ロボットに乗りたいとは思ったけどTSしたり転生したりは望んでないよね 作:運動エネルギー坂本
精神的BL要素が足りなくなってきたのでここらで因子を取り込んでおこうと思って……
この世界に転生してからもうしばらく経つ。
『ボルテック・フレーム』については設定資料やゲーム中のデータなどを読み漁っていたが、この世界にはまだまだ私の知らない知識もたくさんある。
この学校は、やはりそういった情報の集まる場所だ。
私が『オタ活』と称する活動は……まあつまるところ、図書館でボルテックス関連の知識を読み漁ることだ。
「これと、これと……あぁ、あとこれもいいな」
図書館の奥、メカニックの生徒が借りるような本を何冊か手に取っていく。
この学校の図書館は、割と広いくせに人が少ない。
訓練は実際にコックピットに座った方がわかりやすいし、メカニックも先生や先輩から教わったことを実践する方が実になるという考えの人間が多いからだ。
本を借りる人も少ないし、中で何か勉強したり本を読んだりしている人なんて全くいない。
ゲームでも、主人公が一部のクエストをクリアするために通過する必要があるだけの部屋だった。
とはいえ、ここには国内外問わない様々な技術書なんかも置いてあるし、私としては非常に楽しめる。
図書館内にある椅子に腰掛け、本を広げる。
最近の私の中のトレンドは、メカニックたちが開発した珍ボルテックスのデータについて見ることだ。
ゲーム中でもクエストの報酬で、ピーキーな試作ボルテックスがもらえるものもあったが、そういう変なボルテックスを眺めているだけで心が癒される。
ふむふむ、SS-09 ギガント、本来6m程度のボルテックスの体長を30m級にするも、莫大な消費エネルギーによる駆動時間の問題と、操作の複雑化により凍結……。
それを踏まえて開発されたSS-10 タイニーは、2m弱のサイズに縮小化、しかし今度はエンジンが小さく馬力が全く足りない他、パイロットが入れる設計ではなかったためこちらも凍結……。
「……ふふ」
そうそう、こういうのが面白いのだ。
前世でも妙な兵器というものはたくさんあった。
現在量産化されているリッター、そしてその先代機であるエクイテスは、どんなパイロットでも容易に使用できるように開発されている。
そして私のベトレイヤのようなオーダーメイドは、一部のパイロットのために開発された特殊な機体だ。
しかし、メカニックが自分の研究開発が目的で製造した機体、これが私は大好きだった。
……ケイは、おそらくクエストの報酬や自費で機体の強化や購入を行うだろう。
彼は今ある機体をカスタムして使う派だろうか、それともどんどん新機体に乗るタイプだろうか。
私は断然後者のプレイスタイルだった。メカニックの作った妙な機体に乗って暴れるのが大好きだったのだ。
今乗っているベトレイヤも、私が一番好きだった装甲を省いて機動力を上げるコンセプトの機体からインスピレーションを受けて作ってもらった機体だ。
ケイは、どんな機体に乗るんだろうな……。
そうこうしているうちに、借りてきた本を全て読み終えてしまった。
次の本を探そうと立ち上がると、ガラガラ、とドアが開く音がした。
珍しい、休日に図書館に来る人が私以外にも居ようとは。
一体誰だろう、とドアの方を振り向くと。
「……あっ」
「ど、どうも」
噂をすれば……というやつだろうか。
当のケイが、図書館にやってきた。
この学校にやってきてすぐ、
だから今日は、ゆっくり図書館に見てみようと思っていたのだが。
「ど、どうも」
「やぁ、君は確か、ケイだったかな?」
「名前、知ってくださってたんですね」
「あー、うん」
相変わらず訳のわからない仮面をつけた副会長、リディネがいた。
まさか例のイレギュラー騒動の直後に、こんな人のいない図書館で出会うことになろうとは。
「先日は、ありがとうございました。おかげで……」
「気にしなくていい。君たちのおかげで被害が最小限で……って、これは先日も言ったな」
「そ、そうですね」
「……」
「……」
き、気まずい。
流れで会話になったはいいものの、どうすればいいのか全くわからない。
大体こういうところで会話が弾むような人でもないだろう、仮面で何考えてるかよくわからないし。
ミレイ……彼女がいれば、なんとか会話の糸口を広げてくれただろうに……!
「……君は、どうしてここに?」
「えっと、前用事で来たんですけど、その時はちゃんと見れなかったので興味があって」
「あぁ、クエストか……」
「……どうかしました?」
「いや、そうか。お目当ての本でも?」
「いえ特に。まあそうですね……ボルテックスについて書いてる本が読みたいです」
学校に入学するために必死に勉強していて最近は忘れていたが、そもそも俺はボルテックスが好きだ。
昔、メイネとの会話についていくために覚えたりしたのもあるが、そうでなくても格好良いと思う。
それにここに入学した以上、ボルテックスについて勉強しておいて損はないだろう。
……ふと、リディネが抱えている何冊かの本が目に入る。
彼女が持っている本も、ボルテックスの開発記録のようなものだ。
著名な人が書いたものではない、というか聞いたことのない名前の機体が表紙に並んでいる。
これはどちらかというと、いわゆる珍兵器まとめみたいな本なのでは……?
