ダークエリア探索記   作:A太祐

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都市の成り立ち

 

 テノチティトランで仕事を始めてから四日後、俺は都市内にある図書館で文字を習っていた。この図書館はソウルモンが管理しており、配下のインプモンを使って書庫の整理とかをやっている。

 

 最初、ソウルモンは俺に対して不審な目を向けていたが、話をしている内に態度を少し軟化させてくれた。人間社会の話は退屈を紛らわすそうだ。

 

 しかし友好的だったのは最初だけ。いざ文字や文章を習おうと思った時に奴は変貌した。

 

「文字を教えてくれ、だぁ? なら払えるモンはきっちり払って貰わないとなぁ? 」

 

 ここはダークエリア。極悪デジモンたちの流刑地だ。真面目そうな奴であろうと油断してはいけなかった。

 

 他所から何かを教えて貰う時、情報量を払わないといけない。ダークエリアでのルールだ。無償で何かをしてくれるとか、そういうのは期待してはいけない。

 

 なけなしの財布から指定額のBITをソウルモンに支払う。時は金なりとはこういうことだ。

 

 金を受け取ったソウルモンは3時間だけ授業を行ってくれた。俺が生徒だ。教えを乞う立場だから「よろしくお願いします」は大事だ。ちゃんと頭を下げる。

 

 デジタルワールドで使われるデジ文字とやらは日本語の五十音と対応しているそうだ。しかしこのダークエリアではアルファベット26字と対応したものを使う。

 

 この文化の違いは「ダークエリア」を支配している王たちの影響による。弱肉強食が当たり前のこの世界、強いデジモンがルールを決めるそうだ。

 

 ダークエリアを支配している王たちは気が遠くなる程、遥か昔から君臨し続けている。アルファベット版は古代デジタルワールドで使われた文字だ。

 

 だから王たちの意向通り、この世界のデジモンたちはアルファベット版のデジ文字しか使ってはいけない。

 

 ダークエリアに堕とされた新参者は「日本語対応版のデジ文字」の社会で生きて来た筈だから、当然この世界のしきたりには順応しにくい筈だ。

 

 当然、「日本語対応版のデジ文字」を使おうものなら、周囲から迫害されるだろう。社会とはそういうものだ。無法者は淘汰されるしかない。

 

 色々と専門用語とかあり過ぎる。後で辞典とか作っておくか? この世界、人間の常識で物差しを計ろうとすれば痛い目を見るのは俺だ。

 

 3時間だけの貴重な体験を得て、俺は一枚の紙きれを(かばん)にしまう。授業中は内容をメモする。よく学校の先生とかが「ノートの使い方」について話してたが、今になって大事な話だったと思えてくる。

 

 この世界、紙は貴重だ。まず木材の入手が難しい。何せ地形の大半が砂漠だ。このテノチティトランの周囲に木々や雑草は生えてなかったし、色んな意味で植林が大変なのだろう。

 

 ダークエリアには「エビルフォレスト」という地名がある。その森から「デジ魔木」を伐採して木材を得ているらしい。しかし「アスタモン」という王がその地を支配しているせいで、木材を得る機会が少ない。

 

 スカルサタモンが戦争をやる最大の理由、それは資源を入手することだ。もしアスタモンの領地を奪うことができれば、大量の木材を伐採できるだろう。………どう考えても木々は有限な気がするが。

 

 「エビルフォレスト」に行く機会があるのなら、一番危険なのはウッドモンだろう。樹木に擬態し、獲物を襲う成熟期のデジモンだ。

 

 あの森に生息しているマッシュモンの大半はベジーモンやレッドベジーモンに進化するとのことだが、強く鍛えられた個体はウッドモンに進化するという。

 

 ウッドモンに関する情報はシャンブルモンから聞いた。彼は元はあの森で産まれたマッシュモンらしく、スカルサタモン率いる軍勢に捕まったのだとか。「命が惜しければ働け」と言われたのだろう。不憫だ。

 

 シャンブルモンに進化したのは、地形の影響だという。テノチティトランは輝く湖の中央に位置し、水の光を浴びて2Pカラーの姿のデジモンに進化したらしい。

 

 ならば森の中にいてもシャンブルモンには進化できたんじゃないか、って思った。だが当のシャンブルモンは顔を横に振る。

 

