ガンダムブレイカー・シンフォニーRe:BREAK 作:さくらおにぎり
――さて、今年で何年目の異世界転生になるだろうか。
1000年目を越えた辺りでもう数えるのやめたしなぁ、もう何千年経ったかな?
『今年で2649年目ですよ』
ふと、天界に還ってきた"俺"を、女神様が迎えに来てくれた。
「ハローこんにちは女神様。いや、グリニッジ標準時に合わせるとグッドモーニングおはようございますかな。ただいま」
『おかえりなさい。今回もまた、ありがとうございました』
「はいはい、ちゃんと"完結"させて、"回収"もしてきましたよ」
"俺"は掌を女神様にかざし、いくつかの光の玉を顕現させると、それを女神様へと返還する。
――既に皆さんはご存知だから、敢えて説明する必要も無いだろうけど、"新規"の方のために一応は説明しておこう。
"俺"は、普通の転生者じゃない。
女神様からの命令を受け、いつまでも完結せずにほったからしにな――有体に言うと、エタ――っている世界へと異世界転生し、物語を人為的に"完結"させることによって、その転生者に与えられた転生特典のポイントを回収する……というのが、"俺"の役目だ。
人の数だけ異世界がある――というのは誰が言ったか。
いや、ほんとに。
完結させずにエタらせている作品、どんだけあるんだってくらい、異世界転生してきたからなぁ。それこそ2649年も異世界転生しては天界に死に戻りを繰り返して来たから。
『それで、ですね。またこうしてあなたに厄介事を頼むのもなんだと思っているのですが、その……また私の管轄下の作品がエタったまま還って来なくなってしまいまして』
「あー、まぁ、それもいつものことですし、俺は気にしてませんよ。それよりも、女神様のポイントが素寒貧な方が心配なんですが」
どこかの世界でストーリーが生まれて、転生者が異世界転生を楽しもうと、転生特典をもらうだけもらって転生して、エタったままその世界の中で止まった時の中で生き続けているとか、普通にある。
そういう世界から特典ポイントを回収して、女神様へ返還するのが"俺"の役目だ。
「で……今度はどこの世界に異世界転生するんです?」
『ありがとうございます。今回あなたに転生していただくのは、『ガンダムブレイカー』の二次創作小説『ガンダムブレイカー・シンフォニー』の世界です』
ふむ、ガンダム世界か。
U.C.(ユニバーサル・センチュリー)の歴史改変や、C.E.(コズミック・イラ)のベストエンディング、P.D.(ポスト・ディザスター)の鉄華団大団円エンディング、A.S.(アド・ステラ)の学園無双など、何度か経験したことがある。
だが、この、『ガンダムブレイカー』という作品は初めてだし、しかも二次創作?
作者様の許可とかその辺りは大丈夫なんだろうか。
女神様が言うには。
このガンダムブレイカー・シンフォニーという世界は、主人公『オウサカ・リョウマ』という男子高校生が、ガンプラバトルをしながらヒロイン達とイチャイチャしたりする、まぁよくあるハーレム系だな。
順調に連載されていたらしいのだが、しかし何があったのか、完結を目前に作者が突然エタりだし、それ以降の更新はされていないとのことだ。
理由はともかく、この世界は止まったまま同じ時間を繰り返していることに変わりはない。
「で、俺はこの世界の……オウサカ・リョウマ君に転生して、ストーリーを完結させてほしいってわけですか」
『はい。完結させてほしいというのは間違いないのですが……あなたには、この世界を自由に生きてほしいのです』
「自由に生きてほしい?どういうことです?」
『えぇとですね……その、創造神様が、「いい加減そいつに頼る以外の方法を考えつけ」という、ありがたいありがたいお小言をいただきまして……つまり、今回で最後の異世界転生になるということです』
「最後……というと。最後の異世界転生くらいは、役目とか気にせずに、後腐れなく自由にやってくれと、そういうことですか」
俺がそう訊ねると、女神様がちょっと悲しそうな顔をした。
もう千年単位で世話になった方だからなぁ、"俺"もちょっと泣きそうだ。この世界にいる時に"俺"の肉体は無いので、泣きたくても泣けないのだが。
『そうです。この、『ガンダムブレイカー・シンフォニー』という世界を、自由に完結させてください。作者様との同意は既に得ています』
「了解。まぁ、最低でも適当にガンプラバトルでもしながら、のんびりやるとしましょ」
『では……次に会うときが本当に最期です』
女神様はそっと手をかざすと、"俺"は淡い光に包まれる。
『あなたに、神のご加護がありますように』
「あいよ、ほんじゃ行ってきますわ」
"いつも通り"、俺は天界から翔び立った。
しかし……自由に完結させてほしい、か。
まぁいい、行き当たりばったりには慣れてるし、どうとでもなるだろう。
行くぜ。
………………
…………
……
【1話 始まりのプレリュード】:CLEAR
【2話 再会のワンステップ】:CLEAR
