ガンダムブレイカー・シンフォニーRe:BREAK 作:さくらおにぎり
ゴジョウイン先輩、シノミヤ先輩、ナナちゃんの学生会員三人と遊びに出かけた日から。
今月末に、オープンクラスの個人戦の選手権が控えているので、それに向けてバトルの練習を繰り返したり、時折ガンプラを製作していたりするわけだが。
「どりゃぁぁぁぁぁー!」
「なんのっ、負けねーっす!」
今、ガンプラバトル部のシミュレーターでバトルしているのは、イツキとチユキちゃんだ。
フィールドは『ネオホンコン特設リング』。
第13回ガンダムファイトの決勝リーグの開催地であるネオホンコン内における、ガンダムファイトのリングだ。
あまり広いとは言えない平坦な地形に、周囲には四角形状に展開されたビームロープと、それらを繋ぐコーナーポストで構成されたそこは、逃げ場のないガチンコ勝負は必至。
イツキのドラゴニックと、チユキちゃんのフラウロスベスティア、どちらも格闘戦仕様の機体だから、真正面からのどつき合い上等だ。
ドラゴニックの左右からのドラゴンハングの乱打に、フラウロスベスティアは……おぉ?『上半身だけを変形させている』ぞ?まるで立ち上がった熊みたいだな。
その獣人モード(?)の状態でブレードや前腕クローを振るい、ドラゴンハングを弾き返して応戦している。
まさに竜虎相搏つ……いや、フラウロスは豹だから、竜豹相搏つ?語呂が悪いな。
ガッチンガッチンと打ち合う両機の様を、マユちゃんと並んで観戦する。
「そう言えばオウサカくん」
「ん、どうしたアサナギさん?」
「オープンクラスの個人戦、来週の日曜日だったっけ」
「あぁ、ゴジョウイン先輩に招待されたからな」
そのゴジョウイン先輩は、俺と公的な場で戦いたいがために巻き込んだようなもんだろうけど、この大会でも優勝……は厳しいだろうが、良い結果を残せば、ガンプラバトル部の覚えも良くなるだろう。
「オープンクラスってことは、大学生とか社会人とかも参加してくるんだよね。でも、オウサカくんならきっと勝ち抜けると思うから、頑張ってね」
俺が勝ち抜くって信じて応援してくれる、マユちゃんの優しさが身に沁みるなぁ。
なんだかんだとマユちゃんは、「言われて嬉しいこと」を言ってくれるから、素直に嬉しく思うよ。
「頑張るよ」
必ず優勝してみせる、とは言えないのがちょっとカッコ付かないな。
まぁ、出せる力は全て出し尽くして戦うまでだ。
「……大言壮語にしないのが、オウサカくんらしいわね」
マユちゃんとは反対側の席でバトルを観戦しているのはミカゲさん(地味子ちゃんモード)だ。
「あまり偉そうにするのは得意じゃないからな」
立派なのは口先だけで、やってることは大したことない、とか思われたくないし。
他人との貶し合いばかりが得意で、肝心の自分はそれらしいことを並べ立てて逃げるだけの奴に限って、そういうのが多いのだから困ったものだ。
「……そうね、偉そうに踏ん反り返ったオウサカくんとか、想像出来ないし」
「オウサカくんはそう言うキャラじゃないもんね」
お、おぉ、褒められてるのか?
