわらばっ!?』』
オールマインドが私に送ってきた通称プラズマヨーヨーこと44-143 HMMRプラズマスロワーは非常に扱いづらい武器だと思ったのだけど、六文銭は躊躇なくシノビに持たせて大活躍してた。
扱う銃器が嵐雪ARとショットガンだから手堅いのが好きなのかなと思ったけど、ノリノリで見得まできって残心する姿を見るにトリッキーな武器とかも得意なタイプなんだろう。
「さっすが六文銭!お見事だね!!」
『姫が下賜してくださった武器のお陰にございます。それに姫がもう一機を追い込んで頂けたのでまとめて倒すことができました』
「頼りっぱなしじゃ不甲斐ないものね。けど、どこにコレだけ控えてたのかしら?通常のMTだけで今日で50以上も落としているわ」
『固定砲台、4脚等の重MTも有りましたな。ACは今しがたの2機を含めて7機目。流石に残弾も心許無く、そろそろ被弾によるダメージも無視するには厳しいかと』
回避は当然行うけど、それはそれとして全戦全弾回避したとしてもパイロットは当然としてACの関節部の疲労も溜まるし、メンテナンスしないでこれだけ連戦するのはあまりよくないんだよね。
当然、装甲だって被弾しなくても殴る蹴るでもダメージはいるんだし。
「一度、ヘリを呼んで簡易整備を受けよう。……アーシル、聞こえる?」
『こちらアーシル、聞こえているよ同志ツィイー』
「周辺の兵器群の破壊に成功、簡易整備と補給を受けたいわ。ヘリを回して頂戴。」
『了解、直ぐに向かうが30分は掛かる。ヘリに乗ったらしばらく休んでくれ。そちらの周辺は制圧に向かった此方のMTと歩兵部隊が行う』
「わかったわ」
通信を切ると肩の力を抜いてだらっとシートに寄りかかる。
「COM、メインシステム索敵モードに切り替え。六文銭、ACに乗ったままだけど少し休憩しよう」
『承知。姫、疲労が溜まっておりませぬか?無理はなさらず、暫くお休みいただいても構いませぬが』
六文銭の言葉に、つい甘えそうになるが油断はするべきじゃないだろう。
「ありがとう、だけどそれはダメだよ。不意の流れ弾で追い詰められることだってあるんだ。効率を重視するなら単独で当たるのが一番だけど、今回は確実な殲滅を望まれているからね。二人で動くのは今回は必須だよ。まぁ疲労感があるのは事実だけど、この程度なら大丈夫ただ終わったらACのフルメンテは絶対だから当分は傭兵仕事したくないね」
『それは同感ですな』
六文銭が頷いたところでアーシルが口を開く。
『話し全然変わるんだけどさ、帥叔ミドル・フラットウェルから画家の取材依頼があって、受けるって話あるんだけどツィイーもどうせだからあってみたらどうだ?今時珍しいAIを使わない本物の手描き画家らしいぞ。帥叔とインデックス・ダナムはどうせだからその画家に作品を持込んで貰ってなにかイベントでもやれないかって考えているみたいだ』
『今の時代に手描きで既に珍しいですが画の個展とは更に珍しい』
「ふぅん。悪くないかも。もしその画家さんが時間あるならウチに寄って貰って小さい子たちにそういうのを指導してもらうのもありかな?」
和やかな雰囲気になったところで輸送ヘリが到着した。
アーシルから指示が来た。
『ヘリに乗って簡易整備を受けてくれ。この周辺に撃破対象はもうない……エルカノのフレーム、名前忘れたけど六文銭さんが使ってるのと同じの使ってる新人AC乗りが大活躍してるし、独立傭兵の……レイヴンってのも大活躍してるみたいだ。独立傭兵の方は詳細が聞こえないけど、新人の方は結構無茶してるな。あのフレームって中距離高速戦向けで近接向かない筈なのに張り付くように戦っててダメージもそこそこ受けてるみたいだ。リペアキットも使ってるしコレは高くつきそうだな』
アーシルの独り言にモニタ報告を聞きながら輸送ヘリ内の所定の位置につくと機体が固定されて先ずは機体状態の診断が始まり次に補修と補給作業が始まる。
整備員が飲み物を持ってきてくれたのでお礼を言って受け取る。
ただの冷えた精製水で、ジュースとかそういうのは無い。
前世の記憶があるとこういう時に禁断症状みたいに甘い飲み物が欲しくなる。
後はラーメン食べたい。
今生では一度もラーメンも餃子も食べてない。
牛丼すら無い。お寿司や刺し身だって食べたい。
でも食べれるのはミールワーム素材のものばかり、あるだけマシで恵まれているのだけど……やっぱルビコンの生活は最低だわ。
ルビコンに移住した際に使われたっていう大型移民船ザイレムがまだ有れば脱出できるんだろうか?
ドルマヤン師匠が昔ポロッと零しただけの情報で所在不明なのがツラいわ。
『緊急事態だ、エルカノやBAWSを始めとした企業の工廠が武装集団に襲撃されてる!二人にも別々に防衛依頼が出ているから確認してくれ!』
座席についている端末からミッションボードを確認すると新着でBAWSから緊急防衛依頼が来ていた。
既に戦闘は始まっていて相手はAC5機、防衛部隊に多数のMTや4脚重MTも居るが押されているとのことだった。
『BAWSからか、仕方ない受けるよ。六文銭は?』
『拙者にはエルカノから来ております。分かれて行動も已む無しですか』
そういう事になった。
この騒動はもうちょっと続きます。