Golden Arrow   作:ibura

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すいません、お待たせしました。




レオたちと別れた後、輝也と亜理紗は駆に会うために奈々に教えてもらったお好み焼き屋に向かっていた。

 

「さっきは分からないって言ったけど…、輝は駆君と同じ高校に行こうかと考えてるんじゃない?」

「………な、なんで?」

図星だった。

「だってあんなドリブル見させられたら私だって凄い興味出るもん」

確かに試合終了間際に見せたあの駆のドリブルには輝也も驚いたし、レオも驚いていたようだ。

あのドリブルは何度も見たことがある、忘れることのできないドリブルだからだ。

「あのドリブルは傑のドリブルだよ。

 ずっとコンビ組んできた俺には分かる」

サッカーを始めた時も、小学生の時のクラブチームも、世代別の代表に初めて呼ばれた時も、飛び級で上の年代の代表に上がるときもずっと輝也と傑は一緒だった。

輝也にとっては、傑とプレーした時間は自分が一番長いという自信もあるほどだ。

だからこそ分かる……駆が見せたドリブルは傑のドリブルそのものだった。

「兄弟だからドリブルも瓜二つになるのかな?」

「いや、駆のドリブルは昔から傑のようなタイプじゃなくて俺みたいなタイプだった。だからこそラン ウィズ ザ ボールも俺が教えてものにすることができたし」

「じゃああれはなんだったんだろう?」

「……分からない」

そうこう話していたら目的地のお好み焼き屋に到着してしまった。

「まぁこの話は置いておいて、とりあえず駆と話そう。

 確か店の前で奈々が待っててくれてるはず…あ、いた」

店の前には連絡にあった通り、奈々が立っていた。

 

「あ、輝也さん!!お久しぶりです」

「よう奈々、久しぶり」

「奈々ちゃん久しぶりー」

「え、亜理紗ちゃん!?なんで輝也さんと一緒にいるの??」

「連れも一緒だからって言わなかったっけ?」

「それは聞いてましたけど、まさか亜理紗ちゃんだとは思わなくて」

「2年ぶりだねー」

「もうそんなに経つんだね。

 それで、なんで輝也さんと一緒にいるの?」

「まーいろいろあってさ、そのことはまたゆっくり話すよ」

「ふーん、とりあえず中に入ろう」

3人で店のの中に入っていた。

まずは駆を探そうと思って店内をきょろきょろしていたら、

「おいあれ」

「嘘だろ」

「なんでこんなとこに」

「いやいやこんなとこにいるわけないだろ」

「そっくりさんだろ絶対に」

「ドッペルゲンガーだ、ドッペルゲンガー!!」

「それちょっと意味違うくないか…」

周りの人間のひそひそ話にももういい加減慣れてきた。

そんなことをしていると、店の奥から歩いてくる駆をみつけた。

「…!おーい、駆!」

「え、輝兄!?なんでこんなところに??」

その瞬間、あたりが静まり返った。

次の瞬間いたるところから驚きの声があがった。

「やっぱり本物の歳條輝也ー!?」

「なんでU-17日本代表がこんなところに」

「確か海外のユースチームにいるんじゃなかったか」

「チェルシーのユースにいるって話聞いたことあるぞ」

「てか駆はなんで知り合いなんだよ」

この盛り上がりにはさすがに輝也も困惑していた。

「輝は有名人だねー」

「本当に、俺たちからは遠い人になっちゃったね。

 それで、どうしたの今日は?」

「ん?まー大した用事はないんだけどな、せっかく日本に来たし駆の試合の感想でも言ってやろうかと思ってさ」

「え、試合見に来てたの!?」

「変なタオルだったな」

恥ずかしいのか顔赤くしてしまってる。

「可愛い♪」

「おい亜理紗、余計に恥ずかしくしてやんなよ」

「駆、誰と話してんだ…って、歳條輝也!?」

駆が来た方向から、佐伯祐介がやってきた。

「やぁ佐伯君、今日の試合見てたよ。

 君とはこれから一緒にプレイする機会がありそうだ」

「あ、ありがとうございます」

「ねぇ輝~、とりあえず何か食べようよ」

「そーだな、俺も腹減ってるし」

 

その後食べながら駆と話をしようと思っていたのだが駆のチームメートの質問攻めにあってしまい、輝也は話どころかゆっくりと食べることさえ許してもらえなかった。亜理紗と駆、奈々は佐伯祐介やツンツン頭のサイドバックと仲良く食べていた。なんかべろんべろんのおっさんにも話しかけられたが、それが監督だということを後で知って驚いた。

その後亜理紗が作ってくれた一瞬のチャンスで駆とともに外に抜け出すことができた。

 

 

 

「こうやってゆっくり話すのは1年ぶりだな」

「そうだね」

「1年以上もたったんだな……あいつが死んでから」

「……そうだね」

 

しばらく無言で歩く二人。

 

「今日の試合、惜しかったな。

 俺の教えたラン ウィズ ザ ボールも少しは上達してたみたいだな。左足も使えてたし」

「怪我が治ってからはすごい練習してたからね

 輝兄のやってた練習をまねてずっと壁に向けてシュート練習してたからまた左足も使えるようになったよ」

駆は小学生の時に練習中にチームメートを怪我させてしまい、そのトラウマから左足でシュートを打てなくなっていた。

 

「よく乗り越えたよ、左足のトラウマも、2年間のブランクも……傑のことも」

「………うん」

 

傑は無事に弟がプレーヤーとして復帰してほっとしてるのかな。

そんなことをつい考えてしまった。

 

 

