ロボットに乗りたいとは思ったけどTSしたり転生したりは望んでないよね   作:運動エネルギー坂本

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ちょっぴり難産
なんでテスト前にこんな時間まで起きて書いてんだろうな俺は


赤い鳥が来る

夏休みの中盤、夏祭り当日。

ケイとの夏祭りに浴衣みたいなのを着ていこうとも思ったが、それはなんというか、媚びてる感じがして嫌だったのでやめた。

結局動きやすい普段着だけで、待ち合わせ場所に向かおうと、自転車を走らせていた。

 

ケイは18になって免許を取ったお兄さんに車で送ってもらうらしい。

合流して、たこ焼きでも食べたいな。

花火も少しだけど上がるはず。

 

「ん……?」

 

視界の端に、赤い羽根のようなものが見えたような気がした。

気のせいかと思って目をこすると……。

 

空からひらひらと落ちてきた赤い羽が道端の草に当たり、燃えたかと思ったら焦げた。

一枚ではない、数枚、いや数十枚、空一面に燃える羽根が落ちてきていた。

 

周囲の気温は上がっているのに、体の芯が冷え切るような感覚。

空に、赤い、炎を纏った鳥が見えた。

見たことのない、恐ろしい生物。

あれは危険だと、生物としての本能が告げていた。

 

遅れて、街中に不愉快なアラート音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

「ごめん、俺行かないと」

「兄さん!」

「俺だってボルテックスのパイロットなんだ、手伝ってくる。ケイは母さんたちとシェルターに避難してくれ」

 

メイネといく夏祭り。

そのはずの今日、空から降ってきた羽根は日常の崩壊を示していた。

建物の屋上で花火を見る予定だった母さんと父さんと一緒に、シェルターに避難しようとした。

しかし、兄さんが飛び出して行こうとしている。

 

「何もあんたがいく必要はないんじゃないの?!」

「いや、こんな田舎じゃ学生パイロットも少ないはずだ。少しでも人が多い方がいい」

「でも」

「大丈夫、絶対生きて帰ってくるって」

 

母さんが必死に呼び止めようとするが、兄さんは聞く耳を持たない。

 

「行ってくる!」

 

そういうと兄さんは、免許をとったばかりの車で走り去っていった。

 

「……避難しよう」

 

父さんが母さんを促す。

しかし俺にも、一つ気がかりな点があった。

 

「メイネはどうしよう!自転車で一人で来るはずなんだ」

「大丈夫、彼女は賢い子だし、最近彼女はよく調べ学習の内容か何かで災害時避難のことを話していたじゃないか。ちゃんと避難しているはずだ、僕たちも早く行こう」

「……わかった」

 

そうだ、メイネは僕なんかよりずっと賢い。

きっと大丈夫だ、きっと。

 

俺は、父さんに引きずられるようにして、避難所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

自転車を持っていて正解だった。

 

街中を走り回ってお年寄りや子供を避難させて回っていて、つくづく実感した。

最近柄でもないおねだりで買ってもらっておいて、本当に良かった。

 

アラートがなるより前に落ちてきた炎の羽根は、民家を火事にし、既に大きな被害をもたらしていた。

アラートがなるより前に起きた異常現象。

ゲーム中では語られなかった事実、おそらくそれで死んだ人もいる。

奥歯をグッと噛み締めた。

 

赤く染まる街の空では、朱雀が周囲を見渡すように飛んでいる。

熱線を吐く様子は無い。

このまま何もしないでくれれば、それでいいのだが。

原作通りにいけば熱線を放つことになる。

 

「……あれは!」

 

量産型ボルテックス、エクイテス3機がおそらく駐屯場の方向から飛来した。

 

……ケイのお兄さんは、学生パイロットとして朱雀討伐に派遣されるものだと思っていたが、まさか現地にいるタイミングで現れるとは思っていなかった。

 

まさかあの一隊の中に彼はいるのだろうか。

彼には、深追いをするなだの言ってみたが、結局小学生の戯言だ、本気にしてもらえたとは思えない。

何もできない自分の無力さを痛感する。

 

あのエクイテス3機は、確実に落ちる。

もしあの中にいるのなら……俺からはもうどうすることもできない。

 

 

 

全てを知っているのに何もできない自分自身の無力さに拳を握りしめる。

 

すると接敵したエクイテスたちが、一斉射撃を始めた。

朱雀は動かないまま、空の上で街を見下ろし、眺めているようだった。

 

