迷子になるか、仮面を着けるか   作:なかムー

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 皆さまお待たせしました。

 今回はバレンタイン回をお送りします。

 それでは、本編をどうぞ。


バレンタイン回 さらば、花女1-Bトリオ

 「はぁ…燈の手作りチョコが欲しい…」

 「突然何言い出すの?」

 

 冬も真っ只中の今日この頃、私が注文した紅茶(アールグレイ)を運んできた立希ちゃんがため息をつきながらそんな事を呟いた。

 

 ちなみに今日の練習はオフで、獅音くんは祥ちゃんと放課後デート、燈ちゃんと愛音ちゃんは買い物に行ってるけど、楽奈ちゃんは何処にいるか知らない。おそらく猫と遊んでると思うけど。

 

 立希ちゃんは見ての通りここRiNGのカフェテリアでバイト中なのは火を見るより明らかだけど、そんな立希ちゃんはコーヒーを淹れる時も上の空…というより元気が無いように見える。

 

 「そよ、今日は何日かわかるか?」

 「……1月30日だね」

 

 今度は何を言い出すと思えば、今日の日付を尋ねてきた。というより、立希ちゃんはなんでそんな質問をするのか理解できないんだけど。

 

 「あと2週間で2月14日だけど…「祥ちゃんの誕生日だね。獅音くんが言ってたよ」違う!今祥子の事はどうでもいいっ!ついでにクソライオンの話題なんて私の前では論外だ!」

 

 いや、仮にもバンドメンバー(祥ちゃんの場合はだけど)だよ?『どうでもいい』や『論外』で済ませるなんて事はしないでよ。というより2月14日って他になにが…あっ。

 

 「理解したようだな。その日はバレンタインだ」

 「私も今思い出したよ。それがどうしたの?」

 「…ぶっちゃけてもいいか?」

 

 まさか立希ちゃんは……

 

 「…………燈の本命チョコが欲しい!

 

 ……やっぱり言い出したよ。

 

 「立希ちゃん、その望みを持つのは諦めたほうがいいよ?どうせ燈ちゃんが立希ちゃんにあげるのは友チョコ以外何物でもないんだから」

 「はぁっ⁉︎」

 

 いや、なんでそこで『理解できない』って顔してるの?そんなのもうわかりきってる事じゃない。

 

 「何故だっ!何故そんな事言うんだ!」

 

 そんな立希ちゃんは悔し涙を浮かべながらカウンター席に拳を叩きつける始末だ。というより泣くほど悔しいの?

 

 でも流石の私も言い過ぎた節はある…仕方ない。

 

 「…ごめん、流石に言い過ぎたかも。立希ちゃんにもまだチャンスはあると思うよ?」

 「ホントかっ⁉︎」

 

 凄い喰いつきぶり…。さっきまで悔し涙を浮かべてた人とは思えないんだけど。

 

 「今日燈ちゃんは愛音ちゃんとバレンタインの準備のために買い物に行くって話だから、もしかしたら貰えるかもだよ?」

 

 私がそう言うと、立希ちゃんはガッツポーズをし始めた。でも私は()()()()()()なんて一言も言ってないからはそこは気をつけてね…って言いたいんだけど、有頂天になってるから多分言っても無駄か。

 

 「はぁ…さきちゃんの手作りチョコが欲しい……」

 

 そんな最中、いつのまにか私の隣に座ってた初華ちゃんがそんな事呟きながら落ち込んでた。というよりいつ来たの?私はそこに驚いたんだけど。

 

 「いらっしゃいませ、何をお飲みになられましょう?」

 「…コーヒーでも貰おうか」

 「かしこまりました」

 

 なんか二人がドラマとかでよく見かけるバーに来た客とバーテンダーっぽいやりとりしてるけど、此処カフェだからね?お酒とかはでないよ?

