月面探査記 第二巻   作:gh0sttimes

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第二十五話 犬鳴村拠点にて

自室に戻った後。

ルカはアレクサンドルに日本への派遣任務に行くことを伝えた。

その後にアーリマンから日本についての説明を受けたのであった。

翌週。

ルカとアーリマンとアレクサンドルは宇宙船に乗り込み日本へ向けて出発したのであった。

日本にはかぐや星特殊作戦軍の機動部隊の秘密基地が多数存在する。

特にきさらぎ駅周辺に拠点を構える機動部隊<エマニュエル・ゴールドスタインの子供達>は特殊作戦軍の中でも最大規模だ。

朝鮮半島や中国大陸、日本列島での情報工作、要人の暗殺&拉致などを行う部隊である。

今回の派遣の目的は犬鳴村に拠点を構える機動部隊<吠える犬>との合同演習だ。

かぐや星特殊作戦軍亥之鳴山送信所を運営する部隊であり、日本での軍事作戦や世論工作、かぐや星への情報送信を行う。

しばらくして、二人は犬鳴峠東部に着陸した。

アーリマンはアレクサンドルに言う。

「犬鳴峠は険しい山だから貴方が歩くにはちょっときついわね・・・ いいわ。とりあえず、おんぶしてあげる。」

アーリマンはアレクサンドルを背負い、固定用の器具でしっかりとアレクサンドルの身体を固定し、加えてゴーグルを着用させた。

「もし目に木の枝とかが刺さったら大変だからしばらく我慢してね。」

「うん。」

アーリマンとルカも暗視ゴーグルを着けるとそのまま歩き出した。

ルカもその後をついて行く。

数時間の間、ザク、ザクと枯葉を踏む音が響いているだけであった。

2時間程度経っただろうか?

三人はようやく犬鳴トンネルについた。

時刻はもう深夜だ。

アレクサンドルは身体を固定されながらもすやすやと眠っていた。

「ここが犬鳴トンネルか・・・ 夜はとても不気味だ・・・」

アーリマンは答える。

「とりあえず、行きましょう。」

「そうだな・・・」

ルカはトンネルを塞いでいるコンクリートのバリケードを抵抗なく退かし、中に入っていった。

数分の後、トンネルを抜けると巨大な施設が見えた。

「警備兵はどこにいるんだ?・・・」

アーリマンが答える。

「あそこにいるわよ。」

アーリマンが指を指した方向を見ると岩陰で誰かが歩いているのを確認できた。

やがてその人影はこちらに移動してきたため話をするためにこちらも移動したのだった。

現れたのは特殊部隊らしき兵士だ。ヘルメットと目出し帽をかぶっており口元しか見えないので性別や年齢は良く分からないがおそらく20代の半ばほどの年齢であろうと判断したルカは挨拶した。

「ルカだ。よろしく。」

兵士は答える。

「ああ。よろしく。とりあえず、明日から演習が始まるから今日はゆっくりと休むといい。」

しばらく会話をした後三人は施設の中に入るのだった。

「はあ・・・ 疲れたわ・・・」

アーリマンは2人に用意された部屋で装甲服を脱ごうとした。

「そういえば、この子をずっと固定したままだったわね・・・」

そう言うとアーリマンはアレクサンドルをおろした。

アレクサンドルはやはり眠っていた。

「明日も早いし、そろそろ寝ようかしら・・・」

しばらくして、アーリマンも眠ることにした。

翌朝。

ルカ、アーリマン、アレクサンドルの三人は早くも朝の支度を終えていた。

「ほら。行くわよ。」

「うん。」

アーリマンは着替え終わったアレクサンドルを引き、ルカと共に外に出た。

外には丁度黒ずくめの兵士が立っていた。

「よし。演習場所は向こうだ。そんでもって、子供は向こうだ。」

アレクサンドルは別の兵士に案内され、近くの神社に歩いていった。

 