少なくとも貶されているわけでは無さそうだな。
「よっしゃー!チユの勝ちっすー!」
「くそーっ、もうちょっとだったのに!」
いつの間にか勝負が着いていた。反応を見たところ、チユキちゃんの勝ちのようだが。
そして、週末日曜、六月の最終週末の時がやって来た。
実際に出場するのは俺とゴジョウイン先輩の二人だけだが、応援のためにガンプラバトル部の部員や、シノミヤ先輩、ナナちゃんも一緒に来てくれることになった。
俺を含めて、合計八人か、結構な大所帯だな。
一度校門前に集合して、会場に向かうために電車に乗ってガタンゴトンと揺られる中、
「しかしなんだ、リョウマ。お前も隅に置けねぇのな」
不意にケイスケ先輩がそんなことを言い出した。
「急にどうしたんです、ケイスケ先輩」
「どうしたも何もお前、いつの間に学生会役員になってたんだ?」
「……俺としては、役員に所属した覚えは無いんですけど」
いやまぁ、確かにここ最近になって、学生会室に出入りすることが増えたが……何故かって?ゴジョウイン先輩とシノミヤ先輩のツイン重鎮に気に入られているのか、昼休みとかにも学生会の仕事を手伝ってほしいと頼まれるからである。
ついでに、ナナちゃんも「オウサカセンパイがいてくれると安心します♪」と喜んでくれるのも加速している。
「アサナギにタツナミ、ミカゲだけに留まらず、ゴジョウインやシノミヤのお気に入りに認定され、極めつけはホシカワまで……お前、モテの絶頂期じゃねぇか!」
「モテの絶頂期とは一体。そんなこと言い出したら、この場にいるケイスケ先輩だって似たようなもんでしょう」
よくよく考えたら、この八人中で、男子は俺とケイスケ先輩の二人しかいないわけだが。
なぁ、と女子部員三人に同意を求めようとしたら。
「サイキ先輩は何ていうか、近所の親切なお兄さんって感じだよね」とマユちゃん。
「あれだよな、みんなの兄貴分ってやつだ!」とイツキ。
「男子の先輩の割にまともな方だとは思うわ」とミカゲさん(美少女モード)。
ミカゲさんの男子に対する「まとも」な判定基準はとてつもなく厳しいので除外するにしても、マユちゃんとイツキからは兄貴分としか見られてないようだ。
「あー……まぁ、悪く思われてねぇだけ良しとするかぁ」
現実は厳しいぜー、としょんぼり顔をするケイスケ先輩。
ケイスケ先輩、どちらかといえば善人寄りだし、面倒見も良いし、なんだかんだ言ってもイケメンだし、なんでモテないのかちょっと不思議だ。
女子部員三人の反対側からは、
「だが、オウサカが正規の役員以上に戦力になっているのも確かなことだ。能力、人格のどちらも申し分ない」
「本当にねぇ。実際、私やアマネの負担が減っているから、ガンプラバトル部に入って無ければ、無理矢理にでも学生会にねじ込みたいくらいよ」
ゴジョウイン先輩とシノミヤ先輩から見た俺の総評だ。
もし、転入初日にイツキからガンプラバトル部に勧誘されてなかったら、俺も"正規の"学生会役員の一人になっていたかもしれないな。
「ついでに、オウサカセンパイってルックスもいいから、センパイがいるだけでナンパが減るんです!」
ナナちゃんがこう言うように、(ルックスの良し悪しは別にしても)俺が学生会室に出入りするようになって、ナンパの回数が減っているのだそうだ。まことしやかな噂では、俺がナナちゃんの彼氏だと思い込んでいる奴も中にはいるそうだが……まぁ、ナナちゃんや、その彼女のご家族の方々が迷惑で無ければ現状維持で良かろうて。
さて、次が最寄り駅だな。
会場に着いたら、俺とゴジョウイン先輩だけが受付に行き、他の六人は飲み物を買ったりしてから観客席へ移動している。
ふむ、オープンクラスというだけあって、大人が多いな。
中には、俺達と同じような中高生グループもいるが、それも少数派だ。
今大会の形式はトーナメント制で、出場選手64名が1〜8ブロックに割り振られた中でバトルを勝ち抜き、各ブロックを勝ち抜いたベスト8で決勝トーナメントを行う、というものだ。
優勝するには予選で三回、決勝トーナメントで三回、合計で六回勝ち抜く必要があるわけだ、なかなかハードな連戦になりそうだ。
俺は第七ブロック、ゴジョウイン先輩は第五ブロックにそれぞれ割り振られた。
開会式の後、俺とゴジョウイン先輩は互いに勝ち抜いてくることを約束しあう。
「うむ、では私は第五ブロックのブースに行くとしよう。オウサカ、決勝トーナメントでな」
「ゴジョウイン先輩も、勝ち抜いて来てくださいね」
「ふっ、私を誰だと思っている」
自信に満ちて凛然としているなぁ、ゴジョウイン先輩が男子よりも女子の方にモテるのも頷ける。
さぁて、それじゃぁ俺も第七ブロックの方で暴れてくるとしますか!