【3話 新人教育、始めました】:CLEAR
【4話 二頭龍と双子座と】:CLEAR
【5話 菫麗乱舞】:CLEAR
【6話 勃発!仁義なきガンプラバトル】:CLEAR
【7話 質実剛健のレジェンドガンダム】:CLEAR
【8話 事実は同人誌より奇なり】:CLEAR
【9話 汚いカミーユ、もしくは若かりし頃のウルベ】:CLEAR
【10話 ビルド!ビルド!ビルド!】:CLEAR
【11話 開幕!GBフェスタ】:CLE ERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERRORERROR……
――さぁ、もう一度壊そうか――
……
…………
………………
「ん……」
――長い夢を見ていたような気がする。
内容は覚えていないが……なんだかものすごく胸糞悪い気分だ。
「ふ、あぁ……っと」
っと、夢オチからのスタートか。
えぇと、状況把握、状況把握……
俺の名前は『オウサカ・リョウマ』。
今年で十七歳になる、現役高校二年生です。
ご家庭の都合から引っ越してきて、明日からは転入先である『
両親は溜まった有給を消費するために、半年かそれくらい夫婦水入らずの海外旅行に出ています。
その間、俺はこの家に一人暮らしなわけで。まぁ家事とかは得意なので、私生活に問題ないとして。
で、さっきまで何をしていて……あぁそうそう、引っ越しの片付けも大体終わって、リビングのソファに腰をかけたら急に眠くなって……で、今に至るっと。
時刻は18時前頃、そろそろ夕食時だ。
しかし引っ越してきたばかりなので、冷蔵庫の中は空っぽだ。
今晩は適当にコンビニ弁当でいいとして、明日の朝と昼の分の買い物もしないとなぁ……
転生したてで上手く機能しない身体を駆動させつつ、俺は買い物バッグに財布とスマホを放り込んで、スーパーとコンビニへ向かうため、夕焼けに染まる街並みを行く。
まずはスーパーから回って、明日の朝食や弁当の材料を買い込んで。
その後でコンビニにも立ち寄って、これから食べる弁当を買って。
さぁ帰宅しましょうという時だった。
「……ん?」
コンビニを出てすぐ、ちょっと大通りからは陰になっている位置。
壁を背にしている……いや、されている女子高校生――制服から見ても、創響学園のもの――と、なんかこう、見るからに人の話も聞かないし空気も読めなさそうな、下半身のチンチンをピラピラさせてるようなチンパンの組み合わせ。
なんかもう百万回見たようなテンプレ展開だな、コレ。
女の子の方は、水色のショートボブが可愛らしい美少女と言ってもいいくらいだな。あ、野郎の方に興味はありませんので眼中からフェードアウトです。
「あの、私急いでるんですけど」
「まぁまぁいいじゃないの、ちょっとそこまでだし」
うん、野郎の方はナンパの仕方がなってないなぁ。
相手の女の子、明らかに嫌がってると言うか機嫌悪そうだし。
それで強く拒否したらしたで逆ギレして酷いことをする、と。
……ほんと、こういう世界のあぁいう人種は本気で脳が足りてないと言わざるを得ない。
……さて、見て見ぬ振りもここまでにするか。
――気配と足音を消してそっと近づいて、
「わたしメリーさん。今、あなたの後ろにいるの」
「え?」
敢えて声をかけて、振り向くと同時に腕を掴んで足をかけて、合気術でポイッと。
「なっ、がっ!?」
面白いくらいくるっと飛んでいった。
女の子は何が起きたのかわかっていないのか、ポカンとしているが、それは尻目にしておいて。
「てめっ、何しやが……」
起き上がろうとしたので、重心を崩してもう一度ポイッと。
「い、でぇ!?」
仰向けに倒れたところを、顔を踏みつけようと足を振り上げれば、
「ひっ!?」
チンパンは咄嗟に腕で顔を守ろうとしたけど、それは意に介さず、すぐ横の地面を、足音を立てるように踏みつける。
「……へ?」
腕を解いて顔を晒したので、すかさず胸ぐらを掴んで強引に起き上がらせて、もう一回ポイッと。
「い、ぎっ!?ゲホッゴホッ……す、す、すいませんしたぁ!」
咳き込みながら慌てて逃げていくチンパン。
チンパンの背中に心の中で中指をおっ立てて、何も言わずに去ります。
通りすがりの転生者はクールに行くぜ。学園で会ったらその時はその時だ。
自宅に帰ったら、コンビニ弁当食べてーの、歯磨きしてーの、お風呂入りーの、明日の登校準備しーのして。
あ、そうそう。
デスクトップに飾っている、俺のガンプラなんだけども……こんな感じのガンプラだったっけ?
――もっとこう……もう少し小さくて、額にドクロレリーフをあしらってて、背中に骨の十字架を背負ってて……存在しない記憶か?
マァいいやサァいくか。
このガンプラは『GRX-78-2 オリジネイトガンダム』。
皆さんご存知、
アムロが乗っていたガンダムのデータをベースに、無駄を省いて、より高性能を求めた、試作機……って設定だったかな。
俺はこれからこのガンプラで、このストーリーを"完結"させるわけだ。
さて、明日も早いし今日はもう寝ます!おやすみ!
