ロボットに乗りたいとは思ったけどTSしたり転生したりは望んでないよね 作:運動エネルギー坂本
「そういえば、今日は新入生の初操縦らしいですね」
入学式から一週間、朝の支度をしていた私に、レイカがそんなことを言ってきた。
「……知ってるよ」
「やっぱり気になるんですか?子供の頃の友達」
「もちろん、私にとっては大事な思い出だし」
「向こうはきっとあなたのことなんて忘れてますよ」
「それでもだよ、別に私だって気づいて欲しいわけでもないし」
彼は、この世界の主人公だ。
そしてそれ以上に、私にとっては小学校までの楽しい時期の思い出の象徴でもある。
でも、私はこれ以上彼の人生に関わらないほうがいい、と思う。
彼といずれ敵対する私が彼の知るメイネだと分かれば、敵として立ちはだかる私を彼は倒せないだろう。
それにもし私が彼の近くにいれば、彼の歩む本来のハッピーエンドへの道を妨げることになるかもしれない。
……もし本当に私のこと忘れてたら、それはそれで寂しいが。
「……すいません、言いすぎました」
「いや、こっちもムキになった。彼に必要以上に関わる気はないから、安心していいよ」
「……わかりました」
そうは言っても、レイカは心配そうな顔をしている。
私はレイカの味方として、レイカを死なせないために戦うと決めた。
それが私に与えられた
たとえそのために、レイカを裏切ることになっても。
「まあ、新入生の最初の操縦訓練なんて何も起きませんよ。私たちの時だって簡単な歩行訓練と射撃訓練だけだったでしょう?」
「あーいやまあ、そうなんだけど……」
なんというか、この世界の出来事はゲーム準拠なので。
……起きるんだよなぁ、一番最初の訓練、チュートリアルステージだから……。
「やば、超ワクワクするんだけど!」
「これはすごい……!」
入学から一週間、基礎的な操縦方法なんかを教えてもらった俺たちは、ついに初めてのボルテックス操縦をやらせてもらうことになった。
同じクラスで仲のいいミレイと機体が収められているハンガーを少し早めに訪れると、そこには一つ目の黒い量産機……リッターが大量にあった。
これらの中から一機を、個人用に譲渡してくれるらしい。
自由にカスタムして乗ることができるそうだ。
正直、めちゃくちゃワクワクする。
「私どうしよっかな……とりあえずかわいい感じに塗っちゃおうかなぁ」
「槍……いや、銃をビームに変更して威力重視で……」
こういうのを考えてる時が一番楽しい。
しばらく機体の前でうんうん唸っていると、ハンガーにもう一人生徒が入ってきた。
綺麗な金色の髪を漫画みたいなツインテールにしている小柄な少女。
クラスメイトのライネ・エアル。外国からやってきた、いわゆる留学生だ。
「やっほーライネちゃん、今日楽しみだね〜」
「ミレイ、ライネさんと仲良いの?」
「ううん、初めて喋るよ?」
距離の詰め方やばすぎるだろ……。
内心驚愕していると、ライネさんが心底めんどくさそうにこちらを向いた。
「こんにちは、そこの……水色おっぱいといまいち特徴のない男」
「んなっ……」
「あはは、手厳しいね〜」
初めて喋るのに、最初からかなり刺々しい。
そういえば、教室でもあまり他の人と喋ってるところを見たことないような気がする。
「別にボルテックスなんて見ても面白くないでしょ?自分の道具を見て興奮する方がおかしいわ」
「えー、どんな色にしようとか、考えないの?」
「バカなの?目立たない色にするべきでしょう」
「そんなのあいつらに関係ないってー」
「別に敵が星外生物だけとは……いや、なんでもない。とにかく私はあなたたちみたいにお遊びでやってるわけじゃないの、早くあっちに行って」
「んぐ……」
元気印のミレイも黙りこくってしまう。
どうやらギブアップのようだ。
これ以上会話もできそうにないので、諦めて授業の準備をしておくことにした。
「いいか?ボルテックスには操縦を支援するシステムが搭載されている。それを使えば、初心者でもある程度は戦うことができるだろう。とりあえずはそれを使って実戦ができるよう訓練だ」
それから数十分後、集まったクラスメイトたちの前で、俺たちのクラスの担当教官……右腕を宇宙での戦いで失ったらしい彼が、基礎的な乗り方を解説していた。
「とりあえず乗って、歩いて一人ずつこのハンガーから出てみろ」
各自が自分に振り当てられたボルテックスの場所へ向かう。
俺も自分の機体のところ移動する。
俺に与えられたリッター。
俺を助けてくれたエクイテスの後継機。
「よし……」
意を決して乗り込む。
コックピットの中は意外と広く、中には教本で見た通りの操縦桿。
レバーを握る。
まだ火がついてないから動かないが、それだけで鼓動が早まる。
俺は、憧れた場所についに来ることができた。
「次、皆月ケイ、歩いて外に出ろ。エンジンの付け方はわかるな?」
「はい」
教本に書いた通りに操作して、リッターを起こす。
機体が少し震え、駆動音を鳴らし始めた。
頭部に搭載されたカメラの映像が目の前に映し出される。
「よろしくな、リッター」
レバーをもう一度握る。
今、レバーを倒せばこいつは歩き出すはずだ。
ゆっくりとレバーを倒す。
機体が揺れて、目の前の画面が前に動いた。
「俺が、動かしたのか……」
そのままレバーを倒して、ハンガーの外に機体を進める。
「よし皆月、合格だ。全員出るまであっちでしばらく待機してろ」
機体をそのまま待機場所へ向かわせる。
ついに俺は、ボルテックスに乗れたんだ。
憧れに、一つ近づいた。
「……メイネ、見守っててくれ。俺、ついにパイロットになれるんだ」
メイネが小学校時代言っていた、「ボルテックスに乗りたい」という夢。
あの日彼女が行方不明にならなかったら、俺と一緒にここにいて、一緒に夢を叶えられたはずなのに。
心に浮かんだ罪悪感を誤魔化すために、レバーを強く握った。
作者はアホなのでそんなに頭使って書いてないです
SF的な設定の考証とかにはあんまし期待しないでください