ロボットに乗りたいとは思ったけどTSしたり転生したりは望んでないよね 作:運動エネルギー坂本
ボルテックスを降りて、パイロットスーツを脱ぐ。
レイカの様子がおかしいことは、明らかだ。
しかし、今の私では何もできない。
いや、そもそも私が何かをする必要があるのか?
……
もうボルテックスを降りているのに、頭が切り替わらない。
私である必要はない、はずだ。
そう、
「……はぁ……っ」
更衣室の椅子に座り込む。
転生してから、この体になってから、ずっとそうだ。
俺には、
転生した俺。元の体の私。
元々は、転生した時に俺になったはずだ。
しかし、あの朱雀との戦いから、何かが変わった。
ボルテックスでの戦いは、私にしかできない。
あの神の思惑か、それとも偶然か、私にはボルテックスの操縦の才能がある。
しかし俺にそれはない。
だから消えていた、俺に塗りつぶされていた私が、ボルテックスに乗った時覚醒した。
それはただの手段でしかない、そう思っていたのに。
だんだん、俺と私の境界線が消えていっている。
今のもそうだ。
ボルテックスを降りたのに、私が引っ込まなかった。
このまま、俺と私が完全に一緒になったとしたら。
それは、本当に
「……考えても仕方ない、か」
俺も私も、本質的には変わらないはずだ。
それに、この力を使わなければろくに戦えもしない。
この世界で、この状況で、これだけが俺の武器だ。
レイカとの模擬戦から、さらに一週間。
ここ最近、日に日にレイカの様子がおかしくなっている。
最近は帰ってくるやいなや部屋に篭り、風呂やら必要最低限のこと以外で出てこない。
元々食事は予定が合えば家族と食べていたし、そうでなくても彼女の部屋とは別の部屋でピアノを弾いたり、色々しているのだが。
最近はそれもなく、部屋の中で生き続けている。
まぁ、学校に行っているだけまだマシか。
というわけで俺も、彼女とはあのまま全く喋れていない。
毎日の会話も「おはよう」と「おかえり」しかない。
……いや、元々そんなものだったかもしれないが。
ともかく、俺にもどうしようもない。
というより、俺が何か言ったところで何かが変わるとも思えない。
どうせ俺たちは、上辺だけの友達関係だ。
シミュレーターでの訓練を終え、廊下を歩く。
すると、遠くから怒声が聞こえた。レイカの父親の声だ。
思わず声のした方へ向かうと、そこにはレイカと、父親がいた。
咄嗟に影に隠れる。
二人はどうやら言い合っている……いや、ほぼ父親に一方的にレイカが詰められている構図のようだった。
「……だから、青蓮院としてお前ももっと努力をしなければ……」
「それは……」
「言い訳をするな!」
「……っ」
レイカが父親から逃げるように走り去る。
俯きながら、自分の部屋の方へ戻っていったようだった。
何があったのだろうか。少し心配だ。
思わず俺は、レイカの部屋へ向かおうとして。
「見苦しいところを見せたね、メイネくん」
「……っ、すいません、覗き見なんて」
どうやら、レイカの父親には見ていたことがバレていたようだった。
彼はそのまま俺に近づいてくる。
本能的に、勝てないと理解してしまうような威圧感。
「いや、責めるつもりはない。いつもレイカと仲良くしてくれてありがとう」
「いえ……」
「しかし、レイカにはもっと頑張ってもらわなければね」
「……」
「私たちの国が世界の覇権を握るには、ボルテックスという産業において他国より有利な状況である今がチャンスだ。そのためにレイカにはボルテックスの操縦も教えているというのに、一向に上達する気配もない。君という競争相手がいれば少しは変わるかとも思ったが……」
……俺は、少し、読み違えていたかもしれない。
俺は今まで、青蓮院と言えども、家族の絆はあるものだと思っていた。
しかし、こいつにそれはない。
こいつは、実の娘でさえも目的のための手駒にすぎないのだ。
所詮、ただの悪役。
こいつは、ゲームのレイカが取り憑かれていた思想そのものだ。
「……では、僕はこれで」
「あぁ、引き止めてすまないね。君からもレイカによく言っておいてくれ」
「……はい」
少しだけ、合点がいった。
レイカがゲームで語っていた思想も全て、父親から受け継いだものだった。
……多分レイカは、これから冷徹な女王になる。
きっかけはわからないが、何かがあって、彼女は一族の野望を受け継ぐ
でも父親と違って、今はまだそうではない。
彼女は、ただの思春期の女の子にすぎない。
……悪役としての青蓮院レイカではなく、人間としての青蓮院レイカを俺は知らない。
多分このまま放っておけば、彼女は変わってしまうのだろう。
しかし、今の彼女は、悪役とは思えない。
彼女は、一体どんな人間なんだ?
レイカの部屋の前を通る。
ドアの向こうからは、レイカが泣く声が聞こえる。
もしかしたらこれは、無駄なことかもしれない。何かが変わるわけでもないかもしれない。
自分でもいまいち、何がしたいのかわかっていない。でも、そうしなければいけない気がする。
彼女からしたらただのおせっかいだったとしても。
それでも。
ドアをノックする。
「あの。少しいい?」
彼女と、少しだけしゃべってみようと思った。
多分、友人として。
Tips:青蓮院の家では、メイネは基本的に勉強かボルテックスに乗る練習しかさせられていないよ。状況としてはアザレア候補生だった時とやってることは変わらないけど、食事は美味しいしプルヌスに比べれば自由も確保されてるのでわりかしマシだよ。
ケイ(原作主人公)が乗り替えてしばらく使う機体について
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リッター(量産機)のカスタム