(性欲が)増しろ最高のバクマン   作:チームメイト

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見吉との秘密の関係

 放課後って何時だ。

 

 放課後、見吉は大体シュージンと一緒にいる。

 一緒にいたくて、シュージンに合わせてわざわざ自転車通学に切り替えたくらいだから、間違いない。

 

 待ってろって言った以上、そこまで遅くならないとは思う。

 ただ、シュージンと過ごしてからになるだろうから、真っ直ぐ仕事場に向かわなくても、多少の時間的猶予はあるはず。

 

「…………用意しておかないと駄目だよな」

 

 言い訳めいた言葉を口にしながら、遠回りして仕事場から離れたコンビニに向かった。

 普段ジャンプを買ったりする店とは別の系列だ。

 

 このコンビニは住宅地の中にあり、駅からも距離がある。

 利用するのは周辺の住民だけのはず。学校から真っ直ぐ向かったので、知り合いに会う可能性は低い。

 大丈夫だ。店内には、主婦らしき客しかいない。

 

「あれ? 制服のままで買えるんだっけ」

 

 誰にも見られずに買えるように、急いだことが仇となった。

 制服を着たままだ。

 

 引き返すか……いや、そんな時間はない。

 家に帰って着替えていたら、同じ高校の生徒の下校時間とぶつかる可能性がある。

 急いでここに来た意味が無くなってしまう。

 

 それに、見吉が先に仕事場に来るかもしれない。

 遅くなるのは、まずい。買うなら今しかない。

 

「よし……」

 

 気合を入れ直して、まだ買ってなかった今日発売のジャンプを先に手に取る。

 次に、目星をつけていた棚へと移動する。棚の下部に並んだ小さな箱。想定していた以上に種類があるらしい。

 

 こんなことになるのなら、事前に調べておけばよかった。

 細かく調べるのも恥ずかしく、直感で1つを適当に選ぶ。

 

 厚い方が安心できそうだから、0.1じゃなくて0.3の3個入り。

 

 3個で大丈夫かな。

 

「念のために、いや、これでいい」

 

 自分の直感を信じることに決めて、レジへと向かう。

 幸い、やる気の無さそうな男性店員だった。

 

 ジャンプと一緒に出した箱にも、たいしたリアクションは無く購入は完了。

 これで、ミッションコンプリートだ。

 

 小さな箱だけ袋から取り出してポケットに押し込み、仕事場へと向かった。

 

 

   ◇◇◇

 

 

「……落ち着かない」

 

 落ち着け、僕。

 見吉よりも早く仕事場に入る事には、成功していた。

 

 それから30分。見吉はまだ顔を出してこない。

 

 とりあえず、箱はシュージンが絶対に触らない筆記具を入れた引き出しに隠した。

 既にペン類については、ひととおり説明済みなので、興味本位で調べられることもない。

 

「駄目だ。全然頭に入ってこない」

 

 買ってきたジャンプを読んで時間を潰すものの、上の空だ。

 見吉のことばかり考えてしまう。

 

 ネームの事ばかり考えて、苦しんでいた今朝が嘘みたいだ。

 

 時間が経たな過ぎる。気を紛らわせるために、少しでも動こう。

 

 掃除とかしたほうがいいのかな。

 あいにくこの部屋に敷布団はない。いざって時のために、ソファーに掃除機をかけておこう。

 

 

 やがて、チャイムが鳴った。

 

「来た……」

 

 上の空のまま描いていた原稿を裏返して玄関へと向かう。

 それはいいとして、この絵はダメだ。構図がひどいし、右向きの角度は苦手なままだ。練習しなきゃ。

 

「…………」

 

 いらっしゃいも違うし、待ってたもなんか恥ずかしい。

 遅いぞって責めて機嫌を損ねられても困る。

 結局、なんて言っていいのか分からず、無言でドアを開く。

 

「あっつーい。9月だけど、まだまだ暑いわね」

 

