闇堕ち転生~転生先が主人公だと思ったら闇堕ちする方の双子の兄でしたw~   作:鬼怒藍落

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第45話:契約解除

 高千穂にある真名井の滝にて氷を足場に禊ぎを終え、俺はその近くに造られた儀式場にいた。

 

「まじさむ……流石に丑三つ時の滝行はキツいって」

 

 契約を解除するためとはいえ、子供に滝行は酷じゃないか?

 ……とそう思うも、霊力で体温管理が出来るしよく考えれば問題無かった。

 今日は満月。儀式を行う日には最適であり遂にというか……契約を解除するのに最適な日なのだ。本来なら同じ力のある新月の日に行う予定だったが、その日には大地の龍神である彼女と戦ったので次の満月まで日がずれた。

 

「初めて禊ぎをやってみたけど、本当に霊力の質が上がるんだな」

 

 霊力ってのは自然にも存在している。

 その力は禊ぎにて上がることもあるとされるが、本当に上がるのはびっくり。

 ……それに中にいる神綺の気配もより強く感じるようになってるし、感知能力も上がっているだろう。とりあえず、儀式が始まるのは二時十五分だし、それまで少し瞑想しておこうか。

 

「あ、逢魔さん来たんですね」

「まあな……龍華の準備も出来てるし、早速契約を終わらせるぞ」

 

 それから少し待っていれば、誰かの気配と霊力を感じた。

 すぐにその正体は分かったので声をかければ、少し驚いた様な反応を逢魔さんに返される。

 

「儀式の手順は簡単だ。木兎(もくと)によって契約を可視化させ、それを神禊ぎっていう鋏によって除去していく流れだな」

「あれ、神禊ぎって強制的に契約とかを切る鋏じゃないですか?」

「……一応いけるが、かなりリスクあるからな。下手な術を切る可能性もあるし、木兎の補助がないと危険だ」

 

 そうなのか。

 ってことはあの夜の龍華の提案を受けてたら危険だったのか。

 今の話を聞いて龍華も驚いているし、これは多分結構秘匿されてるものなのかもしれない。

 

「じゃあ、時間もないしそろそろ始めるぞ」

 

 儀式が出来るのは最も霊力の高まる丑三つ時の間だけ。

 だからその間に儀式を終わらせないといけないのだ。

 

「というか今更だけど龍華は契約解除しても良いのか?」

 

 まじで今更過ぎる疑問。

 俺としては解除したい契約だが、龍華的にはどうかは分からない。彼女の気持ちを考えると嫌な選択かもしれないからだ。

 

「別にいいわよ?」

「ん……え、そうなのか?」

 

 だけど返ってきた答えは予想もしてなかった物で、答えを聞いて驚いた様な顔をする俺を見てか龍華は笑っている。

 

「ふふ、もしかして解除して欲しくなかった?」

「いや、そっちの方が嬉しいんだが、ちょっと驚いてな」

「時間もないし、とりあえずやりましょう」

「まあそうだな――で、術ってどう切るんだ?」 

 

 ちょっとした疑問を口にすれば、逢魔さんが俺に追加で説明してくれる。

 どうやら契約解除には契約した者が神禊ぎを使う必要があるそうで龍華がやる必要があるみたいだ。

 

「そうなんですね……とりあえず龍華、頼めるか?」

「了解よ。お願いね木兎」

 

 龍華が逢魔さんが宿す干支神に声をかければ元気よくその兎は声を上げた。

 そしてその子が術を使うと俺と龍華の間に刻まれた術が鎖の姿で現れる。何重にも絡まって出来ているようなその鎖。一本一本に異常なまでの霊力が込められていて、この術がかなり強力なのが分かる。

 術の詳細は詳しく知らないけど、前の話を思い出すにこの術はうつつを抜かせば爆死する術が元になっている。本当にギャグみたいな効果だが、それほどまでに卯月家の初代当主がヤバかったって事だろう。

 一応、逢魔さんによって変質して離れたらやべぇってなる術にはなってるが、元が強力だからか切るのも大変そうだ。

 

「頼むわ龍華」

「えぇ、任せなさい」

 

 それから丑三つ時の間の残り十分間、龍華は集中して鎖を断ち切っていき、長いようで短い時間が過ぎていった。

 契約が切られていく、確実に彼女との間にあった繋がりがなくなっていくのが分かる。本来なら剣が受けるはずだった契約、何の因果か俺が受けてしまってから色々あったな……というかありすぎだ。

 初対面で戦って、一緒に過ごして、共闘して……最強格である龍と戦って――彼女の呪いを解いて……本当に濃い時間だった。

 

「終わったわ刃、これで貴方は私の式ではなくなったわね」

「お疲れ様龍華、なんか違和感あるな」

 

 ずっと自分の中にあった契約がなくなった故か、変な感じがするがそれは直になれるだろう。

 

「そうだお父様、少し刃と二人きりで話したいから先に車で待っててくれないかしら?」

「……まあいいぞ、刃はいいのか?」

「いいけど……何話すんだ龍華?」

「それはないしょよ」

 

 なんかそういうことになったので儀式場に二人で残ることになった。

 逢魔さんが去ったあと、少しの無言が続き……暫くして龍華が口を開き、

 

「ねえ刃、私は貴方が好きよ」

「……知ってる。でも改めてどうしたんだ?」

 

 彼女の気持ちには気付いてるし、俺はそこまで鈍くない。

 だけどこう改まって言われると、少しのむず痒さというか……なんか気恥ずかしいものがある。

 

「私と触れあってくれた。恐れずに接してくれた。対等でいてくれた……そして呪いを解いてくれた。あげればキリがないけど、貴方には沢山のものを貰ったわ」

 

 噛みしめるように、一つ一つの事を思い出しながら彼女は微笑んだ。

 そして手を胸の前で握って目を瞑ったかと思えば、何かを決心したような顔で彼女を告げる。

 

「私は貴方が好き。きっとこれは生涯変わらないわ――例え何度生まれ変わっても、年老いて記憶が薄れようとも……この気持ちは変えるつもりがないの」

 

 その決意を、想いを……俺は答えるわけでもなく聞き続ける。

 

「だからね、決めたの――私は貴方を手に入れる。今度は強制じゃなくて、貴方の意志で契約させるつもりよ。だから一つ勝負をしましょう?」

「……勝負?」

「ええ、私は貴方を惚れさせる。どんな手段を使ってでもね――そして、貴方が見てる別の私を超えてみせるわ」

 

 その言葉に心臓が跳ねた。 

 気付いてたのか? ……と、そんな言葉が漏れそうになるが、龍華はそれを笑って止めて、

 

「刃はずっと私を通して別の誰かを見ていたでしょう? 私を見ながら私じゃない誰かをね。でも気にしないわ、それがあったから私と関わってくれただろうから」

「……悪い」

「いえ、全然。ただね私が言いたいのは一つよ。いつか絶対に貴方を、十六夜刃を振り向かせてみせるわ――占いなんか知らない、絶対に貴方を逃がさない」

 

 ゾクッとした。

 捕食者に狙われたようなその視線に、龍華らしさを感じる。

 

「常々思ってたけどさ、お前本当は子供じゃないだろ……」

「それはお互い様よ、貴方だって子供っぽくないじゃない」

 

 それはそうだけどさ……そう思いながらも俺は笑った。

 ……あぁ、本当に彼女には敵わない。誰だよこんな最強のヒロインを考えた人。子供の頃から精神性がヒロイン過ぎる。

 

「じゃあ戻りましょう? お父様が待っているわ」


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