真実の愛に目覚めた伊地知星歌(29)   作:三十路スキー

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うゑゐぶ様、則本誠様、高評価ありがとうございます!

正体表したね。思い込みさえ強くなければ可愛い後輩。


大胆な誘惑も陰キャの特権 後

「落ち着け廣井!」

 

 廣井はいかにも高そうなフリル付きパンティを履いている。AAAカップの胸はノーブラで乳首には絆創膏。二枚ずつバツ印に貼り付けてある。彼女の躰は酷く痩せている。青白い肌にあばらが浮き出し、背徳的なエロスを感じさせる。

 

「せせせ精一杯ご奉仕しますから! 抱くか抱かれるかしてください!」

 

 今日の廣井はシラフのはずだが瞳がぐるぐるしている。

 

「お前は何を言っているんだ」

「前にも言いましたよね? 私先輩のためならなんでもしますって! あの娘の代わりでもいいですから! 私を可愛がってください!」

「つーか前に私のこと疑ってたけど、お前こそ何かキメてるんじゃないか?」

 

 様子が明らかにおかしい。廣井がまくし立てるように話し始める。

 

「なにもおかしくありませんよ。むしろ元気いっぱいです。この前ぼっちちゃんと妹さんに会ったとき、弾き語りを一曲聞いてもらったんです。私が普段弾かないような甘酸っぱいラブソングを。そしたらぼっちちゃんドロドロに溶けちゃって。それは妹さんが修復してくれたので事なきを得たのですが……」

 

 廣井の瞳に怪しい輝きが。

 

「お、おう」

 

 廣井が続ける。

 

「ちょっとだけ何か吸い込んだみたいですが、おかげで私とっても元気になりました。きっとぼっちちゃんが励ましてくれたからだと思うんです。あの娘たちは素敵な曲だって言ってくれました。とても嬉しかった。先輩に会いに行く勇気をもらいました」

 

 この感じ、まさかBウイルス(ぼっちほうし)の影響か? ぼっちちゃんの家に遊びに行った虹夏たちが、これに感染した時は大変だった。あの時のことを星歌は述懐する。明るい2人が、すっかりネガティブになってしまい結束バンドのライブ出演が危ぶまれた。しかし今回はむしろ逆!

 後に後藤学の権威、喜多博士は語った。元からの陰キャがBウイルス(ぼっちほうし)を摂取すると奇行種に進化すると! 廣井きくりは『日本陰キャ協会』が認める筋金入りの陰キャである。後藤ひとりと並ぶ特級陰キャ。陰キャ大国日本でも数えるほどしかいない陰キャの中の陰キャだ。

 

「あれ? 今日はたくさんおしゃべりしたい気分です。普段はお酒なしで人と話すのは苦手なはずなんですが。それで弾き語りを続けていると、スターリーのPAさんにお会いすることがありまして。深夜のファミレスでご馳走になったうえに『お友達になりましょう』だなんて。いままで話すこともあまりありませんでしたが、実はとってもいい人なんですね」

 

「お前……何かされたのか?」

「いいえ? ちょっとスキンシップ多いかなとは思いましたが」

 

 あいつ何をやったんだ? 星歌は訝しんだ。もしかして本当に解雇した方がいいかもしれない。

 

「それでPAさんにはたくさんお話を聞いていただきました。先輩と仲良くなりたいって相談したら『恋はアタックあるのみですよ』ってアドバイスいただきました。ウフフフフ」

 

「お、おい! 大丈夫か!」

 

「ふしゅ……ふしゅるるる……ふしゅう……」

 

 やばい、廣井は限界だ! 星歌の本能がそう悟らせる。

 

「ふおおおおおお! ぜんヴぁーい! すぅぎいいいい!」

「うわあああ! こっち来んな!」

 

 野獣の如き眼光を光らせ、廣井が迫る!

 

「先輩! だだだ大好きでーす! あらっ! 転んじゃう!」

 

 廣井転倒。ちょうど片足タックルの形になる。

 

「お前は!」

「げっ!」

 

 廣井のタックルをカット!

 

「いい加減に!」

「え? ちょっと待って!」

 

 速やかにバックを取って! 

 

「しとけ!」

「うぼあー!!」

 

 風車の理論だ! 伊地知式バックドロップ炸裂! ヘソで投げるイメージと捻りを加えるのがコツだ。

 

「ダアッシャー!!!」

「……ばたんきゅー」

 

 右腕掲げて勝利のポーズ! 星歌のKO勝利。廣井は頭を強打してダウン。動かなくなった。

 

 

 

 

 

「あれ、ここはどこ? わたしはきくり」

 

 少し経ってから廣井が目を覚ます。

 

「意外と元気そうだな。ここは私の部屋だ。正当防衛とはいえ、さすがにバックドロップ食らわせたのは悪かった。介抱してやるから許せ」

「ふかふかお布団。サイズ大きいけどかわいいパジャマ。わぁい先輩の匂いだぁ!」

「嗅ぐな。今日は私のベッドで寝ていいぞ」

 

 流石に罪悪感を感じている星歌。廣井が酔っぱらって来たときはいつも床に転がしているが今回は丁寧にベッドまで運んだ。

 

「しかも先輩の添い寝付きなんて……」

「今日は特別。変なことしたら殺すからな」

「ゆ、夢みたいです! これで増税も怖くない!」

「ふふ。きくりはかわいいからいいんだよ」

「先輩……好きぃ」

 

 星歌はきくりをゆっくりと抱き寄せ腕枕してやる。

 

 

 

 

 

 星歌が作り置きのカレーを温めて廣井と二人で朝食。ボウルにテキトーな野菜を盛り付けたサラダも添える。

 

「お、おかわりください!」

「これで3杯目。少しは遠慮しろ。ほらこれ食ったらさっさと帰れ」

 

 星歌はおかわりのカレーを廣井に渡す。これで鍋のカレーも無くなった。

 

「すみません。い、今のうちに食い貯めしとかないと……。それにカレー食べてるうちは先輩と一緒に居られますし」

 

 廣井は頬を赤らめ、あの頃と同じかわいらしい笑顔を見せる。

 

「ばっバカ! なに言って………。まあ、食後のコーヒーまでは居ていいぞ」

 

 食卓に背を向けて、コーヒーを沸かす星歌の顔には笑みがこぼれる。

 

 

 

 

 

「食費は今日のパンツでいいですか? PAさんにいただいた高級ランジェリーです! み、三日三晩履き続けました!」

「いらねーよバカ! 放り出すぞ!」

「なぜですか! 恋する乙女のおまじないってあの人も言ってました! 早く被ってください!」

「勘弁してくれ!」

 

 

 

 

 

 ――なにもかも台無しだ! 助けてぼっちちゃん!




次回『虹夏帰宅! 伊地知星歌、血の涙を流す』お楽しみに!

クレイジー下北沢2(仮)主人公は誰がいい?

  • ぽいずんやみ
  • 伊地知星歌
  • ファン2号
  • 結束バンドおばさん
  • PAさん
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