――よしんば私が巨大ロボットだったとしてだ。
地球の平和を守るなら、もちろんぼっちちゃんがパイロットじゃなきゃ嫌だ! ぼっちちゃん専用の武器やギター、ぼっちちゃん好みのカッコイイパイロットスーツも用意する。きっと気に入ってくれるだろう。かっこよさとピチピチでえっちさを兼ね備えたパイロットスーツ……。むほほ。
ぼっちちゃんが私の中で上下すれば、私もそれに併せて上下する。一緒に必殺技の名前を叫んで敵を真っ二つにしてやろう! もちろんぼっちちゃんの大好きなドラゴン剣だぞ!
そして戦いの後は、ぼっちちゃんには私の中で快適に過ごしてほしい。生まれたままの姿で。そしてそのまま二人の愛は……溶け合うことだろう。
なんてことを考える星歌。最近は妄想が酷くなる一方だ。それもひとりへの愛故なので、仕方ないのだろう。
夕暮れ前の新宿、星歌はとある公園で物思いに耽っていた。スターリーは定休日。久々の丸一日オフ、気分転換に新宿に来ていた。店で使えそうな機材やインテリアを見ながら一人で誰にも気を遣わずなんとなく過ごす一日。おいしいご飯食べて、たまにはオシャレもしたりして。あっという間にこんな時間だ。
星歌にとっては久々に羽を伸ばせた一日。しかし隣にぼっちちゃんが居ないことは、彼女にとって非常に残念だった。今頃は喜多と二人で楽しく遊んでいるはずだ。
(ヌゥゥゥゥゥン!!! いいなぁ!!!)
星歌は心中本気で悔しがる。
「今頃ぼっちちゃんは喜多とあんなことやこんなことして……。おおおおお、ぬぅぅぅぅぅん、ぐやじいぃぃぃ……」
「おかーさん、あの人なにー?」
「シッー! 見てはいけません!」
星歌の妄想が止まらない。思わずブツブツと声に出る。ざわめく外野。ぼっちちゃんは絶対渡さないぞ! と星歌は強く心の中で誓うのだった。
「……ふう。さて、そろそろ帰るか」
さすがに大人げないと思い直し、ベンチから腰を上げる星歌。
「あらやだー! 誰かと思ったら、星歌ちゃんじゃなーい! お久しぶりー♪」
後ろから声を掛けられる。オネェ系の壮年男性。吉田銀次郎(37)だ。
「お久しぶりです、銀ちゃん。こんなところで何してるんです?」
昔馴染みとの意外な再会。
「ジョギングよん。カラダ作りは美しさの第一歩♪ そういうアンタこそ珍しくオシャレしちゃって。もしかしてデートの途中だったりー? お邪魔しちゃったわねぇ。ってことはカレシはどこなのよ、カレシは」
「違いますよ! 今日はひとり、単なる気分転換っす」
心は永遠の乙女。恋話とお化粧とスイーツがエネルギーな銀ちゃんである。
新宿ゴールデン街のとある居酒屋。星歌と銀次郎は久々に飲みに行くことにする。
「結束バンドおばさん? さあねぇ、ちょっと分からないわ」
「そうっすか。銀ちゃんなら新宿で顔広いから何か知ってるかと思いましたが……」
とりあえずのビールを飲み干してから『結束バンドおばさん』について話を振ってみる星歌。
「ファンのおばさんがあちこちで推し活してるって……。それもしかして、アンタのことだったりして?」
「ぶっ!!!」
銀次郎の言葉に思わず吹き出す星歌。
「んなわけないでしょ! 私だってライブハウスのオーナーなんですからそんなことしません!」
「どーかしら? 最近アレでしょ? ぼっちちゃんだっけ? 確かにギターはかなりのモンだけどさ、アンタ明らかにヤバい入れ込み方してるじゃないのよ。女同士ってのはこの際いいとして、29歳が高校生に欲情するのは相当アレよこのご時世」
「べ、別にそういうんじゃないですよ。あくまで私は店長として、妹のバンド仲間を見守ってるだけです」
必死の形相、伊地知星歌。
「まあそういうことにしといてあげる。それよりも廣井ちゃんとは最近どうなの? 最近はお酒も飲まないでアンタのために頑張るって、めちゃ張り切ってるわよぉ」
「……て、店員さーん、生中追加で」
露骨に動揺する星歌。銀次郎は少し呆れながら続ける。
「もう、誤魔化さないの。廣井ちゃんの気持ち、分かってるくせに。いい加減年貢の納め時じゃなくて?」
「きくりはあくまでかわいい後輩です。それ以上の気持ちなんか無いですよ」
「んもーう、じれったいわねぇ! アンタどんだけ鈍感なのよ! あの娘はアンタにガチ恋してんだから、いい加減答えは出してあげるべきよ。どういう答えであれ、ね」
「いや、だから……」
最近廣井がやたら積極的なのには正直戸惑っているが、あんなに依存してた酒を抜いてまで好かれれようとする健気さには星歌も心動かされる。陰キャで心配性で優しくて、拘りの強い彼女のことを星歌は今でも好きだ。
「あの娘は酒クズでさえ無ければホントいい娘なんだから。ミュージシャンとしても絶対メジャーに行ける逸材よ。ストリートでソロ活動やるようになってからは舞台度胸も付いて酒無しでも演れるようになったし。あとはバンドの方も酒ナシで演れれば言うことナシなんだけどねぇ」
少し遠い目をする銀次郎。まあ、機材やら壁やらを壊して毎度借金をこしらえなくなっただけでも大きな前進だろう。しかしメジャーに行けるって言葉に偽りは無い。
「……今度のFOLTでのライブ行かせてもらいます」
「当然よ。チケットはあの娘からのプレゼントでしょ?」
「え、なんでそれを」
「オカマなめんじゃないわよ。そのくらいお見通し♪ バカやってないで傍にいる青い鳥をしっかり捕まえなさい。いつまでも待っててはくれないわよ、多分」
「は、はぁ、そんなもんですか」
「さ、今日はとことん飲むわよー! 地獄の果てまで付き合いなさいな♪」
――なぜだ! 私はぼっちちゃん一筋なはずなのに!
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クレイジー下北沢2(仮)主人公は誰がいい?
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ぽいずんやみ
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伊地知星歌
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ファン2号
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結束バンドおばさん
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PAさん