(性欲が)増しろ最高のバクマン   作:チームメイト

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連載決定と担当の変更

 12月16日 木曜日 連載会議当日

 

 金未来杯の受賞決定から、2月かけて連載用のネームを練りに練り、服部さんへ提出した。

 あとは、結果を待つばかりだ。

 

 中井さんも福田さんも、同じ連載会議にネームが回っているらしい。

 バトル再びって感じだ。

 連載の可能性は、どれくらいだろう。

 服部さんに何度も修正を食らったので、連載ネームは納得行くものができたと思う。金未来杯を取った読切から更にパワーアップさせたので、これで通らなかったら、どうしたらいいのか分からないくらいだ。

 そう考えると50%はあると思いたい。

 

 ただ、服部さんがずっと気にしていた高校生というのが、どう影響するのか。

 新妻エイジが連載しているとはいえ、エイジは例外に近い。

 2組目となると天才高校生というウリも使えなくなる。

 

 それに、高校生の場合は、親とか学校の許可とかが必要になるらしい。

 他の作家を連載させるより、集英社の面倒が増える。

 そこまで面倒をかけてまで、連載させる価値がなければダメだって事だ。

 他の作品との兼ね合いになるけど、AとBでどちらも同じくらいの出来だったら、僕達の作品が落とされる可能性が高くなる。

 

 うーん、やっぱり20%あればいい方かもしれない。

 

「ご、ご飯は? 作ってあげようか?」

「今、喉通る訳ないだろ!!」

 

 シュージンが荒れている。

 気持ちはわかるけど、ひどい。見吉の好意が可哀相だ。

 

「見吉、料理手伝ってもいいか?」

「え?」

「僕も喉通りそうにないけど、何もしてないのは落ち着かない。じっとしてて結果が変わる訳じゃないし、気分転換がてら料理もいいかなって。とりあえず作っとけば、結果が終わってから食べればいいし」

「ましろー」

「シュージンも一緒に」

「……台所狭くね?」

「いいじゃん、やろうよ」

 

 少し強引になったけど、シュージンも引っ張り出す事に成功した。

 3人で台所スペースへ向かう。

 

 ここ最近の変化としては、見吉がよく料理をするようになった。

 おじさんは、ほとんど料理をしていなかったみたいだけど、ガス台や冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器などは揃っている。オーブンはないけど、とりあえず充分だろう。

 よく缶コーヒーを飲んでいたのもあって、冷蔵庫はファミリー向けのサイズだ。

 僕とシュージンの2人だと、せいぜい飲み物を冷やしたり、たまにアイスを入れておくだけだったけど、見吉が仲間になってからは、色々と食材が入るようになった。

 

 見吉は、元々両親の帰りが遅いのもあって、料理をする機会が多かったらしいけど、最近はどんどんバリエーションも増えていっている。

 それでいてコンビニに頼るのよりも安くあがるのもあって、見吉には、お世話になりっぱなしだったりする。

 

 って世話になりっぱなしじゃダメだ。手が空いてるときは、積極的に見吉をもっと手伝わないと。なかなか、作業に追われて手が空いてないんだけど、今日みたいなチャンスは見逃せない。

 気合を入れて、包丁を手に取った。

 

 

 10分後

 

「……座ってなさい」

「はい」

「ごめん」

 

 結局、男2人は戦力外通知を受けて、見吉が1人で料理するのだった。

 

 シュージンは、合理性優先で料理するなら冷凍食品とか惣菜でいいじゃんって感じだし、僕は僕で母親が専業主婦なため、料理する機会がなかったのが敗因だ。

 これを機に覚えるのもいいんだけど、結果待ちで心ここにあらずの状態では、危なっかしくてダメだと見吉先生に判断されてしまった。

 

 反省。

 

 

 数時間後、無事に連載開始が決定し、食事となった。

 なお、見吉が作ってくれた料理のメインは、チーズ入りハンバーグだった。

 美味。

 

