「ねぇ愛子。今日は仕事行かないで、ずっとイチャイチャ……しませんか?」
今朝は珍しく都の方から甘えてくる。安物のシングルベッド。ふたりで寝るにはやっぱり狭い。
「……駄目よ都。お仕事はちゃんと行かなきゃ。……ブラックでいいよね?」
都の手を振り解いてコーヒーメーカーに向かう。ぷぅっと頬を膨らます都が可愛らしい。あたしが都に食事を奢ってもらう代わりに部屋の掃除をするようになってから、通い妻みたいな関係になるのに、それほど時間は掛からなかった。どちらともなくカラダを求めて、今じゃセックスフレンドみたな関係になっている。軋むベッドの上で都のキャリアウーマン尻を激しく揉みしだくのも悪くないけれど、ひとりさんの奇跡の臀部にはとても敵わない。いつかはひとりさんと……グフフ。
「はい。これ飲んだら仕事行く準備、ね。あたしも今日は下北で取材するわよ!」
「ずず……。ありがとうございます。今日も頑張れそうな気がします」
今の関係はあくまで遊び。どちらかに恋人が出来たら終わりにする約束。
「愛子。チュー……してください」
「仕方ないわね。ほらおいで、甘えたがりの都ちゃん。んっ……」
軽く唇振れるだけ、いわゆるバードキス。ぷるぷるした都の唇が愛おしい。
「むぅ……。私は甘えん坊さんじゃないです! 愛子こそ寂しがり屋さんじゃないですか!」
「あはは……。さあ、さっさと着替て。朝ごはんにするわよ」
都は朝の支度。あたしは朝食の準備。こう見えて家事全般、結構得意なのよ。
「ごちそうさまでした。やっぱり愛子の料理はおいしいですね」
「おそまつさま。……ほら。お弁当作ったから、これ持っていってらっしゃい」
あたしは都に可愛らしいお弁当箱を渡す。
「わあ。もうお昼が楽しみですね!」
「あたしは1時間遅く出るから、片づけやっとくわ」
「ありがとうございます。それじゃこれ『今日の分』です」
都が渡してきたのは茶封筒。律儀に封筒に入れた中身は1000円札と決まっている。要はおこづかい。あたしはすっかりライターの誇りを忘れて司馬都のヒモとなってしまった。ストレイビートは繁忙期限定のバイトだし、ライターだけでは食べていけないあたし。衣食住を殆ど都に依存している現状。そして生活のため、都にカラダを差し出す。彼女は欲しいものをなんでも買ってくれる。背に腹は代えられない。うう……。早く売れてこの生活から抜け出さないと。
「ありがと都。いってらっしゃい」
「いってきます。愛子もお仕事頑張ってくださいね」
マンションの不愛想な金属扉を開けて都が出ていく。今はここが、あたしと都の『ひみつ基地』だ。でも、このままじゃいけない。あたしには、音楽ライターぽいずんやみとしての夢があるのだから。
「さあ、片づけたら『ぽいずんやみ』の取材タイムよー!」
今日は『下北沢の側溝女』を取材するわよ! 現場の見当はついてるし、怪しい奴がいたらインタビューしまくってやるわよ!
さて、下北沢についたら早速これだ。ネットの噂を頼りに、ライブハウス『スターリー』への道中を探していると早速発見してしまう。これが噂の都市伝説『変態側溝女』か……。
「あんたなにやってんの?」
「あ、どーも。この間のライターさんですよね。結束バンドのファン2号です」
側溝女っていうからどんなヤバイ奴かと思ったら、まさか知人とは。可愛らしい女の子が明らかに不似合いな側溝の中からコンニチワ。
「いや、それはわかってるんだけどさ。なにをどうすればそうなるわけ?」
「それはですね……」
クレイジー下北沢2(仮)主人公は誰がいい?
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ぽいずんやみ
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伊地知星歌
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ファン2号
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結束バンドおばさん
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PAさん