……もしかしたら、このまま倒せるんじゃないか?なんて希望的観測が頭をよぎる。

その考えが甘すぎたことは、すぐにわかった。

 

朱雀が、羽ばたいたかと思うと、少し浮き上がった、ように見えた。

地上からでは遠くてよくわからない。

 

「何をする気だ……?」

 

とはいえ、エクイテスたちが上を取られたことに間違いはない。

彼らが上昇しようとするのを尻目に、ゆっくりと朱雀は、翼をたたんだ。

 

みたことがある。あの動作は、まずい。

 

「逃げ……!」

 

届くはずもないのに大声を上げる。

朱雀が、翼を広げた。

 

瞬間放たれた衝撃波が、周囲のエクイテスを吹き飛ばした。

 

 

 

『ボルテック・フレーム』本編で出現した朱雀は、こちらを追いかけてくる熱線の他に、近づかれた時に発動する衝撃波攻撃が主な攻撃手段だった。

かなりの高威力。

あんな攻撃を受けたら、ひとたまりもないはずだ。

 

……3機いたエクイテスのうち、2機が衝撃波にもろに当たり、大きく弾き飛ばされた。

残りの1機はなんとか回避できたようだが、持っていた銃を取り落としている。

 

「そんな……」

 

あのままでは中のパイロットが無事かどうかすらわからない。

あれが、星外生物。

 

飛ばされた2機のうち一機は少し離れた場所へ。

そしてもう片方は……。

 

 

「……こっちに、落ちてきてる!」

 

咄嗟に自転車を漕いでその場から離れる。

 

落ちてくるエクイテスからできるだけ離れようと死に物狂いで足を動かして。

 

後ろに大きな音。

続いてきた衝撃に、俺は自転車から弾き飛ばされ地面を転がった。

 

 

 

「ぐっ、うぅ……」

 

大丈夫だ、少し擦ったくらいで怪我はしていない。

立ち上がると、目の前には横たわった、初めて生で見るボルテックス。

 

普段、羨望と憧憬を集めるその鋼の体が、今はひどく頼りなく見えた。

 

「……こんなことしてる場合じゃない、大丈夫ですか!?」

 

一瞬ぼーっとボルテックスを眺めていたが、中のパイロットの安否を確認する必要がある。

倒れた機体をよじ登り、コックピットのスライドドアを開ける。

横になっていなければ重たすぎて開けられていなかっただろう。

 

そして中には。

 

「……ケイのお兄さん!」

「ぐ、っ……」

 

気を失ったケイのお兄さんがいた。

どうやら、死んではいないようだ。

 

「大丈夫ですか!?」

 

肩を叩いて揺らすも、起きる気配がない。

担いでシェルターに戻るか?いや、流石に小学五年生女子の体でそれは無理だ。

どうする、考えろ、考えろ!

 

 

空で、爆発音がした。

見上げると、そこには。

 

「嘘だろ……?」

 

生き残りのエクイテスが、朱雀によって破壊されていた。

どうやら、攻撃により腹を立てたようだ。目に見えて纏う炎の大きさが大きくなっている。

状況が、刻一刻と悪くなっていく。

 

「は、やく……!」

 

いつ熱線が飛んでくるかわからない。

お兄さんをコックピットから引き摺り出そうと、必死にひっぱる。

火事場のバカ力か、どうにか外に出すことができた。

そのまま地面に寝かせる。

 

朱雀が、高度を下げた。

翼を大きく広げたまま、体の炎をより大きく燃え上がらせる。

……俺は、あのモーションを知っている。

 

「熱線が、来る……!」

 

このままお兄さんとシェルターに行くことは不可能だ。

お兄さんを置いて自転車で移動すれば……いや、そんなことはできない。

 

「どうすれば……どうしたらいいんだよ……!!」

 

視界の端に、エクイテスのコックピットが見えた。

……何度も何度も、お兄さんの教本から写したメモ帳は読み返した。

誦じて言えるほどに、完全に暗記している。

 

……俺なら、乗れるんじゃないか?

ゲーム中では朱雀を何度も倒している。

このまま焼け死ぬくらいなら。

こちらにきているはずの応援部隊が来るまで持ち堪えさせればいい。

 

 

「……や、ってやる」

 

倒れたエクイテスのコックピットに乗り込む。

教本で見た通りだ。

エンジンはついたまま。衝撃波と地面に衝突した時のダメージはあるが、まだ動く。

 

「覚悟を、決めろ」

 

『ボルテック・フレーム』上位ランカーの実力、見せてやる。




次回、大地に立つ
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