 

 「二人とも。私の話を聞いてくれ……」

 

 いや、何突然私達に話を聞くよう促してるの?突然すぎて理解できないんだけど…

 

 「実はさきちゃんが5日も口聞いてくれないの…」

 

 ていうかなんでさも当然のように話を進めるの!あと祥ちゃんと何があったの…って聞きたいけど、それは時間の無駄か……

 

 「口を聞いてくれないどころか、さきちゃんと目が合うと軽蔑するような冷たい目で私の事を睨みつけるように見てきたりするんだ……でも、その目がたまらない程に興奮するんだよね……!」

 

 後半、どうでもいいから。というよりそんな戯言言ってるあたりホントは余裕だよね?あと芸能界にいる人間がしていい顔じゃないんだけど?

 

 「わかるぞ三角さん!私も燈にそんな目で見られたい…!」

 

 此処にも同レベルの変態がいたよ……。花女の生徒の性癖って頭可笑しいレベルに達してるの?

 

 「…まぁ、それは置いといて、後で話は聞くとしてだな……」

 

 一生置いといて。できればその話はもう二度としないでほしい。したいなら私の聞こえない尚且つ視界に入らないところでやって。

 

 「それで?なんで祥子と口を聞いてくれないんだ?」

 

 立希ちゃん、それは聞くだけ無駄だよ。どうせ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だから。

 

 「全部獅音くんのせいだよ…」

 「あのクソライオンがっ⁉︎」

 

 絶対獅音くん関係無いよね?獅音くんは初華ちゃんと違って祥ちゃんが嫌がらない事はしないし、気遣いも両手の指で数えられない程出来るから、そんな事はまず無いから。

 

 「三角さん、その話詳しく聞かせてくれ」

 「いや立希ちゃん、そんな話聞くだけ時間の無駄だから」

 

 そんなの分かりきった事、聞きたくないから。

 

 「それはね…」

 

 いや、時間の無駄だって聞いてなかった?どうせ初華ちゃんが────。

 


 

 あれは5日前の事だった────。

 

 「いや、意味深な出だしを使ってまで回想入らなくていいから。どうせ理由なんて既に分かりきってるから回想なんて入れないで欲しいんだけど」

 

 私は学校で補修があって自宅に帰った時だった。

 

 「ねぇ、いいって言ってるでしょうがっ!」

 

 『ただいまー、祥ちゃん♪』

 

 私が自宅に帰ると、何やら匂いがしてきた。しかもそれは甘い香りだった。その匂いに連れられた私は足早にリビングまで向かった。そしてリビングに着いた私が目にしたのは…

 

 『……よしっ、美味く作れたはず…ですわ』

 

 キッチンにて、お菓子作りをしているさきちゃんの姿が。しかも祥ちゃんはフリルが付いた可愛らしいエプロンを着けて、普段の髪型からポニーテールにしていた。あぁ、裸エプロンをさせた…

 

 「いや。それはどうでもいいから早くこのくだらない回想終わらせてよ」

 「私は燈に裸エプロンさせたい!」

 「立希ちゃんは一生黙ってて!回想終わらなくなるから!」

 

 先程玄関にまで漂ったきた甘い香りとキッチンに置いてあるチョコから推測するに、さきちゃんはバレンタインのチョコを作るための練習をしているのだと思った。

 

 だけど…

 

 『獅音と比べると私はまだまだですが、プレゼントするには充分なはずですわ』

 

 ……………はい?

 

 今さきちゃん、なんて言った?私の耳に狂いがなければ、今『獅音くんにプレゼント』って言わなかった?

 

 う…嘘だっ!獅音くんにプレゼントするのっ⁉︎私にじゃなくて⁉︎

 

 『さきちゃん!』

 『あら初華、帰ってき……きゃっ⁉︎』

 『さきちゃんさきちゃんさきちゃんさきちゃんさきちゃんさきちゃんさきちゃん!!』

 

 私はいつのまにかブリッジの態勢になって、さきちゃんの股下まで駆け寄った。

 

 「やっぱりね!そんな事だろうと思ったよ!!」

 

 『さきちゃん私にもチョコちょうだいィィィィィィィィィィ!!』

 『初華ぁぁぁぁぁぁぁぁ!早くやめないとベランダから投げ飛ばしますわよぉぉぉぉぉぉ!』

 

 さきちゃんは両手で必死にスカートを抑えているけど私には関係無い!