「あの、その本は……」
「これか?あー、私もボルテックスについて勉強していてな。ボルテックスについてならおすすめの本が何冊か奥にある、紹介しようか?」
「……そうですね、よろしくお願いします」
……どうしよう、彼女が持っている本が気になる。
どうやら読み終えているようだし、俺も読んでみたいが……。
というかそもそも何故先輩はそんなよくわからない本を……?
「この辺の本は、教本の方より詳しく全体的な構造や開発系譜なんかの詳しい話が載ってある、読んでおけば大概のボルテックスの扱い方がわかると思う。現時点で運用されている機体についての詳しいスペックが知りたいならこっちの本を……」
「あ、ありがとうございます」
薦めてくれる本を受け取る。
でも結局その本は一体なんなんだ……?
「……気になるか?」
「え、何がですか」
「この本、今さっきから見てなかったか?読み終わったから読むなら渡すが」
「よ、読みます。……先輩は何故この本を?」
「……面白そうだろ?」
「……面白そうです」
……なんというか、仮面のせいでなんとなく得体の知れない印象を持っていたが。
実際は、案外気さくな人なのかもしれない。
「俺もボルテックスとか見るの好きなんで、気になって」
「……ふふ、そうか」
「……?」
「いや、君とは話が合いそうだ」
仮面越しではやはり、感情がわかりにくい。
しかし、彼女が楽しそうにしているのは、なんとなく伝わった。
なんとなく、離れたところで本を読むのも違う気がしたので、彼女に少しだけ近いところで本を広げる。
予想通り訳のわからない機体ばかりで、なかなか面白い。
先輩は先輩で、またよくわからないボルテックスの本を読んでいる。
……その仮面、読みづらくないんだろうか?
ケイと久しぶりに喋った気がする。
また、小学校の時みたいにボルテックスについて語り合いたいという欲が出てきてしまいそうだ。
彼と仲良くなるのは、良い行動ではない。
それは、私が彼の敵であることもそうだし、彼の歩むストーリーを歪めてしまう可能性があるからだ。
レイカが死ぬ運命を変えて、表舞台から立ち去る。
それで良いはずなのに、小学校時代を思い出してしまった。
本を読むケイの姿を盗み見る。
私が薦めた本を楽しそうに読んでくれている。
また、昔みたいに話したい。
……そういえば、何故彼はこの学校に来たのだろうか。
ストーリー的に来るものだと思っていたが、実際家族も友人も、あの日誰一人として死ななかったはずだ。
この学校に来る理由が、ない。
ボルテックスが好きだから?兄に憧れて?
そうかもしれない。しかし、大きな理由である復讐が消えている。
……気になる。
私は、いつの間にか彼に声をかけていた。
「……君は、どうしてこの学校に来たんだ?」
「……え?」
「…………いや、やっぱりいい、気にしないでくれ」
ほぼ初対面の私にこんなこと聞かれてもだろう、どうかしていた。
別の話題を持ちかけようとした時。
「命を救ってくれたパイロットに憧れたんです。幼稚かもしれないですけど、昔俺が住んでた街に星外生物が来たときに、俺たちの街を守ってくれたその人みたいになりたいって思って」
「……」
それは、多分私だ。
あの日、初めて乗ったボルテックスで戦った私を、追いかけてここまできたのか?
「それと……好きだった子がいたんです」
「……ふぇ」
小さく息のようなものが口から漏れる。
それも、もしかしなくても私のことで……。
「でもその子が、星外生物にその、殺されちゃって。復讐がしたいっていうのも、一つです」
全て、私だった。
考えてみれば、筋の通った話ではある。
あの日私が街を守ったのも事実だし、あの日私が死んだことになったのも事実だ。
それでも、そんな可能性は考えていなかった。
私は、思ったより、
口元を抑える。
……何より、この話を聞いて。
少しだけ、嬉しくなってしまった自分がいたことが、一番驚いた。
「すまない、変なこと聞いて。そういう芯があれば、君はもっと強くなれるさ」
「あ、ありがとうございます」
とりあえず、適当なことを取り繕う。
顔が熱い。余計なことをした。
逃げようとして、本を返しに置いてあった本棚へ向かう。
「……先輩は、なんでボルテックスに乗ろうと思ったんですか?」
ケイの質問が、背中の向こうから聞こえた。
「私は……守りたいものを守りたかったんだ。それだけだよ」
寮の自室に戻って、仮面を外す。
……俺は、何がしたかったんだ?
図書館でケイに会ってからおかしかった。
頭がうまく回っていなかった気がする。その場の感情で行動しすぎだ。
仮面を見つめる。
この仮面をつけている間、
これがそれを切り替える鍵。
これをつけている時、私は
ただそれだけのはずなのに。
俺は、私は、どうなっているんだ。
仮面を握りしめながら俺は、この仮面を初めてつけた日のことを思い返していた。
つ、ついにその奇抜な仮面の謎が明らかに……!!!!!?????
ケイ(原作主人公)が乗り替えてしばらく使う機体について
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