ロボットに乗りたいとは思ったけどTSしたり転生したりは望んでないよね 作:運動エネルギー坂本
「仕える……?」
突然すぎる申し出に思わず聞き返す。
ゲーム中でのヴィランに対して、流石に警戒せずにはいられない。
「君には前々から目をつけていたんだ。私たちが声をかける前にプルヌスに連れて行かれたが、まだ子供であったにも関わらず街を守るため戦ったその勇気と才能、ぜひ我々に協力して欲しいと思っていた」
父親が俺に語りかける。
おそらくは俺の戦闘能力を買ってスカウトされているのだろう。
しかし、青蓮院は、筋金入りの右派だ。
俺をプルヌス傘下のアザレアとしてではなく、青蓮院傘下の人間として取り込みたいのだとしたら、その目的はおそらく、俺を彼らの目論む他国との戦争に使うことだろう。
「レイカ……ここにいる私の娘と君は歳が近いし、レイカの元についてこの子を支えて欲しいんだ。プルヌスとは同じく国を守る仲間だと思っているが、彼らの行う兵士への教育には懐疑的でね。もうプルヌスとは話をつけている、君の境遇の改善も約束しよう」
優しげな口調とは裏腹に、溢れ出す威圧感のようなものに圧倒される。
蛇に睨まれた蛙のように、口を開くことすらままならない。
「どうだい、受けてくれるかな?」
「私からもお願いします、メイネさん」
レイカが俺に語りかけてくる。
しかし、俺は彼女に対して違和感のようなものを感じていた。
ゲーム本編で纏っていたカリスマ的オーラがないこともそうだが、何というか、父親に比べて言葉が軽い。
まるで、何かをなぞっているような。
「今さっきの戦いも、凄かったです。私もボルテックスに乗る訓練は受けていますけど、あなたほど上手には動かせません。どうか私の元に来てくださいませんか?」
彼女と目が合う。
レイカの目からは、感情が読み取れない。
目だけは、ゲーム中での彼女の印象と合致した。
世の中を諦観するようなその目。凍えるような冷たい印象。
「……わ、かりました」
この状況で、逆らえるわけがない。
いくら精神年齢は少しばかり高いとはいえ、所詮は一般人だ。
二人のオーラに気圧された俺は、あっけなく首を縦に振った。
こうして、俺はアザレア候補生から、青蓮院レイカの手下という立ち位置に置かれることとなった。
そうして、青蓮院に連れて行かれてから、二か月ほどが経った。
プルヌス側としても、洗脳の効きが悪い俺のようなやつを置いておきたくなかったのか、引き止められもせず解放された。
……いや、そもそも一番最初の研究所を追い出された時点で、もう用済みだったのかもしれないが。
ともかく、そうして青蓮院本邸に連れて行かれた俺は、名目上は青蓮院の養子として———戸籍のない俺にとっては制度としての養子ではないが———、しかし実際は彼女のボルテックスの訓練相手、もしくは……友達として扱われることになった。
「メイネ、ただいま帰りました」
「おかえり、レイカ」
中学二年生という立場であるレイカは、もちろん毎日学校に通っている。
反して戸籍のない俺は、中学校には通っていない。
もちろん行っていれば中学一年生だったのだろうが。
まあ、レイカに付いている家庭教師に中学校レベルの内容は教えてもらっているし、一応前世では真面目に学校に通っていたから、学力的にその辺の中学生に負けているとは思っていない。
「……学校、どうだった?」
「えぇ、いつも通りでしたよ。お父様に頼めばあなたも通えるでしょうに」
「僕はいいよ、必要ないしね」
「そうですか」
「……」
「……」
会話に空白ができる。
普段、彼女との会話はこの程度で終わる。
お互いに距離を測りかねている……というより、レイカから一方的に距離を空けられているのだ。
いくら青蓮院でも、家族としての情はあるようで。
雇われて一番最初、レイカの父は俺に、レイカと友達になってくれないかと頼んできた。
社交界というのも色々あるらしく、付き合いは上手くこなすが仲のいい友人というものが彼女にはいないらしく。
そんな状況を案じた彼は、同年代の俺を雇うにあたって親密な関係になってほしいと思ったらしい。
……その言葉のどこまでが真実で、伏せられた真実もまたどれだけあるのかは定かではないけれど。
そして、俺は彼女へ接触を開始した。
なんだかんだ言ってもアザレアから逃げ出させてくれた恩義もあるし、またレイカのゲーム中の印象との差についても、何となく気になったからだ。
レイカもまた父親から何かを吹き込まれているようで、表面上は、例えば父親や、家政婦の前などでは仲のいい友人関係を装ってくる。
しかし、二人きりなどになると、会話量が急に減るのだ。
ついでに顔から感情も消える。
正直、めちゃくちゃ怖い。
今日は、何となく機嫌が悪いように見える。
二か月も一緒にいれば、多少はそういうこともわかってくるようになってきた。
そんなことを考えていると、レイカが徐に口を開いた。
「今から模擬戦をしましょう、メイネ」
「え?帰ってきたばかりなんだから少しくらい休んだって」
「問題ありません、やりましょう」
「……わかったよ」
与えられたエクイテスに乗り込む。
いつものように意識が切り替わる、
日に日に切り替わるまでの時間が早くなっている。
どちらにしろ、これに頼らなければ私はまともに戦うことができない。
「行きますよ、メイネ」
「……どうぞ!」
レイカとの模擬戦は、武装に制限なく好きなものを使って戦う。
レイカは基本、槍を使い、私は両手剣だ。
ゲームでのPvPでも両手剣は使っていたし、これが一番馴染む。
レイカのエクイテスが槍を構えて突撃してくる。
……彼女にしては、荒々しい戦い方だ。
いつもは駆け引きがあるのだが。
槍を剣で受け流す。
やはりいつもより動きが直線的だ。
そのままレイカは槍を振るって私の機体を攻撃しようとする。
「どうしたの、いつもより動きが単純だけど!」
「……そんなこと、っ!」
しかし、やはりいつもより視野が狭い。
片方の剣で防いで、足払いを仕掛ける。
「……嘘っ!」
作戦通り、レイカのエクイテスは体勢を崩して地面に尻餅をついた。
槍が手を離れて地面を滑る。
そのまま私は剣を彼女の前に突きつけた。
「私の勝ちだよ、レイカ」
「……っ」
「その、何かあったら話くらいなら聞くけど……」
「いりません、付き合ってくださってありがとうございました」
彼女は機体を起こすと、そのまま訓練場を立ち去っていってしまった。
……少し、やりすぎたかもしれない。
今だに彼女との距離感は測りかねるが、それでも今日の様子は少しおかしかった。
ともかく、今の私に何かできるわけでもない。
私も、訓練場を後にした。
TS転生して恋太郎の運命の人になる話正直めちゃくちゃ読みたい 誰か書いてくれないかな
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