グッドモーニングおはようございます、転生生活一日半目のオウサカ・リョウマです。
ワイ氏、卸したての制服に身を包んで、通学路を横行闊歩しとる件。
そう言えば普通の学園生活って久しぶりな気がするなぁ。
異世界転生の学園生活って言えば魔法学園が基本で、攻略対象である王族貴族の皆様方が親の七光りで威張り散らしてたりするし、主人公の女の子を何かにつけて襲って(自主規制)したり……
A.S.のアスティカシア学園もスペーシアンによるアーシアンいじめが最新のトレンドだったり、メスガキテロリストに理解らされちゃうダブスタクソセキュリティーだし、お茶の間に百合婚正当化が放送されたりするし……
……異世界の学園クソばっかやんけ!?
え、あ、ちょ、ちょっと待って、創響学園もアス高みたいな"場末"だったらどうしよう、転(校)生オリ主が騒動の中心に巻き込まれるのは挨拶代わりみたいなもんだしなぁ……。
何だか不安になって来たけど、行かないわけにもいかないので、校門を潜ります。ブレイクスルー!
しれっと職員室に入室して、担任の先生と顔合わせして、あーだこーだ話したら、いざ教室へ。
2−1組の教室まで来ると、待機。
入った瞬間、「クソスペーシアンがどのツラおっ下げて来てんだゴルァ!」とか言ってピンク色のノンキネティックポッドとかヒートクギバットが飛んで来たりしない?俺すっげぇ不安なんだけど。
「それじゃあオウサカ君、どうぞ」
何食わぬ顔で内心ビクビクしながら入室。
「皆さん初めまして。本日よりこのクラスでお世話になります、オウサカ・リョウマと申します。不慣れでお見苦しいところも多々あるかと思いますが、何卒宜しくお願い致します」
完璧な自己紹介やな!
ふっ、2649年もの異世界転生を繰り返してきた、俺の処世術をなめるなよ……
「あっ……」
って、なんか見たことあるライトブルーが見えたと思ったら、昨日の女の子じゃん。早速フラグが立ったかもしれないぞクォレワァ……
むむっ、もう一人俺に熱視線を浴びせてくる奴がいるぞ。
カーキ色の髪のポニテで、ギャルっぽい感じの……彼女も見たことがあるな。
いやしかし昨日に擦れ違ったわけでもないし……アレか、"俺"じゃない、『オウサカ・リョウマ』としての記憶からか?
そんな疑念は意識の隅に追いやりつつ、空席へ。
ホームルームもパパッと済んだら、早速質問攻めだ。転校生は辛いぜ。
「オウサカだっけ、これからよろしくな!」
「どこから転校してきたの?」
どこから来たとか彼女はいるのかとか訊かれては当たり障りなく答えていると、水色のショートボブの娘がやって来た。
「あの、昨夜はありがとう、えぇっと、メリーさん?」
メリーさん?どゆこと?と周りの皆さんがざわめく。
そうか、昨夜は俺、「わたしメリーさん」って名乗ってたな。
「どう致しまして。それと、俺はメリーさんじゃなくて、オウサカ・リョウマだよ」
「そ、それもそっか……わたしは『アサナギ・マユ』。今日からよろしくね、オウサカくん」
マユちゃんと言うらしいアサナギさん。
純情っぽくて大変可愛らしいです、萌え度高いよ。
「あーっ、やっぱりリョーじゃん!」
するとマユちゃんの反対側からどたどたやって来るのは、先程のカーキ髪のギャル子ちゃんだ。
リョー……ってのはあだ名か?
でもなんだか懐かしい気がする呼び方だな。
誰だろう、数年間音沙汰無かった幼馴染みちゃんだろうか。
「ほら、小四の頃まで一緒にいただろー?」
「ちょっと待って、今思い出してるから……」
借り物の肉体にある記憶を辿り――見えた!つもり!
「あぁ、イツキ。『タツナミ・イツキ』だろ?」
「そうそう正解!やっば、マジおひさじゃん!」
正解、というと。
やっぱりこのイツキというタツナミさんは、『リョウマ』と昔馴染みらしい。
「イツキ、彼と知り合い?」
マユちゃんがそう訊ねてきた。きっとみんなが気になった内容だろうな。
「知り合いってか、幼馴染み?腐れ縁?ま、そんな感じ!」
俺という謎のメリーさん転校生は、マユちゃんの恩人兼イツキの幼馴染み、というレッテルが早くも貼られたようだ。モテる男は辛いぜ。
長年……いや、永年ファンタジー異世界のあっちこっちに行ってきたせいで、現代日本の高校の授業が全然分からねぇ。
いや、分からねぇこともなく、教科書読めば大体理解出来るんだけど、要予習復習だわコレ……魔法学とか魔術論とかなら得意なんだけどな!
いや、あのね、転校生だから質問攻めに会うのは理解出来るんだけど、せめて教科書とノートの整理くらいさせてくれぇぇぇぇぇ!
なんて泣き言はそっと胸にしまいこんで、マユちゃんやイツキと話を合わせつつ、授業と休み時間を過ごしてーの。
昼休みだ!昼飯だ!
