翌日。
いつもの基地の朝がやってくる。
「いい朝ね。」
アーリマンは言うが当のアレクサンドルはそんな気分でもなかったらしい。
ベッドで上体を起こして言う。
「うう・・・」
アーリマンは問う。
「どうしたの?」
アレクサンドルは言う。
「熱が出たみたい・・・」
アーリマンはアレクサンドルの額に手を当てる。
確かにかなりの熱だ。
体温計をケースから取り出し、アレクサンドルの脇に挟む。
結果がでるのはすぐに出るらしい。
8分後。
38.8度だ。高いな・・・
とりあえず朝食を取り薬を飲んで寝るように言おうと思うアーリマンであった。
熱が出て10時間以上経った午後2時。
37.5度と結構下がってはいるが完全に熱が下がりきるまでは2,3日はかかるだろう・・・
完全に体が冷え込まないように寝巻を変えつつ、冷却剤を入れた枕を敷いて頭の周辺を冷やしてあげる。
後で医務室に連れて行った方が良さそうだ。
そんなことしているとドアが開いた。
彼の名前はアイザイア・マヌエル・ウォーレン。
同じ艦隊で働いているアメリカ人だ。
1990年当時、5歳だったアイザイアは外で遊んでいた際に宇宙海賊の宇宙船に誘拐され、それを海賊対処任務中の太陽系艦隊が保護した。
その際に地球へ戻ることを望まなかったため、6歳でかぐや星宇宙軍産業学校に入学。12年間の教育の後、19歳でかぐや星宇宙軍に志願。現在はかぐや星宇宙軍太陽系機動第一艦隊でアーリマンとともに働いている。
アイザイアは言う。
「とりあえず、風邪薬とかはここに置いておくぜ。」
アーリマンは言う。
「ありがとう。」
「ああ。まさかあんたに子供ができるなんて思わなかったよ・・・ 相手はルカか?」
アーリマンは慌てて否定する。
「いやいや! 軍の任務で保護しただけよ!」
「そうか。まあ、頑張れよ。」
そういうとアイザイアは部屋を出ていった。
「全く。地球人ってみんなこうなのかしら?・・・」
実際、この艦隊以外にも地球出身の兵士がいるのだ。
1950年頃にソウル市街から逃げている際に宇宙海賊に誘拐され、現在ではかぐや星地上軍クラースナン星第一機甲師団に所属しているキム・グァンヒ二等兵。
1945年5月ごろに長野県の山間部で宇宙海賊に誘拐され、現在ではかぐや星宇宙軍第一特別分遣隊に所属している西田大就二等兵。
そのほかにも様々な人々がいるのだ。
1時間半後。
40.2度だ・・・ 再び寝汗をかいたため体周辺を拭いたり着替えさせたりするアーリマンであった。
17時半頃。アーリマンはアレクサンドルの熱が下がったタイミングを見計らって、医務室に連れて行くことにした。
しばらくの後、医者は言う。
「風邪ですね。とりあえず、風邪薬を処方しておきます。」
ひとまず風邪でよかったと思うアーリマン。
翌日。
ルカとアーリマンは船外で作業をしていた。
「艦長。ワープ航法ドライブの配電盤を見つけました。」
「そうか。酸素は20分程度しか持たないから早めに作業してくれ。」
ルカは地球のものに比べてスリムな宇宙服からスパナを取り出す。
「配電盤開放完了。残り時間は19分だ。」
「大丈夫なの?」
アーリマンはそう訊く。
「なあに。いつものデブリ回収作業と同じく焦らず急いでやればいい。今までやってきたことだ。」
ルカはそう言って宇宙服のHUD機能を起動した。
ルカの視界に回路図やグラフが映し出され、それに従ってルカの手は正確に動く。
1分も経った頃には配電盤のパネルが修復されていた。
「そろそろ戻るぞ。」
ルカとアーリマンは母船へ戻っていった。