 連載決定を知らせた時の亜豆の反応が、ちょっと変だったけど、大丈夫かな。

 

 

   ◇◇◇

 

 

 翌日。

 

 打合せのために、服部さんが初めて仕事場に来る事になった。

 見吉には申し訳ないけど、今日だけは遠慮してもらう。

 

 見吉は僕達の仲間だ。とはいっても、初回から見吉を同伴させて打ち合わせをする勇気はなかった。

 次に服部さんが来るときに、高木の彼女で手伝ってもらっていると紹介しよう。

 

「服部さんだ」

「時間通りだな」

 

 待ち合わせ時間ピッタリにチャイムが鳴り、玄関まで向かう。

 って、あれ? 2人いる。

 

 玄関を開けると、服部さんと若い男性がそこに立っていた。

 誰だろう、この人。

 

「去年ジャンプに配属になった港浦だ。ヨロシク!!」

 

 呆気に取られているうちに、手を両手でガッシリ掴まれて、ぶんぶんと上下に振り回された。斬新な握手だ。個人的には悪手だ。

 男といきなり手をつないでも嬉しくねー。

 

「と、とにかく中へ」

「失礼するよ」

 

 玄関先で立話というわけにもいかず、室内へ案内する。

 港浦さんは、仕事場がある事に、驚いているようだった。

 事情を多少は知っている服部さんは、興味深そうに仕事場を眺めている。

 

 連載を持ったことのないマンガ家が本格的な仕事場を持っていたら、そりゃ変だろうな。

 僕達は、光熱費を払う程度で許されているけど、本来なら家賃もかかる。

 3LDKだとどれ位だろう。

 駅からそう遠くないし、10万はかかりそうだ。

 中3の夏からだから、大雑把に計算して、今まで200万くらいは浮いてる感じか。

 

 そう考えると、おじさんが残してくれた事、おじいちゃんが自由に使わせてくれている事に感謝しないとな。

 

「まずは引き継ぎだ。担当はこれから僕じゃなくこの港浦になる」

「ヨロシク」

「!?」

 

 服部さんが、口にした言葉に、シュージンと2人で固まってしまった。

 担当が変更になる?

 

「僕がこの間始まった新連載の『タラコーン』を担当しているのは知ってるだろ。『ワンピース』も引き継いだばかりで、今3本目を新たに担当するのはタイミング的に厳しい。『タラコーン』と『ワンピース』の担当をすぐに変えるよりは、新しく始まる『TRAP』を港浦にという話になった」

 

 タラコーンは聞いてたけど、ワンピースって服部さんの担当になっていたのか。

 担当替え。たまにあるとおじさんからは聞いていたけど、本当にいきなり起こるイベントなんだ。

 新連載開始時は、確かにキリがいいのかもしれないけど、軌道に乗るまでは、服部さんに見てもらいたかった。

 服部さんが担当じゃなかったら『TRAP』を連載まで持って行けたのかどうか分からない。

 

「大丈夫、僕も頑張る。ドンと来いだ」

 

 新しい担当の港浦さんはそういうけど、入社して日が浅いらしい。

 不安しかない。

 

「じゃあ僕はここで」

 

 既に『TRAP』の担当は港浦さんだと言いたいのだろう。

 居座っていたら打合せが始められないと、服部さんはすぐに席を立った。

 

 そういうものなんだろうけど、僕達はちょっと見捨てられた気持ちだ。

 

「服部先輩。何事もなかったのようにしてるけど、昨日は必死に亜城木夢叶だけは担当したいって、上に食い下がって怒られたんだ」

 

 呆然としているのを見かねてか、港浦さんがこそっと教えてくれた。

 慌てて席を立ち、服部さんの後を追う。

 

「服部さん。今までありがとうございます」

「面白いマンガ読ませてくれ」

「はい」

 

 服部さん、サムズアップが決まりすぎです。

 