「マユー!リョー!昼ごはん食べよー!」
やったら元気のいいイツキに誘われたので、お弁当を片手に席を立つ。
マユちゃんも一緒に呼ばれて、二人のお気に入りの場所へ行くとのことだ。
そうして案内されたのは、中庭の片隅。
ベンチがあるし、日当たりもいい。
この食事の席に着くのは、俺、マユちゃん、イツキの三人だ。
いや、転校初日からいきなり女子二人に挟まれて昼食とか、なろう系かよ!
「オウサカくん、授業はどう?ついて行けそう?」
マユちゃんが鞄から取り出したのは、こぢんまりとした可愛らしいデザインの弁当箱。
ちなみにイツキは、登校途中で寄ったコンビニで買った惣菜パンで、今は自販機へ飲み物を買いに行っている。
「前の学校(王立魔法学園)とこっちとじゃ、授業内容が全然違ったから、授業中に予習復習しながら、どうにかこうにかって感じだな……」
「そ、それは大変そうだね……?もし分からないところがあったら、わたし……に訊いてもいいけど、ミカゲさんに訊いた方がいいかも」
「ミカゲさん?えーっと、女子?」
さすがにまだクラス全員の名前と顔は一致してない。
「そうそう、『ミカゲ・トウカ』さん。あの、紫色のおさげが綺麗な人だよ」
「紫色のおさげ……あ、一番左後ろの席にいた人か」
見覚えあり。
俺という転校生に積極的に関わろうとせず、遠巻きに見ていただけの、これまた女子生徒だ。
紫髪のおさげに、野暮った〜い瓶底眼鏡を掛けた、『THE・地味子ちゃん』とでも言わんばかりの容姿である。
コレあれだよ、眼鏡外して髪下ろしたら、神降ろしが発生するヤツですよ、多分。
アサナギ・マユに、タツナミ・イツキ、ミカゲ・トウカ、ね。初日から覚える名前が多いぜ。
「成績、いいのか?」
「多分、ウチのクラスのでも一番だと思う。体育は、ちょっと残念だけど……」
なんかこう、見た目からして「運動苦手です」って感じだったなぁ。
「っと、お待たせー!」
すると、イツキが帰還してきた。
ビニール袋をガサガサ言わせつつ、戦利品を机に並べるイツキは、俺の弁当に目を向けてきた。
「リョーも弁当なんだな?」
「まぁ、今朝の朝飯のついでだけどな」
おかずなんかも朝飯のそれとプラスアルファだから、かかる手間と言えば、弁当箱に詰め込むことと、その洗い物ぐらいかねぇ。
「え?それじゃリョー、今一人暮らし?マジで!?」
「うん。両親は一人息子をほったらかして、有給消化のついでにイチャイチャ海外旅行だよ」
「へー、すっげ!」
すげーすげーと言いながら、イツキは購買のパンをムシャつく。
「アサナギさんの弁当も、自分で作ってるのか?」
マユちゃんの弁当に視線を向けると、弁当箱のこぢんまりと可愛らしいデザインを裏切らない、中身もまたこぢんまりと可愛らしいラインナップ。
「うぅん、これはお母さんに作ってもらってるから……お家のことを全部自分一人でやってるオウサカくんが、すごいなって」
よせやい照れるじゃねぇか。
「そんなすごいとか言われるようなことはしてないけどな」
いつかの異世界転生だと、『執事付きアパート』の執事として、住民全員の炊事を請け負ったこともあるが、あれも始めてから三日くらいで慣れたんだよなぁ。
「うーん……」
俺とマユちゃんが話してる側面から、イツキが俺の顔を覗き込んで来ている。イケメンかもしれないけど、多分普通の顔だと思うんだが。
「なんつーの?リョーの雰囲気がガラッと変わったって言うか、いや、顔はそんなに変わってないんだけど、なんか違う気がしてさ」
ごめんなイツキ、俺は君が知ってる『リョー』じゃないんだ。
いつか時が来たら本当のことは話しておこう、嘘をつき続けるのは心苦しいし。
「六、七年も経ったら、色々と変わるものだろ」
「そんなもんなんかなぁ……」
神殿の聖なる剣を台座から抜いたら、気が付いたら七年経って大人になってたとかって経験もあるし。
「あっ、そうそう!リョーってさ、まだガンプラバトルやってるよな?」
おっと、急にガンプラの話になったな。幼馴染みなら、ガンプラの話で盛り上がったこともあるか。
