(性欲が)増しろ最高のバクマン   作:チームメイト

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第55話 完全犯罪

 亜豆の誕生日大作戦は、上手くいった。

 

 僕の描いた亜豆の絵は大好評で、大人の劇場に行ったことは不問になった。

 シュージン、ありがとう。

 

 あ、でも、よくよく考えたらシュージンがやらかさなければ、亜豆に知られることもなかったのか。プラマイゼロって感じだな。

 

 失敗に終わった港浦さんの尾行。

 成功に終わった亜豆へのサプライズドッキリ。

 

 この二つの経験を生かして、シュージンは完全犯罪をテーマにした話を作るみたいだ。

 

 完全犯罪って言っても、誰にもバレずに実行するっていう意味であって、やること自体は子供のイタズラで済ませられる範囲だ。

 完全にアウトな行為をするという意味ではない。

 

 シュージンは、久しぶりに燃えているみたいで、話ができるまで家にこもって集中するという連絡があった。

 どんな話を作ってくるのかが楽しみだ。

 

 というので、手持無沙汰になったので、サプライズドッキリの途中でできた宿題をさっさと処理するべく、加藤さんに連絡を入れた。

 

 あ、見吉にも今日は来ないように連絡を入れておこう。

 シュージンが燃えているから無理しないように頼む、でいいか。

 変に来るなとか言ったら、邪推されそうだし。

 

 

   ◇◇◇

 

 

「ここが亜城木先生の仕事場なんですね。すごい、マンガがいっぱいある」

「すみません真城さん。リリカが無理を言って」

「服屋を教えてもらえて助かりましたから……まあ」

 

 加藤さんが北見リリカを連れて仕事場を訪れた。

 北見さんは、興味深そうに仕事場を観察している。

 

 服が好きって言っていただけあって、今日の衣装も可愛くまとまっている。

 それと比べたら僕と加藤さんは地味過ぎる。

 

 これがマンガ家やアシスタントと一般人の違いだろうか。

 着飾るのはキャラクターであって作者ではない。

 

 蒼樹さんとかは、服装まで可愛いから、単に僕達が手抜きってだけなんだろうけど。

 

「読みたい本があれば、好きに読んでください」

「いいんですか? じゃあ、これとこれと」

「ちょっと、リリカ。読み終わったら片付けなさいよ」

 

 こうやって見ると加藤さんが、面倒見がいいのが分かる。

 明日から蒼樹さんのところでチーフアシスタントをするらしいけど、この調子なら上手く回せられると思う。

 

 ちなみに、蒼樹さんのアシスタントは全員女性らしい。

 新しいアシスタントも今の住まいよりも、谷草の方が都合がつきやすかったことが、仕事場を借りる決め手になったみたいだ。

 

 あれこれ詮索されるよりも、大人しくマンガを読んでくれた方が楽でいい。

 下手に絵の練習とか始めると騒がれそうなので、僕も今日はマンガを読んで過ごそう。

 久しぶりにおじさんのマンガを読み返そうかな。

 

『超ヒーロー伝説』を5冊まとめてとって、作業スペースの自分の席へと座った。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 2時間後。

 

 最初にとった5冊は読み終えて、一度入れ替えた5冊も終わりが見えてきた。

 

 うん、やっぱりおじさんのマンガは面白い。

 何度も読んでいるのに、ギャグにクスっとしてしまう。

 

 最後まで読み切ろうとマンガに向き合ったところで、影が入った。

 

「どうかしましたか?」

 

 影の主は、北見さんだった。

 加藤さんは、ソファでマンガを読んでいる。

 

「あの……奈津実さんと先生っていつはじめるんですか?」

「ちょっと、リリカ。何言ってるの」

「先生と奈津実さんってそういう関係なんですよね。しないのっておかしくないですか?」

 

 マンガを読んでいたのは、時間つぶしだったんだろうか。

 僕と加藤さんがいつはじめるをワクワクして待っていたけど、全然始まらないからしびれを切らしたと。

 

「加藤さん、僕達の関係をどう説明してるんですか」

「先生の性欲解消に付き合う関係って言ってましたよ」

「リリカーーー」

 

