(性欲が)増しろ最高のバクマン   作:チームメイト

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新しいカップル!?

「で、平丸が何をやらかしたんだ?」

 

 やらかしたのが前提なんだ。

 そういえば、仕事場に急に押しかけてきたりとか、あったっけ。

 その度に、追いかけて引き取りに行っている吉田さんが不憫だ。

 

「違います。今、平丸さんが何かをしたって話じゃありません」

「そうなのか。だったら何を……」

 

 どうして、そこでちょっと残念そうにするんだろうか。

 平丸さんの事を怒りつつも、仕方ねえなコイツっていう吉田さんの優しさが垣間見えた気がする。

 

「実は……平丸さんに紹介したい女性がいまして」

「何!?」

 

 そう、これこそが平丸さんの保護者である吉田さんにしたかった話だ。

 

「吉田さんが平丸さんに女性を紹介していると聞きまして、それが上手くいっているのなら余計なことですし、平丸さんに女性を紹介していいのかどうかをまず吉田さんに伺おうかと」

 

 知り合いに女性を紹介する。

 そんなことで本来は、担当編集にお伺いを立てる必要はない。

 

 でも、平丸さんの場合は話が別だ。

 ネガティブパワーを面白さに変える天才マンガ家が平丸さんだ。

 もし、彼女ができて幸せになったりすると、それがマンガにどう影響が出てくるのかが分からない。

 

 平丸さんは不幸な方が、マンガ家として幸せな可能性がある。

 

 かなり可哀相な属性だけど、平丸さんのマンガの根本がそこにあるから避けられない。

 実際に、最近の『ラッコ11号』は、ちょっと勢いが落ちていて、アンケートもアニメ化作品としては低迷している。

 どうしてかが疑問だったけど、今日、平丸さんに会って理由が分かった。

 グッズが売れまくって絶好調で、お金的に潤いまくって浮かれているのが、マンガに反映されているんだと思う。

 

 この辺りを踏まえると、吉田さんがどう判断するのかに任せたい。

 

「どんな子なんだ?」

「若くて美人で、平丸さんの好みにドンピシャだと思います」

 

 平丸さんに紹介したい女性。

 亜城木夢叶の手伝いをしてくれている、北見リリカだ。

 

 ついに、見吉の手を借りずにリリカ一人で食事を作り、見事に見吉から合格をもらっていた。

 おめでたい事だけど、亜城木夢叶の仕事場に出入りする理由が弱くなってしまった。

 

 というので、リリカの今後をどうするのかが課題となっている。

 リリカは、亜城木夢叶の仕事場に出入りすることが好きだし、見吉を見て結婚するならマンガ家がいいと思ったみたいだ。

 

 残念ながら、シュージンは結婚済みで、僕には亜豆さんという結婚を誓った相手がいるので、リリカと結婚することはできない。

 

 というわけで、リリカ本人や加藤さんを交えて話し合った結果、マンガ家の誰かを紹介するという話になった。

 

「平丸と会って、引かないか?」

「そればっかりは会わせてみないと分かりませんけど、本人はマンガ家で変わった人が好きって言ってますので、平丸さんを紹介しようかと」

 

 吉田さんには言えないが、追加で成功している人が良いらしい。

 

 成功しているマンガ家で変わった人。

 この条件で、パッと頭に浮かんだのは、平丸さんとエイジと福田さんだ。

 

 エイジは、一番成功しているし一番変わっている。

 リリカに紹介したら、リリカはエイジのことを気に入ると思う。

 でも、肝心のエイジが今は恋愛なんかよりもマンガを描いてるときの方が楽しいって感じなので、紹介しにくい。

 

 次に福田さん。

『KIYOSHI』の連載が終わったとはいえ、3年近く続けば成功したと言える。

 次の連載も期待されている売れっ子マンガ家だ。

 成功しているという面では問題ない。

 

 ただ、リリカの好みに合うのかが問題だ。

 