 エビルフォレストのデジ魔木は輝く水を与えると枯れてしまうそうだ。養分にするのはデジモンの死体であり、他領のデジモンたちを生贄にすることで森は保たれるのだと。

 

 調べれば調べる程、悍ましい話ばかり出てくる。そしてこのテノチティトランにも生贄文化は存在している。

 

 牢屋の中に居た時、食事を届けてくれたオーガモンに対し、「『テスカトリポカ』や『トラロック』、『ウィツィロポチトリ』の様な神は存在するのか」って聞いた。返答こそ無かったものの、オーガモンは酷く動揺していた。

 

 デジモンには強さの指標として世代が存在する。幼年期、成長期、成熟期、完全体、旧極体の順にどんどん強くなってくる。

 

 スカルサタモンは完全体のデジモンだ。そんな奴が王をやっているということは、究極体は神の様な存在だということになる。

 

 そして、俺は図書館にあった書物の中に、気になる記述があった。「テノチティトランには永遠の眠りについた神がいる」という一文が。

 

 本が作成された年代は約8億年前。残っているのが奇跡だ。地球だったら必ずどこかに欠損があってもおかしくないレベルだ。なのに完璧な状態で保存されてあった。この都市の技術力は恐ろしい。

 

 他にも色々な情報がある。それらを含め、このテノチティトランがどういう場所なのかを考察してみた。

 

 この都市を築いたのはデジタルワールドのデジモンたちだ。彼らは人間の(しもべ)だった。命令を受け、広大な湖に住むエルドラディモンの背中に神殿を建てた。

 

 神殿の建設に関わったデジモンたちは住居を作り、エルドラディモンの背中で生活し始めた。これがテノチティトランの始まりだ。

 

 当代のテノチティトランを支配していたのはサーベルレオモンだ。彼はデジタルワールドの平和を願い、治政を行った。

 

 ところが、この都市に外敵がやってきた。蛮族といわれる勢力だ。首魁のタイタモンはサーベルレオモンを殺し、都市の支配者に成り代わろうとした。

 

 都市のデジモンたちと蛮族は殺し合った。数多のデジモンが犠牲となり、生き残ったのはサーベルレオモンとタイタモン、そしてエルドラディモンだけとなった。

 

 サーベルレオモンとエルドラディモンは最期の力を使い、タイタモンを倒すべく禁忌を犯した。デジモン同士の融合である。2つの命を1つにすることで、一つ上の世代のデジモンへと進化した。

 

 究極体よりも上の世代とか存在するのか? 他の本にそういった情報は一切無かったが………。とにかく、サーベルレオモンとエルドラディモンは融合し、より強いデジモンへと進化した。

 

 最初の内はタイタモンを一方的にボコりまくった。しかし「融合体」は突如として弱り始める。

 

 デジタルワールドを管理する者、ユグドラシルは如何なるバグをも許さない。世界は「融合体」を殺した。

 

 命が尽き、「融合体」は死肉と化した。そしてダークエリアへと堕ちた。禁忌を犯したデジモンはダークエリアへと封印される。

 

 極悪デジモンたちの流刑地にある湖に「融合体」は死んだ様に眠った。よっぽど警戒されていたのか、目が覚めない様に色々とプロテクトがかかっているのだとか。

 

 太陽の光も無い場所で木々や作物が育つはずが無い。「融合体」の背中にあった植物は全て枯れた。石造りの建物だけが残った。

 

 タイタモンは封印に巻き込まれたらしく、生きたままダークエリアに堕ちた。本を書いたのはタイタモンの様だ。というか彼以外にこの本を書く奴がいない。どうやら都市に残っていた紙束を使ってこの書物を作成したらしい。

 

 やがてダークエリア内のデジモンたちが都市に集まり、そして殺し合いを始めた。タイタモンも殺し合いに巻き込まれたらしく、数多の敵の攻撃を受けて命を落とした。

 

 最終的にスカルサタモンが勝ち残り、王として都市を支配する様になった。

 

 ………以上、俺の考察は終わりだ。

 

 さて。このテノチティトランには祭りがある。眠っている神を奉る為の生贄の儀式だ。眠っている「融合体」を起こさない様にする為のものだろう。

 

 2日後に都市内のデジモンたちは強制参加となり、スカルサタモンの指示に従って行動しなければいけない。

 

 願わくば、アステカ文明のようにデジモンの皮膚を服にして着るとかが無い様に。じゃないとストレスで吐く。マジで。

 

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