遅れ過ぎだがな。時間軸はぼっちたちが1年生の師走。
調べると、リアルのライブハウスって年末年始は休むとこ多いんだ。
長期休暇も暇になりやすいらしい。
だから原作でもクリスマスに無名バンドが単独打てたのか。
宴のあと。スターリーの年内最終営業が終わった。今日は選りすぐりの常連バンドで忘年会ライブだった。虹夏たち結束バンドの4人は今日もバイト。大きめのイベントは駆け出しのあいつらにはまだまだ早い。
年末年始はどうせ暇になるギョーカイ。スターリーも休みを取ることにする。今春からバンド業界という荒波に漕ぎ出した星歌たちのライブハウス。なんとか年内を乗り切った。まだまだ営業的にはカツカツだけど、常連客も常連バンドも少しずつ増えてきた。来年には無事一周年を迎えることが出来そうだ。
「やれやれ。今日も終わりか」
スタッフたちも帰したし、あとは戸締りをして帰るだけだと星歌は一日の終わりに一息つく。
「お疲れ様です、店長」
「ぴ……PA、まだ帰ってなかったのか?」
ドリンクカウンターの向こうから、ぬっと顔を出すPA。少し後ずさりする星歌。顔には緊張感が漂う。
「うふふ。襲ったりしませんよ。私も本気で嫌われたくはないですしね」
PAには『前科』があるので、星歌がビビる気持ちも少しは察するPA。
「いいのか? 打ち上げ行かなくて」
「騒がしいの、苦手なんです」
「そうか……」
話しているうちに、PAがテキパキと水割りを作る。両手で星歌に差し出す。
「お疲れ様です、店長」
「ホント、お前水割り作るの上手いよな。水商売でもやってたのか?」
星歌の好きなウイスキー。美しい琥珀色。彼女の手元に少し感心していると、星歌の唇に手を当てて一言。
「ナイショです♪」
「ぬぅ……」
BAR営業のあるスターリーでも、初日からテキパキ働いてくれたから店長としては大変助かったが、ライブハウスの即席BARにしては少し艶っぽいなと星歌は思ったりする。
「……ま、いいけど」
「そんなことより、乾杯しましょう?」
「ああ……。乾杯」
グラスの当たる音だけがライブハウスに響く。
「どうですか? あの娘たち。未確認ライオット、腕試しには丁度いいと思いますが」
「まあ、十代限定のイベントだ。参加できるのは今だけ。あのアホタレライターに煽られた結果とはいえ、大きなイベントに挑戦することは悪いことじゃない」
今後彼女たちが『ガチ』でやっていくには、避けては通れない道だ。いつまでも内輪だけでやっていては本当に仲良しクラブで終わってしまう。バンドの世界なら高校生でも早いなんてことはない。
それに、ぼっちちゃんが勇気を出して参加したいと言ったことが星歌にとって何より嬉しかった。星歌は結束バンドを真摯に応援している。それとは別に後藤ひとりに性的な魅力を感じている。あくまで別の話だ。
「そういえば店長が昔やっていたバンドも出場されたらしいですね?」
「んだよ。良く知ってんな。あの頃は閃光なんちゃらって名前だったか。……予選落ちだけどな」
星歌が昔やっていたバンド。新しい夢のために捨てた『あのバンド』だ。少し前までは、バンドの話もされたくなかったが今は思い出として受け入れている。メンバーとは、あの時別れてからそれっきりだったが、最近ひょんなことから再会、和解した。アマチュアで再結成しないかと誘われているが、星歌はノリ気ではないようだ。今は友達として素直に付き合える。
「……何か召し上がりますか? ここではレンチンしかできませんが」
「いや、いい。それより……よかったら泊っていかないか? もう遅いしな。とっておきの『大吟醸きらら』があるんだ」
「まあ、素敵。御馳走になりますね」
ライブハウスの戸締りを終えて、地下から階段を上がるふたり。
「今日はぼっちちゃんが泊っている。もう虹夏と一緒に寝ている頃だろう。」
「あら、ふたりで夜更かししてるんじゃないですか? おしゃべりでもして」
「良い子なんだよ。私らと違ってな。邪魔しないよう、静かに飲もう」
「なら、悪い大人が後藤さんに手を出さないように見張っておかないと……ですね」
ニヤつくPA。
「やっぱ帰れ」
PAの脇腹を小突く星歌。
「きゃーこわーい♪」
「やれやれ……」
こんな夜も悪くない。そう思う星歌であった。
ぎりぎり年内最後! 良いお年をってすぐ年明けだけど!
来年もスローペースですが更新していきます。
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