第五ブロックでは、必然と言えば必然のように、アマネが悠々堂々と勝ち抜いていた。
予選、準決勝の相手を鎧袖一触同然に降し、そして待ち受ける第五ブロック決勝戦。
アマネは別段構えることなく、出撃準備を整える。
その彼女と対するのは、長い銀髪を束ねた、威風堂々たる武人然とした男性。
「我々の真実のバトルを、後の世に伝えるために!!」
捲土重来のために三年間雌伏の時を過ごしていたのだろうか。
ランダムフィールドセレクトは『虎牢関の戦い』
原典作品は『SDガンダム三国伝』からであり、三国志の史実・演義に則った、董卓ザクの大軍と、曹操ガンダムDX・袁紹バウが中心となった反董卓連合軍との戦いと同じ構図を取り、洛陽の都を守る要衝、汜水関・虎牢関の二関での戦いだ。
出撃開始。
「ゴジョウイン・アマネ、ゼイドラ・スタイン、出るぞ」
雪風を切り裂きながら、華雄ザンネックが守っていた汜水関を通過するゼイドラ・スタイン。
呂布トールギスが待ち受ける虎牢関の前に現れたのは、ザクIを思わせる――この場合なら、張遼ゲルググと言うべきか――カラーリングのガンダム試作2号機――サイサリス。
アトミックバズーカの代わりに、リック・ドム用のビームバズーカを担いだカスタム機のようだ。
「相手が何であろうと構わん、ただ蹴散らして進むまで!」
撃墜も狙った牽制にゼイドライフルを連射するゼイドラ・スタインに対し、サイサリスは滑るようなホバー機動と、巨大なラジエーターシールドによる防御を駆使してゼイドライフルによる射撃を凌ぐ。
『散っていった者達のために、我々は負けられん!』
頭部のバルカン砲で牽制しつつも、ビームバズーカで射撃を行うサイサリス。
対するゼイドラ・スタインは最小限の動作でビームを回避すると、その場から大きくジャンプし、左マニュピレーターにゼイドラソードを抜きつつ、サイサリスの斜め前方から急速接近する。
サイサリスはビームバズーカをその場で放棄すると、サイドスカートからビームサーベルを抜き放ち、ライトグリーンのビーム刃を顕現させ、ゼイドラソードと打ちつける。
一撃、二撃、と打ち合い、ゼイドラ・スタインはその間合いから早撃ちのようにゼイドライフルによる近距離射撃を放とうとするが、それよりもサイサリスは、重厚なフォルムとは思えぬほど軽やかにふわりと機体を浮かせて、ゼイドライフルを蹴り飛ばす。
『温い!風邪をひく!』
「なるほど。ではお望み通り熱くしてみせよう、その身が焦げるほどに!」
サイサリスからの挑発に、アマネはウェポンセレクターを切り替え、右腕の武装をゼイドライフルのそれからビームサーベルへ切り替えると、一気呵成に攻め立てる。
右のビームサーベル、左のゼイドラソード、時には脚部からの蹴りが合わさる乱舞は、余裕を保った立ち回りを継続していたサイサリスの挙動を後手に回わさせていく。
そしてついにゼイドラソードの一閃が、核爆発の爆風を受けることすら想定しているラジエーターシールドを真っ二つに斬り裂いてみせる。
『クッ……やってくれる!』
サイサリスは対核シールドを放棄しつつ一度大きく飛び下がると、空いた左腕にもビームサーベルを抜き放ち、両方のビームサーベルの出力を上げ、バチバチとスパークを迸らせる。
本来ならばこの状態のビームサーベルはデバイスに大きな負荷をかけることになるため、ものの数分で破損してしまう。
それを両方のビームサーベルで行うともなれば、短期決戦を仕掛けてくるのは明白。
『粉骨砕身!』
瞬間、両肩のフレキシブルスラスターバインダーを炸裂させてサイサリスが真っ向から突撃してくる。
「真っ向勝負……受けて立つ!」
対するアマネも操縦桿を押し込んで、ゼイドラ・スタインを正面から突撃させる。
ゼイドラソードとビームサーベル、スパークを迸らせた両のビームサーベルが激しく打ち合われ、虎牢関に降り頻る雪を吹き飛ばしていく。
出力を上げたビームサーベルに加え、サイサリス自体のパワーも合わさった白兵戦は、さすがのアマネと言えどもそう容易く御せる相手では無かった。
しかし、
「そこ!」
ゼイドラ・スタインは飛び下がると同時に、左腕に装着していたゼイドラソードをサイサリスへ向けて、ビームバルカンの砲口から勢いよく射出するように切り離した。
『小賢しい!』
サイサリスはビームサーベルを振るって、放たれたゼイドラソードを弾き飛ばすが、一瞬とはいえゼイドラソードに注意を向けたことで、ゼイドラ・スタインの姿を見失ってしまう。
『ぬっ、彼奴はどこに!?』
フッ、とサイサリスの視界が翳ったと思った時には、
「もらったぞ!」
両ビームバルカンの砲口からビームサーベルを発振させたゼイドラ・スタインが強襲、振り降ろされたビームサーベルがサイサリスの両腕を斬り落とす。
両腕という攻撃手段を失ったサイサリスは、悪足掻きに残された脚部で蹴り飛ばそうとするが、それよりも先にゼイドラ・スタインが踏み込み、右腕のビームサーベルをボディに突き込んでいた。
『――南無三!!』
サイサリス、撃墜。
『Battle ended!!』
第五ブロック決勝戦の決着が着き、ブースに歓声が上がる。
「きゃー!アマネセンパーイ!」
「さすがアマネね、なんともないわ」
アマネを応援していたナナは黄色い声を上げ、トモエはベルファスト基地の機雷に接触しても無傷のゴッグのように彼女の勝利を称える。
第五ブロック優勝者:ゴジョウイン・アマネ
……という感じで、ゴジョウイン先輩は順調にブロックを勝ち進んでいると思われるので、俺というオウサカ・リョウマも、負けじと第七ブロックを勝ち進んでいく。
オープンクラスと言うだけあって、この前の地区大会の学生よりも強い相手であったが、あのチーム・ブラウシュベルトとのエース、タチバナ・シオンほどでも無い。というか彼もこの大会に参加していれば、余裕でブロック優勝していただろうな。
予選、準決勝と勝ち抜き、いよいよ第七ブロックの決勝戦だ。油断せずに行くぜ。
相手は、独特な形状の鈍色の髪で、毛先は墨汁を浸けた毛筆のようになっている、目つきの鋭い麻呂眉の女性のようだが……
何故か彼女の周囲には金髪碧眼の美青年達が固めている。いやすまん、あの集団は一体なんぞや?