「ん、一応続けてはいるが……最近は頻度も減ったし、昔みたいに出来るかどうかは微妙だな」
ほんとはバトルなんてしたことないんだよな。
本物のMS戦なら結構な数をこなしたけど。
「そっか。でもまぁ、出来なくはないってことか……」
うんうん、と頷くイツキ。
「んじゃさリョー、ガンプラバトル部に入ってくれよ!」
あぁ、そういう展開か。
と言うか、この世界はガンプラバトルが部活動として認められてるんだな。
「イツキ、まだオウサカくんはこの学園に慣れてないのに、いきなり勧誘なんて……」
「え?だってリョー、すっげーガンプラバトル強かったんだって!昔みたいに出来ないって言っても、感覚思い出せばすぐだし!」
「そうかもしれないけど、オウサカくんのことも考えて……」
マユちゃんがイツキの勧誘を窘めている。
なるほど、まぁこれからガンプラバトルしながら学園生活をエンジョイするってのが"原作"の筋書きらしいし、断る理由はないか。
「あぁいいよ、入ろうか」
「って即答!?オウサカくん、いいの……?」
「よっしゃ!さすがリョー!」
戸惑うマユちゃんに、喜ぶイツキ。対照的だな。
「今から新しいことを始めるより、既にやり慣れてることを活かせる方がいいと思うからな」
ほんとはガンプラバトルも初めてなんだけど。
しかしマユちゃんが俺の入部を渋るのは何故だろうか。
「その……ね、オウサカくんがガンプラバトル部に入部してくれるのは嬉しいんだけど。ウチの学園のガンプラバトル部がどういう場所なのか、知ってる?」
「どういう場所なのかって……何かいけないことでもあるのか?」
先輩による後輩イビリが最新のトレンドなら、力尽くでやめさせてもえぇんやで。
「ウチのガンプラバトル部なー。何ていうか、昔はそこそこ大きくて、賞とかも色々取ってたらしいんだけど、ここ数年で一気に弱小化したらしくてさ。今残ってる部員は、あたしとマユと他数人だけ。功績とか結果が出ないから部費も降りないし、今じゃすっかり同好会扱いってこと」
参ったよなー、と苦笑するイツキ。苦笑してるけど、部費の予算が降りてこないって割りと深刻な問題じゃないのかそれ。
「だから色々と不便で、設備とか備品の維持も、ほとんどわたし達の自腹でやってるの。……正直転校生にあまり勧めたいとは、思えないよね」
落ち込んでしまうマユちゃん。
部の存続の危機を前に、困難に立ち向かう少年少女……いいね、そういう王道でアツい展開は大好きだよ。
「ようは、結果を出して見せれば、ガンプラバトル部は名ばかりの同好会じゃなくなるって話だろう?なら、俺が入らない理由にはならないよ」
つまり、ガンプラバトルに勝ちまくって天辺取って、創響学園の名を天下に轟かせろっちゅーことやな!
これが廃校レベルの話だったら、ガンプラバトルじゃなくてスクールアイドルになってたところだよ、サンラ○ズ的な意味で。
「よーし!リョーがいてくれれば百人力!今年は優勝待ったなしだ!」
「ありがとう……オウサカくん」
二人の顔に喜色が灯る。
うんうん、やっぱり女の子は笑顔じゃないとね。
とかなんとか場の雰囲気が暖かいものになったと思ったら。
「……あっ」
「チッ……」
急に、マユちゃんは何かに気付き、イツキは舌打ちした。
気になって振り向いたら、なぁんかガラの悪そうな男子が一人。イツキが舌打ちした辺り、ガラ通りに頭も人柄も悪そうだな。
「よぉアサナギ、今日もこんな辺鄙なとこで昼飯か?」
あぁー、なんかこう、ねちっこくてやーな感じだわコレ。声を聞いてるだけで大変不愉快だ。
「えぇそうですよ、ウマノ先輩。それが何か?」
マユも嫌悪感を顕にして邪険な態度を見せている。
先輩ということは、このウマノ先輩とやらは三年生か。
「今あたしら昼飯の途中なんで、話でしたら後にしてほしいんすけど?」
イツキも同様に、嫌悪感どころか敵意すら剥き出しだ。
「ここじゃなくて、部室にしねぇか?ついでにそこでイイコトも……」
おいおいこの先輩、学園内でヤらかす気ですよ?不純異性交遊は校則違反だぞ!いい加減にしろ!
