ロボットに乗りたいとは思ったけどTSしたり転生したりは望んでないよね 作:運動エネルギー坂本
書きたいことだけ書いて場面がサラッと終わってしまうのをなんとかしたい
どうすればいいんだ
皆月ケイにとって、燐堂メイネという少女は親友というほかない関係だった。
幼稚園のあの日、初めて知り合って、そして彼女が自分の名前を聞いた瞬間に貧血で倒れるというあの衝撃的な事件のせいもあって、忘れたくても忘れられない少女だったというのもある。
幼稚園では、友達の少なかったケイを気遣って一緒にいてくれたり、兄の影響で興味のあったボルテックスについても、彼女は自分以上の知識を持って会話をしてくれた。
そしてケイは、そんな彼にとって都合が良すぎるほど話の合う少女だったメイネと、同じ小学校に通うことになった。
あっという間に過ぎた小学校生活三年間の中、親友として親密な関係を築いてきた彼らだったが、ケイの内面では、成長したことで、ちょっとした変化が起ころうとしていた。
小学校に上がってからも、ケイとの関係は切れずにいた。
「メイネ!」
「あ、ケイじゃん、おはよ」
ケイとは、幼稚園の頃に主人公であることに気づいてもなお離れることはできなかった。
小学校さえも同じだったことが判明し、小学一年生二年生、そして三年生に至るまで、ずっと同じクラスなのだ。
もはやこれは、あの神の、どうにかしてでも俺をストーリーに絡ませようという陰謀としか思えない。
……このまま彼と付き合っていれば、俺はおそらく五年生になってから、タイミングこそ不明瞭だが確実に起こるであろう厄災で命を落とすことになるだろう。
理性的に考えれば、どうにかして彼と距離を取り、この街から離れることが正しい。
そう考えてもそれを実行に起こせないのは、一つは俺の小学生という自由に動くことのできない身分。
そしてもう一つは、彼とはもう、親友と呼べるような間柄になってしまったことにある。
「エクイテス、やっぱり槍装備が一番かっこいいと思うんだよね」
「わかる。でも実用性を考えると実体剣の方が」
「いや、でもロマンを重んじるべきだと思うね僕は」
「え〜、お兄ちゃんは実体剣が好きって言ってたけどなあ」
俺のせいで……いや、俺のおかげですっかりボルテックスオタクと化してしまったケイは、兄から得た情報や、彼の持っていた本などの情報を俺に教えてくれる。
……男友達なんかもいるだろうに、彼はずっと俺にべったりなのは、少しどうかと思う。
俺にも女友達がいるわけで。
特に今の時期になると、男女の間でなんとなく壁ができ始める頃だ。
ずっと一緒にいるとそのうちカップルだなんだと揶揄われることになりそうだ。
俺はまだしも、親心のようなものからケイを心配してしまう。
……まあ、そう考えても結局彼から離れられないのは、俺も彼の横が一番楽しいからだろう。
女友達とはボルテックスの話ができないのだ。しょうがない。
オタクはいつも理解者を求めるものなのである。
「あ、そうだ。パイロットの学校に通ってるお兄ちゃん、今度こっちに帰ってくるらしいんだけど、会ってみない?」
「え……いいの?」
「うん、多分ボルテックスの色々教えてくれると思うよ」
「おおぉ、やったぁ!ありがとね、ケイ!」
思わず彼の手を握ってブンブンと振り回す。
俺にとって、ボルテックス乗りは全員推しみたいなもんだ。嬉しいに決まってる。
そんなことを考えていると、ケイが顔を真っ赤にして手を振り払った。なんだこいつ?