「我ら、地球外縁軌道統制統合組合!」
「「「「「面壁九年!堅牢堅固!!」」」」」
「右から二番目少し遅い!」
「ハッ、申し訳ありません!」
……よく分からんが、規律に厳しい企業ということにしておこう。
ランダムフィールドセレクトは『ククルス・ドアンの島』
確かここは、ジオンからの逃亡兵『ククルス・ドアン』と、親を失った子ども達が密かに暮らしている島だったな。それにしてもドアンのザクは、モノコックボディフレームとは思えない、それこそモビルトレースシステムでも積んでんのかってくらい、ヌルヌルした有機的な挙動をしてたってけなぁ。
まぁ、相手がF型のザクⅡを使ってくるとは限らないとして、出撃だ。
「オウサカ・リョウマ、オリジネイトガンダム、行きます!」
出撃すると同時に滝壺を切り裂き、水飛沫を上げながら着地。
どうやらドアンのザクが滝の洞窟に隠していたことの再現だな。
さて急いで索敵し……すぐに見つかった。
海岸線にいるらしいその姿は、『グレイズリッター』
トサカのようなブレードアンテナや、赤いラインの入った大型の肩装甲から見ても、指揮官機である"肩付き"だな。
……ただ、ナイトブレードを砂浜に突き立てて、威風堂々とつっ立っている。
エレガントだが……撃っていいんだよな?
よし、撃とう。
ビームライフルを捨てて、ハイパーバズーカを持たせて、
『フッ、ガンダムか。相手にとって不足は無……』
発射。
するとグレイズリッターは無抵抗のままロケット弾を直撃してすっ飛んだ。
まぁ、ナノラミネートアーマーがあるから致命打は与えられんだろうけど。
『なっ……なんと……無作法な!!』
「いや、無作法とか言われましても」
これはニチアサじゃなくてガンプラバトルやで、おばさん。
『えぇぃ、戦いの礼節も知らん子どもが!鉄の裁きを下す!』
するとグレイズリッターはすぐに起き上がって、ナイトブレードを左マニュピレーターに持たせ直すと、リアスカートからグレイズのライフルを右マニュピレーターに持たせて突撃してくる。
戦いの礼節ねぇ。
そう言うのは身内だけでやってくれっちゅー話だ。
こちらもバルカンとハイパーバズーカを撃ち分けて迎撃するが、バズーカのロケット弾は躱され、バルカンの銃弾は肩装甲で受けつつも接近してくる。
あんなんでも決勝戦まで勝ち抜いて来てるだけあるってか。
『アハァッ、踏み潰してあげるわ!』
接近戦の間合いにまで踏み込まれ、グレイズリッターはナイトブレードを腰溜めに構えつつ吶喊してくる。
速度はそれなりにあるが、しょせんは猪突猛進だな。
ナイトブレードの切っ先がボディを貫く寸前にジャンプ、
「よっと」
そのまま背中を逆に"踏み潰してあげる"。
『があぁぁぁっ!?』
背部を踏みつけて、グレイズリッターをうつ伏せに踏み倒す。
すぐにハイパーバズーカを背部にぶち込もうとしたが、グレイズリッターはすぐにスラスターを使った加速で振り払って急速離脱した。
イニシアティブを取って仕切り直し……なんてさせるかよ、即座に操縦桿を押し込んで加速、追撃。
グレイズリッターは反射的にナイトブレードを振るってくるが、これはシールドで受け流して空振りさせて、
「ふっ!」
右手に持ったハイパーバズーカを振りかぶって、鈍器のようにして殴り付ける!