 

 私には!!夢があるから!!!!

 

 そんな私とさきちゃんの攻防は約30分も続いた。

 

 「こんな事で30分費やしたのっ⁉︎完全に時間の無駄じゃない!」

 

 攻防が終わったと思いきや、いつのまにか私の視界は真っ暗になっていて、上半身が何やら土の感触がした。どうやらさきちゃんは言葉通り、私をベランダに投げ飛ばしたものだと理解した。しかし下はコンクリートのはずだけど…?

 

 「コンクリートを突き破ったんでしょ。しかしそれレベルなんて祥ちゃんの怒りは相当じゃない…」

 

 その後、微かだけど窓を閉める音が聞こえると同時に周りには沈黙が響いた。

 

 私はさきちゃんは黒のレースを履いていた事を思い出しながら誰かの助けを求めるのであった─────。

 

 「いや。意味深は終わり方で締めを括ってるけど、絶対反省してないでしょ」

 


 

 「……これも全部獅音くんが悪いんだっ!!!!」

 「今の回想獅音くん出てなかったでしょ!」

 

 初華ちゃんの回想が漸く終わったけど、結局時間の無駄だという事が改めて分かったよ。完全に八つ当たりじゃない!

 

 「チクショウ、あのクソライオンめ……!」

 「だから今の回想に獅音くんは出てないって言ってるでしょうが!」

 

 何処にも出てなかったじゃない。いや出てたけど名前だけだし。被害妄想も甚だしいし、理不尽にも程がある。

 

 というよりこの二人には獅音くんが見えるのってくらい怒り狂ってるし…。しかも『頭が狂ってる』レベルで余計タチが悪い。

 

 もしかして私と読者には見えないくらい小さな文字で描写されてたのっ⁉︎

 

※完全に初華と立希の妄想です。そよや読者様は正常ですのでご了承下さいm(_ _)m

 

 「こうなったら、三角さんに恥をかかせたあのクソライオンには地獄を見せなければ…!」

 「そんな事考えてる時点で立希ちゃんが恥をかいてるんだけどっ⁉︎」

 「三角さん!」

 「うん!やろうよ、立希ちゃん!」

 

 ちょっとぉぉぉぉぉぉぉ‼︎何企んでるのあの二人⁉︎絶対嫌な予感しかしないんだけどっ⁉︎

 

 「クソライオンに…」

 「獅音くんに…」

 

裁きの鉄槌をっ!!

 

 「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉ!これ絶対私巻き込まれるパターンじゃん!」

 


 

 そして数日後、バレンタイン当日──。

 

 獅音は祥子と一緒に街中を歩いていた。まだ寒さがあるのか、お互い防寒対策の上着を着用していた。

 

 この日はAve MujicaやMyGO!!!!!のスケジュールはオフで、二人でお出かけ…といきたいところなのだがそうではなく、今回は三人でお出かけするのだ。

 

 今回、お出かけするメンバーは彼らの他には…燈もいるのだ。理由としては、『今日は祥子の誕生日のため、彼女を祝いたいから』との事である。

 

 ちなみにその燈であるが、二人が直接迎えに行くため今は此処にいないのだ。

 

 それから程なくして燈の自宅まで到着した。その後は彼女と無事合流を果たすのであった。

 

 「お待たせしました」

 「れおくん、祥ちゃん。早く、行こ…」

 「そうだね」

 

 合流を果たすと、三人は今回の目的地に向かうのであった。しかし三人は気づいていなかった。物陰から隠れて自分達を監視、尾行されている事に…。

 

 「あのクソライオン、燈とお出かけとはいい度胸だな?」

 「そうだね。私を差し置いてさきちゃんと出かけるなんて何様のつもりか尋ねたいね」

 

 両手にトンファーを装着した立希はその場でジャブをしながら今の獅音に対しての率直な気持ちを述べた。一方の初華も両手に持っているヌンチャクを振り回しながら、立希の気持ちに同感しているようで怒りを露わにしていた。

 