 見吉は見吉で、特に挨拶もなく愚痴から入った。

 一度家に帰ったらしく、私服姿だった。

 

 よく見る短パンにストライブのロングソックス。

 上はパーカー半袖シャツのいつもの見吉って感じの服装だ。

 

 言葉通りに、若干汗ばんでいるのが見て分かる。

 

「そうだな……」

「真城、シャワー借りていい? ここに来るまでに汗かいちゃった」

「風呂は、使えないけど……」

「シャワーだけでへーきへーき、お邪魔するわよ」

 

 シュージンと一緒に何度か仕事場まで来た事があるので、間取りは把握されている。

 真っ直ぐに風呂場の方へと向かい、扉は閉じられた。

 

「…………」

 

 おじさんはほとんど仕事場に住んでいる状態だったが、シャワー派だったらしい。

 風呂桶はあるものの肝心の栓が無く、お湯を溜めることができない。

 

 僕は、長期休みや週末に泊まり込むことがあっても、親がうるさいため基本的に家に帰っている。

 不便だとは思ったものの、シャワーだけでも困らないのでそのままだ。

 

 おじさんが使っていたものに、手を入れることに抵抗があったのかもしれない。

 

 所在なくソファーに腰を下ろした。

 部屋までシャワー音だけが響いている。

 

「エロい……」

 

 この水音は覚えておこう。

 シャワーシーンそのものは直接描かなくても、大人のシーンを連想させることができる。

 マンガで活用できそうだ。

 

 などと考えているうちに水音が止まり、僕が唾を飲み込む音が響いた。

 

「ふー……スッキリした~」

「服着てるのかよ」

「着るに決まってるでしょ」

 

 どんな姿で出てくるのかと思いきや、頭にタオルを巻いた以外は、この部屋に来た時と変わらぬ姿だ。

 

 いや、シャワーを浴びたせいか上気しているのが、どことなくエロい。

 

「いや、でも、これから……」

 

 すぐ脱ぐことになるのなら、脱いだままの方が効率がいい。

 

「真城、あんたもしかしてエッチするとでも思ってるわけ?」

「違うのか」

「バカ。するわけないでしょ」

「じゃあ、なんで来たんだよ」

 

 どっと疲れが出てきた。

 期待していた僕は何だったんだろう。

 こうなったら見吉は邪魔だ。さっさと帰って欲しいくらいだ。

 

 セフレとやった後に顔を見たくなくなるやつに近い何かだ。

 経験した事ないから想像だけど。

 

「真城、あんた1つだけ勘違いしてる」

「勘違い?」

 

 やらせてもらえると思っていたことか。

 

「勘違いというか誤解? あたしと高木はまだそんな関係じゃないから」

「そんな関係って何だよ」

 

 話が通じず、質問で返す。

 見吉は言いにくそうに明後日の方を向いた。

 

「あれよあれ」

「あれってなんだよ」

 

 さらに詰め寄ると観念するように、見吉は両拳を作って気合を入れた。

 

「その……エッチしてる関係」

「な……」

「付き合ってるけど、そういうのはまだ早いっていうか……だから高木は知らないけど、あたしはまだ経験してないから」

「処女ってことか?」

「……真城、ちょっとキモイ」

「悪い」

 

 確かに直球過ぎた。

 意外な見吉の告白に、動揺してしまったみたいだ。

 

「高木が経験してたら殴るけど、そういう事だから」

「それを説明しに来たのかよ」

 

 確信があったわけではないけど、疑っていたのは事実なので、誤解があったことは間違いない。

 ただ、わざわざ仕事場まで押しかけるような事では、ないはずだ。

 脱力して、背もたれにもたれかかった。

 

「納得した?」

「した。したから、用事が終わったのなら帰れよ。マンガ描かないと行けないから」

 

 ネームができてないから、実際は描くことなんかないけど、ネームを考えるのもマンガを描くと表現していいはずだ。

 

