ロボットに乗りたいとは思ったけどTSしたり転生したりは望んでないよね 作:運動エネルギー坂本
ありがとうございます……
物語の始まり
あの夏休みの日から四年半。
星外生物……朱雀と名付けられたそれによって起きた災害は、A級の、しかも警報が発令されるより先に被害が広がり始めた前代未聞のイレギュラー個体によるものだったにも関わらず、人命の被害が最小限に抑えられるという結果だった。
その理由は、あの時奴の気を引いてくれたあの名も知らないパイロットのおかげだった。
兄さん曰く、あれは兄さんでも、兄さんと一緒に出撃したパイロットでもなかったらしい。
ともかく、あの人のおかげで、ほとんどの人が死ななかった。
色々調べたけど誰だったのか、未だに顔も名前もわかっていない。
それでも、俺の憧れの人だ。
……しかし、あの日失った命が一つもないわけではない。
最初に起きた火事で亡くなった人、そしてそれによって起きた様々な二次被害により何人もの人が死んでいる。
あくまで最低限に抑えられただけで、完全にゼロになったわけではない。
そして、彼女も。
「ここが、士官学校……!」
国立防衛軍士官学校……通称ピラカンサ。
ボルテックスのパイロット、そしてそれの整備開発を担うことになるメカニックなど、日本各地の優秀な高校生が集まる特殊な高校。
優秀な成績を修める生徒は学生でありながら各地に現れる星外生物に対処するために派遣され、各地の平和を守ることになる。
そして卒業すれば、星外生物が地球に到達することを防ぐ、宇宙で行われている防衛戦に送られることになる、地球防衛の要となる学校、その日本支部と呼べる場所だ。
国内随一の倍率と難易度をもつこの高校になんとか合格することができた俺……皆月ケイは、その校門の前に立っていた。
ついにここまで来た。
憧れだったボルテックスのパイロットになるために、必死に勉強してきたのだ。
「よし……」
憧れの門を潜ることができる。
俺は足を一歩踏み出し、そして……。
「やったー!!!」
「……うがッ!」
後ろから突っ込んできた何かにぶつかられ、その何かと共にこけながら校門を潜った。
……周りの生徒の目線が痛い。
こうして、俺は締まらない高校生活の一歩目を踏み出した。
「いや〜ごめんごめん、興奮しちゃってさ、つい。でもあそこで立ち止まってた君も悪いと思うよ?」
「え、ごめん……」
少し人が少ない場所に移動する。
手を顔の前で合わせて頭を下げながらも文句を言ってくる彼女に、思わず謝ってしまう。
後ろからぶつかってきたそいつは、利発そうな女の子だった。
長く綺麗な水色の髪をまとめていて、整った目鼻立ちをしている。
思わず一瞬見惚れてしまう。
「君、名前は?」
「え?」
「だから、名前」
「あぁ、えっと俺は……皆月ケイ、パイロット科の新入生。よろしく」
「お、一緒じゃん!私もパイロット科、海谷ミレイ」
差し出された手を握る。
すると、向こうからもぎゅっと握り返された。
初めて会ったのに、すぐに距離を詰められてしまった。
多分、人と仲良くなるのが得意なタイプなんだろう。
「あっ、入学式の前に寮に荷物置かなきゃだから先行くね!また入学式で!」
「お、おう」
急にパッと手を離されて走り去ってしまった。
嵐のような子だが、なんだか仲良くできそうな気がする。
友達の心配はとりあえずしなくてよさそうだ。
「……メイネがいてくれたら、友達ができるかなんかで悩む必要なかったのにな」
一時間後、寮に荷物を置き、入学式の会場であるホールに向かった。
事前に配られた資料に書かれた、自分の座るべき場所に座る。
もう人が集まってきていて、全員がどことなく緊張した面持ちで座っていた。
俺の少し前には、今さっき会ったばかりのミレイも座っていた。
同じクラスの人が近くにまとめられているようだし、おそらく彼女とは同じクラスなのだろう。
すると、会場に入学式の開始を知らせるアナウンスが鳴った。
「始めに、本校生徒会長、青蓮院レイカによる挨拶です」
巨大なホールの中央が照明で照らされる。
そこへ歩いてきた女性二人は、ニュースなどでも見たことのある顔だった。
青蓮院レイカ。
現在の生徒会長にして、すでにパイロットとして各地の星外生物に対して教師の引率や許可なく出撃できる『エクセプション』の資格を持つ生徒。
銀色の髪が照明に照らされ周囲の目線を引く。
彼女の放つオーラに、会場の全員の気がより引き締められる。
