3時間後。
ルカとアーリマンとアレクサンドルは医務室にいた。
医師いわく、電子カルテの整理で忙しかったようでこの時間しか空いていなかったようだ。
「とりあえず、夢の映像データ化はできますが、少々不鮮明なものになるかもしれません。」
ルカは言う。
「分かった。」
医師は答える。
「では、アレクサンドルさんは一旦こちらの方で預からせていただきます。」
ルカは答える。
「ああ、よろしく頼む」
3時間後。
「終わりました。」
医者はそう言って、医務室から出てきた。
アーリマンは尋ねる。
「どうでした?」
医師は答える。
「とりあえず夢の映像化はしましたが、かなり暗い過去を持っているようです。」
アーリマンは尋ねる。
「暗い過去?」
医師は答える。
「はい。詳しくは映像データをご覧下さい。」
そういって、医師はルカに映像データの入ったメモリカードを渡した。
「分かった。」
そう言ってルカとアーリマンとアレクサンドルは医務室を出て行った。
深夜。アーリマンは3日前の夜と同じく、アレクサンドルと一緒に眠っていた。
すると突然アレクサンドルが抱きついてきた。
彼は言った。
「お姉ちゃん・・・」
アーリマンは尋ねる。
「どうしたの?」
彼は言った。
「また怖い夢を見た・・・」
アーリマンは尋ねる。
「どんな夢?」
彼は答えた。
「警察官たちに僕のお父さんとお母さんが連れて行かれる夢・・・」
「そう・・・怖かったわね・・・」
アーリマンはアレクサンドルを抱きしめる。
そして言った。
「大丈夫・・・私が守ってあげるから・・・」
翌朝。
ルカは自室の端末でアレクサンドルの過去について調べていた。
「アレクサンドルの両親はベラルーシである程度有名なエンジニアであり、アレクセイ・イグナトフなどのロシアの実業家とも接点があったか・・・ そして、最終的には冤罪でベラルーシ警察によって逮捕され、現在は安否不明・・・」
ルカは端末を閉じ、考え込む。
「とりあえず、アレクサンドルの親を取り戻すのは難しそうだな・・・」
するとルカの部屋の扉が開きアーリマンが入ってきた。
アレクサンドルも連れている。
彼女は言った。
「おはよう」
ルカは答える。
「ああおはよう」
アーリマンは尋ねる。
「どうしたの?考え事?」
ルカは答える。
「ああ。その子の過去について調べていたんだが、・・・」
アーリマンはアレクサンドルに言う。
「アレクサンドル君。ちょっと隣の部屋にいてくれない? このお兄さんと大事な話をしないといけないの。」
アレクサンドルは答える。
「分かった」
3分後。
2人はアレクサンドルが去ったことを確認すると話し始めた。
アーリマンは尋ねる。
「で、どうだったの?アレクサンドル君の過去は?」
「ああ。両親はベラルーシである程度名の知れたエンジニアで、最終的には冤罪でベラルーシ警察に逮捕されたらしい。」
アーリマンは答える。
「そう・・・ やっぱり、親を取り戻すのは難しいわね」
2人は考え込んだ。
しばらくして、ルカがその沈黙を破った。
「やっぱり、俺たちが親になるしかないか・・・」
「でも、あの子はまだ両親の身に起きた悲劇を忘れてはいないのよ?」
ルカは答える。
「・・・アレクサンドルの記憶を書き換えるか」
アーリマンは驚いた。
そして言った。
「ヴィルト記憶技法のこと? あれって80年前のドイツで親衛隊関係者が研究していた技術で、洗脳に使われていたって聞いたけど・・・」
ヴィルト記憶技法は第二次世界大戦末期のドイツ親衛隊が研究していた技術であり、エルンスト・フォン・ヴィルトという親衛隊員によって研究されていた。
ルカは答える。
「確かに洗脳するために開発された技術だが同時に記憶を書き換えることも可能だ。それにあの医者はヴィルト記憶技法に精通しているからな。」
アーリマンは答える。
「・・・分かったわ。明日、医者に連絡しておくわね。」
ルカは答える。
「ああ頼む」
アーリマンは医者に連絡を取った。
3日後。
そして医者はアーリマンに頼まれた通りアレクサンドルを検査しヴィルト記憶技法による記憶の書き換えを行った。
医者は検査結果を見ながら言う。
「とりあえずこれでアレクサンドルさんの記憶処理は完了しました。」
アーリマンは尋ねる。
「それで、アレクサンドル君の記憶は?」
医者は答えた。
「アレクサンドルさんの記憶は両親に関する部分のみ書き換えられています。」
アーリマンは尋ねる。
「両親のことは何も覚えていないの?」
医者は答える。
「はい。」
アーリマンは医者に言う。
「それでアレクサンドル君は今どこにいるの?」
医者は答える。
「そこのベッドにいます。」
ルカとアーリマンはベッドで寝ているアレクサンドルの元に駆け寄った。
すると彼は言った。
「お姉ちゃん?・・・」
「貴方の両親については覚えてる?」
アーリマンは尋ねた。
しかしアレクサンドルは首を横に振った。
そして言った。
「僕は元はエスパルで両親はいないよ。」
アーリマンは言う。
「ベラルーシという国は覚えてる?」
アレクサンドルは言う。
「何それ?」
アーリマンは医者に尋ねた。
「記憶の書き換えは完璧のようね。」
医者は答える。
「はい」
翌日。
ルカとアーリマンはアレクサンドルと共に艦内の食堂で食事をしていた。
アーリマンはアレクサンドルに言う。
「これからは私たちが貴方の家族よ。」
アレクサンドルは答える。
「うん!」