ダークエリア探索記   作:A太祐

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牢の中で

 

 牢屋に入れられて三日経った。俺は藁ベッドの上で今までのことを思い返す。

 

 あの幽霊の姿をした化け物、バケモンは色んなことを教えてくれた。態度悪いが、根は素直なんだろう。俺の質問に対して答えられるものは全て答えてくれた。

 

 まず人間の世界(リアルワールド)とデジタルワールドが存在する。俺が今いるのはデジタルワールドという世界だ。

 

 ………とはいっても、デジタルワールドはデジタルモンスターたちが住む世界の総称だ。イリアス・サーバーだの、ユグドラシル・サーバーだの、色んな世界が存在するとのこと。

 

 デジタルワールドには源流の世界が存在し、幾つかの世界線へと分岐している。俺もよく分からんが、要はパラレルワールドだらけってことか? 頭の良いデジモンから話を聞く必要があるみたいだ。

 

 この世界はダークエリアという名のデジタルワールドだ。『闇の中で生きるデジモンたちが住む異世界』といったところか。この世界は死んだデジモンが住む『あの世』だともいう。

 

「ダンテの神曲みたいに旅をしろってことか? 冗談じゃねぇ」

 

 彼の詩人、ダンテ・アリギエーリは3部作で構成された長編叙事詩を著作した。それが神曲である。地獄、煉獄、天国といった3つの世界をダンテ本人が遍歴して回るという内容だ。

 

 そんなダンテに倣って俺もダークエリアを回る? 冗談じゃねぇ。

 

 異世界の地獄に堕とされた。それだけで気が滅入る。太陽の光が恋しくなるのは時間の問題か?

 

 それと何故この世界の水分は光るのかを聞いてみた。返って来た答えは「水を光らせるデジモンがいる」とのこと。何でもアリか。

 

 デジモン、デジタルモンスター。こいつらの存在は何とも奇妙だ。聞けば4つの属性に分類され、ネット上で悪さをするコンピューターウィルスだという。クラッカーたちがこいつらの卵、デジタマとやらを乱獲しまくり、犯罪の道具としてこき使っているのだろう。

 

 ………ダークエリアは死んだデジモンたちが行き着く場所だ。当然、クラッカーたちが育成していたデジモンたちも死ねばここに来る。そんな彼らは人間を恨んでいるに違いない。

 

「なんて世界に来ちまったんだ、俺は」

 

 嘆いてばかりだが、こればかりは本当にどうしようもない。何せ右も左も解んねぇんだよ。どーしろと?

 

 あと、善行積んだデジモンもここには来る。だが1秒くらいだけだ。すぐに『はじまりの町』という場所にデジタマとして転生するらしい。

 

 『はじまりの町』とはデジモンの赤ちゃんたちの幼稚園みたいな場所だ。デジタマから孵った幼年期デジモンは成長期になるまで世話になるという。

 

 天国は無いが、もう一度始めからやり直せるのなら闇の世界よりはマシだ。仲の良い友達にもう一度会えるんだったら、猶更(なおさら)だろう。

 

 ダークエリアに留まるのは悪行やらかした奴だけだ。文字通り、ここはデジモンたちにとっては地獄だろう。

 

 スカルサタモンは敵勢力を相手に戦争をしかけていると聞く。つまり彼の庇護下にいるデジモンは戦争に駆り出されるということだ。

 

 戦争は命を賭けた殺し合いだ。勝っても負けても、必ず死体は残る。特にダークエリアで死んだデジモンはもう二度とデジタマに転生することができない。人間の世界、地球と同じだ。

 

 もっと恐ろしいのは独裁者はスカルサタモンだけではないという事実。強いデジモンであれば一つの都市を支配する王になれるとのこと。ダークエリアは弱肉強食の世界だ。

 

 そして何よりも地獄なのは、白米が食えないことだ。

 

 出された食事は漫画肉と生野菜。どう考えても料理とは言えない。囚人に食べさせる食事としてそれはどうなんだとツッコミたい。

 

 ………何もかもが地球とは常識が違う。頭が追い付かない。できることなら日本に帰りたいが、まずはこの牢屋から出して貰わないといけない。

 