そして、その彼女に付き従うように歩いてきた女性。
リディネ・ネモウという名前で知られる彼女は、顔の上半分を大きく覆う仮面をつけている。
入学から歴代最速で『エクセプション』の称号を手にいれ、そしてA級の単機撃破の実績も持つ最強のパイロットとも呼ばれる彼女。
しかし、どんなメディアの前でも、一向にその奇抜な仮面を外さず、経歴も謎に満ちているという。
短く整えられた黒髪とそのスレンダーな容姿は、中性的で学園全体にファンも多いらしい。
レイカと同じく、生徒会で副会長を務めている。
そんな彼女は、生徒会長の横に、ただ影のように佇んでいた。
マイクの前に立った会長は、ホールに座った新入生全員を眺めてからこう言った。
「ここにいるうちの一体何人が無事に卒業することができるか、私にはわかりません」
会場が、少しだけどよめいた。
「この学校にいる生徒は、生徒でありながら国家を守る盾として、剣として戦わねばなりません。それは特権を持つ『エクセプション』でなくてもです」
「その中で、パイロット志望者の多くは怪我、あるいは死によってその夢を折る事になるでしょう。私はそんなものたちを多く見てきました」
会長は、淡々と告げるように喋り続ける。
「あなたたちが何を思ってこの学校に入学したのかは知りません。しかしここは他の高校とは違います。お遊びの青春なんてものへの期待があるものは、寮に戻り荷物をまとめて出て行きなさい」
「そして、死を恐れない、国、そして人々のために戦う剣と盾ならんとするものだけが、私とともに戦いなさい」
彼女が周囲を見渡す。
もちろん、立ち上がる生徒なんていなかった。
そんな夢を持っている人間は、そもそもこの学校の入試の時点で落ちている。
俺はボルテックスのパイロットになる。
理由の一つは、命を救ってくれたあのパイロットへの憧れ。
そしてもう一つの理由は、
一体でも多くの星外生物を狩る。
俺はそのためにここに来た。
「……あなたたちのできるだけ多くが、卒業して宇宙に上がれることを心より願っています。以上」
彼女はそう言うと、マイクから離れていった。
一拍遅れて、万雷の拍手が巻き起こる。
その拍手の音の中で。
演説が終わった直後、黙ってずっと会長の隣に控えていたリディネと、目が合った気がした。
「……ッ」
永遠のようにも感じる一瞬、彼女は会長に付き従ってホールを後にした。
……ホールから俺が座っている場所はかなりの距離がある、それに仮面越しで目が合うなんてわかるはずがない。
ただの勘違いだ。そう思っても、心の中では確信してしまっていた。
なぜかはわからない、俺は、彼女に見られていた。
……そのまま、入学式は何事もなく進んでいく。
しかし、俺の脳裏にはずっと、彼女の仮面越しの視線が頭に残っていた。
「……見過ぎですよ、リディネ」
「ごめん、でもやっぱ気になっちゃって」
「……そんなに大事ですか?たかが小学生の時の友人でしょうに」
「
大勢の新入生の前で大演説をやったレイカとともに、ホールの袖に戻ってくる。
……セリフも仕事もないのに彼女の演説についていったのは、彼がどうしても気になったからだ。
体も大きくなって筋肉もついているし、可愛かった顔も女子にもてそうなイケメンになっている。
四年もたてば小さかった彼も成長し、もうゲーム中の主人公と同じ顔になってしまっていた。
少し感慨深くも、それを近くで見ていられなかったことが少し残念でもある。
レイカとともに、そのまま控室に移動する。
「……ここなら誰もいませんし、仮面外してもいいですよ」
「そう?じゃあお言葉に甘えて」
もはや頭の一部と言っても過言ではないほど長時間つけ続けている仮面を外せるのは、基本的に就寝時だけだ。
今の私の顔を知っているのは、目の前の会長含め一握りしかいない。
「……わかっているでしょうけど、彼……皆月でしたっけ?……にも顔は見せてはいけませんよ」
「わかってるよ、私はもう死んだから、でしょ?」
「それならいいんです、リディネ……いえ、
仮面を外す。
「今の
かくして演者が集い、物語の幕が上がる。
一度は離れた二つの歯車は、今もう一度噛み合おうとしていた。
シャ……なんでもない
ロボットもので正体を隠すにはやっぱ仮面ですよね
……オマージュというかパロディ強すぎるかと思ってヒヤヒヤしてます
ところで、『ボルテック・フレーム』って一体どんなゲームなんだ……?