ロボットに乗りたいとは思ったけどTSしたり転生したりは望んでないよね 作:運動エネルギー坂本
暖かい目で見てください
「あの、少しいい?」
ドアの前で声をかける。
……返事はない。
しかし、泣き声が聞こえなくなったところを見るに、多分無視されているのだろうなとわかる。
部屋の鍵はかかっている。
正直、何で悩んでいるのかの見当がついているわけではない。
だが、それが父親が関係していることだということは確かだ。
家族のことについて口出しすることも俺にはできない。
自分が何でこんなことをしようと思ったのか、自分の中でも整理がついていない。
でも、とりあえずレイカと話してみるんだ。
「……ねぇ、開けてよ」
「……」
「一応さ、友達ってことになってるわけだし。前も言ったけど、話くらいなら聞けるから……」
「必要、ありません」
ドアの向こうから声が聞こえる。
無視するのは諦めたみたいだ。
それでも、取り付く島がないことには変わりないが。
「……お父様に言われたんですか?」
「え?」
「お父様に言われたから来たんでしょう?じゃないと、あなたがこんなことをする理由がない」
「それは、違うよ。ここに来たのは、僕が君と話したかったからで……」
「だから、必要ないですっ!」
レイカが声を荒げる。
多分彼女が俺の前で明確に感情を露わにしたのは、これが初めてだ。
「友達友達って、あなただってわかってるでしょう?!私たちはそんな関係じゃない!」
「……今はそうだよ。だけど……」
「もう、いいでしょう……早く消えてください」
「っ、あぁ、もう!」
ドアノブに両方の手をかける。
開けてくれないのなら、こちらから開けるだけだ。
「開けるよ!」
腕に思いっきり力を込めて、ドアノブをひねる。
ドアがミシミシと音を立てている。
……ごめん、いつか弁償します!
「な、何する気ですか!」
「う、おおおっ」
ドアが悲鳴を上げる。
そして、バコン、っと大きな音を立てて、ドアが外れた。
部屋の中には、驚いた顔のレイカがいる。
目元が真っ赤に腫れながら驚いている顔は、正直少し面白い。
「あなた、何なんですか」
「……僕も、できるとは思ってなかったよ」
おそらく、プルヌスの研究所で受けた強化のせいだろう。
まさか肉体の耐久性だけでなく、筋力も強くなってるとは思わなかったが。
どちらにしろ、植え付けられた人間離れした身体能力を持ってすれば、このくらいはできるらしい。
レイカは驚いていた顔を元に戻すと、こちらを睨みつけてくる。
「何がしたいんですか……」
「正直、僕もよくわかんない。でも、こうすべきだと思ったんだ」
「そんなの、意味が……!」
「いや、違うな、別に何の意味もないわけじゃない」
あぁ、これを言うのは少し恥ずかしいな。
でも、言わないわけにはいかない。
「僕は……怖かったんだよ、君のこと」
「……」
「でも、なんて言うか、悩んだりしてるのを見て、怖くなくなったっていうか……」
「……それとこの行動に何の関連もないでしょう」
「いや、怖かったから、君に必要以上に関わろうとしなかったんだ。本当はもっと前にこうやって話しておくべきだった」
結局前にいるのは、ただの子供なんだ。
対して俺は、一応大人。
レイカにはその事情がわからないとはいえ、一回り以上年の離れた子供にビビってたなんて言いたくもない。
そして俺は俺として、レイカが悩んでいることを放置もできない。
「話そう、レイカ。僕は君と話したい」
「あなた……そんな理由でここに来たんですか?」
「うん、そうだよ」
「はぁ……」
レイカがため息をつく。
心底不機嫌なようで、やはりこれも珍しい様子だった。
「私は、あなたが嫌いです」
「……」
「急に現れて、小さい時から訓練させられている私よりずっと先にいる。青蓮院としてずっと頑張ってきた私の努力が無駄みたいじゃないですか」
「それは……」
それは、そうだ。
俺のボルテックス乗りの能力は、俺が努力で身につけたものじゃない。
俺がゲームで培った経験と、私の体に備わった才能、その二つが組み合わさったズルだ。
確かに、彼女から見ればそういう風に見られたかもしれない。
「そうですよ、私はあなたに嫉妬してるんです、だから今も、あなたがうざったくてたまらない」
「……うん」
「だから、私はあなたと仲良しこよしなんてする気はないです、あなたに何か言うこともない。いいから出ていってください」
やっぱり、人間だ。
ゲームの中に出てくるレイカとは違う。
彼女は「うざい」なんて言葉使うようなキャラじゃなかったし、感情を表に出すようなキャラでもなかった。
だから、俺が悪感情を抱かれてるなんて全く思わなかった。
この世界がゲームじゃないなんてもうとっくの昔に気づいていただろうに。
「わかった、じゃあもう少し話そう」
「……何なんですかあなたは」
悪いが、ここで引くつもりもない。
俺は青蓮院レイカと、本当の意味で友達になってやる。
もう悪役だなんて見られない。
俺は多分、今目の前にいる女の子を、泣かせたくないんだ。
感想評価誤字報告などいつもありがとうございます
当方学生身分ゆえ来週から修学旅行でしばらく投稿止まりますご了承ください
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