前世記憶が蘇ったリトル・ツィイーはルビコン3から逃げたい 作:とうや
発祥は古く、人類が地球からの脱出を行う前の時代から存在するというのが彼らの公式発表。
傭兵やACが世を乱すと言い彼らを襲う武装集団。
一理があるようで彼等自身も襲撃者である事実は変わらない。
被害者を加害者へと仕立て上げる手腕はあらゆる組織から危険視されている。
レーザーを撃ってくる相手が居ると使うの忘れそうだけどパルスシールドを持ってくるべきだったかと思う。
相手の攻撃を避けながらランセツとミサイルでちまちま削る。
或いは避けられるの前提でグレネードで牽制して踏み込んで切るか。
はたまた姿勢が崩れるかEN切れで推力が切れた瞬間が勝負の賭けどころだ。
『最初の勢いがありませんね、慎重なのか臆病なのか……』
嘲られた気もするが無視だ。ふわふわ浮いてるくせに全身ミサイルとか弾幕特化機体でも無いのは微妙だなぁ。
相手は上を取って良い気になってるが、間合いも反応も読めてきた。
それにチャージよりバラマキの方が優先みたいだが、動きに微妙に焦りが見えてきた。四脚でレーザーって相性が微妙なんだろうか?そろそろ決めよう。
ブースターの推力を抑え目の280から340まで一気に出力全開にして距離を詰める。
『早くなった!?』
もう一段ギア上げるね、プレゼントも付けちゃおう!
アサルトブーストからの体当たり気味のキックは突撃する都合上多少の被弾は甘んじる必要があるが肩の装甲がレーザーで一部焦げた。
「装甲に焦げ目がついた程度じゃ怯んでられないね!!」
『あがっ!?』
大きな金属衝突音と相応の衝撃がコクピットにも響くが仕掛けた側だけに
空中に居た敵ACは姿勢制御もままならないまま蹴りで壁面に叩きつけられた。
「隙を見たら追撃だー!」
先ずはキック前から照準が進んでいたミサイルがロックしたと出たので発射、あらかじめ持ち替えていたグレネードを発射。
撃ったら即座にブレードに持ち替えて一気に距離を詰めると、丁度グレネード着弾直後に相手が間合いに収まった。
「切り捨て…ごめん!!なんてね」
『ば、馬鹿…ガガッ…な…!?』
確かな感触と共に敵ACのコアを深々と切り裂き、破壊した。
なんだか違和感が残るけど、まぁ良い……気にしてる場合じゃない先に進もう。
先に進もうとした所でRaDのチャティから連絡が入る。
『RaDのチャティ・スティックだ。ツィイー、返事は不要だ、聞け。先ず、そのグリッドに潜伏しているビーハイブの戦力がわかった』
MT45機とAC8機を保有し、階級制でMT乗り以下は一般扱いでAC乗りでもワーカーが3人、ソルジャーが2人、キング、クイーンときて黒幕らしき存在のキラービーだが、RaDのカーラはほんの一ヶ月でAC8機にMT軍団を揃えたのはどんなトリックだと疑っている。
安い第一世代ACのBASHOフレームですら個人所有可能な宇宙船でかなり良いのが買えるのはオールマインドの取り寄せてくれた艦船カタログで確認済みだ。
『それだけの資金や物資が動けば普通はわかるはずだが、今回、事が起こるまで具体的な脅威を感知出来なかった。奴らだけでできる工作とは思えない』
「星外企業の工作とか?それにしたって無駄が多い気もするけど。コーラルだって大した量はないんだし、特性を知っているのなら制御しきれないものに手は出さないと思うけどな」
グリッドの構造内部をMTや砲台、ドローンを撃破しながら登って降りて扉をチャティがハックして開けて外壁上ってと繰り返すと広い場所にでた。
『あなたのような方を消さねば、戦いは無くならぬ。我らはそう仰せつかりました。』
『世に平穏のあらんことを』
『でもあの機体じゃ……たいした金にならなそうだなぁ』
またもや黄色と黒のカラーリングのACだ。
しかも片方は金にならんというが当然だ。BASHOはロングセラーすぎてやっすいぞ!
階級が下の奴らから出てくるなら、さっきのとコイツラはワーカー、働き蜂といったところか。
どちらも四脚で金を気にしたのがライフルと多分バズーカ装備、カルトがレーザー系装備だ。
さっきのワーカーとの戦いで思ったけど、あの四脚とレーザーは多分装備として相性微妙なんだろう。
被弾覚悟で一気に攻め落とすのが良いか。
一気呵成に攻めると決めると集中力が増したように感じる。
ブースターを吹かし、ライフルを打ちっぱなし状態でミサイルのマルチロックし二体同時攻撃。
4連ミサイルの内2発ずつでは威力はお察しで相手も避ける気はないようだが構わない、僅かでも目眩ましになればいい。
爆炎の向こうから撃たれたが、ミサイルの衝撃で狙いが甘く外れのコースだった。
続けてレーザー装備機にグレネードを打ち込み同時にアサルトブーストで接近しタックル、蹴りを入れずにぶつかって、即座にパルスブレードをコアに突き入れる。
『あっ』
即座にすぐ隣りにいるという間抜けに追加で斬りかかる。
『コイツ戦い慣れて……!』
一撃入れたけど浅い、ブレードが過熱状態だからもう一撃はいけない。
ならば普通にぶん殴る!ぶん殴る!!