「絶対嫌です!」
「先輩、いい加減しつけーんすけど!あんたマユから嫌われてるって分かんねーのかよ!?」
拒絶感を強める二人。
それに対してこのウマノ先輩とやらはさらに強気になって出てきた。
「はぁ?分かってねぇのはお前らだろ?誰のお陰で、ガンプラバトル部が、辛うじて部として認められてると思ってるわけ?」
ん?このウマノ先輩、ガンプラバトル部なのか。
……あぁ、何となく展開が読めたな。
この先輩が結果を出しているから、ガンプラバトル部はギリギリのラインに踏み留まっていて、それをダシにしてマユちゃんとの関係を迫ろうとしてる、と。
よし。
「あー、えっと。とりあえず双方落ち着きません?俺、なにがなんだかサッパリなんですけど」
まずは調停者を気取って、公平に平等に。
「あ?誰だてめぇ?」
「今日からこの学園のお世話になる、二年のオウサカ・リョウマです。で、この二人からガンプラバトル部に勧誘されたところでして。えーと、ウマノ先輩、でいいですか?」
「なんだ新入りか。オレは創響のガンプラバトル部を支える大黒柱、『ウマノ・ホネオ』だ。てめぇもガンプラバトル部に入るんなら覚えとけよ」
ウマノ・ホネオって……『馬の骨』かよ!ちょっwwwネーミングど直球過ぎてwwwあかんwwwツボりそうwww
「よろしくお願いします。で、アサナギさんとイツキは、先輩のことを随分嫌ってるみたいですけど」
笑いそうになるのを必死に堪えつつ。
「この人に関わらない方がいいよ、オウサカくん」
「そうそう。こいつ、マユが可愛いからって必死になってやんの」
イツキが仮にも先輩相手に「こいつ」呼ばわりか、相当なクズ野郎なんだなぁ。
「タツナミてめぇ!顔がいいからって調子に乗りやがって!」
あ、怒った。イツキを殴ろうとしてる。
はい、インターセプト。ついでにポイッと。
「なっ、んがっ!?」
「女の子に手を上げるなんて紳士的とは言えませんね、先輩」
まともに地面に落ちたのか、げほけぼと咳き込むクズ先輩。
「いっつつ……てめぇ、初対面の先輩に対する態度がそれか!?」
「俺は間違ったことはしてませんよ。今のは、先輩が勢い余って転んだだけですし」
「この……!」
クズ先輩の矛先が俺に向き直され、殴ろうとしてきたので、もう一回ポイッとな。
「こっ、がはっ!?」
「はぁー……いい加減やめませんか?見てるこっちが辛いので」
さて……そろそろいいかな。
「あ、じゃぁこうしましょうか。放課後、俺とガンプラバトルをしましょう。先輩が勝ったら、俺はガンプラバトル部には入りませんし、マユやイツキにも二度と近付きません」
マユちゃんとイツキが驚いてるけど、構わずに続ける。
「逆に俺が勝ったら、二度とマユやイツキに自分から話しかけない、必要以上に近づかない、と約束してもらいましょう。二人とも、それでいいよな?」
「ちょっ、リョー!何もそんな勝負しなくてもいいって!」
慌ててイツキが止めようとするけど、
「……分かった、わたしはそれでいいよ」
マユちゃんはそれに納得してくれた。
「マユ、いいのかよ!?」
「もし、オウサカくんが負けたら……ウマノ先輩の彼女でも、なんでもなる」
おいおい何もそこまで賭けなくていいんだよ?
俺がこんなのに負けるはず無いけど。
「……その話乗った!」
そして、他ならぬクズ先輩が喰い付いた。勝ったらマユちゃんを彼女に出来るってのは、目を眩ませるには十分だな。
「今日の放課後に、ガンプラバトル部の部室に来い。逃げたら、オレの不戦勝だ」
「えぇ、もちろん。まぁ、負けるのが怖いなら先輩が逃げてもいいんですよ?」
「チッ……!」
俺の最後のカウンターに、クズ先輩は大層不機嫌そうに去っていった。ドヤァ。
と、思ったら、イツキに背中をどつかれた。痛い。
「バカ!あんな約束してどうすんだよ!?」
「大丈夫だって。しょせん、『辛うじて部として認められている程度の結果しか出してない』先輩なんだろう?」
「いや、そうかもだけど!あの先輩、あんなんだけどこの辺じゃ結構知られてるくらい強いんだよ!」
は?この辺だけにしか知られてない、の間違いじゃないか?
「……その、もしオウサカくんが負けても、わたしは責めたりしないから……でも、あんな人の彼女なんて絶対嫌だから、お願い!」
マユちゃんが真摯に頭を下げてきた。
「あ、あたしからもお願いする!絶対勝ってくれよ、リョー!」
イツキも頭を下げてくる。
……ここまでされて期待に応えないなんて男が廃る。
「あぁ、任せてくれ」
大言壮語はいらない。
シンプルかつ力強く、「俺に任せろ」と、そう頷く。
そんなわけで放課後。
マユちゃんとイツキに案内されて、ガンプラバトル部の部室へ。
最初にイツキが一人で入って、その後で呼ばれてから俺とマユちゃんも続く。
部室内にいたのは、先程のクズ先輩ではない、少し雰囲気の軽い男子。彼も先輩だろうか。
「あー、なんつーか……悪いな、転校初日だってのにこんなことに巻き込んじまって」
バツの悪そうに頭をかく先輩さん。
溜息をひとつ挟んでから。
「ようこそ、ガンプラバトル部へ。部長の『サイキ・ケイスケ』だ」
「初めまして。二年のオウサカ・リョウマです」
「大体の話は、タツナミから聞いた。……俺がウマノの奴に、もうちっとガツンと言ってやれりゃ、アサナギに迷惑かけなくて済んだんだけどな」