 本当にお世話になった担当が替わってしまった。

 これがプロになったって事なんだろうけど、やっぱり寂しい。

 

 担当を外れた服部さんに見られて恥ずかしくない連載をしよう。そう、心に決めた。

 

 

 港浦さんとは、色々と話した。

 大雑把にまとめるとこんな感じだ。

 

 1、年間契約料

 集英社との専属契約だ。俗にいう〇〇先生の連載が読めるのは「ジャンプ」だけというヤツだ。

 作家を縛る悪しき習慣みたいに言う人もいるみたいだけど、週刊連載を抱えて別で描くなんて到底無理だと思うので、僕達としても望むところだ。

 想像している以上に貰えて、シュージンが驚きの声を上げていた。

 

 2、原稿料

 読切の時から少し上がった。嬉しい。

 

 3、アシスタント

 港浦さんが、ベテランを1人確保してくれたらしいけど、それだけじゃ足りない。

 僕達のコネと言えば、福田組くらいしかない。

 福田さんも中井さんも、いつ連載が決まるか分からないし、そもそもエイジのアシスタントだ。借りてくるわけにはいかない。

 

 というので、港浦さんに全部何とかしてもらう事になった。

 アシスタントの泊まりは、できるだけなしがいいんだけど、無理は言えないか。

 

 アシスタント代は、港浦さんが既に用意しているベテランは月38万。

 若い人が入れば、日当1万円って感じらしい。

 さらに、交通費と食費もかかる。

 

 年間契約料以上に、驚きの金額だ。

 

 原稿料だけだと、アシスタント代を払ったらほとんど残らなくなる。

 実家住みで、仕事場代もかからないからどうにかなるけど、社会人で一人暮らしとかだと大変そうだ。

 コミックスが売れないと赤字。連載貧乏の誕生となる。

 

 4、川口たろうの話

 港浦さんは、川口たろうが大好きだったらしい。

 ちょっとだけ好感度が上がった。

 

 5、スケジュールの確認

 掲載号の2週間前が締切だ。

 できれば、その前の週の金曜日にあげるのが理想らしい。

 

 1話は58ページ、2話は25ページ。通常ページ数の3話。

 ここまでは既にネームも通っているので、どんどん先に進めることができる。

 ページ数は多いけど、1話の締切が2月11日と2ヵ月近くあるし、冬休みも挟むので、そこまで心配は、なさそうだ。

 

 6、新年会の話

 連載が決まった時点で連載作家扱いで、新年会に参加しなければならないとの事。

 出なかったら担当が罰ゲームらしい。

 

 新しい担当の港浦さんに、いきなり罰ゲームをしてもらうとか無謀過ぎる。

 緊張するけど、シュージンはそういうの好きそうだし、スケジュールを調整して必ず参加しよう。

 ハイヤーとか載った事ないし、どんな乗り心地なのかな。

 楽しみって言うより怖い。

 

 

 と、こんな感じで、打合せは多岐にわたった。

 

 怒涛の展開に、港浦さんが帰った後、どっと疲れてソファーに座り込んでいたくらいだ。

 打合せで出た話を抜けがないか、シュージンと振り返る。

 

 後でまとめて、メールで送ってもらう事になった。

 シュージンは、本当に頼りになる。亜城木夢叶が、二人組で良かった。

 僕一人だと、処理しきれなかったかもしれない。

 

 エイジとか、この辺無頓着なんだろうな。

 それで成立する天才なのが、エイジだ。

 

 これがプロになるって事なんだろうか。

 そして、新しい担当の港浦さんは、頼りにしていいんだろうか。

 

 いきなり手を握ってきた 好感度-30

 川口たろうが好き 好感度+15

 

 今のところ、好感度はマイナスだ。

 

 これから始まる日々がどうなるのか、期待よりも不安が強いかもしれない。

 でも、やるしかない。

 

 絶対に、亜豆との夢を叶えるんだ。

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