チェンジで!   作:かりん2022

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五条が敬語を使う意味

「とにかくさ、なんでこんな仲悪いの? 仲間割れしてる余裕あんの?」

「内輪揉めに巻き込まれたら堪らんのぅ……。わしは少し状況を探ってみるから、お前達は距離を取っておれ。当然だが、縛りなどは絶対に結ぶなよ」

「「はい、楽厳寺さん」」

「五条とわしよ。話してもらえるかの。言い分は両方から聞かないといかんからのぅ。という事で、何がどうなっとるのか、この爺に話してはくれんか。タチの悪い暗殺紛いの依頼は、何故通ったんじゃ? 誰も止めなかったのか」

「お爺ちゃん達は怖いんだよ。新たな術師の波がね」

「宿儺など危険だ。殺してしまえば良いのだ」

「こちらでも悠仁は宿儺の器なのじゃな。で、どういう事になっておるのじゃ?」

「全ての宿儺の指を食べさせた後に秘匿死刑にする。それまでは術師をしてもらう」

「いつ乗っ取られるかわからん」

 

 それに、並行世界の悟と傑が顔を見合わせ、恐る恐る声をかけようとするのを身振りで並行世界の楽厳寺が止める。

 

「悟に傑よ。人に話を聞くときは、自分の意見を押し付けてはいかん」

「でもさぁ」

「良いな」

「はい……」

 

 こちらの世界の楽厳寺は信じられない思いでそれを見ていた。

 言うことを聞く六眼……じゃと……!?

 

「しかし……そうじゃの。符牒を決めておこう。それとわしは上層部ともう少し話をしたいと思う。お主らは呪霊退治に行っておれ。餅は餅屋じゃ。互いにの」

「気に食わないな。自分の考えは見せずに情報を寄越せって? 君らの所の悠仁はどうしてんの」

 

 怒気を五条が見せると、3人は三様に否定した。

 

「東京の事ゆえ、わしはあまりわからんのだ……」

「総監部のお抱えだから、僕も情報漏らしたら怒られちゃう。縛り結んでるし」

「とりあえず、どっちの方針とも違うから、どっちの味方とかないよ」

 

 それはさらに火に油を注ぐ結果となる。

 

「悠仁がおじいちゃん達の玩具になってるって? 冗談きついな」

「冗談きついのは悠仁のこっちでの扱いでしょ。悠仁は普通に出世ルートに乗ってるよ」

「追い越されそうで焦ってる。能力の格としては多分、悠仁が上だし。時間の問題なんだよね」

「情報漏洩しておるぞ、五条。術師は言葉に気をつけよ」

 

 並行世界の若者二人はお口に手のひらで物理的に蓋をした。

 その言葉に、楽厳寺と五条は惑った。

 

「そっちの悠仁って性根が腐ってるわけ?」

「数度あっただけだが、良い子じゃぞ」

 

 二人は口に手を当てたまま、ぶんぶんと首を横に振る。

 良い子らしい。

 

「馬鹿な。宿儺に迎合するなど」

「こっちの楽厳寺さん、ボケてない? 大丈夫? 宿儺に迎合なんてするわけないじゃん。そもそも」「五条!!」

 

 五条、もう一度お口に蓋。

 

「そういう否定するような物言いが不和を産むのだ。言質を取られてもいかんが、自分の考えを伏せる事も覚えよ。罠依頼を味方に仕掛けるのだ、生半可な状況ではないぞ。敵と思われる事は避けよ」

「そうだね。帰るまでの短い間の滞在なんだし、胸が痛むけど、ちょっと仲が悪いくらいならともかく、殺し合う仲に私達に出来る事はないかな……」

「どうしろってんだよ」

「黙ってただ呪霊を祓っておれ。呪詛師依頼は受けるな。呪霊だけでいい。後は傑と離れないようにせよ」

「りょーかい」

 

 六眼(並行世界)が自分(並行世界)の言うことを聞いている。理想にみることすらなかった世界がそこにあって絶句する楽厳寺。

 だが五条もまた、楽厳寺の五条と夏油への気遣いに気付き、戸惑っていた。確かに、こんな爺なんかにへーコラしやがって、と言う思いもある。が、それだけのものを向こうの楽厳寺は与えているのではないか、という思いも過ったのだ。

 

「……そっちの総監部は真っ当なわけ? 罠依頼とか出したりしない?」

「ふぅ……お前は毒されておるのだ、五条。罠依頼などと言うのはな。出した当人が殺意を持ち、それを通した関係者が容認し、出された当人の術師が自分で依頼の難易度を確認できてない、もしくは拒否できないの機能不全三重苦じゃぞ。普通はないわ」

「……そうだね。そうだ」

 

 それに、楽厳寺はギリギリとなる。何をわかった風な口を。

 

「それが罷り通ると言うことは、それだけの理由があると言うことだ。それが総監部にあるのか、おぬしにあるのか、こちらの虎杖悠仁にあるのか、その他の部分にあるのか、その全部か。わしらにはわからんのだ」

「まあ……確かに、来たばっかりで分かれって言うのは無理かな。強いて言うなら全部だけど」

「全部じゃな」

「全部だな……」

 

「予想はついておる」

 

 それでも、並行世界の楽厳寺は死んだ目をする。

 

「そっちの世界の事、教えてよ。ちょっと興味出てきた」

「すまんの、世界の差異は符丁になるので言えんのだ。しかし、早いうちに不仲を知れて本当に良かった。さて、依頼じゃが、ひとまず五条教諭から10個、こちらのわしから10個受けよう。この二人が。その代わり、わしの情報収集に協力してくれんかの。何、爺の茶飲み話に付き合うだけで二十も依頼が片付くんじゃ、安いもんじゃろ? 依頼料は当然別で貰うがのぅ」

「えー! おじいちゃんからの依頼も受けるの? ……死ぬかもよ?」

「何を、五条!」

「大丈夫! 俺達、二人で最強だし」

「ふふふ、まあ、悟と二人ならなんとかなるよ」

 

 その言葉に、五条は目を見開き……そして、笑った。

 

「そう、だね。でも困ったらすぐに言うんだよ? そうだ、悠仁と一緒に纏めて特訓してやるよ。生き残れるように!」

「助かる」

「頑張る」

 

 そして、その夜。

 並行世界メンバーは3人だけで話していた。

 

「でも楽厳寺さん、警戒しすぎじゃない?」

「警戒してしすぎることはない。そうじゃな。総監部の印象をよくする為に、お土産を買ってきておくれ。メロンパンがいいじゃろう」

「「!!」」

「……なんで?」

 

 なんでもない会話のはずが、五条の声が震える。

 

「お前はもう少し人の話を聞いておれ。傑よ。五条を元の世界に返せるのはお前だけじゃ。迷うなよ」

「……はい」

 

 緊張した顔の二人。

 

 翌日、二人は依頼に向かう為、楽厳寺と別れた。

 でも何故だろう、二人の方が知人を戦場に送るかのような心配そうな顔をしている。

 

 もちろん、楽厳寺が内紛溢れる総監部(戦場)へと飛び込むからである。

 命を賭けた茶飲み話が始まる。




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