真実の愛に目覚めた伊地知星歌(29)   作:三十路スキー

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三度従業員にセクハラされる店長(30)

将来の義母(予定)に挨拶しておきたい星歌さん


将来の義母と義妹(仮)がやってきたぞ!

「にゃんにゃんにゃーん! せんぱいぃーだっこー!」

「死ね、酒クズ」

「ちょっとー! ひどいですよぅせんぱーい! ぶえええん!」

「うるせぇ! 仕事の邪魔なんだよ! 冷やかしなら帰れ!」

「私、ぼっちちゃんからチケット買いましたよ。立派なお客さんですよーだ」

 

 廣井が今日のチケットをヒラヒラとさせる。お目当てのバンドはもちろん結束バンド。

 

「ぐぬぬ……。でもドリンク代はきっちり払えよ」

「そんなー! チケット代でギリだったのにー! ここはツケで!」

「……しょうがねぇな。どうせカネないだろうし、今回だけな」

 

 最近、廣井は下北沢に来る時は酒を抜いてくる。例外的に後藤ひとりに会う時だけはおにころを飲んで酔わなければ無理だという。

 シラフの自分を『ぼっちちゃん』には見せられないのだ。星歌もそれを察してか、邪険に扱いながらもこの酔っ払いを黙認している。ひとりにはこの『お姉さん』が必要なのだ。

 呑んでいない時はしまくらで買ったピンクジャージを上だけ羽織って来るけれど、結束バンドの前にはいつものスカジャンスタイルで来る。彼女たちの前では『シックハックの廣井きくり』で居たいのだろう。そうじゃなければ、恥ずかしさやら気まずさで潰れてしまう。

 

「あー! ぼっちちゃんだー! おーい、きくりお姉さんだよー!」

 

 今日はブッキングライブの日。若手中心のライブで結束バンドも参加している。虹夏たちは、ここで月一ライブ出演を続けている。最近は他所でライブをしたり、路上ライブも積極的に行っているようだ。本気で夢に走り出したんだよな。あいつらも成長したと、星歌は密かに思っている。本人たちには絶対に言えないけれど。

 特にぼっちちゃんの成長は著しい。メルヘンなド三流ライター佐藤に好き勝手言われた時は、見返したいからと、自分から『未確認ライオット』への出場を提案したという。最初の頃では考えられない。

 

 喜多曰く『あの時の顔と声、もうイケメン過ぎて尊死しそうでした! キャー!』

 

 あの日の惨めなマンゴー仮面はもう居ない。ギタリストとして大いに成長しているし、目標やライバルも出来た。アルバイトとしても少しずつだけど頑張っている。最初に比べれば目とか合わせられるようになってるし、コミュ障も少しはマシになった……と星歌は思う。誕生日を迎えて16歳、4月には2年生になる。時が経つのは早いものだと星歌はしみじみと感じていた。

 

(ぐふふ……やっぱり女子高生は最高だぜ……。ちゃんと見ているからな)

 

 もちろん、成長や青春という意味でだ。大人になると忘れてしまう感情かもしれない。他意は無い。無いったらない! 廣井やバンドメンバーとじゃれ合っているひとりを見ながら、センチメンタルに浸る星歌。

 

「……ぼっちちゃん、頑張れよ」

「みんな変わっていくんですよ。後藤さんだっていつまでも貴方のお気に入りな『かわいいぼっちちゃん』ではいてくれませんねぇ」

「ぬお! PAいつからそこに?」

 

 横からぬっとPAが入ってきた。何か達観したようなムードを漂わせる。

 

「分かってるよそんなことぐらい。私はぼっちちゃんの成長が純粋にうれしいだけだ」

「ウフフ……。まあいいじゃないですか。私たちも変わっていきましょうよ。早速新しい扉を開けて差し上げましょう。えい♪」

 

 そういうと星歌の尻をむんずと掴み弄るPA。その小ぶりな尻を丁寧に揉みしだく。

 

「や、止めろ! あ、おふぅ……」

「あらあら、感じてらっしゃるのですか? 店長。営業時間なのに、はしたないですねぇ……」

「……マジ止めろ」

「へ?」

「調子に乗るんじゃ……ねえ!」

「ぐぎゃああああ!」

 

 星歌がPAの腕を掴み捩じ上げる。そのまま伊地知式アームロックに捉える。

 

「ご、ごめんなさいいい! ギブギブギブー! ほんのジョークですよぉ!」

 

 涙目で許しを請うPA。

 

「今度やったら、警察に突き出すからな!」

 

 

 

 そうこうしていると、後藤ひとりの呼んだお客様、妹のふたりと母の後藤美智代がやって来た。ふたりはライブには父付き添いで何度かやって来てもうすっかり馴染んでいる。小さい子供が苦手な星歌は最初戸惑ったが、明るく無邪気なふたりを見て、拗ねる前の虹夏を思いだして少し懐かしい気分にもなったりする。

 美智代については文化祭でひとりがダイブして大騒ぎになったときに少し話して以来だ。スターリーに来店するのは初めてだ。虹夏たちが言ってた通り、かなりの美人だ。もう40近いらしいがそうは見えない。親を見れば娘のレベルが分かると世間の人はよく言うがまさに好例だろう。

 

「こんにちわ! 星歌おねぇちゃん」

「こんにちわ、ふたりちゃん。ちゃんと挨拶できて偉いね」

「ご無沙汰してます店長さん。ひとりちゃんの文化祭以来ですね」

「どうも、ひとりちゃんにはいつもお世話になっています」

「こちらこそ娘を働かせていただいて、本当に感謝しています」

 

 2人と挨拶を交わす星歌。つい恐縮してしまう。

 

「わーい!」

 

 星歌の脚にひしっと抱き着くふたり。すっかり星歌にも懐いている。

 

(ぐへへ……この娘はぼっちちゃんと同じ産道を通ったんだよな……)

 

 星歌、野獣の眼光。鼻の下は伸びっぱなしだ。

 

「お! ……って急にどうした?」

 

 咄嗟に冷静を装う星歌。心の中はもうウキウキだ。

 

(違う! そういうんじゃないから!)

 

「こらっ。はしゃがないの。すみませんね、店長さん。この娘おてんばで」

「いえいえ。大丈夫ですよ」

 

 向こうからドドドド! と走る音が聞こえてくる。

 

「うおおおお! ふたりちゃーん!」

 

 何かを察したのか、向こうから喜多がシュバババっと走って来た。星歌からふたりを強引に引き剥がす。

 

「こ、こんにちわー、ふたりちゃん! 今日もライブ見に来てくれてありがとう! お姉ちゃんとこっちにおいでー。ジュース飲ませてあげるね」

「うん! 喜多お姉ちゃん! そっち行くー」

「おいどうした喜多。そんな慌てて」

「あらあら、元気ねえ喜多ちゃん」

 

 唖然とする星歌と美智代。

 

「ハア、ハア……。店長さん。そろそろ私たちもリハ入りますね」

「お、おう。今日も頑張れよ」

 

 息を切らせる喜多。そんな喜多に手を引かれて楽屋の方へ向かうふたり。喜多が無言でこちらを見る。ジトっとしたまなざし。

 

 

 

 

 

 ――なぜ私を睨むんだ! まさかふたりちゃんまで狙って……。 




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クレイジー下北沢2(仮)主人公は誰がいい?

  • ぽいずんやみ
  • 伊地知星歌
  • ファン2号
  • 結束バンドおばさん
  • PAさん
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