バガャァンッ、という鈍い軋轢音と共にグレイズリッターの左肩装甲がへしゃげるが、同時にハイパーバズーカの砲身も折れ曲がった。
うーん、チユキちゃんのフラウロスベスティアと戦った時もそうだったが、今のオリジネイトだとナノラミネートアーマー持ちの相手に対して有効打を与えられる武器が少ないなぁ。
今度、ガンダムハンマーとか使う練習もしないと。
『バ、バズーカを鈍器にだと!?なんと野蛮な!』
野蛮な、って言われてもな。
グレイズリッターはへしゃげた左肩装甲を切り離しつつ、すぐにナイトブレードで反撃を仕掛けてくるが、これは回避、急速バックホバー。
そのまま森林地帯まで下がると、その辺に生えている樹木を引きちぎる。
RPGで言うところの、サイクロプスの棍棒みたいなものだも思ってくれればよろしいかと。
『ふんっ、そんなもので倒せるとでも!』
ライフルで射撃してくるグレイズリッター。
120mmの銃弾を躱しつつ、棍棒で殴りかかる。
こんなもので奴を倒せるとは俺も思っていない。
だから、この攻撃は陽動というか、次への布石。
棍棒で殴りかかると見せかけて、そのままグレイズリッターの頭部目掛けてぶん投げる。
トビア・アロナクスが地球で死の旋風(デス・ゲイルズ)の三機と戦った時も、その辺にある燃える木を投げ付けていたしな。
あれは確かに対MSでは無力だったが、体勢を崩すくらいの効果はある。
投げ付けた棍棒に対して当然、グレイズリッターはナイトブレードを振るって棍棒を斬り飛ばそうとするが、それこそが俺の狙い。
棍棒を斬り飛ばすためにナイトブレードを振るい――棍棒をブラインドにしてその隙を突く。
振り抜いたナイトブレードを持つ腕を押さえ付け、
「ちょっと借りますよ」
そのままナイトブレードを奪い取る。
『なっ、貴様!私の剣を……』
「ほいっと」
奪い取ったその手で一閃、グレイズリッターの胴体と右肩を繋ぐフレームの隙間に滑り込ませて斬り落とす。
『くっ……私は戦いたかった……正々堂々と、戦いたかった!』
「正々堂々?」
なんだ、この人もチユキちゃん(正確には兄貴の馬の骨)と同じようなこと言うつもりか?
「旗色が悪くなれば、」
一閃、左腕を斬り飛ばし、
「相手のことを否定するって、」
二閃、左脚を膝から断ち斬り、
「随分と都合のいい話ですよね」
仰向けに踏み付けて、頭部のセンサーアイにナイトブレードをぶっ込んで。
「それで、どうします?」
ダメ押しにビームサーベルを抜いて、バイタルパートに突き付ける。
『……!』
程なくして、相手方からリタイアが宣告された。
グレイズリッター、リタイア。
『Battle ended!!』
第七ブロック優勝者:オウサカ・リョウマ
無事、麻呂眉おばさんを降して第七ブロックを優勝だ。
一度観客席まで戻ってみんなと合流する。
「お疲れさま、オウサカくん」
「さっすがリョーだぜ!」
最初に出迎えてくれたのはマユちゃんとイツキ。
「ここまでは楽に勝てたけど、次の決勝トーナメントからは一気に厳しくなるだろうなぁ」
各ブロックを優勝してきた者達だ、面構えが違う……とまでは言わないが、少なくともゴジョウイン先輩よりも強い奴らばかり、と言うわけでは無いだろう。
「ゴジョウインもリョウマもさすがだな、オープンクラスでもものともしねぇか」
「けど、ここからが本番でしょう?油断……を、するほどオウサカくんは迂闊ではないでしょうけど」
ケイスケ先輩は褒め称え、ミカゲさんは釘を刺してくれる。
「まぁ、負けるまでは油断せずに行きますよ」
さて、そろそろ第八ブロックの決勝戦だ、観戦するとしよう。
なになに……
「お?あいつ確か、『聖ディセンベル学園』ガンプラバトル部にいたやつだな」
顔を知っているらしいケイスケ先輩が向けた視線の先には、灰色の髪を首筋辺りに束ねたイケメン。あの人、高校生なんだな。
名前を確認すると、『アサクラ・ハルヤ』と言うらしい。
システムが起動し、ランダムフィールドセレクトは『宇宙要塞アルテミス』が選択される。
C.E.(コズミック・イラ)の地球連合軍、その派閥のひとつのユーラシア連邦が保有する要塞だな。