ぐらりと倒れ込んだからバックステップで距離を取りつつブレードとグレネードを入れ替えてぶっ放す。
『ろくに稼げてねぇ……』
それがワーカーの最期の言葉だった。
『敵AC2機の撃破を確認。単独でここまでやれるとか、凄いなツィイー』
「うーん、確かにそうかもなんだけど……こいつら動きがジャンク品並みに硬かったし動きがかなり悪かった。アーシル、コイツらのパーツが何時のものか調べられる?」
『手足はそこそこキレイだし検索ぐらいは出来ると思う。ちょっとまってくれ』
数秒待機している直ぐに結果が出た。
『コレ、本当なのか……ツィイー、どうやら相当古いパーツだ。情報をそちらに回す』
アーシルから回された情報には40年前には生産停止となった脚部パーツやそれより更に前に後継パーツが出てこちらはメーカーが敵対企業に雇われた独立傭兵の襲撃で潰されている。
因みに敵対企業は報酬を渋ったせいで件の傭兵に襲撃されたらしい。
金の切れ目がなんとやらだね。
『一応、補給シェルパは1台だけ準備があるがどうする?』
「リペアキットも使ってないし、まだ残弾も半分以上残ってるから、次のAC戦後次第だね」
『わかった……レーダーに感、ヘリ複数とAC2機がグリッドから高速離脱!?』
「え?」
アーシルの通信に反応した直後、グリッド中から爆音が響く。
『こちらRaDのチャティだ。奴等がソルジャー以上の幹部と一部メンバーを伴って脱出と同時にグリッド破壊工作を行い、倒壊させることでコチラとそちら両方に打撃を与えることを選んだようだ。コチラからグリッドへ大型ミサイル攻撃を行い、被害の最小限化を試みる。そちらも退避することだ。退避ルートはヘリの分も含めてこちらでルートを指示する』
「了解、まさかこんな事になるなんて……」
チャティとの通信中にルート指示が出たので、直ぐに移動をしつつ返事をした。
『ツィイー、気を付けろ、MTとドローンがおまえの足止めを狙っている様子だ!邪魔になるのだけ撃破して退避を優先するんだ!』
アサルトブーストと通常のブーストをうまく切り替え、邪魔になるのだけ撃破しつつ急ぐ。
途中途中でチャティとアーシルの指示に従い、最後に崩れかけの壁をグレネードで吹っ飛ばして壁抜きをして私はようやくグリッド外に出た。
『ツィイー、巡航モードで急いでそのエリアから退避しろ!086からの迎撃ミサイルの射線真っ只中だぞ!?』
「息をつく暇が無いにも程があるっ!」
ミサイルを回避しながら合流地点に辿り着くと、RaDのチャティ……ではなく、首領のシンダー・カーラから通信が入った。
『ありがとうよ、リトル・ツィイー。アンタのお陰であたし等はグリッドを失いかねない大きなダメージを避ける事ができた。それとは別にクソ野郎共の戦力を削ぐことができたのは重畳だ。アイツラが想像以上に早く逃げなきゃ、アンタなら倒しきってたかもねぇ?』
「評価してもらえるのは嬉しいけど……この場合、そちらからの依頼は失敗かな?」
私のようにカーラは依頼達成で構わないさと返した。
『結果はどうあれ、お嬢はあの羽虫を追い払ったんだ。勿論殲滅がベストだけど、あんな逃げ足が早いんじゃねぇ……あの逃げっぷりは久し振りに吹いたよ笑えた。逃げられたのは面倒だが割り切るさね』
カーラの言葉を聞き、アーシルがカーラに提案した。
『シンダー・カーラ、私からもいいだろうか。もしビーハイブの情報があれば我々にも回して頂ければ奴等に対しこちらからも対応ができるよう上に提案できるが、どうだろうか?』
『……チャティ、解放戦線に情報を送ってやんな。逃げ回る相手を追い掛け回すのはあたし等にゃ向かないからね。向いてる奴等に任せるさね。この件に関しちゃ共同戦線を張ってもいいと伝えておきな、解放戦線のオペレーター』
出番終わったかなと水筒に入れてた水を飲みながら一息入れているとカーラから私信が入った。
『アンタにその気があるなら何時でも遊びに来な。歓迎するよ』
「ありがとう。近いうちに遊びに行くよ」
ビーハイブが損切りして逃げましたが、RaDやルビコン解放戦線にタッグを組まれた上にワーカーのジャンクACとはいえ3機も破壊された上での拠点放棄なので彼等的には大打撃です。
今回はリトル・ツィイーのみの襲撃でしたが、ルビコンにはレイブン(真)も居るので賞金掛けて放っておくだけでも消えてしまうかもしれません。