 福田さんは、硬派で気合の入った人だ。

 そして、まともないい人でもある。

 となると、紹介するには、ちょっと変わった部分が物足りなくなってしまう。

 

 あと、福田さんが、リリカみたいな女性をタイプなのかどうかがよく分からない。

 ただ、19歳だと子ども扱いで、まともに相手はしてくれないと思う。

 

 福田さんも選択肢として、なしだ。

 

 ということで、本命の平丸さんだ。

『ラッコ11号』がアニメ化でグッズが売れに売れている、成功者だ。

 エイジに負けず劣らずの変わった人だから、リリカの好みとしてもばっちりだ。

 

 平丸さんから見たリリカはどうなのか。

 平丸さんの好みは、年下の美人だ。

 蒼樹さんや岩瀬がタイプなので、リリカなら平丸さんの好みに適合すると思う。

 

 実際に紹介してみてどうなるのかは、分からない。

 でも、結構上手くいくんじゃないかってのが僕の見立てだ。

 

「もう少し詳しくどんな子か教えて欲しい」

「ええっと……元々は、僕のアシスタントをしていた女性の友達なんですが、訳があって仕事場に遊びに来るようになったというか手伝いをするようになったとか言うか、そんな感じで知り合った子です」

 

 仕事場にバクマンしに来ました。バクマン仲間です。

 この辺は、これから女性として紹介しようとしている相手に言えるわけがない。

 そこは、言葉を濁そう。

 

「名前は北見リリカ。12月で19歳になったばかりの、声優の専門学校に通っている声優の卵です。4月からは事務所の養成所に通う事が決まっています」

 

 リリカは声優の卵としてステップアップだ。

 事務所に所属できるのかは分からないけど、養成所には入ることができた。

 

 身長体重や、スリーサイズまで知ってるけど、それも黙っておこう。

 コスプレの都合で聞いただけで、知っている方がおかしい情報だ。

 

「若すぎないか」

「去年の新年会時の岩瀬が同じ年ですけど、平丸さんは『おおーー、秋名さん色っぽい』って言ってましたので、年齢は大丈夫だと思います」

「そんな事を言っていたのか」

 

 しまった。余計なことを言ってしまったかも。

 でも、平丸さんが若い美人に弱いのは事実だ。リリカなら申し分ない。

 

「食事の用意とか掃除とか、家事は一通りこなせます」

 

 ここは大事なアピールポイントだ。

 見吉のおかげで、バクマンしかできなかったリリカはもういない。

 特技がバクマンってどんな女子高生だ。

 

 家事が女性の仕事だとか言うつもりはないけど、現実的な問題として多忙な連載作家はそこまで手を回すことが難しい。

 見吉が居なかったら僕の生活は破綻していたと思う。

 マンガ家のパートナーとしては、家事ができるに越したことはないはずだ。

 

「真城くん。条件が良すぎないか? 何か平丸に弱みでも……」

「ありません。良い子ですので、幸せになってもらいたいだけです」

 

 リリカに手を出してしまった責任がある。

 でも、それだけじゃなくてリリカには幸せになってもらいたいっていうのが本音だ。

 そう思うくらいには、リリカを好ましく思っている。

 

 平丸さんは面白い人なので、リリカが望む楽しい日々になってくれると思う。

 

「分かった。少し考えてみる。この話は預からせてもらっていいか?」

「はい。吉田さんの面接が必要なら、調整しますので」

「そこまでやってくれるのか。そうだな。一度会ってみないことには分からないか。そうしてくれるとありがたい」

 

 リリカは、まだ19歳だ。慌てる必要はない。

 

 これで、平丸さんにリリカを紹介するプロジェクトが始まった。

 次は、吉田さんの面接を突破できるのかどうかだ。

 

「…………」

 

 僕から提案したけど、交際相手の候補の面接ってなんだろう。

 平丸さんの編集兼保護者というかリリカから見たら(しゅうとめ)みたいな立場か。

 

