月面探査記 第二巻   作:gh0sttimes

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第二十話 辺境

翌朝。

ルカは自室の端末にて新聞を読んでいた。

「辺境惑星で国家戦線台頭か・・・」

国家戦線はかぐや星の辺境惑星であるクラースナン星の極右政党であり、人間至上主義を掲げてエイリアン種族の排斥を訴える極右政党であり、計画経済、神話に基づく民族主義を掲げている。

経済政策の面では高速道路や空港の整備の推進、減税、失業者ゼロを掲げている。

また、この政党の党首は最も異端で忌み嫌われていた宗教<イルミン教>を独自解釈で信仰しているという噂がある。

その影響で公安によってマークされているというのは言うまでもない。

ルカは記事を読み進める。

以下は記事の筆者の意見である。

 

『現代において、宇宙を見渡しても民主主義以上に偉大な成果はない。地球においてはギリシャでその種が撒かれ、第二次世界大戦を経てその種はようやく満開を迎えた。宇宙においても同様だ。クラスナン帝国の地方自治に始まり、2度の残忍な銀河大戦を経て満開を迎えた。国民が国家の行く末について広く議論し、舵取りに参加できるようになったのは宇宙の歴史においても地球の歴史においても最も偉大な成果である。しかし、民主主義の最大の問題点は、国民が自分は何を求めているのか、何が最善なのかを知らないことである。地球において第二次世界大戦の最大の原因となったナチズムは民主主義国家の民衆が空想に踊らされて成立したのだ。最終的に待っていた結果を見てみるといい。

統制民主主義は、このような危険な思想が民主主義制度に入り込み、破壊してゆくのを防ぐための手段である。

政府による強力なプロパガンダにより、国民にとって何が最善かを伝え、全政党を国家の長期的目標に同意させる。過激な政党の膝は折る。

勿論、民主主義の理論に基づいて自由で公正な選挙は実施されるが、結果がどうであれ、国家の包括的目標に異議を唱えるような者は存在し得ない。もしも、国家が民主主義を実践するのであれば、ブレーキを付けておく必要がある。車が暴走した時、ブレーキがなければすぐに壁の一部となってしまうからだ。』

 

ルカはさらに記事を読み進める。

 

『国家戦線の主要な支持団体として【エイリアン種族による攻撃に対抗する愛国者運動】、通称PDPNIR(ぺー・デー・プニル)が挙げられる。彼らはエイリアン種族の排斥を主張しており、その思想はナチズムの独自解釈のように思える。またPDPNIRはエイリアン種族の排除という目的を達成するためならいかなる手段も正当化すると主張している。国家戦線の主張は地球におけるナチス政権と何ら変わらない思想である。』

 

ルカはさらに記事を読み進める。

 

国家戦線はかぐや星において最も過激な政党であり、その支持団体であるPDPNIRとともに公安にマークされている。

ルカは記事を読み終えると端末を閉じた。




テクノクラートは地球において、ソヴィエト連邦や中華人民共和国など所謂<東側諸国>が採用したイデオロギーである。
技術者は国家の中枢を制御し、専門的な知識によって良い未来を目指す。
しかし、かぐや星においてテクノクラートという言葉は大いに嫌われる存在である。
千年前の悲劇はテクノクラートに対する多くの懸念を現実のものとしてしまった。
その結果、ディアボロという巨大な人工知能は自身の生みの親を破壊し、最終的には国家をも破壊せんとした。
人々は十世紀もの間、血を流し、涙を流し、失ってきたのだ。

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