(性欲が)増しろ最高のバクマン   作:チームメイト

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第20話 ジリ貧と気合

 9月23日 金曜日 29話 女忍者編の解決回 本ちゃん4位

 

 トップ3に入れなかったものの、上位をキープ。

 新キャラへの反響は、大成功に終わった。

 

 30話からの文化祭編。

 32話からの女忍者リターンズ編がどうなるのか。

 やっぱり、早すぎると思う。

 でも、リターンズ編の1回目は、今日が締切で、納品済みだ。

 走り出してしまった以上、女忍者の人気に期待するしかない。

 

 

 9月26日 月曜日 30話 文化祭編前編 掲載

 

 9月28日 水曜日 少年ウィークに『推理屋明智五郎』掲載

 

「やっべえな。初回からレベルがたけえ」

「『TRAP』より?」

「そういう聞き方するなよ」

 

 人気推理作家原作だからといって、マンガに向いているのかどうかは分からない。

 そう思っていたけど、マンガとしてレベルが高いものに仕上がっていた。

 

 編集が有能なのか、コマ割りなどがしっかりしていて、文字数が多くても気にならずに、すいすいと先が読めた。

 ページのめくらせ方も上手い。

 ミステリーの骨組みも、人気作家だけあって唸らせるような出来栄えだ。

 正直、シュージンよりも上だ。

 

 これが、2話目以降も続くとなるとかなり厳しいと思う。

 先行きが不安となった。

 

 

 9月30日 金曜日 30話文化祭編前編 本ちゃん5位

 

「ふーー。しっかりとれたか」

「真城も高木も、二人とももっと喜びなさいよ。前編で5位なら上出来でしょ」

「けど、来週の後編で伸びないと思う」

「だよなー」

 

 箸休め回だ。キャラクターの掘り下げ重視で、ミステリーとしては弱い。

 解決回だから上がるという話じゃない。

 

「このタイミングで、箸休め回でよかったかも」

 

 見吉が、コンビニに向かったタイミングで、シュージンがそんな事を言いだした。

 

「タイミング?」

「『明智五助』の1話とミステリーで比較されたら、きつかった」

「シュージンがそう思うって事は、推理ものとして『TRAP』が『明智五助』より下だと思ってる?」

「……少なくとも1話は」

「……1話は、いくらでも時間をかけることができる。勝負の2話がどうなるのか」

「サイコーも否定しないんだな」

「嘘ついても仕方ないだろ」

「だよな……すまん。あー、来週からのシリーズどうすりゃいいんだ」

 

 今日渡した原稿が、女忍者リターンズ編の2回目。

 このシリーズは、来週が解決回の締切だ。

 

 次のシリーズをどうするのか、早く決める必要がある。

 シリーズの1回目には、解決編までの大まかな話ができていないと、伏線とかを仕込むことができないから、急がなければならない。

 

「シュージン……」

「テコ入れとかするか?」

「ちょっとまって、それは……これまで通り、やるしかないと思う」

「正面からぶつかって勝てるか?」

 

 だいぶ、自信を無くしているみたいだ。

 シュージンの作る話は面白い。ただ、推理ものとしては負けているかもしれない。

 

「まだどうなるか分からないし、逃げてたら勝てない」

「……分かった。3話くらいのやつで、いつもの路線で考えてみる」

「うん」

 

 話作りは、シュージンに任せるしかない。

 僕は、次の締切に向けて、原稿を描こう。

 

 

 10月3日 月曜日 31話 文化祭編後編掲載

 

 10月4日 火曜日

 エイジの『CROW』のアニメの初回が放送された。

 ライバルの作品がこうしてアニメになっているのを見ると、羨ましさと悔しさが交互に襲ってきて、叫びたくなる。

 俺達の作品だって絶対にアニメ化してやる。

 

 

 10月7日 金曜日 (ジャンプ早売り週)

  32話 女忍者リターンズ編 1話目掲載

 『怪盗チーター』 連載開始

 

「31話の本ちゃん4位か」

「先週の5位より上がってるじゃないの。二人とも心配し過ぎだって」

 

