10時間後。
ルカとアーリマンはアレクサンドルを連れ、ベラルーシ東部の荒野を歩いていた。
アーリマンは眠っているアレクサンドルを抱えながら歩いている。
現在の時刻は午後11時半。子供であれば既に寝ている時間だ。
「確か、宇宙軍との合流拠点はここだったわよね?」
ルカは答える。
「ああ。まあ、そろそろ来るだろう。」
2分後・・・
「ああ。ちょうど来たか。」
ルカとアーリマンはアレクサンドルを連れ、着陸した宇宙軍の輸送機に乗り込んだ。
輸送機はゆっくりと離陸していった。
アーリマンはアレクサンドルを抱きながら話し始めた。
「母船まではおよそ30分程度。とりあえず、着いたらこの子について艦長に報告しにいきましょう。」
「分かった。」
ルカはそう答えた。
30分後。
ルカとアーリマンは輸送機から母船へと戻り、艦長室にいた。
「とりあえず、時空乱流に巻き込まれた子供はストリートチルドレンであり、保護してきたという感じか。」
ルカは艦長の問いに答える。
「はい。現状、保護した子供に健康上の問題はありませんが、念のため、健康診断を受けさせるべきかと。」
「分かった。健康診断についてはこちらの方で手配しておくから、その子供を医務室に連れて行くようにしてくれ。」
「はい。」
ルカとアーリマンは報告を終え、艦長室を出ていった。
数分後。
ルカとアーリマンはアレクサンドルを連れ、医務室の前まで来ていた。
ルカがドアをノックすると中に入った。
中には医師が1人と看護師が2人いた。
医師はルカに尋ねた。
「その子の健康状態は?」
ルカは答えた。
「特に問題はありません」
2人は医師にアレクサンドルを引き渡し、診察を始めた。
医師はアレクサンドルの身体を触診し、聴診器で胸の音を聞く。
しばらくの時が経ち、ルカはアレクサンドルの診断結果を渡された。
「痩せすぎか・・・」
医師は言った。
「そして、記憶スキャンによる精神検査の結果についてですが、PTSDの特徴が見られました。一応、記憶自体は動画データとして保存しておきました。」
そう言って、医師はルカに動画データが保存されたメモリーカードを渡した。
「危険なので絶対にその子の前では見せないようにしてください。」
ルカは答える。
「分かった。」
そういって、ルカとアーリマンとアレンクサンドルは医務室を後にした。
深夜。
アーリマンは自室で眠っていた。
「お姉ちゃん・・・」
突然、何者かによって起こされる。
アーリマンは目を覚まし辺りを見渡す。
するとそこにはアレクサンドルの姿があった。
「怖い夢を見た・・・」
彼はそういうとアーリマンに抱きついた。
彼女は言った。
「大丈夫よ・・・ もう大丈夫だから」
3時間後。
アーリマンはアレクサンドルを抱きしめるような形で眠っていた・・・
翌朝。
アーリマンが目覚めると、アレクサンドルの姿は備え付けのデスクにあった。
本を読んでいるようだ。
アーリマンはアレクサンドルに尋ねる。
「何を読んでいるの?」
彼は答えた。
「道端に落ちてた絵本」
彼は言った。
アーリマンは尋ねる。
「その本面白い?」
彼は答えた。
「うん!」
アーリマンは言った。
「そう・・・良かったわね」
3日後。
ルカは自室の端末で何やら調べていた。
「『子供の体調は非常に不安定であり、特別の注意が必要である』か・・・」
彼は端末を閉じると呟いた。
そしてアーリマンに尋ねた。
「アレクサンドルの調子はどうだ?」
アーリマンは答える。
「特に問題はないわ・・・でも少し心配なことがあるの」
ルカは尋ねる。
「なんだ?」
アーリマンは答える。
「あの子は良く寝るんだけど、その度に悪夢を見ているらしくて・・・」
ルカは答える。
「そうか・・・ 記憶を動画データ化して、夢について調べてみるか・・・」
「またあの医師に頼むの? 正直言って、あの医師はちょっと苦手なのよね・・・」
ルカは答える。
「まあ、太陽系艦隊は変質者と荒くれ者と青年将校*1が多いからね・・・ まあ、でもあの医師のスキルはとても高いし、信頼はできるよ」
アーリマンは答える。
「まあ確かにあの医師の診断はとても正確だしね・・・」
ルカは答える。
「まあとりあえずその医師に連絡するよ・・・」
かぐや星特殊作戦軍は100万人ほどの小規模な軍であるが、非常に厳しい規律と徹底された秘密主義の下で政権中枢でもその詳細を見ることは難しい。
さらに常に黒い目出し帽、黒い装甲服、黒いヘルメット、黒いサングラスを着けており、「最も気味の悪い部隊」と言われている。
一方、特殊作戦軍の総司令官であるライナー・フォン・ハルダーは「この黒い装甲服を見ると気分が悪くなるという人がかぐや星に大勢いるのを私は知っている。我々はそれを分かっているし、そもそも愛されることを期待していない。」としている。