これを小説と言い張る勇気。
『わ、私と、バンド組みませんか!?』
正直見てられなかった。折角の大学生活、部活にでも入ろうかと思ってた時、いきなり話しかけてきたおさげ髪の女の子、廣井きくり。ロックバンドよりもピアノか吹奏楽あたりが似合いそうな控えめな女の子。真っ赤な顔で大声を張り上げて私を誘ったあの娘。
意外と思われるかもしれないが、この岩下志麻は縁や運命を信じるタイプだ。趣味はパワースポット巡り。パワーストーンを集めたり、テレビの占いコーナーにさえ一喜一憂したりする。
――私にとって彼女は『運命』そのものだった。
『い、岩下さん……これからよ、よろしく、お、お願いします』
『志麻って呼んで。それから敬語は禁止。もっと肩の力抜いたほうがいい』
『あ、うん。……し、志麻……さん』
『……志麻でいいよ。ゆっくり慣れていこうか、きくり』
最初はギクシャクしてた私たちの関係も、遊んで、練習して、ライブして、少しずつ深まっていった。
『ごめーん! 志麻ー! たづけてぐだざいー!』
『いい加減にしろよ廣井! まーた飲み代払えないのか!』
『だからごめんて!』
こんな形で打ち解けたくはなかったけどな。初ライブで飲んだくれてから、すっかりクズベーシストの道を転げ落ちている我が友よ。バンドを辞めていった連中みたいにあいつを見限れたらどんなにラクだったか。でも、私はあいつをほっとけないんだ。好きだから。
――共依存ってやつかな。それでもいい。
「あ……。ん……。いっ……っくぅ……」
きくりがまだ眠る早朝、そんなことを考えながら手を動かしていると、下着の中に今日の材料が溜まる。廣井きくりへの愛情だけで排泄した純度100パーセントのラブジュース。これを純白の六尺ふんどしに塗りこむ。これを1日3回確実に行う。そして長い間天日干しにすれば、少量の塩が採取できる。
これぞ、岩下家に伝わる秘伝『膣塩』だ。『エリート塩』とも製法は似ているが、似て非なるものだ。あのような汚らわしいものとは、純度と愛情が違う。
今日はすでに採取したものを使うが、ストックはしっかりと確保しておきたい。これから沢山必要になるからな。きくり、これもお前のためなんだ。
「おはよう。朝食が出来たぞ」
「お、おはよう志麻。わあ……すごい。ありがとう、志麻」
「いいよ。これから忙しくなるんだから、沢山食べて体力付けなきゃな」
私お手製の朝食。純和風で結構豪華。我ながら旅館レベルのクオリティだ。ふたりで食べるのが楽しみだ。でも私の『塩』をたっぷりと使っていることは、きくりには内緒にしておこう。きっと優しい味がするから。
「さあ、手を合わせて。いただきます」
「い、いただきます……」
膣塩、それは古代中国に伝わる究極の塩。真に愛し合う乙女たちの膣塩、これ最も良し。始皇帝が不老不死の妙薬として欲し、とうとう敵わなかったことでも知られる。三国時代の英雄、曹操が絢爛豪華な銅雀台に美女を並べその膣塩を欲したことが、かの赤壁の戦いの遠因になったとも言われているが定かではない。
一方、下北沢のアレ(30)は悩んでいた……。
(ファン2号によると、ぼっちちゃんの肛門のしわは21本の可能性が高いという。私は、ぼっちちゃんがうんちするところが見たい。とても見たい。羞恥で顔を真っ赤にしながら、肛門をヒクヒクとさせるぼっちちゃん。私はちゃんと見てるからな。なーんていうのはどうだろう? 最高じゃないか)
考える人、伊地知星歌。
「お姉ちゃんどしたの? 難しい顔して」
虹夏が横からひょっこりと顔を出す。
「ん? ああ、虹夏か。最近、経営がカツカツでさ。客足もいまいち延びないし、お前らバイトの賃金は上がっているし。PAたちには昇給を我慢してもらっている。もうチケット代やドリンク代に転嫁するしかないかなって。でもそれだとまた客足が……」
星歌は眉間にシワを寄せて顔を伏せる。真剣な面持ちで再びパソコンに向かう。
「頑張ってね。あたしには応援することしかできないけどさ」
虹夏は穏やかな笑顔で去っていった。
「ふぅ、危ない危ない。こんなこと考えてることが知れたら、姉妹の縁を切られかねんぞ……」
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クレイジー下北沢2(仮)主人公は誰がいい?
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ぽいずんやみ
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伊地知星歌
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ファン2号
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結束バンドおばさん
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PAさん