真実の愛に目覚めた伊地知星歌(29)   作:三十路スキー

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これは一途な愛の物語。


親愛なるぼっちちゃんへ

「おねえちゃん、もう寝なよ。明日早いんでしょ?」

 

 もうすぐ日付が変わる時間、伊地知星歌はリビングでPC作業をしていた。妹の虹夏は心配そうに横から顔を出す。

 

「ああ、これ終わったらな。お前こそ明日も学校なんだから、早く寝ないと遅刻するぞ」

「ずっとパソコンでなにやってんの?」

「覗くな。仕事だよ。事務作業が溜まっててな。こういうのが自営業のつらいところだな」

 

 相変わらず事務作業は苦手だ。オーナー店長といえば聞こえはいいけど実態はしがない個人事業主。仕事の尻ぬぐいは誰もしてくれない。でもこれも愛するライブハウスのため。夢の場所を守るため。

 

「おやすみお姉ちゃん。無理しちゃダメだよ?」

「おやすみ。寝坊すんなよ?」

「もー! わかってるよ!」

「ふふっ……」

 

 可愛い妹のムクれ顔を見て、星歌の顔に笑みがこぼれる。

 

 

「さて、と。お楽しみの時間だ」

 

 星歌は仕事に一段落付けてマル秘フォルダにアクセスする。パスワードはあの娘の誕生日。フォルダの中はぼっちちゃんこと後藤ひとりの写真でいっぱいだ。星歌に言わせればこれはあくまでも記録用。断じて盗撮などではない。後藤ひとり伝説の1ページを大切に保管しているのだ。彼女が後に偉大なギタリストになると星歌は心から信じている。

 これが伊地知星歌の誰にも言えない宝物。ぼっちちゃんがバイトを始めたあの日から少しずつ増えた思い出たち。

 

「結束バンドは私らのやってたバンドよりずっとスゴくなる」

 

 星歌は本気で思っている。今の彼女たちには口が裂けても言えないけど。

 

「今日も手紙を書いてから寝よう」

 

 もう一つの秘密フォルダを開く。今日の日付でテキストファイルを作る。日課になった『手紙』の時間だ。決して口に出せない想いをぶちまける。

 

 

 

 

 

親愛なるぼっちちゃんへ

 

月日が経つのは早いものだ。お前と出会ってからしばらく経つ。

私は、相変わらずこうして送る当てのない手紙を書き続けている。

初めて出会ったのは5月の空の下、私の大事なライブハウスの入口だったな。

 

一目見た時から、お前は私の心を捉えて放さない。一目惚れってやつかな。

ぼっちちゃんの顔が好きだ。ぼっちちゃんの声が好きだ。ぼっちちゃんのギターが好きだ。

私はぼっちちゃんが好きだ。ルックスやギターの才能も全部含めて。お前をもっと愛したい。

 

でもそんなことはどうでもいい。本当に愛しているのはその人柄。あたたかい心だ。

普段は小動物みたいなネクラ少女のくせに、妹たちのピンチをいつも壊してくれたよな。

オーディションも、逆境の中でのライブも、文化祭でも、ぼっちちゃんはかっこよかったよ。

私はずっと見てたからな。

 

本当はこんなこと考えたらいけないのかもしれない。私は29歳で、ぼっちちゃんはまだ15歳。

世間一般で言えば許されることじゃない。おまけに女同士だ。やっぱり不自然かな。

でも年齢も性別も関係ない。好きの気持ちは止められない。

母さんが死んでから、もう懲りたんだ。これからは素直に気持ちを伝えなきゃいけないって思う。

でも素直になれないんだ。ダメな私を許してほしい。

 

あぁ、ぼっちちゃん。今は遠くから見守っているよ。おまえのことちゃんと見てるからな。

夜空の星を見上げながら、私はずっと待っている。愛しい、愛しい、ぼっちちゃん。

私が織姫、お前が彦星。きっと迎えに来てくれる。この想いがいつか届きますように。

 

星歌より愛を込めて

 

 

 

 

 

「さて、寝るか。今日もよろしく、ひとりちゃん」

 

 星歌は独りごちてから立ち上がる。深海生物をモチーフにしたピンクのぬいぐるみが最近のお気に入り。名前は『ひとりちゃん』だ。

 

「夢の中ぐらいは素直な私でいたいんだ」

 

 

 

――ぼっちちゃんのぱんつ、被りてぇな。




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クレイジー下北沢2(仮)主人公は誰がいい?

  • ぽいずんやみ
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