 バケモンの話では、このテノチティトランにはスカルサタモンという主がおり、現在は戦争に行っていて不在とのこと。

 

 デジモンにも幾つか勢力があって、彼らは資源を求めて殺し合っているのだとか。

 

 最悪だ、嫌な所で人間と同じことしてやがる。色々と話を聞けばスカルサタモンは独裁者だ。他所からやって来たデジモンを他国のスパイとして処刑したって聞く。都市内で手紙を作るのは許可制で、中身は検閲されるとも。

 

 こりゃ、取り入るという選択肢は無しだな。独裁者は猜疑心が強い。だから何時かは俺みたいな奴は殺されるだろう。

 

「おいっ! 今日の夕飯だ! 」

 

 色々と考えている内にオーガモンが食べ物を持って来てくれた。今日の献立は魚に大根か。漫画肉よりはマシかもしれないが。それに何の調理もしてない大根とか地獄か? ………ダークエリアはデジモンたちの地獄だったな。

 

 まともな料理が出されないのは当たり前か。料理好きなデジモンはダークエリアに留まることは無い。他のデジモンたちの為に料理をすること自体が善行だからだ。

 

 どーせ迷い込むんだったら太陽のあるデジタルワールドが良かった。こんな闇の世界に堕とされるとかどんな罰ゲームだよ。

 

 今日は寝るか。昼夜の概念が全く無い上に、俺自身が光っているせいで睡眠時間や体内時計とかが狂いそうになる。

 

 願わくば、一日でも早く牢屋から出して欲しいところだ。

 

 

 

「起きろっ! スカルサタモン様がお呼びだ! 」

 

 俺は無理やり叩き起こされる。俺の頬を叩いたのはどうやらバケモンの様だ。

 

 やっと都市の主が返って来たか。しかし、スカルサタモンか。名前からして「骨の悪魔」ってイメージがある。オーガモンは鬼で、デビモンは悪魔だし。

 

 俺は牢屋から出され、両腕を縄で拘束される。今抵抗したら殺されるから大人しくしているしかない。

 

 廊下を歩かされ、やがて外に出る。都市の全容が見えた。

 

 何といっても、デビモンの数が多い。どうやらデビモンは種族名の様だ。固有の名前とかではない。

 

 そのデビモンだが、彼らは「兵士」としての役割を務めている。この都市の治安維持は彼らがやっているのだろうが、如何せんやる気が無い様に見える。おいおい、大丈夫か?

 

 まあデビモンは心底どうでもいい。無能な怠け者は兵士としてこき使うのは普通だからな。

 

 それよりも俺が気になったのは黒い蝙蝠(こうもり)のような姿をしたデジモンだ。デビモンとは形状が違うが、見た目的に「使い魔」というイメージがある。

 

 その悪魔だが、地面に水を撒いていた。彼はバケツと柄杓(ひしゃく)を持っている。

 

 なるほど、水を撒くことで地面を光らせているのか。この都市には「街灯」というものが無い。だから水撒きの仕事が重要になってくる。

 

 他のデジモンを見てみるか。まず小鬼の様なデジモンたちは清掃を任されている。箒と塵取りを使っているからすぐにわかる。

 

 オーガモンたちは荷物の運搬か。古代の人間は丸太を使って輸送を行っているという記録があるが、デジモンたちは力自慢が多い。難なく腕っぷしで重いものを運べられる。

 

 ………というように、色々なデジモンたちがこのテノチティトランで仕事をしている訳だ。ただ、各々がやりたくもないことをしているという態度でやっているのは気になるが。

 

 もしかしたらこのダークエリアは悪党を働かせるための流刑地なのかもしれない。世界全体が牢獄なのだろう。彼らが囚人たちなら自業自得だ。デジタルワールドで悪さをした分、罪を償って欲しいものだ。

 

「おい、ボサっとするな! 」

「………すいません」

 

 考え込んでしまったのか、バケモンが怒鳴って来る。仕事サボっているとスカルサタモンから思われたくないのだろう。

 

 俺は都市の観察を止め、目的地まで歩くことにした。

 

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