迷子になるか、仮面を着けるか   作:なかムー

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 皆さまお待たせしました。

 今回は2日連続投稿となります。話は前回の続きで水着回の続きをお送りします。

 それでは、どうぞ。


迷子でも海に行きたい その②

 「結局来てしまったか……」

 

 愛音さんの説教が終わって電車に乗る事約数時間……僕たちは目的地の海に到着したのはいいが、隣で海を見ながらはしゃいでる愛音さんや彩さんとは違い、早く帰りたい気持ちになってきた…というより到着前から帰りたいと感じていた。

 

 それもそのはず、僕は真っ先に参加を拒否したのだ。その後も毎日のように愛音さんがしつこく誘ってくる。学校内はもちろん、放課後やバンド練の時にも誘われてくる。挙げ句の果てには家に帰ってからも「海に行こう!」って連絡が来るのだ。しかも電話で。チャットならまだしも電話で直接来るものだから溜まったものじゃないよ。

 

 ……で、愛音さんの誘いの言葉が『海に行こう』って提案があった時から約10日間誘ってくるため、昨日の夜…寝る前に漸く僕の方が心が折れて渋々参加する事になったのだ。

 

 しかし、先程の説教があってからか、掌を返すように帰りたい気持ちに逆戻りした……わけだ。

 

 だけど帰ろうとした直前、颯樹さんに「頼むからお前はいてくれ」って頭を下げられたので渋々同行する羽目になったのだった。

 

 でもこれも仕方ないと割り切って同行する事になったのだ。そして今は、女性陣は着替えとか準備があるため、僕と颯樹さんで場所取りをする事となったのだけれど……

 

 「そういえば獅音、水着はどうしたんだ?私服のままだけど?」

 

 ビニールシートを広げて砂浜に敷く最中に颯樹さんにそう指摘された。颯樹さんは今水着に着替えて、黒のトランクスタイプの水着に紺色のパーカータイプのラッシュガードを羽織っており、それに対して今の僕の服装は、白の半袖シャツに薄いブルーのシャツを羽織っていて、黒のハーフパンツといった、如何にもラフな恰好であるが……海で遊ぶには場違いであるのは間違いないのだ。

 

 「……僕は昨日の夜まで愛音さんの勧誘を断り続けたんですよ?水着を行く気も無かったから、当然その間に買いに行くなんて考えはありませんでした」

 

 実際そうでしたからね。下手したらOKを出したのは夜だから、半日も経ってないのは事実だから仕方ない。

 

 「そうか……というよりよく昨日まで粘ったな」

 「行く気がなかったので」

 

 あのー、呆れないでもらえませんか?行く気が無かったのは事実なので。

 

 「……なら荷物の見張りをお願いできるか?僕は絶対彩と愛音に引っ張り回される」

 

 少し考えた颯樹さんだが、今更何言っても仕方ないようなので、僕に荷物番をするよう頼んできた。まあ颯樹さんの言う事は至極もっとも。それに愛音さんあたりがそよさんを無理矢理引っ張って行くから、荷物の見張りは僕しかいなくなるのが目に見えてる。

 

 「……分かりました」

 

 そこから颯樹さんと一緒にパラソルとか準備をしたけど、颯樹さんは何度も行ったことがあるのか、慣れた手つきで準備をしたため、ものの数分で終わるのであった。

 

 「そういえば獅音って海は行った事ないの?」

 

 準備も終わってシートの上に座って女性陣を待ってる最中に颯樹さんからそんな言葉が投げかけられた。

 

 まあ颯樹さんの手際が良さで忘れるところだったけど、僕の方は経験が無いから準備に手間取ってしまったから。それを疑問視するのは不自然ではないからね。

 

 「ありませんね。両親も仕事で休みなんて滅多にありませんから。2人が同時に揃うのは1年で7日あるかどうか疑うレベルなので。養母(はは)は職業上休める仕事ではないのと、養父(ちち)は3年前までは本社のある大阪で単身赴任していましたから。最近は在宅勤務でしたけど、先月に人事の都合でまた本社勤めに戻りましたから」

 

 そう。両親の仕事の都合上、何処か遠くへ遊びに行くって考えは雨宮家には無いからね。

 

 「そうか……それは失礼な事を聞いてしまったよ」

 「大丈夫です。もう慣れました」

 

 ……と、そんな感じで颯樹さんと雑談をして女性陣の到着を待つのであった。

 

 「お待たせ颯樹くん♪」

 

 暫く雑談を続けていると、彩さんが僕たち…というより颯樹さんに声を掛けてきた。彩さんが終わったという事は愛音さんもそよさんもおそらく着替え終えて此方に来るだろうけど……

 

 「あの彩さん、何してるんですか?」

 