 「ねぇ、貴女達ホントに物騒な事を起こさないよね?下手したら二人が警察に捕まっても文句は言えないよ?」

 「「後悔はしないから大丈夫!!」」

 「後悔する前に反省しなさいよ!」

 「「反省?ナニソレ?」」

 「もうヤる気満々だよこの二人っ!」

 

 そよが諭そうとするも、この二人は聞く耳持たずで持っている武器を振り回していた。

 

 「長崎さん。そこをどいて貰えると助かります」

 「海鈴ちゃん。一つ聞くけど、貴女は何をする気なの?」

 

 二人に呆れていたそよだが、途中から割って入ってきたのは海鈴であった。その海鈴は、サングラスを掛けて鎖鎌を振り回していた。

 

 そんな海鈴にそよは怪訝な表情を浮かべていた。

 

 「三角さんも立希さんも私の事を信用しているというので、獅音さんを仕留める手伝いを頼まれたのです」

 「それ二人のいいように利用されてるだけでしょうがっ!」

 

 二人に利用されている事を露知らず、海鈴はなんて事ない表情で淡々と述べるも、そよに一蹴されるのであった。

 

 「おそらく京介さんも信用してくれる筈です」

 「幻滅するの間違いだからっ!仮にどのような過程でそんな状態から信用するに至るまでになるか、逆に気になるんだけど!」

 

 全くありもしない幻想に囚われた海鈴にそよは指摘するしかなかった。しかし当の海鈴は立希と初華と同じように聞く耳持たずであった。

 

 「やっと来たか海鈴」

 「遅れてすみません、準備に手間取ってました。信用してください」

 「大丈夫だよ。標的(ターゲット)はたった今動いたばかりだから」

 「分かりました。それでは此方も動きましょうか」

 

 海鈴が来た事に立希と初華も獅音を仕留めるために動き出す事を蹶起するのであった。

 

 「「やめんか、バカどもっ!!」」

 「「「あべしっ⁉︎」」」

 

 三人組が動き出すちょうどその時、颯樹が立希と初華の後頭部にダブルラリアットを、京介が海鈴の後頭部に回し蹴りをキメて、三人が行動を移す前に無事阻止する事が出来た。

 

 ちなみに二人の背後には美優が控えていたのは此処だけの話である。

 

 「全く、この二人は凝りんな。それに加えて海鈴まで加担するとは…」

 「ホントに。やれやれだぜ…ましろの誕生日プレゼントを買いに行こうと思ったのに予定がパァだよチクショウめ」

 

 二人は初華達をロープで縛り上げながらそんな事を愚痴るのであった。京介の愚痴を聞いたそよは内心『ご愁傷様…』と呟くしかできなかった。

 

 「…ちょうどそよに用があったんだ」

 「なんですか?」

 「実は此処最近ゴタゴタが多くて君に伝えられなくてな……今月の19日にましろの誕生日パーティがあるから君を招待しようと思ったんだ。はいコレ、招待状ね」

 

 偶然自身の目にそよが映った京介は思い出したように、懐から洒落た封筒を取り出してそよに差し出した。

 

 そよは何故と思うも、ましろや彼女が属するMorfonicaとは高校の先輩後輩なのと、京介や他のMorfonicaが主催だが、大半の取り仕切りは彼が行なっているのは明白だが、卒業シーズンまであと1ヶ月くらいのため、彼の言い分に腑に落ちるのであった。

 

 「ちなみに祥子と睦も参加するぞ」

 「……分かりました。予定を空けて参加させて貰います」

 

 当初は参加するか否か迷うも、自身の友達の名前を京介の口から出たそよは即決で参加する事を彼に伝えるのであった。

 

 「貴女方ですのね、私の颯樹様の手を煩わせる厄介者は」

 

 今まで黙って見ていた美優は黒い笑みを浮かべて指を鳴らして悪い意味での準備をしていた。

 

 「てか、トンファーとヌンチャクと鎖鎌って何。この後、警察署に突き出せば良い?」

 「こりゃムジカはまた悪い報道が流れるぞ…」

 「その前に二人は体調不良とかで誤魔化すしかない」

 