「実はさ、輝兄に話しておきたいことがあるんだ」

「ん、何の話?」

「俺と兄ちゃんが事故に遭った時に、心臓の手術を受けたっていうのは知ってるよね?」

「まぁ一応聞いたからな」

「あの時さ、俺胸に鉄パイプ刺さったんだ」

「……お前よく生きてたな」

「本当だよね」

当の本人が今、呑気に笑っていられるのは奇跡だと思う。

 

しかし

 

「でもさ輝兄、おかしいと思わない?」

「……何が?」

「鉄パイプなんてものが突き刺さったのに、"ただの"心臓手術で助かっただなんて」

「それはまぁ言われてみれば。…………まさか」

「うん、俺が受けた手術は心臓移植。

 兄ちゃんの心臓を俺に移植したんだ」

「…!?」

 

駆が何を言っているのか、輝也はなかなか理解できなかった。

しかし、今確かに駆は傑の心臓が自分に移植されたといった。

 

 

「と…いうことは傑の心臓は…」

「うん、兄ちゃんの、逢沢 傑の心臓は今もここにある」

 

そういって駆は自分の胸に手を当てた。

 

「兄の心臓を引き継いだ弟か…

 今日の試合は第一歩ってところだな」

「そうだね」

 

「この話を知ってるのは他に誰がいるんだ?」

「家族以外はセブンぐらいだよ」

「そうか」

(そこにいるんだな、傑)

 

やはりあのドリブルは傑だったのだろう。

俺の前で再びあの周りを魅了するプレイを見せてくれた。

これからの駆、そして駆の中にいる傑を見ていきたいと俺は思った。

 

 

「駆はさ、高校どうするんだ?」

「まだどこにするかは決めてないけど、鎌学は出るよ」

「そうか、また決まったら教えてくれ」

「いいけど、どうして?」

「俺も日本の高校でサッカーすることにしたから」

「えぇー!?輝兄日本に帰ってくるの!?」

「まぁ一応な。明日にはまたイギリスに戻るけど。

 まだ正式には決まってないからあんまり話広げるなよ」

「わ、分かった」

「じゃあとりあえず店に戻るか」

「うん」

 

 

 

 

店に戻り、駆のチームメートたちが解散したため俺と亜理紗も帰ることになった。

亜理紗は日本での俺の家、要は実家に泊まることになっていて前の日もそうしたのだがが。奈々の家に泊めてもらうことになった。

なので俺は1人で帰ることになった。

といっても歳條家と逢沢家とはとても近いため結局は亜理紗と奈々を送ってから、駆と一緒に帰った。

昔はよく傑の部屋に泊まり、夜中までサッカーの話題で逢沢兄弟と3人で語り合った。

そんなことなどもあって、俺の両親と駆の両親はとても仲が良かったりする。

 

「それじゃあな、駆。また高校決まったら教えてくれよ」

「分かった。輝兄も次帰ってくるときは連絡してよ」

「覚えてたらなー」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

駆と別れた後、輝也は自宅に帰った。

「ただいま母さん」

「あら、お帰りなさい。駆君はどうだった?試合には出れたの?」

「後半から出れたよ。試合は負けたけど2点決めてた」

「あら、よかったじゃない」

「まぁね。父さんは?」

「もうすぐ帰ってくるはずよ」

「分かった。自分の部屋にいるから父さんが帰ってきたら呼んで」

「別にいいけど、どうかしたの?」

「話したいことがあって」

 

 

とりあえず日本の高校でサッカーをやりたいっていうことは両親には言っておかなければいけない。

母さんが言った通り数分後に父さんが帰ってきた。

 

「あら、あなたお帰りなさい。そういえば、輝也が話したいことがあるらしいわよ」

「そうか、分かった」

「輝也を呼んでくるわ」

 

 

 

「それでどういう話だ、輝也?」

「実は……」

「いや待て、当ててやろう。

 ”日本でサッカーがしたい”だろ?」

「!?なんで?」

「あら、本当?」

「実は俺も今日の駆君の試合を生で見てね、あの最後のドリブルを見たお前ならこう言ってきそうな気がしていたんだよ」

全くその通りで返す言葉もなかった。

「でもいいの?向こうではトップチームにも昇格できるかもしれないんでしょ?」

「少し遅れるだけだよ、母さん。俺は今しかできないことをしたいんだ。それに、駆の成長を近くで見ていきたいと思う。……傑のためにも」

「ということは駆君と同じ高校に編入するつもりなのか?東京の高校からもすでにオファーが来ているんだろ?」

「多分あそこにはレオが入るだろうから。駆がどこに行くかだけど、今のところはそうするつもりだよ」

「あら、なら日本で輝也とレオ君の対決が見られるかもしれないのね」

自分の母親は実はレオナルド・シルバのファンだったりする。

一度、駆の妹の美都と共にレオのサインをねだられたこともある。

なにか複雑なものがあるものだ…

「お前が決めたことを否定するつもりはない。お前はそれで後悔しないんだな?」

「うん、ヨーロッパでやる前に日本でやるよ」

「なら輝也もこの家に帰ってくるのね」

「十倉さん達には話したのか?」

「まだ。電話で話すのもなんだから、明日イギリスに帰ってからゆっくり話すよ」

「そうか。まぁあれだ、やるからには全国優勝しろよ」

「当然!」

そんな感じに久しぶりの家族3人での話し合いは終わっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私もいつでもテレビに出れるように心の準備しとかないと」

「気が早すぎるよ、母さん」

「それよりお前、サインの練習してるのか?」

「え、してないけど」

「これから書くことが増えるかもしれないんだ、自分のサインも考えとけよ」

 

どこか違うところのある家族間のやり取りだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




輝也の父親はフリーのジャーナリストをしているという設定です。

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