なんかこのサイキ先輩……苦労人してるなぁ。俺ちょっとこの人のこと無碍に出来ねぇわ。
「ガツンと言っても、聞かなかったの間違いでは?」
「……まぁ、そうなんだがな。アサナギに関しては心配すんな、もし負けたら、俺が身体張ってでもあいつを止めてやるから。だからオウサカは、気にせず思い切りやってくれ」
いや、普通に考えたらあのクズ先輩が全面的に悪いんだけどな。
マユちゃんご本人の口から「強引に迫られて困ってます」って警察に相談したら一発でしょっ引かれますよ、アレ。
「大丈夫ですよサイキ先輩。俺が負けなければいい話ですから」
「随分自信があるんだな……なら、頼んだぞ」
もうちょっとだけ時間が経ってから、クズ先輩がやって来た。ちょっと遅くないですかね。
「へぇ?逃げずに来たのは褒めてやるよ」
「そりゃどうも。それじゃぁサイキ先輩、審判をお願いします」
サイキ先輩が無言で頷くと、俺とクズ先輩との両者の間に立つ。
えーっと、ガンプラバトルってのは……スマホのアプリからバナパスを読み込ませて、自分のガンプラ――オリジネイトガンダムをスキャナーにセットして、と。
ホログラムで作られるフィールドは『サイド7』を選択。
――ここでジーンが先走ったことで、鬼畜チート天パがガンダムに乗り込むという(ジオンにとって)最悪の事態を引き起こし、ジオンの敗北が決定したと言ってもいいんだよなぁ。
ゲートの中に、オリジネイトが生成される。
で、発進は……音声入力か。
さて……ガンプラバトルか。まぁ、命のやり取りをしないだけ、簡単だろう。
深呼吸をして、すぅー……ふぅー……よし。
「オウサカ・リョウマ、オリジネイトガンダム、行きます!」
俺の音声入力によって、オリジネイトがゲートから発進し、勢いよくサイド7のコロニーの空へ撃ち出される。
のは、良かったんだが……
マユは、リョウマのガンプラである、オリジネイトガンダムの完成度の高さに目を見張った。
「すごい……一見普通のファーストガンダムなのに、所々が確かに違う。それに、あの作り込み……」
「あぁ、ありゃぁ相当な手間暇をかけてるな。少なくとも、新品のキットをベースに一から十まで作ろうと思って作れるもんじゃない、何年も完成と再改造を繰り返したんだろうな……」
ケイスケがマユの感想に補足を加える。
それほどの完成度、恐らくはあれをそのまま出すだけで小さなコンテストくらいなら入賞するだろう。
「あれ、でも……なんか動きが変だ?」
しかし、イツキの視点はそこではなく、オリジネイトガンダムの挙動に違和感を抱いた。
ぎごちない挙動を見せたと思えば、急加速して慌てて減速したりを繰り返している。
少なくとも、ガンプラバトルに慣れた者のそれではない。
『ギャハハハ!偉そうな口叩いた割には、ズブズブの素人かよ!』
オリジネイトガンダムと対するのは、ホネオのガンプラ。
真紅色を基調とした、鋭角なフォルムを持つ四肢に、頭頂部に大型のセンサーカメラを持つガンダム――『イージスガンダム』だ。
異形とも言えるMA形態への可変機構が特徴の機体だが。
ホネオがカスタムしたそれは、やけにゴテゴテした重装甲に、マニピュレーターに握るのは大型の両刃のバスターソードのみで、ビームライフルやシールドの類は見られない。
可動部を妨げるほどの重装甲は、恐らく可変機構そのものをオミットしているのだろう。
どことなく、"騎士"を思わせる外観ではあるが……
それは――端的に言えば、『イージスガンダムの長所を全て殺している』機体だった。
『まぁ、逃げずに立ち向かおうとする相手に、ナメプなんて失礼だもんなァ!』
イージスガンダムはバスターソードを構え直し、不安定な挙動や機動を繰り返しているオリジネイトガンダムへ迫る。
一刀両断せんと振り降ろされるバスターソード、しかしオリジネイトガンダムは咄嗟にバックステップで躱す。
『ほらほら避けんなよ!仕留められねぇだろ!』
オリジネイトガンダムに接近してはバスターソードを振り降ろしたり、薙ぎ払ったりするイージスガンダムだが、その重撃は一度も届いていない。
そんなイタチごっこが幾度が繰り返されたが、とうとうオリジネイトガンダムが体勢を崩し、バーニア制御が不十分なせいで、背部から倒れてしまう。
「リョー!何やってんだよ!?」
「オウサカくん……!」
イツキとマユの焦れるような声。
しかし、ケイスケだけは戦闘中のホログラムではなく、筐体の前で猛烈な速度でキーを叩いているリョウマの姿を見ていた。
「(あいつ、まさか……!)」
くぁー!なんっだこの死ぬっほど使いにくいコントローラー!?
操縦しやすいつもりなんだろうけど、こんなん逆にやり辛いって!
あぁもう、反応だっておっそい!ドノーマルの
とりあえず、イージスの改造機っぽいクズ先輩の攻撃を躱しつつ早く操縦に慣れ……てる暇があると思ってんのか!
(いきなりぶっつけ本番とか)ないです。せめてチュートリアルくらいさせろ!?
えーい落ち着け俺、「接地圧が逃げるなら合わせればいいんだろ」ってどこぞのスーパーコーディネイターだって言ってたんだ、なんとかなるやろ!
クズ先輩の攻撃をなんとかかんとか躱しつつ、ホワチャチャチャーと設定を調整し……ってあァ!?『初期設定に戻す』ちゃうわ!まーた最初からやり直、あっ、やっべバーニア制御ミスった!?