 いや、文化祭編は『明智五助』の影響を受けにくかっただけで、本当の勝負は来週からだ。

 残念な事に『明智五助』は、2話の完成度も高かった。

 2話のページ数も1話並に多く、少年ウィークはこの作品の売り出しに相当力を入れているみたいだ。

 

「サイコー、港浦さんのOK出た」

「分かった」

 

 シュージンは、苦労していたけど、どうにかネームが完成していた。

 

「…………」

 

 推理路線で行く。

 先週決めた通り、3話完結の推理ものだ。

 

 ただ、ロジックよりもアクションで魅せる内容になっている。

 キャラの活躍がしっかり描かれているけど、これでいいんだろうか。

 

 今週のシュージンは、ほとんど眠れていなかったみたいだ。

 珍しく、仕事場にもあまり顔を出さなかった。

 

 それだけ苦しんで作り上げた話を否定する事はできない。

 

 大丈夫だ。推理ものとして面白いかは分からないけど、話は面白いものになっている。アクションが多いだけに、作画の腕がより問われる内容だ。

 

 面白い作品に仕上げてみせる。

 それが亜城木夢叶の作画担当として、僕がやらないといけない事だ。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 10月14日 金曜日 32話 女忍者リターンズ編1話目 本ちゃん10位

 

「…………」

「なに暗くなってるのよ。大丈夫だって『TRAP』始まった頃は、これくらいの順位よくあったでしょ」

「そうだけど、あの頃とは違うって」

 

 前回人気だった女忍者を出しての10位は、キツイ。

 二桁を取るのは、数カ月ぶりだ。

『怪盗チーター』は5位スタートで、票を分け合ったのもあると思う。

 でも、そのせいだけじゃない。

 

「『チーター』が始まっただけじゃないよな。サイコーの言うとおり、再登場が早過ぎたのかも」

「いや……現実逃避しても仕方ない。『明智五助』の影響が大きいって」

「だよな……」

 

『怪盗チーター』は、ベテラン作家らしくまとまっていたけど、それだけだ。

 どこかで見た事のあるキャラクターが、どこかで見た事がある盗みを働く。

 お約束を外していないので、1話で票は取れてるけど、目新しさがない。

 

 そこまでライバル視しなくても『TRAP』が抜き返せそうだ。

 とはいっても、どうしても票は割れるので、影響を受けてしまう。

『明智五助』と並んで、頭の痛い問題となりそうだった。

 

「サイコー、次の連載会議いつだっけ?」

「たしか再来週って言ってたはず」

「大丈夫だよな」

「先週まで4位だった作品が切られたりしないって」

 

 大丈夫だ。

 大丈夫だよ……な。

 

 ダメだ。シュージンが不安になっているとこっちまで不安になってくる。

 こういうときは、スッキリしよう。

 

「真城、あたしは残ろうか?」

「いや、シュージンが帰るって言ってるんだから送ってもらえよ。別に見吉に手伝ってもらう事ないし」

 

 見吉が気をつかってくれているけど、シュージンが帰って見吉が残るのは変だ。

 ただでさえシュージンが参っているんだから、余計な事でシュージンを悩ませたくない。

 

 次の話をじっくり考える、と家に帰るシュージンに見吉を送らせる。

 こういうときは、二人で話す時間を作った方がいいはず。

 

 以前の僕なら、嫉妬で苦しんだけど、今の僕は違う。

 仕事を終えて、仕事場から帰ったばかりの加藤さんを再び仕事場に呼び戻した。

 

 終電で来たので泊まりますねって事だが、望むところだ。

 あの調子なら、週末にシュージンが来る事はないだろう。

 

「加藤さん」

「真城さん」

 

「「バクマン(バクマン)!!!」」

 

 さてと、スッキリして気合が入ったことだし、作画作画。

 週末の間にできるだけ進めるべく、徹夜での作業に入った。

 

 

 

 翌日

 

「なんで加藤さんが泊まってるのよ」

「真城さんに誘われましたので」

「ちょっと、真城ーーー」

 