確かここは、"傘"と呼ばれるリフレクターの防御力がウリで、そのおかげでザフトを寄せ付けなかったんだが、そのザフトに奪われた"G"の一機、ブリッツのミラージュコロイドを活かした潜入によって内部から"傘"を破壊されてしまい、大損害を被った場所だ。
それにしてもあのハゲ……ガルシア司令官はどうしようもないクズだったなぁ、馬の骨といい勝負してるよ。
まぁそれはさておくとして。
バトルが開始され、アサクラ先輩とやらのガンプラが姿を現す。
銀色をベースに、メタリックブルーの差し色が加えられたきらびやかな装甲、頭頂部に頂く金色のトサカ状のブレードアンテナ。
スラリと長い手脚に、騎士然としたそのフォルムは。
「『ミカエリス』の改造機だね」
俺の隣席にいるマユちゃんが、ベースとなった機体名を挙げてくれた。
ミカエリス……あぁ、A.S.(アド・ステラ)のグラスレー・ディフェンス・システムズの最新鋭機で、あのパツキンヘラチャラヘタレ王子――シャディク・ゼネリの機体だったな。
けどあれって確か、右腕そのものを
「ありゃ両腕をベギルペンデの物に取り替えて、左右対称の機体に仕立て直してるんだな」
俺の浮かべた疑問符に応えるようにそう言ってくれるケイスケ先輩。
「ビームライフルと背中の装備は、ハインドリー・シュトルムの物よね?」
自分も使ったことがあるからか、ミカゲさんもその特徴を言い当てている。
ミカエリス、ベギルペンデ、ハインドリー・シュトルム……なるほど、同じグラスレー系の機体のパーツで統一したカスタム機ってところか。
機体名も『べギルエリス』という、べギル系とミカエリスを混ぜ合わせたようなものだし。
ただ、あの装備構成だと、グラスレー系の特徴のひとつである、アンチドートの類は装備していないようだな。
とは言え、ガンプラバトルにおけるアンチドートは、『GUND-ARMに属する機体の性能を大幅に下げる』というものだ。
実際のアンチドートみたいに、パーメットスコア4以上には効果が無い、なんてことはないのだが、それでも効果を与えられる相手は限定的なため、ガンプラバトル上では取り外してしまう方が軽くなっていい、というのも理解出来る。
そのべギルエリスと対するのは、ツートンのグリーンカラーに、一対のポッドを背負ったガンダム――アレは、『カオスガンダム』だな。
この宇宙空間、カオス本来のコンセプトを鑑みれば、性能をフルに発揮できる戦場だ。
開幕一番、カオスは背部のポッド――機動兵装ポッドを射出し、ポッドから銃口を引き出すと、それぞれが自立機動し、さらにカオスからも高エネルギービームライフルの射撃という変則的な波状射撃がべギルエリスに襲いかかる。
しかし対するべギルエリスは、宇宙空間を切り裂くような鋭い機動で、多方向からのビームを躱しつつ、ビームライフルを撃ち返しながらカオスへ迫る。
機動兵装ポッドから先に堕とすのではなく、それよりも早く本体(カオス)を狙いに行くか。
こうなるとカオスも、機動兵装ポッドを自身に向けて誤射する恐れもあって迂闊に射撃は出来ない。
カオスは機動兵装ポッドを呼び戻しつつも、高エネルギービームライフルを連射、迫りくるべギルエリスを牽制しつつ、左マニュピレーターにはヴァジュラ・ビームサーベルを抜いている。
べギルエリスはビームライフルを納めると、バックパックからビームサーベルを抜き、斬り掛かる。
ビームサーベル同士が衝突し、アルテミスの宙域に閃光が迸る。
弾き返し合い、即座にカオスは右脚からビームクロウを発振させての"蹴り斬り"を繰り出すが、べギルエリスはさらに左腕のシールドからもビームサーベルを発振させてそれを斬り返す。
そうそう、あのシールドってビームサーベルが内蔵されてるんだっけな。
返す刀で右のビームサーベルを突き出すべギルエリスだが、これはカオスのシールドに防がれる。
両機とも激しい攻防だ、見ていて熱くなってくる。
カオスは飛び下がりつつ、背部に呼び戻した一対の機動兵装ポッドからミサイル『ファイヤーフライ』を一斉発射、弾幕を張る。
ファイヤーフライの弾幕に、べギルエリスは一度後退し、被弾の危険のあるミサイルを左右のビームサーベルで斬り落として爆破させていく。