「待ちなさいよ。まだ用事が終わってないし」

「何?」

「真城、脱いで」

「は?」

「脱げって言ってんの。力づくで脱がすわよ」

「待て、やめろって、意味わからねーし」

「あんたが言いだした事でしょうが」

 

 見吉が上乗りになりかけたのを、慌てて押し返す。

 至近距離で見ると、カワイイ顔してると思う。

 亜豆の方が100倍カワイイけど。

 

 見吉も本気じゃなかったようで、あっさりと距離を取ることができた。

 乱れた衣服を正す。

 

「エッチはしないって言ったのは、見吉だろ」

「しないし。真城、あんたはエッチしたいって言わなかったでしょ」

「は?」

 

 そうだったっけ。

 あの時、なんて言ったのか思い出してみる。

 

「あ……」

 

 見吉がなんでもするからって言ったせいで、思わず『()()()()()()』って言ったんだっけ。

 糠漬けに、似た言葉だったはずだから間違いない。

 そうだ。見吉の言う通りエッチしたいとは、言わなかった。

 

「それは言葉の綾っていうか」

「なによ。自分の言葉に責任もちなさいよ」

「エッチしたいってのと同じだろ」

「却下。いいから、抜いたげるから、さっさと脱ぎなさい。脱がないなら帰るから」

「…………」

「あたしだって恥ずかしいんだからね。脱ぐの? 脱がないの?」

「脱ぐ、脱ぎます。見吉に抜いて欲しいです」

「よろしい」

 

 慌てて立ち上がってズボンを脱いだ。

 期待のせいかトランクスを持ち上げてしまっているのが恥ずかしい。

 

 トランクスは女子ウケが悪いんだっけ。こんなことならボクサーパンツにしておけばよかった。

 

「これも脱ぐんだよな?」

「イチイチ確認しない」

「はい」

 

 最後の砦となっていたソレを脱ぎ捨てる。

 

「きゃっ」

 

 勢いよく見吉の前に飛び出した。

 見吉が思わずといった感じで目を背ける。

 

「……大丈夫か?」

「ちょっとびっくりしただけだし」

 

 落ち着いたらしく、今度はまじまじと観察された。

 

「つーか、真城のおっきくない?」

「知らねーよ。比べたりとかしないし」

 

 プールの時はタオルで隠すし、トイレも出来れば個室を使いたい派だ。

 他人のを見たと言えば、中学の修学旅行が最後か。

 

 どちらにしても、着替えだろうとお風呂だろうと、大きくしている奴はいない。

 いたらちょっと引く。

 だから、大きくなった状態で他人と比較したことはない。

 

「見吉は、誰と比べてんだよ。やっぱりシュージンと」

「ち、違うわよ。ちょっと動画で見ただけだから」

「動画……」

「あーもう。それはどうでもいいから、するわよ。こうすればいいんでしょ」

 

 見吉は右手でわっかを作ると素早く上下に動かし始めた。

 炭酸飲料で悪戯するときみたいな激しさだ。

 

 その激しさに、腰がちょっと引けてしまう。

 

「あれ? あたし間違ってる?」

 

 見吉が自信なさげに、勢いを弱めた。

 どうやら見吉が未経験だというのは、本当の事らしい。

 

「違わない。違わないけど……い……痛くするなよ」

「努力する」

 

 あまり頑張らなくていいから。

 機嫌を損ねないように、思うだけで口にはしなかった。

 

 まあ、なるようになるか。

 見吉に任せてみよう。

 

 

「見吉」

「真城」

 

「「バクマン(手)!!!」」

 

 こうして、僕はちょっとだけ大人の階段を上ったのだった。

 

 

 

「これで高木と仲直りよね?」

「あと2回頼む」

「馬鹿」

 

 結局、3回追加で抜いてもらって、シュージンには言えない見吉との秘密の関係がスタートした。

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