 朝から来た見吉が何やら叫んでいたけど、聞こえない。

 原稿に集中だ。

 この話から、アクションシーンが増える。

 構図とかの工夫次第で見え方が全然変わってくるので、思ったよりも苦戦している。時間との競争になりそうだ。

 

 いつもよりも遅れてしまっているけど、仕方ない。

 苦しんでいるシュージンを助けられるのは、僕しかいないんだから。

 時間が足りないのなら、睡眠時間を削ればいい。

『TRAP』を絶対、人気上位に戻してみせる。

 今が頑張りどころなはずなんだ。

 やってやる。

 

 

 

 夕方

 

「真城、あんたずっと描いてるけど、昨日寝たんでしょうね?」

「ん--……たぶん」

「たぶんってあんたねー」

「真城さんは、私の見てた限り一睡もしてませんよ。私は仮眠取りましたけど」

 

 見吉は、掃除したり食事を作ってくれたりしていたけど、加藤さんはのんびり本を読んでいた。

 休日出勤で一応アシ代を払おうとしたけど、そんなつもりはないですとはっきり拒否されたので、遊びに来ているという体裁をとっているんだろう。

 見吉は、なんで遊んでるだけの加藤さんの分までって食事を出すのを渋ってたけど、加藤さんは気にせず食べていた。

 オタサーの姫をやっていただけあって、メンタルが強い。

 

「真城。寝なさい」

「ん-、たぶん」

「たぶんじゃなくて今、寝なさい」

「うん、たぶん」

「聞いてないし……」

「集中してるんだと思います」

 

 もう少しで見せ場の構図が、バシッとハマりそうだ。

 ああじゃない、こうじゃない、と何度も描き直し、1時間かけてなんとか構図が決まった。

 

「ふー……」

「真城ー。キリがいいところまでいったのなら、夕飯を食べなさい」

「はーい」

「加藤さんには言ってないし」

「出してくれないんですか?」

「出すけど、真城のために用意してるの」

 

 そろそろ見吉が怖くなってきたので、大人しく食事をしよう。

 あんまり食欲はなかったけど、見吉に睨まれてる手前、無理やりでも胃の中に流し込む。作ってくれた見吉には悪いけど、あまり味とか感じなかった。

 

 ダメだ。一息ついたら、どっと疲れが襲い掛かってきた。

 

「食べ終わったら寝なさいよ」

 

 ウトウトしかけていたのを見抜かれてか、見吉に改めて命令された。

 もう少し作業を進めたいけど、この調子だと集中できずに終わりそうだ。

 仮眠を取ろう。睡眠時間を削るにしても限界がある。

 

「……そーする」

「真城が素直だと、ちょっと気持ち悪いって」

 

 失礼な。

 

「えー、そうですか? 可愛いじゃないですか。素直な真城さんも」

 

 見吉も少しは加藤さんを見習ってほしい。

 

「真城さん。寝る前にスッキリしますよね?」

「そーする」

「加藤さん、待ちなさい。その役目はあたしのだから」

「えーでも、見吉さんは高木さんの彼女なんですよね。私はフリーですし」

「そうだけど、別にいいの」

「良くないと思います」

「私がいいって言ってるんだからいいの」

 

 さっさとスッキリしたいのに、二人が言い合っていて、やかましい。

 めんどくさくなってきた。正直、どっちでもいい。

 

「やる」

「え? 真城」

「真城さん?」

 

 決まりそうにないから、もう両方でいいや。

 

「見吉も加藤さんも、脱いで」

「え、加藤さんと一緒とか、それはちょっと」

「私は構いませんよ、真城さん。見吉さんはしたくないみたいですので、二人で」

「待ちなさいよ。あたしもする、するから」

 

 三人で裸になった。スッキリしよう。

 

「見吉、加藤さん」

「真城」

「真城さん」

 

「「「バクマン(バクマンマン)!!!!」」」

 

 こうして、いつもの2倍スッキリして、2倍熟睡する事に成功したのだった。

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