 いや、叫んでるけど、北見さんに教えた犯人は加藤さんだろ。

 間違っていない、間違っていないけど、公言するのはやめて欲しかった。僕の沽券にかかわる。股間の話題なだけに。

 だったら、アシスタントに手を出すなって言われたら、ぐうの音も出ないけど。

 

「始めるとしたら、北見さんが帰ったら?」

「ずるいーー、二人っきりで楽しむつもりなんですか」

「いや、そういうものかと」

 

 バクマンなんて二人でやる行為だ。

 誰かに見られながらするようなものではない。

 

「先生は三人でしたことないんですか」

「…………」

 

 それはある。

 見吉と加藤さんを並べて抱いたのは、それはそれで楽しかった。

 メチャクチャ疲れていたのが、吹き飛んだくらいだ。

 

「やっぱりあるんだ。それなら私が参加しても問題ないですよね」

「…………」

「リリカ、真城さんを困らせないで」

「奈津実さんだけ独占するのはずるい」

 

 既にバクマンマンは経験済みだ。

 今さらできないとは、言えない部分がある。

 

 問題があるとしたら、北見さんに手を出すのはどうなのかだ。

 彼女がいるのにダメですよって、脳内の蒼樹さんが窘めてくる。

 

 加藤さんとバクマンするのは、マンガを描くのに必要だからセーフだとしても、北見さんに手を出す理由が弱い。

 こんな可愛い子が、食べていいですよって言ってくれているのなら、飛びつくのもいいと思うけど、蒼樹さんにバレたらどうなることか。

 

 彼女よりも蒼樹さんにバレないかを恐れている時点で、どうなんだって話になるけど。

 

「今日のために、すごい下着着てきたんですよ」

「すごい下着……」

「奈津実さんがつけないようなやつです」

「どうせ私は地味な下着しかつけませんよ」

 

 すごい下着。

 興味がある。

 ものすごく興味がある。見て見たい。

 

「作画の参考になるんじゃ……」

「なりますよ。絶対」

 

 絶対か。

 つまり、北見さんに手を出す事が、マンガ家亜城木夢叶としての成長につながるわけだ。

 

 女性キャラを苦手にしていた時期があったけど、見吉を抱いてからは見吉みたいなキャラは楽に描けるようになった。

 加藤さんに手を出してからは、加藤さんみたいなキャラも得意になった。

 

 モデルみたいなタイプの北見さんを抱けば、モデルみたいなキャラクターが得意になれる。

 

「そこまで言うなら、やりましょう。北見さん。作画の参考にさせてください」

「やったー、やりましょう。私のことはリリカって呼んでください」

「……こうなると思ったから、連れて来たくなかったんですけど」

 

 とかいいながら、真っ先に衣服を脱ぎだしたのは加藤さんだ。

 加藤さんとやるとは言ってないのに、参加する気満々らしい。

 バクマンマンだけに。

 

「加藤さん、リリカ」

「真城さん」

「真城先生」

 

「「「バクマン(バクマンマン)!!!!」」」

 

 え? それって防御力0じゃねえの!?

 攻撃力しかねえじゃん、その下着!!

 

 見せてもらった下着は、少年誌では使えないようなものだったというオチ。

 

 

   ◇◇◇

  

 

 いつの間にか、外が暗くなっていた。

 久しぶりに性欲を使い果たして、三人でシャワーを浴びる。

 

「…………」

 

 シャワーを浴びていて気付いた事があった。

 加藤さんとリリカでは、水の弾き方が違う。

 分かりやすく言えば、肌のハリが違って、リリカの方が弾力性がある。

 

「もしかして二人って年齢が離れていたりするんですか?」

「言ってませんでしたっけ?」

「私は、真城先生の方が近いですよ」

「え!?」

 

 加藤さんの友達だから、関係性から加藤さんより下だとしても、勝手に25くらいだと思っていた。

 実際には、かなり開きがあったみたいだ。

 僕と同世代か。確かに、肌質からいえば見吉の方が近い。

 

 そういえば、前に見吉と加藤さんと3人でした時も同じことを思ったような。

 加藤さんと1対1なら気にならないけど、比較対象がいると水の弾きが悪いように感じてしまう。

 

 思っていた事がバレたらしく、加藤さんに睨まれてしまった。

 するどい。

 

