ロボットに乗りたいとは思ったけどTSしたり転生したりは望んでないよね 作:運動エネルギー坂本
今期は100カノが面白すぎる……!
「あれが……『エクセプション』リディネ……」
ライネが呆然とした様子で呟く。
例外的に学生でありながら個人での星外生物迎撃のための出撃を許可された、数少ないエリートのうちの一人。
その中でも最強と呼ばれるリディネが、俺たちの前に現れた。
「一年生諸君は下がれ、ここからは私たちがやる」
俺たちが倒したとはいえ、細鱗は未だ50匹はいるように見える。
それに対して、リディネの乗る紫の機体とそれに付く3機のリッターでは、数の上での差は圧倒的だ。
スナイパーライフルを地面に落とした紫の機体は、腰に装填していた剣を抜き放つ。
しかし一般的なそれよりも心許なく、短いものだ。
……まさか、彼女は授業での装備そのままでやってきたって言うのか?
多数の敵との戦いには向かないスナイパーライフルに、緊急時の近接戦闘用としか思えない剣。
どう考えてもまともに戦える装備ではない。
無茶だ……!
彼女たちは魚たちに向かって突撃する。
それを見た奴らもまた、攻撃の対象をそちらに移したようだ。
数匹が突進攻撃を仕掛け、残った奴らが鱗を発射する。
俺たちが散々苦戦させられた攻撃だ、鱗も突撃もかなりの破壊力を持つ。
そんな攻撃を、たった4機で抜けられるわけがない。
瞬間、リディネの機体が突進してきた魚を踏みつけ高く跳躍する。
地上に残された僚機が鱗と突進を防ぐなか、彼女の機体だけが空を舞っている。
そして、そのまま敵の中央に飛び込んだ。
「嘘だろ……!」
当然周囲の細鱗たちの注意は、一気に近づいてきた彼女に向く。
射撃をやめ、近づいた脅威に対して攻撃をしようとしている。
「教官!俺たちも手助けした方がいいんじゃ……」
「問題ない、あれが彼女の戦い方だからな。いい機会だからよく見ておけ、あれがこの学校最強の実力だ」
細鱗が一斉に飛びかかる。
しかし、その攻撃が届く寸前、紫の閃光に奴らは吹き飛ばされた。
まるで踊るように、彼女の機体が周囲の敵を蹴散らしていく。
ナイフで突き刺し、蹴り、回転して弾き飛ばし、何も持ってない方の手で殴りつけ。
四方八方からの攻撃を捌きながら撃破していく。
早すぎる、まともな人間が耐えられるような速度じゃない。
それにまるで、後ろにも目がついているような……。
遅れて到達したリッターたちも細鱗たちに攻撃を仕掛ける。
みるみる俺たちが苦戦していた奴らは数を減らしていった。
リディネはその短剣だけで、ほとんどの敵の注意を引き付け続けている。
彼女の周りに誰も寄りつくことができていない。
そしておそらく数十秒後、周りの魚たちは全て地面に落ちていた。
彼女たちが殲滅したのだ。
「す、すごい……」
ミレイの声が聞こえる。
これが、最強。
ピンチに現れて、みんなを颯爽と助ける。
まるで俺が憧れた、あのパイロットのような。
この学校での目指すべきものが、定まった気がした。
コックピットを降りる。
ライネやミレイ、他のパイロットたちも降りてきていた。
目の前には、リディネの乗る紫の機体、そしてリッターがいる。
……一番最初に逃走しようとした一人。彼は結局コックピットごと潰れて死んでしまっていた。
この学校では珍しい話でもない。
ただ、今回は実戦が早かった。
完全に警報の網を潜り抜け出現したイレギュラー。
それに、常に警戒されている学校内での不祥事であり、大事になるだろう。
紫の機体から、リディネが降りてくる。
相変わらずの妙な仮面だが、先日見た制服ではなく、パイロットスーツに身を包んでいた。
仮面で隠された顔からは、表情を窺い知ることはできない。
「君たちが前線を守ってくれたおかげで、被害を最小限に抑えることができた。生徒会副会長として礼を言わせてもらう」
彼女が頭を下げる。とんでもない、助けられたのは俺たちの方だ。
「こちらこそありがとうございます、リディネ……先輩のおかげで助かりました」
「……そうか、先輩か」
「どうしました?」
「いや、なんでもない。そういえば後輩ができたんだな、と思ったんだ」
そういう彼女だが、やはり表情は仮面で隠されてよくわからない。
しかしそれでも、彼女の口元が少しだけ歪んだ気がした。
怖い人では、ないのかもしれない。
「初めて乗ったボルテックスで数体撃破なんて、普通にできることじゃない。次の『エクセプション』は君たちかもな」
「は、はい!」
「頑張ります!」
……入学式の時に感じた仮面越しの視線。
今こうして対面していても、何も感じない。
あれは、やはり勘違いだったんだろうか。
……彼女は、リディネ・ネモウは、なぜ仮面をつけているのか。
それは誰も知らない、彼女最大の謎だ。
曰くファッションでつけている、曰く顔の火傷を隠すため、曰く正体を隠す必要がある。
憶測だけが飛び交って、まともな答えなど一つも出てこない。
最強のパイロット。その称号だけが、彼女について俺が知っている全てだ。
あの視線が俺に注がれたのはなぜだ。
考えても何もわからない。
俺は、彼女を知りたかった。
意を決して俺は口を開いて、
「その、」
「ああ、あああのっ!」
後ろから聞こえた大声にかき消された。
思わず声の方を向く
……ライネ・エアルが、顔を真っ赤にしていた。
そのままずんずんと大股で歩いてきて、リディネの前に立つ。
「……ど、どうした」
「その、えっと……」
「……うん」
「ファンなんです!サインください!」
大きな声で、彼女はそう言い放った。
「……は?」
「え?」
「嘘だろ、ここで……?」
俺たちから一気に肩の力が抜ける。
当のリディネもまた、頭を抑えて。
「……そっ、かぁ……」
仮面越しでもわかるくらい、驚いていた。
「お疲れ様です、リディネ。……なんか疲れてます?」
「いやまあ、色々あって……」
帰還した私にレイカが話しかけてくる。
チュートリアルイベントにして彼らの初戦。
突然現れた警報なしのイレギュラーに対して対処することになるというイベントは、大体原作通りの流れで終わった。
ケイも前線でしっかり戦えていたし、彼らの戦闘力の面について考える必要はないだろう。
彼に先輩と呼ばれるのは少し、不思議な気分だったが。
だから特に考慮すべき問題は……。
……いや、一部、おかしなところもあったか。
ライネ・エアルは、ゲーム本編でも優秀な友軍ユニット、およびストーリーにも関わる重要なヒロインとして登場する。
いわゆるツンデレキャラで、最初は主人公たちに対しても冷たい態度で接する。
そのはずなのだが……。
「そっかぁ〜〜〜〜〜……」
……パイロットとして戦っているうちに学校内外を問わずにファンができたのは知っている。
この仮面のせいで目立つ容姿はしているし、自分で言うのもなんだがスタイルもいい。
でもまさかメインキャラ、ヒロインにあそこまで好かれてるとは思わないだろう。
ストーリー進行に余計なノイズが入らなければいいが……。
「リディネ、警報のならないイレギュラーに関しては調べさせておきます。今日は休んでいてください」
「うん、そうさせてもらおうかな」
イレギュラーに関しては、解決するのは
私が気を使う必要はあるまい。
そうだ、今度の休日は久しぶりに、オタ活にでも精を出すか。
初めて特殊タグというものを使いました
これが力か……。