側溝の中で熱っぽく話始めるのを一旦遮って、2号ちゃんを側溝から引きずり出す。かなり異臭を漂わせていたので、2人で銭湯に行った。入湯料とコーヒー牛乳は奢る羽目になったわ。とりあえず近くの公園で詳しく話を聞くことにしたけど……。流石は芸大生。クリエイティブなお尻なのね。情熱を秘めた肉体……。そして彼女の演説が始まる。
どうせなら! やみさんには、聞かせてあげます!
ひとりちゃん! 好きよー!
ひとりちゃん! 愛しているのよ! ひとりちゃん!
金沢八景で路上ライブした時から好きだったの!
好きなんてもんじゃないわ! ひとりちゃんの事はもっと知りたいのよ!
ひとりちゃんの事はみんな、ぜーんぶ知っておきたいの!
ひとりちゃんを抱き締めたい! 潰しちゃうくらい抱き締めたーい!
ひとりちゃん! 好きよ! ひとりちゃーーーん! 愛しているのよー!
この心の内の叫びを聞いてよ! ひとりちゃん!
ライブハウスでの2曲目から! ギターヒーローを知ってから!
私は貴方の虜になってしまったの!
愛してるってこと! 好きだってこと! 私に振り向いてほしいの!
ひとりちゃんが私に振り向いてくれれば、私はこんなに苦しまなくって済むのよ!
もう側溝や屋根裏から貴方を見守るハード推し活をしなくて済むの!
優しい貴方なら、私の心のうちを知ってくれて、私に応えてくれるでしょう?
私は貴方を私のものにしたいのよ! その美しい心と美しいすべてを!
誰が邪魔をしようとも奪ってみせる!
恋敵がいるなら、今すぐ出てらっしゃい! 相手になってあげる!
でもひとりちゃんが私の愛に応えてくれれば戦いません!
私はひとりちゃんを抱きしめるだけです! 貴方の心の奥底にまでキスをします!
力一杯のキスをどこにもここにもアソコにもしてみせます!
キスだけじゃない! 心からひとりちゃんに尽くします!
それが私の喜びなんだから!
喜びを分かち合えるのなら、もっと深いキスを!
どこまでも、どこまでも、させてもらいます!
ひとりちゃん! 貴方がライブハウスの中に素っ裸で出ろというのなら!
やってもみせます!
「と、いうわけです。理解できました?」
「んみゃ。よく解らなかったわ……」
――気持ち悪い。
ここまで殆ど息継ぎなしでひとりさんへの想いを語る2号ちゃん。……この娘、やるわね。厄介なファンになる権利があるとあたしが見込んだだけのことはある。あたし思わずメンダコみたいな顔で聞き入ってたわ。ああ、私はカモメ。オーガニック的で、宇宙的なキラキラが見えたわ。今の私は、さしずめ宇宙蛸ってところかしら。
「話は聞かせてもらった!」
「げ! アホ店長!」
「店長さん、こんにちわ」
2号ちゃんの有様に、呆気に取られていると突然の乱入者が! 買い出しの最中なのか『シモキタマート』の袋を両手に持った三十路の変態がそこにいる。スターリー店長、伊地知星歌。一応あんなのでもライブハウスの店長だし、知らない人からは気の強い美女で通るのだけど。
私はあいつの正体を知っている……。
「おう、こんにちわ。……って、誰がアホ店長じゃ誰が!」
「あら、ごめんあそばせー」
「まあ、いい。今はそれどころじゃない。では、改めて……」
買い物袋を置いて、シブ顔決める店長。どうしたのよ、もう。
「私は伊地知星歌。ぼっちちゃんは狙われている!!」
え? なに? 誰か説明してよ!
クレイジー下北沢2(仮)主人公は誰がいい?
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ぽいずんやみ
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伊地知星歌
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ファン2号
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結束バンドおばさん
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PAさん