『チッ、ヒラヒラヒラヒラウザッてぇな!勝負しろよ勝負!』
ウザってぇのはあんたのボイスだよ……とツッコミを入れてる内に。
「よし、大体こんなもんか」
調・整・完・了!
さぁここからはずっと俺のターンです、覚悟しろぃ。
『いい加減に、死にやがれぇ!!』
バスターソードを振りかぶって兜割りのごとく上段の構えから迫るクズ先輩のイージス。
「はいそこ」
即座、ウェポンセレクターからビームライフルを選択と同時に射撃、イージスの右腕の関節を撃ち抜く。
『んなっ!?』
急に片腕が無くなったせいでバランスが崩れ、イージスのバスターソードはグラリと傾いて俺のいない地表に叩き込まれる。
敵の目の前で隙を曝すとか言う自殺行為を平然とやってるので、遠慮なくいきます。
喰らえ、スラスター真空飛び膝蹴り!
右膝を突き出しながらスラスターで突進し、イージスの頭部にブチ込む。
CRITICAL HIT!!
真空飛び膝蹴りが、イージスの頭部を粉砕!機体ごと吹っ飛ばす!決まったぜ。
『てめっ、この……!』
おっと、イージスが姿勢制御しつつ、重そうなサイドスカートが開いたと思ったら、スカートの中から高出力のビーム砲を撃ってきた。
あっぶねー、初見殺しだろそれ。
俺じゃなきゃ見逃しちゃうね……まぁ躱せたからいいけどな。
イージスは構わずに、距離を離した俺に向けて、サイドスカートのビーム砲を連射してくる。
元がイージスなんだし、そんなビームバカスカ撃ちまくってならすぐエネルギー切れになるぞ。
とはいえこの弾幕はバカにならんな、一旦距離を取って、と。
『バカが!』
バカにバカって言われた!?訴訟だって辞さないぞ!?
するとイージスの胸部が開き、その内側から正四角形状の砲門――高エネルギー砲の『スキュラ』だ。
『堕ちろォ!』
蒼白紅のトリコロールカラーの熱プラズマが、一直線に放たれる。
瞬間、俺はビームライフルを投げ捨てつつウェポンセレクターからビームサーベルを選択、ビーム刃を発振させると同時に振るい――スキュラの熱プラズマを真っ二つに斬り裂く。
『ハァ!?スキュラを正面から、サーベルで!?』
「こっちは"経験"が違うんだよ」
理論上、ビームサーベルでビームは弾き返せるんだ。ちょっとでも受ける角度ズレたら一発アウトだけど。
そして、イージスはスキュラの発射の反動で動けないのは織り込み済みだ。
操縦桿を押し出して一気にオリジネイトを加速させ――
『ふ、ふ、ふざ、ふざけんな、この……!』
「俺の、勝ちだ」
スキュラの砲門にビームサーベルを突き込み、すぐに飛び下がる。
一拍を置いて、スキュラの砲門が誘爆、コクピットにまで及ぶ。
『クソがぁぁぁぁぁ!?』
イージスガンダム、撃破。
『Battle ended!!』
や っ た ぜ
初ガンプラバトルデビューがいきなり実戦だったけど、なんとか勝てたぜ。イェーイピースピース。
「よっしゃー!さっすがリョーだぜ!」
「良かった……!」
イツキの喜ぶ声と、マユちゃんの安堵の声が聞こえる。
その反対側では、サイキ先輩がクズ先輩に詰め寄っている。
「さて、ウマノ。約束はきっちり守ってもらおうか。タツナミとアサナギには自分から話しかけない、必要以上に近づかない。もし破ったら、学生会にも警察にもお前のことを細大漏らさず話してやっから、その時には……停学だけで済めばいいな?」
「ぐぐっ……クソッ!」
一応納得はしたのか、クズ先輩はガンプラを回収すると、逃げるように部室から出て行った。ざまぁ。
サイキ先輩は安心したように溜息をつくと、俺に向き直ってきた。
「これであいつも大人しくなるだろ。オウサカ、ガンプラバトル部の部長として、礼を言わせてくれ」
「いえいえ、お役に立てたなら何よりです」
大人しくするだけじゃなくて、出来れば退部、最上なら退学してもらえると嬉しいんだがね。
正直あんなのいらない子だし、マユちゃんやイツキにも迷惑かけてたんならまずはそこから謝罪しろやとか言いたいことは色々あるけど、とりあえずは放置でえぇやろ。
「それより、今日は仮入部ってことで……入部届は明日でもいいですか?」
「おぅ、いつでもいいぞ。顧問の先生には、俺から言っとくからな」
「ありがとうございます」
そんな感じにサイキ先輩との事務的なお話を終えると。
「オウサカくん、さっきのガンプラ、見せてくれる?」
「あたしにも見せろー!」
マユちゃんとイツキが、オリジネイトガンダムが見たいらしいので、見せてあげる。
やれやれ、初日からドタバタ続きだったけど、最後の異世界転生は無事にスタートラインを切れたようだな――。