 彩さんは颯樹さんの背後に回って彼の目を手で覆って、「だーれだ?」ってシチュエーションをしている。それ、「だーれだ?」って言わないと意味ないけど、颯樹さんはもう彩さんを見知って慣れてるから無意味だろうけど、シチュエーション的には台無しである。

 

 「颯樹くんを驚かせようかと……」

 

 それで驚く人っています……?多分驚くだろうけど、初見だけですよ。あとは「もう慣れた」と言って一蹴されるのがオチですよ。

 

 「……彩、とりあえず離れようか」

 「……はーい」

 

 颯樹さんの鶴の一言で、渋々颯樹さんから離れた彩さんだけど……その彩さんの水着は、薄い白色の水玉模様で青がメインのビキニで、紐がピンクの腰とトップの一部にフリルが象られているものだ。それで日焼け対策のためにか、手にはピンク色の薄手のパーカーを持っていた。というか、日焼け対策なら普通羽織るのでは?それだと意味ないですよ……?

 

 「彩。僕に見せびらかすのはこの際目を瞑るけど、流石に目立つからやめろ。一応僕ら以外にも客はいるからな?」

 「えー、そんなの勿体ないじゃん!だって颯樹くんとおでかけなんだよ?だから目一杯私の事見て貰わないと困るもん!」

 

 それ言い訳のつもりですか?なんか屁理屈のように聞こえてくるけど……その前に彩さん、僕たちの事も忘れないでくださいよ?

 

 「彩さん、一応私たちもいるのを忘れないで下さい」

 

 そこに僕の代弁に入ってくれるかのように、水着に着替えたそよさんが彩さんを咎めた。そよさんの後ろには、同じく水着に着替えた愛音さんも控えていた。

 

 ちなみにそよさんの水着は、イエローを基調としたビキニで腰には同じ色合い(だけど、水着より色が薄い)パレオを巻いていた。愛音さんはピンクを基調としたビキニで此方は彩さんと違って薄手のパーカーを羽織っていた。

 

 「お待たせー、さっきーとれおぽん!待った?」

 「そんなに待ってないから問題ないよ」

 「僕も同じくです」

 

 愛音さんに声を掛けられた後、何故か彩さんを目を光らせて颯樹さんの隣に座った。そしてうつ伏せになり背中の水着の紐を解き始めた……って、えぇっ⁉︎

 

 「あの彩さん、いきなり何してるんですかっ⁉︎」

 「なにって……颯樹くんに日焼け止めを塗ってもらうためだよ?」

 

 さも当然のようにそう言うと、彩さんはうつ伏せのまま左手に持っている小瓶を僕たちに見せびらかしてきた。

 

 「颯樹くん、お願〜い?ねっ、いいでしょ?」

 

 そう言って彩さんは艶やか上目遣いで颯樹さんを見ながら日焼け止めを見せつけてきた。

 

 「……そよ、彩の相手を少しだけしててくれる?千聖に報告して来るから」

 「別に良いですけど……待ちかねてる丸山先輩(あのひと)はどうするんですか」

 「知らん。この際だ……キッチリお説教されて貰おう」

 

 颯樹さんは慣れているのか毅然とした態度で彩さんの対応をし始めた。この人、相当苦労してますね……。

 

 「れおぽーん、私の背中に塗ってくれない?」

 

 偶然か定かではないけど、愛音さんも彩さん同じ状態になって僕に日焼け止めを背中に塗ってと要求してきた。この人は……。

 

 「あのー、なんで僕なんですか?」

 「だって本当はきょーたんに塗ってもらおうとしたんだよ?でもきょーたん生徒会で来れないから代わりにれおぽんに塗ってもらう事にしたんだ!」

 

 それ以前に誘う人、間違えてますよっ⁉︎確かに先輩ならある程度考慮してくれるけど、流石に生徒会があったらそっちを優先しますって!

 

 あと代わりなら同性のそよさんに塗ってもらったらいいでしょうが!彩さんといい愛音さんといい、何故異性に塗ってもらおうとしてるんだ?少しは羞恥心とか待ちましょうよ!

 

 「あっ、もしかして祥子ちゃんがいなかったから不満?それかともりんも誘えばよかったかなー?」

 

 なんで祥子ちゃんや燈さんを話の引き合いに出してくるんですか!それは流石に卑怯ですよ!確かに2人がいないのは少し残念ですけど、それとこれとは関係ないですからね!