 ロープで縛られた三人を見ながら、颯樹と京介はこの後の事を考えていた。それもそのはず、そのうちの二人は現役のプロバンドマンだから、警察に突き出すとマスコミのいい的になるおそれがあるため、その際の対処を考えているのだ。

 

 「あ、私は関係無いのでお仕置は立希ちゃんと初華ちゃんと海鈴ちゃんにどうぞ」

 「ちょっ、そよ!?」

 

 しかしそんな傍ら、そよは何もしないで立希達三人を何の躊躇もなく売った。

 

 「あら、長崎さんではありませんこと?こんな所でお会いするなんて、奇遇ですわね♪」

 

 そんな中、美優は自身の目に偶然そよが映ったので彼女に挨拶をした。

 

 「あ、藤宮さん。ごきげんよう、今日はお日柄も良く「堅苦しい挨拶は結構ですわ」……幻滅しました?」

 「いいえ、むしろこれが貴女の素と知れただけでも良い収穫ですわ。さて、お痛をご所望の方は其方のお方達でよろしいんですの?」

 

 そよも美優に挨拶を返すも、そよ自身の本性を既に見抜いていたようで素のままでいいのと諭した後、ロープで縛られている三人に視線を移すと、確認を取った。

 

 「あ、そうです。すみません、颯樹さん共々お世話になっちゃって……」

 「……颯樹様、ご説明を願えますか?事と次第によっては、私……そこのお二人に加減ができないかもしれませんので♪」

 「……わ、わかった。最初から説明する」

 「(……こ、怖。立希ちゃんと初華ちゃん、生命が有るといいね。まっ、私は何も知らないし無関係だから)」

 

 そよから確認を取り終えた美優は颯樹に説明を求めるも、先程とは比べ物にならないくらい黒い笑みを浮かべていた。

 

 全員が臆する中、そよも冷や汗を掻くが、元を正せば原因は立希達三人のため無関係と割り切った。

 

 「それじゃ僕は美優と一緒にこのバカ三人を連れて色々ハナシをする。京介、コレは僕からのせめてものの詫びだ。好きな物に使うといい」

 

 颯樹は財布から一万円札を取り出して京介に差し出した。

 

 「そんなわりぃって。受け取れんよ」

 「お前の予定を狂わせてしまった詫びだよ」

 「……分かった。ありがたく受け取っておく」

 

 それに対し京介は受け取るのを固辞するも、颯樹が頭を下げてきたからか、渋々折れて一万円札を受け取って財布に仕舞った。

 

 「颯樹様、早く行きましょうか?」

 「そうだな。それじゃ僕らは此処らでお(いとま)するよ……逝くぞ、三人とも?」

 「颯樹先輩、『いく』の字が違うとお…きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」

 「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」」

 

 二人は問答無用で三人を引き摺ると、そのまま近くに控えていた車に無理矢理乗せると、自身達も乗り込んでその場を後にするのであった。

 

 「……京介さん。私も倉田先輩の誕生日プレゼントを買いに行きたいので、同行してもいいですか?」

 「質問を質問で返すのはマナー違反だが、一応この後予定はあるか?」

 「ありますが大丈夫です。時間はまだ余裕があるので問題ありません」

 「……分かった。それじゃ行こうか」

 「はい」

 

 そよも京介と共にましろの誕生日プレゼントを買いにその場を後にするのであった────。

 


 

 「今日は色々ありがとうございますわ」

 

 お出かけが始まって数時間後、日の入りの影響からか、辺りは暗くなり始めた。

 

 今はお出かけの帰り道で、獅音の両手には紙袋を掲げていた。

 

 「私は、楽しかったよ…」

 「僕もだよ」

 

 共に行動していた獅音と燈も今回のお出かけは好評のようで、それを見た祥子は微笑んだ。あとは各々の家に帰るだけなので、獅音と祥子は燈を彼女の家に送ろうとした。

 

 「……そうだ。一つ寄りたいところがあるんだけど、いいかな?」

 

 その際、獅音は思い出したように寄り道をしないかと提案した。

 

 「……分かりましたわ。早速行きましょう」

 

 何の意図があるか理解していなかった祥子だが、悪い事は何もないと判断したようで獅音の提案に乗り、その場所に向かうよう促した。

 

 その後は電車やバスを乗り継いで行くこと約数十分後、三人が一度訪れた…獅音の実家の前に到着した。

 

 「さ、入って」

 

 獅音は慣れた手つきで家の鍵を開けると祥子達に中に入るよう促した。最初は忘れ物だと考えてた祥子だが、それなら獅音一人中に入れば済む話のため、何故自分達も入るのか理解出来なかった。

 

 しかし郷に入らば郷に従えとも言うので、二人は獅音に促されて家の中に入った。

 

 そして獅音の案内でリビングに到着したが……

 

パァンッ!!!!

