早くも脱線しつつありますが、よろしくお願いします!
「悟。こっちの楽巖寺学長が来たらしいから、そろそろ起きないと」
「ん……」
「ほら、コーヒー飲みな」
「うん……苦ぁっ!!」
苦味で五条は目を覚まし、恨めしげに夏油をみる。
「苦いんだけど、これ」
「目が覚めるじゃないか。いつも砂糖一つとミルクで飲んでたよね?」
夏油が首を傾げる隣では、並行世界の悟も起こされてコーヒーを美味しそうに飲んでいた。
まだ眠いらしく、微妙に夏油に寄りかかっている。
楽巖寺はお茶を頂いていた。3人も仮眠を取っていたのである。
なお、楽巖寺は一時ベッドを借りている。おじいちゃんにソファーで仮眠は辛い。
「んー。僕、もしかして茈使えてない?」
まさかと思って聞いてみると、ガバッと悟は顔を上げた。
「! 使えんの?」
「まあね。それに常に防御の術式使ってるから、頭に栄養送るために嗜好変えたんだよね」
「すげー! 脳焼き切れない?」
キラキラした目で見られるのは悪くないと、五条は微笑む。
「反転術式使ってる。そうか。となると、特別一級も頷けるね。でも傑が特級になれなかったのはなんでかな」
「呪霊の取り込みでドクターストップ掛かってね。呪霊玉のゲロみたいな味に加えて、トラウマと拒否反応が出ちゃって、それも原因かも」
夏油は苦笑する。そりゃ、呪霊玉がまずいことは気づいてたけど。トラウマとか、結構大変そうだと五条は夏油を心配する。
「傑は近々特級になるぞ。禪院の後押しでな」
「「大丈夫なの、傑?」」
五条はトラウマに対して。悟は特級になる事に対して心配の声をだし、ハモった。
気を取り直して、悟は問う。
「楽巖寺さん、それって恵関連ですか?」
「まだ話は来てないけど、そういえば禪院家から贈り物は届いてたかな」
「うむ。2回目となる恵の魔虚羅調伏チャレンジの手伝いだ。甚爾が失敗した場合の救出係として、特級呪霊をいくつか取り込んでもらう事となっておる。特級呪霊を使役できるなら、それは特級術師だ」
髭を撫でながら、楽巖寺学長。
「危なくないですか? 私にもその話来てますけど、そもそも恵が乗り気じゃないし、いくら周りが調伏させてあげたって、当人がやる気ないならどうにもできないでしょ。実際、満象でも持て余してるようですし。まずあの子のモチベを挙げてあげないと。そもそも、甚爾が失敗した場合っておかしいでしょ。甚爾は手伝いで、調伏の主役は恵のはずですよね。担任としては引き続き反対です」
「そうよのぅ。そこは夜蛾も苦言を呈しておるらしいのじゃが……なんとか担任として前向きになるよう励ましてやってくれ。それか禪院家を止めてくれ」
「ええええ……。あの禪院家を止めるのは無理でしょ……。甚爾が生まれた時点でずーっといつ生まれるのかと楽しみにされてきて、ようやく生まれた相伝術者ですよ? いかに真依に気分よく死んでもらうか趣向を凝らしてるあたり、もう誰にも止められないでしょ」
そこで楽巖寺学長が入ってきた。後ろには真依がついてきている。
「禪院真依を殺す? どういう事だ。何故昨年死んだ夏油傑がいる」
生徒に言及されて、厳しい声音で問い詰める。
「あ、楽巖寺さん。初めまして? 並行世界の五条悟です」
「並行世界の夏油傑です」
「楽巖寺じゃ。しばらくの間よろしく」
軽く頭を下げる3人に、京都校学長の背に雷が落ちた。
「な、五条が敬語を使って頭を下げただと……!??」
「おじいちゃん驚きすぎ」
「わ、わしを油断させるつもりじゃな!? 何を考えておる! 何故真依を殺す!」
「なんでって、真希が天与呪縛のフィジカルギフテッドで双子だから」
「待て五条、知られてないなら、言わない方がいいかもしれん。真依にだけ知らせるべきじゃろう。それで真依が選択すればいい。姉に相談するかも含めてな」
そこで、真依が声を出す。
「予想はついてるから説明はいらないわ。聞きたくない。フィジカルギフテッドってそっちでは認められてるの?」
「調伏に、本来他者は介在できない。ただし、これには抜け穴があって、甚爾みたいな呪力が皆無のフィジカルギフテッドのみ、無機物判定になるんだ。十種影法術が生まれる時、その周辺にフィジカルギフテッドもまた生まれて来る。いや、逆かな。フィジカルギフテッドが生まれてから、十種影法術が生まれると言われてる。一番多い時にはフィジカルギフテッドが5人も生まれたそうだよ。禪院は、甚爾と真希に特級呪具を持たせて魔虚羅にぶつける予定なんだ。一回、甚爾の全盛期に挑んで失敗してて焦っててさ。何度も試せないし、取れる手段はなんでも取るみたいなんだよ、直毘人さん。でも、真希も恵も納得してなくてね。まあ当然だと思うけど」
「余計なのは私って事? 私さえ生まれなければ、真希は完全なフィジカルギフテッドとして生まれたって」
「そんな事言うと扇さんまたブチギレるよ。子煩悩だし」
真依は目を丸くした後、笑った。
「真希も……伏黒恵も……父さんも、反対してくれてるのね」
「当たり前じゃん。真依は納得してるけど。ただ、禪院家としては魔虚羅さえ調伏できれば勝ち確だから……。過去に同じ術式の術師がかなり無双したって記録に残ってるし。準備もクソほど大変だったし、うちや加茂にめちゃくちゃ借りを作ったって話だけどね」
「今夜、真希に相談してみるわ」
「ふむ。大まかな事情はわかった。それは……禪院が決める事でわしの関知できる事ではないの」
楽巖寺学長は少し、言い淀む。
それはそうだ。生徒の命も重いが、術式の価値ももっと重い。もはや何も言えない状態である。
「嫌な情報持ってきてくれたなぁ。でも、こっちでは甚爾死んでるけど。真希一人でなんとかなりそうなもんなの? 真依無駄死にになんない?」
「流石に無理だろ。恵がもっと頑張ってくれれば違うんだろうけど」
「こっちの恵は結構頑張ってるよ。やっぱりすぐ諦めちゃう所はあるけど。そうだ。結構、差異が大きいみたいだし、実力見てから任務を振り分けたいかな。僕にはコツを教えてあげるよ」
「助かる」
「同じ顔のものがいるのはやりにくかろう。わしは東京で、五条と夏油は京都で預かるというのはどうか」
「いやー。自分の事は自分が一番よくわかるし、逆でしょおじいちゃん」
「な、なんかピリピリしてない?」
「こっちの悟と楽巖寺学長、仲悪いの?」
「流石にそこまで別行動は許容できん。こちらの目的は3人揃っての帰還なのじゃし」
結局、今日はゆっくり休んで、朝訓練をして任務を振り分けられる事になったのだった。
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