 

 「……同類がここに居た」

 「これ、傍から見たらソッチ系統の気がある人のやり方だよね」

 「はぁ……公衆の面前で何やってるんだろ、アホらし」

 「全くだ」

 

 僕も2人に激しく同感です。流石にこれは擁護する気すら失せますよ……。

 

 「颯樹くん達言い過ぎじゃない⁉︎」

 「そーだよさっきー!」

 

 しかし彩さんと愛音さんは颯樹さん達のぼやきを聞いたからか、ブーブー文句を言ってきた。うん、これは文句なんて言えませんよ。

 

 「彩、愛音……その辺にしないと、公衆の面前で上半身裸のまんま走り込みさせるけど、どうする?」

 「……鬼ですか」

 「同感。愛音ちゃん、これは良い機会だし……辱めを受けながらトレーニングして来たら?」

 

 颯樹さん、それは流石に鬼畜すぎるのでは?それとそよさんも同意しないでください。幾ら愚行を働いた2人に対しての罰だからって、そのような行為を敢行するのは色々と問題が起こりますよ。

 

 それに今現在この場には僕たち以外にも人は沢山いる。2人のオシオキが実行されたら絶対彩さんはスキャンダルに遭いますって!そうなったら彩さんは芸能界から追放されて最終的には社会的に殺されるから!

 

 「「……遠慮しまーす」」

 

 颯樹さんから言い放たれた一言で、彩さんと愛音さんは緩めた水着の紐をキッチリと締めた。流石にそれはやりたくないでしょ。いたとすれば相当のマゾヒストくらいだもん……。

 

 「あー、紐は締めなくてもよかったのに。私が塗ろうとしたんだよね……」

 

 そよさんが日焼け止めを手に持ちながらニッコリと笑っていた。でもその笑みは怖いのは分かるよ……。

 

 「塗ったあとに砂浜を走り込みさせようと思ったんだよね。でも流石に上半身裸にはさせないけど」

 

 やっぱり‼︎この人は何末恐ろしいこと考えてるんですか⁉︎しかも砂浜だから余計に体力を持っていかれるヤツですよね⁉︎これ体力を奪って2人を再起不能にするとか考えてませんよねっ⁉︎

 

 「そよ、早く塗ってあげろ。早速実行させる……」

 

 颯樹さんは何話に入ってオシオキを敢行しようとしてるんですか!

 

 「……というのは冗談だ」

 

 冗談だったんですかっ‼︎しかも颯樹さんが言うと冗談には聞こえないんですけどっ⁉︎

 

 「いいんですか、颯樹さん?」

 「まあ待てそよ。まだこれには続きがあるさ」

 

 続き?何を言うつもりなんだ……?

 

 「今回はこのくらいで容赦する。だけどもしさっきのような事を言えば……」

 「「……大人しく従います」」

 

 ……あー、敢えて1回希望(チャンス)を与えてから粗相をしたら絶望(オシオキ)をする。見方さえ変えれば脅迫と間違えられそうだけど、この2人からしたら効果テキメンかも。

 

 「それじゃ日焼け止めを塗ろうか。最初は愛音ちゃんからね♪」

 「ねぇ待ってそよりん。なんで砂浜の方を指差してるの?」

 

 愛音さんの言う通り、そよさんはニッコリと笑いながら片手に日焼け止めを手に持ち砂浜を指差している。本来ならそこはビニールシートに寝転がるよう促すはずだけどまさか……

 

 「もしかして砂の上で日焼け止めを塗るつもりですか?」

 「そうだよ♪」

 

 そのまさかだったっ!そよさん、貴方何考えてるんですかっ⁉︎

 

 「待ってそよりん!それやると私からしたら拷問と変わりないんだけどっ⁉︎」

 

 確かに。こればかりは愛音さんの言うことももっともだ。流石にそれは……

 

 「どうせ愛音ちゃんはこう考えてたでしょ?「どうせならそよりんもさっきーに日焼け止めを背中に塗って貰ったら?」って」

 

 ……………へっ?愛音さん、そんな事考えてたんですかっ⁉︎まさか……いや、そのまさかだ。今の愛音さんは顔を背けてながら目が泳いでる……しかも顔中冷や汗が流れてるんですけどっ⁉︎

 

 「その反応はクロと捉えるね?それじゃ愛音ちゃん、始めようか」

 「待ってそよりん!ご慈悲をっ!ご慈悲を…あっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 愛音さんの抵抗虚しくも、そよさんはオシオキを敢行した。そしてまもなくして、愛音さんの絶叫がビーチ中に響き渡った。近くにいる僕と彩さんはもちろん、あの颯樹さんですら目を逸らして愛音さんのオシオキを目を逸らして見て見ぬふりをするのであった。




 まずは最新話の読了とお気に入り登録をしてくれた皆様、ありがとうございます。こんな拙作にお付き合いいただいた事に感謝感激です。

 次回はこの水着回を終わらせてまた本編を投稿したいと思います。

 それでは、また次回。

獅音の女装回を……

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