 

 突然破裂音が聞こえたのだ。何事かと思い辺りを見渡す祥子であった。

 

 「さきこ!お誕生日おめでとう!」

 「おめでとう祥子ちゃん!」

 「祥、おめでとう…」

 

 にゃむ、愛音、睦に何故か出迎えられたのだ。彼女達の後ろにはご馳走を見て目を輝かせて摘み食いをしようとする楽奈とそれを止めているそよ、颯樹達も控えていた。そして部屋に垂れ幕が張っており、『Happy Birthday、祥子』と書かれていた。

 

 「これはもしかして…」

 「そう。祥ちゃんの、誕生日パーティ…」

 「みんなで祥子ちゃんを祝おうってなって、全員で準備していたんだよ」

 

 獅音が説明するも、何故か辺りを見渡していた。

 

 「そういえば、立希さん達は?」

 「立希、初華、海鈴は予定が出来て今回は不参加だそうだ。代わりだけど、『誕生日おめでとう』って伝言を預かった」

 「そうですか…あと何故颯樹さん達も参加を?」

 「今回の話を偶然に耳にしてな」

 

 此処に三人いない理由を聞いた獅音は何処か納得していた。

 

 ちなみに颯樹と美優は、三人を説教中に祥子の誕生日パーティの事を聞いて、主催である愛音とにゃむに確認を取った後に自分達から参加を買って出て、京介はそよと共にましろの誕生日プレゼントを選んでいる際に今回の話を聞いた後にましろの誕生日パーティのお誘いのお礼として彼女からの招待を受けて急遽参加する事になったのだ。

 

 「そうなんですか…来てくれてありがとうございますわ」

 「大丈夫だよ。それじゃ、そろそろパーティを始めようか?」

 

 颯樹の一言をきっかけに祥子の誕生日パーティが始まるのであった。

 

 その後はにゃむや愛音を中心として騒いだり、楽奈がフライングしてバースデーケーキを食べようとしたりするなどもあったが、それ以外何も問題無くパーティは順調に進むのであった。

 

 一方……

 

 「何故私たちがこんな目に……」

 「流石に酷いだろ……」

 「あまりにも無情です……」

 

 初華、立希、海鈴の三人は駅前の広場にてゴミ拾いをしていた。あの後颯樹と美優による数時間のお説教を受けた後、駅前の清掃ボランティアに強制参加させられているのだ。

 

 しかも千歌の見張り付きなので、仮に逃げてもものの数分で捕まるのは目に見えているので渋々ゴミ拾いをするしかなかったのだ。

 

 「貴女達。手が止まっていますよ?」

 「「「ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」」」

 

 千歌に手が止まっている事を指摘されると同時に睨まれた三人は情けない声を挙げるしかなかった。

 

 ちなみにその翌日以降、三人は日本全国各地で清掃ボランティアに参加させられたのは此処だけの話である────。




 まずは感想、お気に入り登録をしてくれた方、こんな拙作を応援いただきありがとうございます!こんな拙作読んでくれるだけでもありがたいです!

 次回の更新はまだ未定ですが、4月に向けての新作と、R-18指定の作品にも挑戦して行こうと思います。

 それでは、次回をお楽しみに。




※このお話の投稿日である2月14日は……『Ave Mujica』のキーボード担当で忘却の女神と謳われる、オブリビオニスこと豊川(とがわ) 祥子(さきこ)ちゃんの誕生日です!この場を借りて、改めてお祝いをさせてください! おめでとう、祥子!

獅音の女装回を……

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