「あーえっと、メイネちゃん、だったっけ?」
「は、はい!あのぅ、今日は何卒……」
「そ、そんなに畏まられても……君のことは弟からよく聞いてるよ、これからも仲良くしてやってね」
次の週末、ケイの家に遊びに行った俺は、そこでお兄さんに出会った。
原作では文章でしか語られなかった彼は、主人公の尊敬する兄というからにはかっこいい感じなのだろうという予想に反して優しそうな青年だった。
そうしてお互いにペコペコし合っていると、ケイが恥ずかしそうに口を挟んだ。
「お兄ちゃん!そういうこと言わないでよ」
「あーいやごめんごめん、お前幼稚園の時友達いなかっただろ?だからさ」
「よ、幼稚園の頃だってメイネがいたし!」
人に強気で出ているケイというのもなかなか新鮮だ。
俺に対してはいつもあんな感じだが、他の人にはいつも一歩引いた感じの印象がある。
……いや、本編ではいつも人の事情にぐいぐい突っ込むタイプだったが。
幼少期はこんなもんだったんだな。
「そ、それでぜひボルテックスについてお伺いしたく……」
メモ帳を持ってすり寄る。
今日は、現地の人間からしか得られない情報をゲットするつもりだ。
この世界に転生したからには、設定資料集に載ってないデータも知っておきたい。オタクとして!
「わ、目がキラキラしてる……」
「メイネ、本当にボルテックス大好きだから」
「あーはは、期待に応えられるかな」
「どんな些細なことでも、ぜひ!!」
ケイside
僕の部屋にメイネがいることにはもう慣れた。
というより、部屋に彼女がいることはもう一年生の頃から普通だったので、気にするだけ馬鹿らしいと思っただけかもしれない。
「その、コックピットの中にトイレとかあるんですか?」
「あー、一応あるにはあるけど、使いづらいよ。俺は基本任務の前に終わらせるように……って、女の子に聞かせる話じゃないかもね」
「い、いえ!そういうのが、そういうのが聞きたいんです!!」
「そ、そう?」
お兄ちゃんと仲良さそうに会話するメイネは、すごく楽しそうで。
心の中にもやっとしたものが広がるのを感じる。
僕は、彼女の話について行けてるのだろうか。
そんな不安が胸をよぎった。
しばらく経つと、メイネはお兄ちゃんからもらったパイロットのお勉強のための教科書を見つめていた。
時折メモをしたかと思うと、またそれを凝視する。
少し見たけど、難しい漢字がいっぱいで、よくわからなかった。
「メイネちゃん、よくあの本読めるね。俺も授業に置いてかれないようにするの必死だったんだけど」
「メイネ、すごく頭がいいんだ」
「いや、だとしても小学三年生だろ……?まあそういう子もいるのか……」
ふと空を見ると、だんだん赤くなってきていた。
そろそろ6時の鐘がなる。寂しいけど、帰る時間だ。
「メイネ、そろそろ帰らないとじゃない?」
「……ん」
「メイネ?」
「……あっ、えっ、
「そろそろ帰らないとじゃない?」
「あぁ、もう6時か」
メイネは、幼稚園の頃から急に話しかけたりすると一人称がいつもの
そういえば最近は見てなかったな。
時計を見た彼女は、パパッと帰り支度を終わらせて、玄関へと向かってしまった。
……帰れと言ったのは自分なのに、今更になって寂しさが込み上げる。
「じゃあね、メイネちゃん。……正直学校の勉強の復習になるから、またきてよ」
「はい、ぜひ!」
今日一日でお兄ちゃんとすごく仲良くなってしまったらしい。
やっぱり、心がモヤッとする。
「ね、ケイ!」
「……あ、うん。どうしたの?」
「明日月曜日でしょ?だから、また明日!」
お邪魔しましたー!と言いながら家を飛び出す彼女の後ろ姿を見つめていた。
「あー、あのさ、ケイ」
「何?お兄ちゃん」
「……いい子だな。仲良くしろよ?」
「……うん」
言われるまでもない。
彼女は、僕の大事な友達だ。
オラが小学生の時はこんな湿っぽい感情なかっただ……。
でも湿っぽいのが好きだから書くんべさ。