「大学生?」

「まだ、高3です。来月18になります」

「……って事は、今は17歳?」

「はい」

 

 やってしまった。

 それも盛大なやらかしだ。

 

 大人が高校生に手を出した。

 それも17歳。

 つまりは、18歳未満。

 

 18歳未満とのバクマンは、青少年保護育成条例違反。

 

 18歳未満同士とかならセーフとか細かいルールはあるらしいけど、既に18歳で高校を卒業している僕が17歳の北見さんに手を出すのは、アウトだ。

 

 完全に犯罪じゃねえか。

 

 完全犯罪マンガを描くつもりが、完全アウトな犯罪者になってしまうってどういう展開だ。

 

「加藤さん」

「ごめんなさい。真城さんが知っているものだと思って」

「知ってたら手を出したりしませんよ。未成年じゃないですか」

「大丈夫です。私は誰にも言いませんから」

 

 とは言われても、心配になってしまう。

 調子に乗るのはダメだって事だ。

 

「私と真城さんの初めての時、真城さん17歳でしたよ」

「……加藤さんと同類になってしまった」

「なんでそこでショック受けるんですか!?」

 

 意識してなかったけど、指摘されてみれば加藤さんの言う通りだ。

 加藤さんは未成年に手を出していた犯罪者だったのか。

 

 被害者意識が無いとこんなもんなんだろう。

 

 切り替えよう。もう終わったことだ。

 加藤さんっていう証人もいるから、セーフだと思おう。

 僕は誘われて完全同意の上だ。きっとセーフ──になって欲しい。

 

「って今日高校は?」

「サボりました。制服で来た方が嬉しかったですか?」

「僕は体操服の方がってそうじゃなくて、ダメですよ、学校には行かないと」

 

 今日は火曜日。平日だ。

 マンガ家になるために、結構サボった僕が言えたことじゃないけど、それは棚にあげよう。

 夢のためにサボっただけで、僕の将来のためには必要な休みだった。

 

「今度は、制服と体操服持ってきます」

「ありがとうございます……それは約束するとして、学校にはちゃんと行ってください」

「真城さん。リリカは声優になるのが夢なんです」

 

 社会人として高校生に注意していると、横から加藤さんが口を挟んで来た。

 

「それでマンガ家の仕事場がどういうところが見てみたいって言われて。私も普通なら学校を休んでまでは連れて来ませんけど、連載が始まったら遊びになんてこれませんし、週末は蒼樹先生のところでアシスタントが入ってますので」

「それです。奈津実さんに頼み込んで、今日ならって言われちゃったら学校よりこっちです。私、大学には行きませんから、ちょっと休んでも平気ですし」

 

 声優の卵の社会科見学か。

 

 それならバクマンする必要はなかったんじゃ。

 やれてラッキーだった部分もあるからいっか。

 

 犯罪臭がただよっていることだけは、勘弁して欲しいところだ。

 

「4月からは、声優の専門学校に通うつもりです」

「なるほど……」

 

 加藤さんに目配せすると分かってますと返ってきた。

 

 念には念を入れて、亜豆に関係が伝わらないように注意してもらわないと。

 声優は狭き門だから厳しいと思うけど、リリカは容姿レベルが高いから、売れるかもしれない。

 声優として亜豆と知り合って、僕の話題が出るのはまずい。

 

「加藤さんとリリカがどういう関係なのか気になってましたけど、もしかしてマンガサークルつながりで何かあったんですか?」

 

 声優の卵とマンガ家のアシスタントか。

 二人がどうやって友達になったのか。

 9歳差の接点が見えてこなかったけど、ようやくつながった気がする。

 

「あ、違います」

「私が常連だったハプニングバーにリリカが入ってきて、私が注意して退店させたら懐かれたのが始まりです」

 

 うん、さらっと衝撃の告白があったけど、聞かなかったことにしたい。

 

 ハプニングバーでの出会いってなんだ!?

 しかも常連だったって何!?

 

 今17歳でその出会いって、リリカが何歳の時なんだ。

 好奇心が強すぎるだろ!!

 

 大人の劇場通いが「グッジョブ」で終わるわけだ。

 ハプニング姉妹。恐るべき。

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