そのままカオスはMA形態へ変形、再度機動兵装ポッドを射出しながらも、機首部からビーム砲『カリドゥス』と高エネルギービームライフルを同時発射、さらにタイミングをズラした上で機動兵装ポッドらもビームが放たれる。
べギルエリスはカリドゥスと高エネルギービームライフルは回避し、機動兵装ポッドからのビームはビームサーベルで斬り弾きながらもビームキャノンを撃ち返して、カオスへ追い縋る。
べギルエリスのビームキャノンが機動兵装ポッドのひとつを撃ち抜き、カオスの波状射撃が弱まる。
機動兵装ポッドのひとつを破壊されてカオスの挙動に動揺が見られるや否や、べギルエリスはすぐに反転、もう片方の機動兵装ポッドをビームサーベルで叩き斬る。
これでカオスの最たる特徴である機動兵装ポッドは打ち止めだ。
破れかぶれのつもりか、カオスはMA形態でべギルエリスへ突撃、ビームクロウによる格闘戦を行おうとするが、MS形態のそれと比べても小回りの効きにくいそれでは攻撃範囲が狭く、べギルエリスにひらりと躱され、
刹那、べギルエリスがカオスをすれ違い様に、左右のビームサーベルでX字に斬り抜けた。
ボディを中心にX字の斬撃痕を付けられたカオスは、その場で爆散する。
カオスガンダム、撃墜。
『Battle ended!!』
第八ブロック優勝者:アサクラ・ハルヤ
ブースが声援に包まれる中、アサクラ・ハルヤの名前が決勝ベスト8に加わる。
「リョウマ、お前はあいつをどう見る?」
ケイスケ先輩が「どう」と聞いてきたので、素直に答えるとしよう。
「尖った特徴も無ければ、弱点らしい弱点も見当たらない。『特徴が無いのが特徴』……なんてジム・カスタムみたいなことを言いますけど、故に付け入れる隙がない。こりゃもし当たったら、思うよりも苦戦するかもですね」
あのべギルエリスの基本性能、数値化するならば恐らく平均水準が高く、バランスの良い結果が出るだろう。
基本性能の安定した高さだけではない、あのアサクラ・ハルヤの操縦技術も見事なものだ。
シオンのような武術の使い手でない分、『ガンプラそのものに対する造詣が深い』のだろう。
これは強敵、明らかな強敵。
となると、正面からぶつかる単純勝負と、策を用いた搦め手と、状況に合わせて使い分けなければ厳しいバトルになりそうだ。
「まぁ、それはそれとして、午後からの決勝トーナメントに備えて昼ごはん食べに行きましょうか。腹が減っては
「その偉い武士がいた頃の昔にガンプラはねぇだろ」
ナイスツッコミです、ケイスケ先輩。
みんなでフードコーナーに移動して、ごはんの時間です。
前にこういうところで食べた時は、みんな(シオン達も一緒に巻き込んだ上)でたこ焼きパーティーにしたっけなぁ。
さすがに今回は「今日は○○の気分だからみんなでこれにしましょう」というのは自重しとこう。
「何にしよっかなー、リョーは何すんだ?」
食券販売機の前で財布をこねくり回しているイツキに、何を食べるのかを訊ねられた。
そうだなぁ……
「なら、ここは験担ぎも兼ねて、カツ丼にするか」
「おっ、いいなそれ!あたしもカツ丼にする!」
「イツキがバトルするわけじゃないだろ?」
「いいじゃん!リョーのカツ丼とあたしのカツ丼、二人合わせればカツカツ丼丼……どんどん勝つ勝つってやつだ!」
「なんだそりゃ」
言いたいことは分かるけど、言葉の意味は俺ちょっと分かんない。
「まぁとにかく、俺はカツ丼にするよ」
「あたしもカツ丼!」
なんだかんだ言いつつも、俺のことを応援してくれてるんだよな。
その気持ち、しかと受け取ろう。
それにしても昼時だから混んできたな、席が埋まらない内に確保なければ。
食券をカウンターのおばちゃんに渡して、受取口の前でちょっと待ってから、カツ丼いっちょ!早いな。
さて、八人纏まって座れる場所はまだあるか……
「あっ、オウサカセンパーイ!こっちですー!」
お、ナナちゃんが四席を2テーブル確保してくれているじゃないか。
「ありがとうナナちゃん。ナナちゃんは注文まだなのか」
「先に席を確保してってトモエセンパイからお願いされまして。ではでは、ここはオウサカセンパイに任せて、わたしも注文しに行きまーす」
「はいはい、いってらっしゃい」
席を立って食券販売機へ向かうナナちゃんを見送りつつ、八人分の席をキープする。ディーフェンス!ディーフェンス!
