月面探査記 第二巻   作:gh0sttimes

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第三十話 リアンたち

銀河漂流船団からおよそ七百光年離れたこの宙域は他の惑星と比べて殆ど捨てられた地であった。

リアンは宇宙船<スタークラブ>を操縦する青年である。

「ログ。自動運転を頼むよ。」

「分かったビビ。」

リアンはログに運転を任せ、自室に戻った。

独立軍の事件から5年ほど経って、リアンは16歳になった。

当時よりも身長は遥かに大きくなり、青っぽい髪のアクセントで立派な青年となっていた。

「そろそろログのアップデートもしないとだな・・・」

リアンの相棒であったログはたった5年の間に、新しい宇宙航行技術に適用できなくなっていた。

「そういえば、フレイアはどこにいるんだ・・・ 最近はやたらとくっついてくるし・・・ 僕がもう16歳だってことを知らないのかな?・・・」

リアンはフレイアの好意に気がついていないのだ。

それでもフレイアは諦めていないのである。

「あっ。リアン。」

「やあ。フレイア。」

フレイアはリアンに挨拶をする。

「そういえば、今度かぐや星宇宙軍との合同演習に参加するんでしょ?」

リアンは答える。

「うん。眩惑の星でやるみたいだから、ある程度の準備はしておかないと。」

それを聞いたフレイアの顔はわずかに濁っていた。

「うーん・・・ あの人たちって信用できるのかしら・・・ 地球で軍事作戦を実施してるって噂も聞くし・・・」

「フレイアが言うこともよく分かるけど、ユグドの樹の教えを守る国はそうそういないよ。結局は強い国についていくしかないんだ。」

フレイアはそれを聞いて返す。

「それもそうよね・・・  今日は一緒に寝ない?」

「フレイア。僕がもう16歳ってことを忘れてないかい?」

フレイアは答える。

「もちろん。でも、これまでもずっと一緒にいたわけだし、特に問題はないでしょ?」

「いやいや。大問題だよ。僕はもう16歳で、そろそろ男女関係を気にする時期なんだ。」

フレイアはそれを聞いてしぶしぶ自室に戻る。

その後、リアンも自室に戻った。

1時間後。

リアンは自室にて本を読んでいた。

「またMS3にも行ってみるか・・・」

MS3<地球>はリアンにとって最も思い入れのある惑星であった。

リアンは読んでいた本を閉じてベッドで眠ることにした。

そして翌日。

目を覚ましたリアンは早々に身支度を済ませ、演習の準備をしていた。

「ログ。この後の予定を教えてくれ。」

「ビビ。およそ1時間半後にかぐや星宇宙軍と合流。」

ログに登録しておいたスケジュールを確認し、適当にパンを食べてから宇宙船を運転しはじめた。

「よし。出発する。」

ゴロゴロがエンジンを宇宙船の全システムを起動し、リアンは操縦桿を握った。

「発進!」

リアンが操縦桿を前に倒すと、宇宙船が動き始めた。

宇宙船は徐々にスピードを増し、元いた場所からは殆どみえなくなっていた。

目的地には1時間ほどで到着した。

リアンは無線機を取ると、大体以下のようなことを話し始めた。

「宇宙少年騎士団<スタークラブ>より、かぐや星宇宙軍太陽系機動第一艦隊へ。只今現着した。」

『了解した。これより、演習場へ移動する。現着まで5時間だ。こちらで牽引するのでエンジンを切ってくれ。』

「了解した。」

そういって、リアンはエンジンをシャットダウンした。

それからまもなく、かぐや星宇宙軍の艦隊がスタークラブにトラクタービームを照射し、牽引を始めた。

およそ1時間後スタークラブは演習場の上空に着いた。

「眩惑の星か・・・ 5年ぶりに来るな・・・」

眩惑の星は脳の細胞を刺激する特殊な霧が立ち込めており、この霧を吸入した場合、幻覚を見る可能性が高い。

だからこそ、毒ガスによって汚染された地域を想定した演習には最適だ。

船外モニターでその霧を見たリアンは言う。

「懐かしいな・・・ 相変わらず霧は濃いみたいだ・・・」

フレイアは言う。

「そうね。ただ、この辺りにもかぐや星特殊作戦軍の基地があるみたいだから、前みたいなことが起きてもある程度はどうにかなりそう。」

「それはもう勘弁だ。もうあの樹みたいな怪物に襲われるのは御免だよ。」

「まあね。」

そう二人が話しているうちに、眩惑の星の地表に到着したようだ。

軍服を着た男がリアンに挨拶をする。

男は言う。

「やあ。君たちがリアン君とフレイアだね?」

リアンは答える。

「ああ。」

「かぐや星宇宙軍太陽系機動第一艦隊所属艦<シュレジエン>艦長のエルニッヒ・コルスターだ。とりあえず、向こうで演習の説明をするから来てくれ。」

それを聞いたリアンは言う。

「分かった。」

フレイアもいう。

「分かったわ。」

2人はエルニッヒに連れられて少し広めの広場に移動した。

そこにはシュレジエン以外にも様々な部隊が待機していた。

エルニッヒは説明を始める。

「それじゃあ演習の説明をしよう。まず、演習の想定は毒ガス攻撃が行われた地域での除染だ。この霧をガスに見立てて除染作業を行う」

エルニッヒは続ける。

「その際、この地域に侵攻してきた敵部隊の攻撃から除染部隊を護りながら、安全を確保する。霧で前が見えにくいから気をつけてくれ。」

それを聞いたリアンはエルニッヒにいう。

「了解した。」

その後、エルニッヒは付け足すように言う。

「あと、演習場にはこの惑星特有の樹のようなエイリアンが入れないようになっているから襲われる心配はない。」

それをきいたリアンは言う。

「前にのび太たちとこの惑星に降り立った時に遭遇したやつか・・・」

エルニッヒは言う。

「ああ。奴らには気をつけたほうがいい。」

そしてエルニッヒは演習開始の合図をした。




リアンの日記の一部より引用

12月24日。
地球の暦では何か特別な日らしいから、この日にログのアップデートを行うことにした。
ログは何年も私についてきた大切な友人であるが、どうやらこの数年の間に時代の波に呑まれていたようだ。
まずは、いくつかの機能を付け足した上で、新しい地図を学習させなくてはならないだろう。
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