「ばんらぼ☆プレゼンツ! ぽいずんやみのぉーやみちゃんねるー!」
あーやってらんねぇー。そもそもあたしは音楽ライターなのよ。それなのに! ああ、それなのに! こんな場末のオーチューバ―もどきをやらないといけないのよ! 『ばんらぼ』の編集長が動画がバズったら連載させてやるって言ったから企画に乗ったはいいけど、全っ然! 伸びないのよねぇ。
「こんにちわー! 未来の大物音楽ライターぽいずんやみ14歳でーす♪ きゃは☆」
実年齢24歳。正直このキャラ、キツくなってきたわね……。いいオンナ路線とかにイメチェンしてぇ。特製魔女っ子ステッキも用意してキャラ付けしてみたけど、スターリーの店長にへし折られるし。散々よね! ひとりさんのお尻にマジカルタッチしようとしただけじゃない! ほんのコミュニケーションよ!
「では早速行ってみましょう! 突撃☆やみちゃんのコーナーin渋谷!」
今日は渋谷ロケよ! といっても自撮りだけどね。もちろん編集もあたしがやるの。
「やみちゃんが最新のバンド事情を突撃取材しちゃいまーす!」
はああああ……。いろいろ言いたいことはあるけど、まあいいや。とにかくがんばるぞい!
「ねぇねぇ……ホ別2万でどう? ハァハァ……ニチャア……」
っていきなりヤバいオヤジに絡まれるし。体臭がカメムシ臭いし、息も激臭! 生ゴミでも食ってんのか? でもそれをネットで素直に指摘したら、イマドキ大炎上で大変なことになっちゃう! 『ばんらぼ』も『ストレイビート』もクビなんて勘弁よ! あたしは未来の大物ライターなのよ! それに、司馬さんたちには迷惑かけたくないし。あの人なら炎上常習犯のあたしなんかでも、庇ってくれるんだろうな。アレで結構優しいから。だからこそ、だよね。
『ロリ神レクイエム』こと防犯ブザーに手を掛けて、伝家の宝刀! しゃらららん♪
「警察呼びますよ?」
腐れ禿の顔が青ざめる。
「うひぃいいいい! すみませんでしたぁ!」
一目散に逃げていくスダレハゲ。やっぱこれだね。丁度交番近くにあったし。おととい☆きやがれ♪
「お、あれはシックハックの清水イライザさんじゃないですか! それでは早速、突撃やみちゃん!」
おお、早速インディーズの有名人を発見! うちの視聴者層にぴったりじゃないの! 蒼い目金髪のヲタクギタリスト! バンドは何度か取材してるし、もうマブダチみたいなもんよねあたしたち!
「イライザさーん! 突撃やみちゃんでーす♪ なにしてるんですかー?」
そーれ行くわよ! 突撃インタビュー! たとえお忍びデートだろうと関係なーし! それがあたしのやりかたよ! 空気読め? デリカシー? なにそれおいしいの?
「私は清水イライザではナイ。今の私はマスクド寿司侍。世界で一番、音戯アルトを愛する者だ。それ以上でもそれ以下でもナイ」
赤いノースリーブでサングラス姿のイライザさん。まーたなにか変なアニメに影響されてるのかな。黙ってれば美人なのにもったいない。音戯アルトとかいうバーチャルオーチューバ―に嵌ってるってのはインタビューで言ってたっけ。普段とのギャップで読者の評判も良かったのを覚えてる。
「は、はあ……」
ガソダムだっけ? まあ、あたしはあんまり知らないけど。そういや、昔やってたイケメンがいっぱい出てくる奴はちょっと見たかな。コミマでヤベー同人誌いっぱいあったのは覚えてるわ。
「認めたくないものだナ。サボテンが花をつけている……でよかったデス?」
なんのこっちゃ。あたしに聞かれても知らないわよ!
「今日の私は、阿修羅をも凌駕する存在だ! ふはははは! 待っててネ! アルちゃーん!!」
金髪の不審者は、なんかいろいろ叫びながらアニメエイド渋谷店に突撃していった。こんなヤベー奴だったんだ。取材では廣井さんばっかりヤバくてあんまり目立たないんだよね。
さ、ギター上手くて美形なだけのチー牛ヲタクのことは忘れて、取材続行!
「ちょいちょい、アナタちょっといーい?」
後ろから私自慢の萌え袖を誰かが引っ張ってくる。やめなさいよ! 延びるから!
「うわ! なんなのよ! もう!」
今日は日曜なのに制服姿のJK? 居ないことはないだろうけど。お、結構スタイルいいわねぇ。かなりグラマーでグラビアなら即戦力じゃない?特にバストがムチムチプリンで勃起もんやでぇ……。スタイルはギターヒーローさんにも負けてないわ。
「ねぇねぇ、超ナウいお勧めのバンドがあるんけど。聞いたらもう、チョベリグでアゲアゲよー」
顔を見たら、うわキッツ! まあまあ美人だけど、よく見たらアラフォーぐらいのおばさんじゃないの! 小皺とほうれい線が年齢を物語ってるわ。美熟女路線ならイケそうなのに、この恰好じゃ不審者よ!
そこ! お前が言うなとか言うなー! あたしも正直自分でキツいと思ってるけど、ライターとしてのキャラ作りだから仕方ないのよ! まあ、好きでやってるんだけど……。
「は、はぁ」
うへぇ……。こういうヤツは相手にしないに限るわ。テキトーに追い返して編集でカットしとこ。
「はい。どうぞ。聞いてくれなきゃチョベリバのMK5よー!」
あたしの片耳にイヤホンを押し付けてくる。聞き覚えのあるメロディ。もしかしてもしなくても! これってあの娘たちの曲じゃないの!
「……あれ、もしかしてこの曲って……」
まあ、聞くまでも無いんだけど。
「私の推しバンド、結束バンドでーす!」
ああ、やっぱりだ。最近話題の都市伝説、結束バンドおばさんに遭遇してしまった!
「あの、もしかして貴方が噂の結束バンドおばさんですか!?」
ええい、ままよ! 不躾に質問してみる。この方があたしらしい! ってね。
「もう! いきなりおばさんなんて、失礼しちゃうわ! ぷんぷん!」
思いっきりぶりっ子ポーズする制服のおばさん。弛んだお腹がチラリと見える。制服パツンパツンじゃないの。
「私はごと……みったん16歳でーす♪」
今日のあたしは、みったん16歳を自称するこのおばさんに、それはもう散々振り回されることになるのだった……。
次回『結束バンドオバサンズ』に続く。
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