「失礼、そこの席は空いているか?」
席をディーフェンスディーフェンスしてたら、声を掛けられたので、
ってこのイケメン、さっきのアサクラ・ハルヤ先輩じゃないか。
「あー、すみません。ここ、八人座るので」
「そうか。……ところで君は、確か第七ブロックの優勝者だったか?」
「はい。創響学園のオウサカ・リョウマです」
「聖アプリリウス学園の、アサクラ・ハルヤだ。知っているとは思うが、第八ブロックを優勝している」
「さっきのバトルも観戦させてもらいました。見事な戦いぶりです」
「君の戦いぶりも見た。型に嵌らない戦い方、油断させてくれなさそうだ」
「それはどうも……」
ジリジリと、互いを値踏みするようなやり取り。
俺に心理戦を挑むつもりか?なめんなよ、こっちはトランプで『わざと表情を見せて相手を罠にはめる』ことだって慣れてるぞ?
「……まぁ、戦う前からギスギスし合ってはやりにくいだろう。君とのバトル、楽しみにしている」
「へ?あ、はい」
オロ?レスバのひとつでもかましてやろうと思ったけど、この人にそんなつもりは無かったか。
「では、失礼する」
アサクラ先輩は会釈すると、別の席に移動していき、それと入れ替わるようにみんながトレイを手にやって来た。
ふぅ、ちょっと緊張したぜ。
……と思ったら、アサクラ先輩の視線が、ゴジョウイン先輩に向けられた。
「なんだ、君も勝ち抜いてきたのか、アサクラ」
「当然だ、『
どうやらこの二人、顔見知りの間柄のようだが、両者の間にはどこか冷めた――冷戦的な空気があった。
「突然ディセンベルから姿を消したと思ったら、姉妹校の『聖アプリリウス学園』の方にいたとはな。今でも、自分を追放した連中が憎いか?」
「今の俺がどこで何をしていようと、お前には関係無いだろう」
「あぁ、そうだろうとも。『いつまでも些事に振り回されているような男』に構っていられるほど、私は暇では無いし、そんな男に負けてやる理由もないからな」
「……相変わらず、ズケズケした物言いをする。今年こそは必ずお前を倒す、俺と当たるまで負けるなど許さんぞ」
「期待はしないでおこう」
「フン……」
それだけ言葉を吹っ掛け合うと、アサクラ先輩は俺達から離れた位置の席を探しに行った。
皆さん揃って席について。
「ゴジョウイン先輩、アサクラ先輩とは知り合いですか?」
その気になる関係を訊いてみる。もちろん色恋のそれじゃないぞ?
「知り合いと呼ぶほどのことではないがな。ただ、去年の春のオープンクラスの、3on3のチーム戦の大会で当たっただけのことだ」
「あ、ちなみにその時は私と、もう一人助っ人さんとチームを組んで出場してたわ」
シノミヤ先輩も一緒に出場していたのか。学生会のツイン重鎮二人から認められるほどの実力者らしいもう一人の助っ人さんとやらがちょっと気になるが、まぁそれはいいか。
「あのアサクラの実力が頭一つ抜けていた以外は、それほど大したチームでは無かったのだがな。私達のチームに負けたその直後、随分喧嘩になっていたようでな。それから一年間、聖ディセンベル学園のアサクラ・ハルヤの名前はすっかり見聞きしなくなったが……いつの間にか、姉妹校のアプリリウス学園の方に転入していたらしいな」
「アサクラくんのことは私も少しは知っていたわ。ディセンベルにいる友達からの話だと、ガンプラバトル部の中でひどい内部分裂があっって」
なるほど、話が読めてきたな。
去年に負けたのが原因で、転校までして環境を変えたかったと。
……シオンの時とは真逆だな。
ついこの間だってそうだ、俺達とバトルして負けた時も、シオンの先輩達も彼を責めたりしなかったし、別れ際の時だって「また次の大会で勝てばいいんだよ」って笑い合っていた。
「そんな些事に振り回されているような男だ。オウサカ、奴と当たっても負けるなよ」
「負けるつもりで戦うつもりはありませんから、ご安心を」
まだ決勝トーナメントのトーナメント表は発表されていないが、ゴジョウイン先輩が先に当たっても負けはしないだろう。
俺が先に当たったら、その時は全力を尽くして倒すだけだ。
そのためには腹ごしらえだ。
いただきます。