 今年の新年会はこうして無事に終わることができた。

 

 

 おまけ。

 

「真城さん」

「蒼樹さん」

 

「「バクマン(バクマン)!!!」」

 

 今年は、そこまで寂しくなったりはしなかったけど、蒼樹さんが心配して来てくれたので、ちゃっかりとバクマンしたのは、ここだけの話だ。

 

 

   ◇◇◇

 

 

「『ラッコ11号』の平丸先生を紹介してくれるんですか!?」

 

 新年会での話を、リリカに伝えるとすごい食いつきだった。

 

「いや、平丸先生を紹介する前に、担当編集の吉田さんの面接が」

「なんなんですか、それ」

 

 理解できないと言った感じで、加藤さんがツッコむ。

 マンガ家を紹介するのに担当の面接が必要とか、たしかに意味不明かもしれない。

 

「それだけ平丸先生がジャンプの主力として大事にされてるって話」

「面接とか自信ありませんよ」

「リリカなら大丈夫だから、もっと自信を持って。ここで教わったものを出せれば、合格です」

 

 言ってて、僕も自信があるわけじゃないけど、ここは言い切ろう。

 不安にさせても仕方がない。

 

「……ナース服で抜けばいいんですか?」

 

 天使のような笑顔でなんてことを。

 それは吉田さんからSOSが飛んできそうだ。

 

 吉田さんは、たしか既婚者だったはず。

 19歳との不倫とか、大問題だ。

 

「僕じゃなくて見吉から教わった事で」

「……パイ〇リですか?」

「見吉から何教わってんだ。つーか、いつの間に……」

 

 そういえば、いつの間にかリリカは胸を駆使するようになっていたっけ。

 加藤さんの友達だから、別に変だと思っていなかったけど、技まで見吉から伝授されていたのか。

 無駄なことは加藤さん担当だと思っていたのに、裏切られた気分だ。

 

「真城さん。今、失礼な事考えませんでしたか?」

 

 ニコッと笑っているけど、目が笑っていない。

 加藤さんは鋭い。

 

「気のせいです。無駄な事を教えたのは加藤さんに違いないとか思っていません」

「思ってるじゃないですか!!」

 

 効果音をつけるなら、ぷんぷん、だ。

 効果音から、年齢を察して欲しい。

 

 これ以上は、殴られそうだからやめておこう。

 

「性に貪欲なところは隠して、あとは普通にしていればいいかと」

「真城先生も一緒に居てください」

「……分かりました。できるだけ都合はつけます」

 

 リリカを放置するのも怖いので、吉田さんとの面接くらいは一緒にいてもいいか。

 面接に受かって、平丸さんのところに遊びに行くたびについてきてって言われたら、さすがに無理だ。

 

 どうせいつかは化けの皮が剥がれるんだから、平丸さんがそれを見てどう思うのかは平丸さんに任せよう。

 

「真城さんってリリカに甘いですよね」

「それはお互い様かと」

 

 加藤さんにだけは言われたくない。

 

 話が終わったので、今日もスッキリして仕事に戻ろう。

 

「リリカ」

「真城さん」

 

「「バクマン(胸)!!!」」

 

 

 面接の前に、見吉から教わったことを復習だ。

 面接本番でやらないことだけど。

 

 あとは本番と結果を待つばかり。

 とりあえず、リリカの問題は僕の手を離れて、ひと段落ついたと言える。

 

「あ、そういえば……」

「どうしました?」

「聞きましたよ。『Natural』のヒロインオーディションに、亜豆さんが最後まで残ってるとか。羨ましいです。ジャンプ作品のヒロインとか声優の夢ですよね」

「え!?」

  

 そして、すぐに次の問題が起きるのだった。

 

『Natural』のオーディションに亜豆が残ってる!?

 聞いてないよ、亜豆さん。

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