しばらくして、アレクサンドルは近くの神社で看板を熱心に見ていた。

この神社の歴史が書かれた看板だ。

看板の説明はいくつか難解な箇所があったが、中でも興味を持ったのはこの神社が普通の神を祀っているわけではないという点である。

死神のような存在を祀っているのだ。

奥に並ぶ地蔵は笑顔で裏拍手をしているように見える。

その傍らには人間の骨らしきものが地面に刺さっている。地蔵の前に屏風のようなものが捨てられていたりもする。

兵士は説明を続ける。

「ここに祀られている神様に何か祈ろうとしているのであれば止めた方がいい。ここの神は神道において邪神に堕ち、隠されてきた最悪の疫病神『亥之疫神』だからな。黒ミサをイメージしてくれるとわかりやすいかもしれない。」

アレクサンドルは尋ねる。

「黒ミサ・・・ 悪魔信仰の儀式ですか?・・・」

兵士は答える。

「そうだ。」

アレクサンドルは何かに気づいたように尋ねる。

「そういえば、神主はどこです?」

兵士は続ける。

「もうこの村は捨てられていて、神主さえも神社を捨てた。疫病神は怒っているが、もはや死んだも同然だよ。そこに我々が新たな基地を作ったというわけだ。」

アレクサンドルは何かに気づく。

「あれは誰ですか?・・・」

アレクサンドルが指さした先には首のない女性がいた。

身体は青白く、生気がない。

兵士は慌てて小銃を取り出した。

「アレクサンドル君! 早く隠れて!」

アレクサンドルは慌てて逃げていく。

その後、発砲音が聞こえた。

どうやら、先程の女性を撃ったようだ。

発砲から数分後。兵士は大きくため息を吐いてどこかに連絡をとったのであった。

「ヴェーティアより本部へ。第3区画にて敵性存在を無力化した。」

『了解した。付近にけが人がいる場合は保護し、直ちに兵舎に戻ってくるように。』

「了解。通信終了。」

兵士は連絡を終えると草むらに隠れているアレクサンドルに行った。

「脅威は去った。もう出てきていいぞ」

アレクサンドルは言う。

「一体何が起こっているんです?・・・」

兵士は答える。

「先程の亡霊が亥之疫神だ。崇徳天皇以上に凶悪な怨霊であり、この辺りの民間伝承では『イナキさん』と呼ばれているらしい。」

兵士は続ける。

「詳しくは本部に帰ってから説明されるはずだが、亥之疫神はここで飢饉が起こった時代に他の村人によって首と手足を食われたらしいんだ。この村に人がいた時はまだ強固な封印が行われていたんだが、今は地球の宗教に詳しい特殊作戦軍所属の兵士によって構成された機動部隊<神道の守護者>によってどうにか封印されている。」

二人は基地に戻り、会議室に通された。

奥にはかぐや星特殊作戦軍の伝統的な迷彩服を着た兵士が座っている。

アレクサンドルと兵士はその反対側に座った。

兵士が話し始める。

「まず、妖怪とは何か? 一般的には日本で伝承されてきた民間信仰において、不明な存在によって齎された、科学で説明できない異常な現象、物品、生物のことを言う。妖、物の怪、魔物などいくつもの呼び方が存在するが、ここでは妖怪という呼称で統一する。かつて、妖怪という存在は原因不明の災いを起こすとされてきた。その代表例としてここでは鬼を扱う。鬼という存在の起源には諸説あるが、一つの説として、目に見えないものやこの世ならざるものを意味する『隠』が語源であるとされている。つまりは、鬼の正体というのは病原菌のことであるのだ。したがって・・・」

兵士の話はこれ以降も1時間ほど続き、その間もアレクサンドルは熱心にノートを取っていた。

やがて、話も終盤に入っていた。

「・・・つまりは、現代においても妖怪の仕業とされている現象は今後の科学の発展により完璧に説明できる時代が来るかもしれないということなのだ。以上で今回の話は終わりだ。」

と言い、終わると兵士はノートを回収し会議室を出た。

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